情報公開請求と不開示決定とは
じょうほうこうかいせいきゅうとふかいじけってい
情報公開請求とは、何人も、行政機関の長に対し、その行政機関の保有する行政文書の開示を求めることができる制度です(情報公開法3条)。不開示決定とは、請求された行政文書に5条各号の不開示情報が記録されているときなどに、行政機関の長が開示しない旨を決める処分です。
役所がどんな資料をもとに何を決めているかは、外からは見えません。国民主権のもとでは、政府は自分の活動を国民に説明する責務を負うので、誰でも役所の文書を見せてほしいと請求できる仕組みが情報公開法です(1条)。請求を受けた行政機関の長は、原則として開示しなければならず、個人のプライバシーや国の安全など5条各号に当たる情報が書かれているときに限って不開示にできます。不開示決定は処分ですから、納得できなければ審査請求や取消訴訟で争えます。5条が掲げる不開示情報は次のとおりです。
何人も請求でき、国籍も目的も問われません
3条の「何人も」には制限がなく、外国人も法人も請求できます。政府の説明責務は特定の誰かに対するものではなく、誰が求めても同じだからです。「自然人に限らず,法人であっても,情報公開法の定めるところにより,行政機関の長に対し,当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる」という肢は正しく、「行政文書の開示請求権は,外国人には認められていない」という肢は誤りです。請求の目的も問われず、「行政文書の開示請求が専ら営利目的のために行われた場合であっても,行政機関の長がそのことを理由として開示を拒否することはできない」という肢は正しいです。請求は書面によらなければならず、「開示請求は,行政文書の名称その他の開示請求に係る行政文書を特定するに足りる事項を明らかにしても,口頭により行うことは認められない」という肢は正しいですが、書面に理由や目的を書く必要はなく、「当該書面には開示請求の理由及び目的を記載する必要がある」という肢は誤りです。対象機関は行政機関に限られ、「衆議院・参議院の事務局や最高裁判所の事務総局の保有する文書についても開示請求の対象としている」という肢は誤りです。
- 1号個人に関する情報であって特定の個人を識別することができるもの等。ただし法令の規定により公にされている情報、人の生命・健康等を保護するため公にすることが必要な情報、公務員の職務遂行に係る職名・職務内容は除く
- 2号法人その他の団体に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの等
- 3号公にすることにより国の安全が害されるおそれ、他国等との信頼関係が損なわれるおそれ等があると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
- 4号公にすることにより犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報
- 5号国の機関等の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報であって、率直な意見の交換若しくは意思決定の中立性が不当に損なわれるおそれ等があるもの
- 6号国の機関等が行う事務又は事業に関する情報であって、当該事務又は事業の性質上、その適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
対象は組織共用文書で、職員が個人的に用いる文書は含まれません
行政文書とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいいます(2条2項)。個人的な備忘のメモは組織共用文書ではありません。「当該行政機関の職員が組織的又は個人的に用いるものとして保有されているものをいう」という肢は誤りです。文書を保有していないときも、行政機関の長は不開示決定をしなければならず、「行政機関の長は,開示請求に係る行政文書を保有していない場合であっても,不開示決定をしなければならず,当該決定は,取消訴訟の対象となる処分に当たる」という肢は正しいです。保有の有無が争われた場合の立証責任について、最判平成26年7月14日(沖縄密約文書情報公開請求事件)は、不開示決定時に行政機関が文書を保有していたことの立証責任は開示請求者が負うとしました。開示請求権は行政機関が文書を保有していることを前提とする権利ですから、その前提となる事実は請求者が証明すべきだからです。「その取消しを求める者が,当該不開示決定時に当該行政機関が当該行政文書を保有していたことについて主張立証責任を負う」という肢は正しいです。
不開示情報でも、公益上特に必要なら裁量的開示ができます
5条各号に当たっても、行政機関の長は、公益上特に必要があると認めるときは開示することができます(7条)。「公益上特に必要があると認めるときであっても,当該行政文書を開示することができない」という肢は誤りです。5条2号ただし書は、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため公にすることが必要と認められる情報を不開示情報から外しており、「公にすることにより、法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるものであっても、行政機関の長は、そのことを理由に当該情報を不開示とすることはできない」という肢は正しいです。3号・4号は「相当の理由がある」という書きぶりで、判断に高度の政策的判断や専門技術的判断を要するため行政機関の長に裁量を認める趣旨とされ、「行政機関の長の判断に裁量を認める趣旨である」という肢は正しいです。犯罪の予防や捜査に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報が記録されていれば、開示を拒むことができます。不開示情報が記録された部分を容易に区分して除けるときは、その部分を除いて開示します(6条・部分開示)。部分開示も申請に対する処分ですから理由の提示が要り、「行政機関の長が行政文書の部分開示決定をする場合,開示請求者に対し決定の理由を示す必要はない」という肢は誤りです。
存否を答えるだけで不開示情報を開示することになるなら、存否応答を拒否できます
8条は、開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで不開示情報を開示することとなるときは、行政機関の長は当該行政文書の存否を明らかにしないで請求を拒否できると定めます。特定の個人の病歴に関する文書が典型で、「当該行政文書に記録されている情報は不開示情報に該当するので不開示である旨を答えたのでは,そのことだけで当該個人の病歴の存在が明らかになってしまうため,行政機関の長は,当該行政文書の存否を明らかにしないで当該開示請求を拒否することができる」という肢は正しいです。使える場面は個人情報に限られず、「開示請求に対し,当該開示請求に係る行政文書が存在しているか否かを答えるだけで,不開示情報を開示することとなるときは」拒否できるという肢も正しいです。存否応答拒否は文書の存在自体を秘匿する仕組みですから、一部を出せば存在を認めることになり、部分開示の考え方は働きません。「不開示情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、当該部分を除いた部分につき開示しなければならない」という肢は誤りです。
第三者情報は意見書提出の機会を与え、決定には期限があります
開示請求に係る行政文書に第三者に関する情報が記録されているとき、行政機関の長は意見書を提出する機会を与えることができ、第三者の情報を7条により公益上の理由で開示しようとするときなど13条2項の場合には、開示決定に先立ち、所在の判明している第三者に対し意見書提出の機会を与えなければなりません。「開示決定に先立ち,所在の判明している第三者に対し,意見書を提出する機会を与えなければならない」という肢は正しいです。決定は開示請求があった日から30日以内にしなければなりませんが、正当な理由があるときは30日以内に限り延長でき(10条)、「この期間の延長は認められていない」という肢は誤りです。期間内に決定がされなくても不開示とみなす規定はなく、「開示をしない旨の決定があったものとみなされる」という肢は誤りです。この場合は不作為の違法確認の訴えや不作為についての審査請求で争います。
不服は審査請求でも取消訴訟でも争え、訴訟でインカメラ審理は許されません
不開示決定は処分ですから、審査請求と取消訴訟のどちらを選ぶこともできます。「行政不服審査法に基づく不服申立てを行わずに、当該不開示決定につき、適法に取消訴訟を提起することはできない」という肢は誤りです。審査請求があった場合、審査庁は原則として情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければなりませんが、審査請求が不適法で却下するときや、裁決で全部開示することとするときなど19条1項各号の場合は諮問が要りません。「必ず情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならない」という肢は誤りです。訴訟の場では、裁判所が不開示文書そのものを見分するインカメラ審理が問題になります。最決平成21年1月15日(インカメラ審理)は、訴訟で不開示文書を目的とする検証を被告に受忍義務を負わせて行うことは、明文の規定がない以上許されないとし、原告が検証への立会権を放棄しても同じだとしました。当事者が見られない証拠で裁判をすることは民事訴訟の基本原則に反するからです。「原告が検証への立会権を放棄した場合には,例外的に許される」という肢は誤りです。
情報公開法 第5条
行政機関の長は、開示請求があったときは、開示請求に係る行政文書に次の各号に掲げる情報(以下「不開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合を除き、開示請求者に対し、当該行政文書を開示しなければならない。
論文ではこう使う
論文では、不開示決定の取消訴訟を、対象文書の特定、不開示事由の該当性、手続の順で組み立てます。まず当該文書が2条2項の組織共用文書に当たることを示し、保有していないことを理由とする不開示なら、沖縄密約事件に従って請求者が保有の立証責任を負うことを指摘します。次に5条各号の該当性を検討し、3号・4号は「相当の理由」の文言から行政機関の長の判断に裁量が認められるとして、判断過程に看過し難い過誤がないかを審査する枠組みを立て、1号・2号・5号・6号は「おそれ」の有無を客観的に判断すると整理します。6条の部分開示の可否、7条の裁量的開示の当否にも触れます。手続面では理由提示の程度を検討し、不開示事由の条項だけを挙げた通知の適否を論じます。審理では、裁判所が文書を直接見分できないことを前提に、被告の主張と釈明によって審理を進めるほかないことを述べます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。