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審理員と行政不服審査会とは

しんりいんとぎょうせいふふくしんさかい

行政法 行政不服審査

審理員と行政不服審査会とは、審査請求の審理を公正にするために平成26年全部改正で導入された二つの仕組みです。審理員は処分に関与していない職員として審査請求の審理手続を行う者で(行政不服審査法9条)、行政不服審査会は審査庁が裁決の前に諮問する第三者機関です(43条)。

営業停止処分に納得できず審査請求をしても、処分をした部署の職員がそのまま審理をするのでは、言い分を公平に聞いてもらえるか不安になります。そこで、処分に関わっていない職員を審理員に指名して審理を任せ、裁決を出す前には外部の委員でつくる行政不服審査会に意見を求めることにしました。役所の中で行う簡単で速い救済であることを保ちながら、身内の判断に流れないように二重の目を通すのです。審理員の意見も審査会の答申も審査庁を縛りませんが、それと違う裁決をするなら理由を書かなければならないので、無視はできない仕組みになっています。

審査庁の部屋の場面。先生が審査庁役(札「審査庁」)で中央の机に着く。左に別の机に着いた男性(札「審理員(処分に関与していない職員)」)が「審理員意見書」の書面を先生に差し出している。右に三人の委員が並ぶ机と看板「行政不服審査会」、そこから「

審理員の指名は義務で、処分に関与した者は指名できません

審理員とは、審査庁に所属する職員のうちから指名され、審査請求の審理手続を行う者をいいます(行政不服審査法9条1項)。行政不服審査会は、裁決の客観性と公正さを担保するため、審査庁が裁決をする前に諮問を受ける第三者機関です(43条・74条以下)。審査請求の審理を処分に関与した部署から切り離し、外部の目を通してから裁決させるのが平成26年全部改正の骨格で、審理員による審理と審査会への諮問がその両輪です。9条1項は審理員を指名し、その旨を審査請求人と処分庁等に通知することを義務として定め、2項は、審査請求に係る処分若しくは当該処分に係る再調査の請求についての決定に関与した者、審査請求人、審査請求人の配偶者・親族、代理人などを審理員にできないと列挙します。公正中立性を制度的に確保するための除斥で、審査庁に指名するかどうかの裁量はなく、これに反する指名は違法になります。努力義務にとどまるとする「行政不服審査法は,審理手続の公正中立性とともに簡易迅速性を確保するという観点から,審査庁に対し,審査請求に係る処分に関与した者以外の者を審理員に指名するよう努めるべき義務を課すにとどめている」という肢は誤りです。旧法では処分に関与した職員を含む同じ組織の内部で不服申立てが処理され、審理の公正さに疑いが向けられていたので、処分に関与していない職員に審理を担わせることが改正の中心だったからです。ただし、審査庁が委員会等の合議制の機関である場合や、条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合などは、審理員による審理手続が行われません(9条1項ただし書)。情報公開や個人情報保護の分野でも、審査会が実質的な審理を担うため審理員の手続は置かれません。手続はおおむね次の順に進みます。

  • 審理員の指名審査庁が所属職員のうちから指名し、審査請求人及び処分庁に通知する(9条1項)
  • 弁明書と反論書審理員が処分庁に弁明書の提出を求め(29条)、審査請求人は反論書、参加人は意見書を提出できる(30条)
  • 口頭意見陳述審査請求人等の申立てがあれば、審理員は期日と場所を定め、全ての審理関係人を招集して行う(31条)
  • 証拠調べ証拠書類等の提出(32条)、物件の提出要求(33条)、参考人の陳述、検証、審理関係人への質問(34条〜36条)
  • 審理員意見書審理手続を終結した後、審査庁がすべき裁決に関する意見書を作成し、事件記録とともに審査庁に提出する(42条)
  • 諮問と答申審査庁は原則として行政不服審査会等に諮問し(43条)、答申を受けて裁決する(44条)
先生が審査庁役(札「審査庁」)で、二人の職員の前に立っている。左の男性(札「処分に関与した職員」)の上に深紅の×印と札「指名できない(9条2項)」、右の男性(札「処分に関与していない職員」)の胸に「審理員」の札を先生が付けている。先生の吹き

審理は書面が中心で、申立てがあれば口頭意見陳述を行います

審理員は処分庁に弁明書の提出を求め、審査請求人は反論書、参加人は意見書を提出します(29条・30条)。審理は書面によるのが原則ですが、審査請求人又は参加人の申立てがあったときは、審理員は当該申立てをした者に口頭で意見を述べる機会を与えなければなりません(31条1項)。書面だけでは伝えにくい事情を直接述べる機会を保障するためです。職権による証拠調べも認められ、審理員は書類その他の物件の提出を求め、参考人の陳述や鑑定を求め、必要な場所につき検証をし、審理関係人に質問することができます(33条〜36条)。行政上の不服申立てにおける職権探知については、最判昭和29年10月14日(行政上の不服申立てと職権探知)が、当事者の主張に拘束されずに事実を調査できることを前提としています。不服申立ては国民の救済とともに行政の適正な運営の確保も目的にしているので、当事者が主張した事実だけに縛られない審理が認められるのです。審理関係人とは審査請求人、参加人、処分庁等を指し(28条)、審理の主宰者である審理員はこれに含まれません。

口頭意見陳述は全ての審理関係人を招集して行います

31条2項は、口頭意見陳述は審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものと定めます。審査請求人だけを呼んで言い分を聞くのではなく、処分庁も同席させて双方の言い分を突き合わせる対審的な構造をとる趣旨です。旧法では口頭意見陳述が申立人と審理を担当する者との間で一方向に行われるだけで、処分庁の主張と直接向き合う場がなかったからです。「行政不服審査法は,口頭意見陳述の対審的構造を確保するという観点から,審査請求人の申立てに基づき口頭意見陳述を行う場合,審理員に対し,審査請求人のみならず,処分庁を含む全ての審理関係人を招集して行うことを義務付けている」という肢は正しいです。さらに申立人は、審理員の許可を得て、処分庁等に対し当該処分の理由などについて質問することができます(31条5項)。審理手続の計画的な進行のため、審理員は審理関係人を招集して意見の聴取を行うこともできます(37条)。

口頭意見陳述の部屋の場面。先生が審理員役(札「審理員」)で正面の机に着き、左に男性(札「審査請求人」)、右に別の男性(札「処分庁」)が向かい合って座っている。審査請求人の吹き出し「処分の理由を処分庁に直接質問したい」。先生の吹き出し「口頭意

審理員意見書を提出して審理手続は終わり、審査庁が受け取ります

審理員は、必要な審理を終えたと認めるときは審理手続を終結し(41条)、遅滞なく、審査庁がすべき裁決に関する意見書を作成して、事件記録とともに速やかに審査庁に提出します(42条)。提出先は審査庁であって審査会ではありません。「審理員は,審理手続を終結したときは,審理員意見書を作成した上で,審査庁が主任の大臣である場合にあっては,当該審理員意見書を行政不服審査会に提出し,諮問しなければならない」という肢は誤りです。諮問するのは審理員意見書の提出を受けた審査庁であり(43条1項)、審理員に諮問の権限はありません。審理員意見書は諮問の際に審査庁が審査会に提出する資料の一つになります(43条2項)。審理員は審査庁に所属する職員として審査庁の判断を準備する立場にあり、自ら裁決をする権限は持たないからです。

先生が審理員役(札「審理員」)で「審理員意見書」と「事件記録」の束を持ち、右の机に着いた男性(札「審査庁」)に手渡している。先生の後ろ、左奥に小さく「行政不服審査会」の看板の机があり、先生からそちらへ向かう矢印に深紅の×印。先生の吹き出し「

審査庁は審査会に諮問し、答申を受けて裁決しますが、拘束はされません

審査庁は、審理員意見書の提出を受けたときは、原則として諮問しなければなりません(43条1項)。諮問先は、審査庁が主任の大臣や宮内庁長官、庁の長である場合は行政不服審査会、審査庁が地方公共団体の長等である場合は条例で置く審議会等です(81条)。行政不服審査会は総務省に置かれ(67条)、委員は公正な判断をすることができ法律又は行政に関して優れた識見を有する者のうちから両議院の同意を得て総務大臣が任命します(69条1項)。審査会は、審査関係人に主張書面の提出を求め、意見の陳述を聴き、必要な調査をすることができます(74条〜76条)。答申は審査庁を法的に拘束しませんが、答申書の写しは審査請求人らに送付され、裁決書にも答申の内容が記載されます。審理員意見書についても同じで、裁決の権限を持つのは審査庁だけなので、審査庁がその結論に法的に拘束されることはありません。もっとも、それでは審理員と諮問の制度を置いた意味がなくなるので、裁決書の理由には、主文が審理員意見書又は答申書と異なる内容であるときは異なることとなった理由を含めなければなりません(50条1項4号)。「審査庁は,審理員意見書に拘束されるわけではないが,裁決の主文が審理員意見書と異なる内容である場合には,異なることとなった理由を裁決書に記載しなければならない」という肢は正しいです。諮問機関の答申を経ない処分の効力について、最判昭和50年5月29日(群馬中央バス事件)は、諮問手続の趣旨が没却された場合に処分が違法となるとしています。諮問機関の審議の進め方については、最判昭和46年1月22日(持ち回り決議による答申に基づく行政処分)もあります。

先生が審査庁役(札「審査庁」)で机に着き、「裁決書」を書いている。机の上に「審理員意見書:棄却が相当」と「答申書:棄却が相当」の二枚の紙、先生の書く裁決書には「主文:処分を取り消す」「異なることとなった理由:…」と書かれている。右に三人の委

諮問が要らない場合が条文に列挙されています

43条1項各号は、諮問を要しない場合を列挙します。審議会等の議を経て処分がされた場合、審査請求人から諮問を希望しない旨の申出がされている場合(参加人から反対の申出があるときを除く)、審査請求が不適法で却下する場合、審査請求の全部を認容し、審査請求人及び参加人の主張をすべて認める場合などです。すでに第三者機関の判断を経ているか、諮問をしても審査請求人の利益にならない場合を外しているわけです。情報公開の分野でも同じで、行政機関情報公開法19条1項は、不適法で却下する場合や、裁決で全部を開示することにする場合などを除いて情報公開・個人情報保護審査会に諮問すると定めています。「行政文書を開示しない旨の決定について行政不服審査法に基づく審査請求があったときは,当該審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は,必ず情報公開・個人情報保護審査会に諮問しなければならない」という肢は誤りです。なお、審理の途中でも執行停止は可能で、処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は、審査請求人の申立てにより又は職権で、停止その他の措置をとることができます(25条2項)。処分庁を指揮監督する立場か、自ら処分権限を持つ立場だからです。「処分庁の上級行政庁又は処分庁である審査庁は,必要があると認める場合には,当該処分の効力,処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止その他の措置をとることができる」という肢は正しいです。処分庁の上級行政庁でも処分庁でもない審査庁は、審査請求人の申立てがあったときに限り、停止以外の措置を除いて執行停止ができます(25条3項)。

行政不服審査法 第9条 第1項

審査庁は、審査庁に所属する職員(第十七条に規定する名簿を作成した場合にあっては、当該名簿に記載されている者)のうちから第三節に規定する審理手続(略)を行う者を指名するとともに、その旨を審査請求人及び処分庁等(略)に通知しなければならない。

行政不服審査法 第31条 第2項

前項本文の規定による意見の陳述(以下「口頭意見陳述」という。)は、審理員が期日及び場所を指定し、全ての審理関係人を招集してさせるものとする。

論文ではこう使う

論文では、裁決の手続的瑕疵が取消事由になるかを問われます。まず審理員による審理が必要な事案かを9条1項ただし書で確認し、必要であるのに指名を欠いた場合や、処分に関与した職員を指名した場合は、公正中立性を確保する制度の根幹を損なう瑕疵として裁決の取消事由になると構成します。次に、口頭意見陳述の申立てがあったのに機会を与えなかった場合、全ての審理関係人を招集しなかった場合を、対審的構造を確保する31条の趣旨から評価します。諮問を欠いた場合は、43条1項各号の除外事由に当たるかを検討し、当たらないのに諮問しなかったときは、群馬中央バス事件の枠組みで、諮問手続の趣旨が没却されたといえるかを当てはめます。答申に反する裁決自体は違法ではないことも併せて述べます。

試験ではこう問われる

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