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裁決と決定とは

さいけつとけってい

行政法 行政不服審査

裁決と決定とは、不服申立てに対する行政庁の答えのことで、審査請求・再審査請求に対する審査庁の応答が裁決、再調査の請求に対する処分庁の応答が決定です。いずれも却下・棄却・認容に分かれ、認容では処分の取消し・変更をします(行政不服審査法45条〜49条)。

営業停止処分に審査請求をした人のもとに、数か月後に「裁決書」が届きます。そこには、申立てが適法だったか、処分が違法や不当だったか、その結果として処分を取り消すのか変更するのかが書かれています。裁決は役所の判断ですが、当事者を関与させて争いに決着をつける裁判に似た性質を持つので、普通の処分とは違う扱いを受けます。申し立てた人が前より不利になることはなく、出した役所も後から勝手に取り消せず、関係する役所はその内容に従わなければなりません。安心して不服を申し立てられるようにするためです。

審査庁の部屋の場面。先生が審査庁役(札「審査庁」)で机に着き、「裁決書」と書かれた書面を左の男性(札「審査請求人」)に手渡している。机の上に三枚の札「却下」「棄却」「認容」が並び、「認容」の札の下に小さく「取消し・変更」と書かれている。先生

裁決は却下・棄却・認容に分かれ、理由があっても公益への著しい障害があれば事情裁決で棄却されます

裁決は審査請求と再審査請求に対する審査庁の応答、決定は再調査の請求に対する処分庁の応答です。いずれも書面でし、理由を付し、審査庁(決定では処分庁)が記名押印して、審査請求人に送達することにより効力を生じます(50条・51条)。裁決は行政行為の一種ですが、争訟を裁断する性質を持つため、通常の処分にない効力が認められます。内容は請求の適法性と理由の有無によって、却下、棄却、認容の三つと、棄却の特別な形である事情裁決に分かれます。45条3項の事情裁決は、処分が違法又は不当であることを認めながら、これを取り消し又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合に、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえで、取消しが公共の福祉に適合しないと認めるときに請求を棄却する例外です。取消訴訟の事情判決(行政事件訴訟法31条)に対応する仕組みで、主文で処分が違法又は不当であることを宣言しなければならない点も同じです。「審査請求に理由があるときは,審査庁は,原則として,審査請求の全部又は一部を認容する裁決をしなければならないが,例外として,事情裁決によって当該審査請求を棄却することができる」という肢は正しいです。宣言によって、後の国家賠償請求で違法性が争われる場面の足がかりが残ります。なお審査庁は、違法だけでなく不当も判断できるので、裁量の範囲内ではあるが妥当でないという理由でも認容できます。この点が取消訴訟との大きな違いです。

  • 却下審査請求が法定の期間経過後にされたものその他不適法であるとき(45条1項)。本案に入らない
  • 棄却審査請求に理由がないとき(45条2項)
  • 事情裁決処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し又は撤廃することにより公の利益に著しい障害を生ずる場合に、諸般の事情を考慮して請求を棄却する。主文で処分が違法又は不当であることを宣言する(45条3項)
  • 認容審査請求に理由があるとき。処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する(46条1項)。事実上の行為については、その全部若しくは一部を撤廃し、又は変更すべき旨を命じ若しくは撤廃し若しくは変更する(47条)

処分を変更できるのは上級行政庁である審査庁と処分庁である審査庁だけです

46条1項本文は、処分についての審査請求に理由がある場合に、審査庁は裁決で当該処分の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更すると定めます。同項ただし書は、審査庁が処分庁の上級行政庁又は処分庁のいずれでもない場合には、当該処分を変更することができないと定めます。第三者機関である審査庁は取り消すことはできても、より軽い処分に書き換えることはできないという趣旨です。処分の内容を決め直すのは、処分庁自身か、処分庁を指揮監督する上級行政庁でなければできないからです。上級行政庁が処分の権限を処分庁に委任していた場合も、指揮監督権に基づく変更の権限が失われるわけではありません。「審査庁である上級行政庁が処分庁に当該処分をする権限を委任していた場合、当該審査庁は当該処分を変更すること又は変更すべき旨を命じることはできない」という肢は誤りです。権限を委任しても上級行政庁であることに変わりはなく、変更できないとする規定もないからです。事実上の行為については47条が別に定め、審査庁は裁決で当該事実上の行為が違法又は不当である旨を宣言したうえで、審査庁が処分庁の上級行政庁である場合は、処分庁に対して撤廃し又は変更すべき旨を「命ずる」のであって、自ら取り消したり変更したりするのではありません(47条1号)。処分庁である審査庁は自ら撤廃し又は変更します(同条2号)。「処分庁の上級行政庁である審査庁は、裁決で、当該処分である事実上の行為の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する」という肢は誤りです。人の収容や物の留置のような事実上の行為は、現にそれを行っている処分庁がやめたり改めたりしなければ実際には止まらないからです。

先生が第三者機関の審査庁役(札「審査庁(処分庁の上級行政庁でも処分庁でもない)」)で机に着き、「営業停止6か月」と書かれた処分の紙を持っている。先生の吹き出し「私は処分庁を指揮監督する立場にない。だからこの処分を取り消すことはできても、営業

審査請求人の不利益に変更することは禁じられます

48条は、上級行政庁又は処分庁である審査庁が処分を変更するに当たり、審査請求人の不利益に処分を変更し、又は事実上の行為を変更すべき旨を命じ若しくは変更することを禁じます。不利益に変更されるおそれがあれば、国民は安心して不服を申し立てられなくなるからです。行政の適正な運営の確保も法の目的ですが、それは処分庁が審査請求の手続の外で職権により処分を見直すことなどによって図るべきもので、不利益変更を正当化する理由にはなりません。「審査庁は,審査請求に係る処分が違法又は不当であると認めるときは,裁決で,審査請求人の不利益に当該処分を変更することも許される」という肢は誤りです。もっとも、裁決が原処分の内容を変えても、それが原処分を取り消して新しい処分をするものかどうかは別の問題です。最判昭和62年4月21日(懲戒処分と人事院の修正裁決)は、人事院の修正裁決が原処分を一体として取り消して新たな処分をするものではなく、原処分の法律効果の内容を一定の限度に変更するにとどまり、原処分は当初から修正後の内容で存在していたものとみなされるとしました。したがって修正裁決の後も、修正後の内容で存続する原処分の取消しを求める訴えの利益は失われず、「修正裁決が出された後において懲戒権者の行った懲戒処分の取消しを求める訴えは、訴えの利益を欠くものとして却下されることになる」という肢は誤りです。

先生が上級行政庁の審査庁役(札「審査庁(上級行政庁)」)で机に着き、「営業停止1か月」の処分の紙と、その横に「営業停止3か月」と書かれた紙を見比べている。先生が「3か月」の紙を手で押しのけており、その上に深紅の×印。左に男性(札「審査請求人

申請拒否処分を取り消す裁決では、処分庁に処分を命ずることができます

46条2項は、法令に基づく申請を却下し又は棄却する処分の全部又は一部を取り消す場合において、当該申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときは、上級行政庁である審査庁は処分庁に当該処分をすべき旨を命じ、処分庁である審査庁は自ら当該処分をするものと定めます。義務付け的裁決と呼ばれ、取消しだけでは申請者の救済にならない場面を補います。ただし、この命令が発せられない場合でも、処分庁が自由に判断できるわけではありません。裁決は関係行政庁を拘束し(52条1項)、申請を却下し又は棄却した処分が裁決で取り消されたときは、処分庁は裁決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければならないからです(52条2項)。裁決が違法又は不当と判断したのと同一の理由で再び申請を却下し又は棄却することは許されません。「この命令が発せられない場合に当該申請に対してどのような処分をするかについては,裁決の内容にかかわらず処分庁の判断に委ねられる」という肢は誤りです。不作為についての審査請求でも同じ形で、審査庁は裁決で不作為が違法又は不当である旨を宣言し、申請に対して一定の処分をすべきものと認めるときに限り、不作為庁の上級行政庁である審査庁は処分をすべき旨を命じ、不作為庁である審査庁は自ら処分をします(49条3項)。理由があれば常に命じなければならないわけではないので、「申請された処分をすべき旨を命じなければならず」という肢は誤りです。

先生が上級行政庁の審査庁役(札「審査庁(上級行政庁)」)で机に着き、「申請却下処分を取り消す」と書かれた裁決書を掲げている。右下の机に処分庁の男性(札「処分庁」)が「申請書」を前にして座り、吹き出し「取り消されたが、命令はない。もう一度同じ

裁決には拘束力があり、裁決庁が自ら取り消すことはできません

裁決は関係行政庁を拘束します(52条1項)。申請を却下・棄却した処分が手続の違法・不当を理由に取り消されたときは、処分庁は裁決の趣旨に従い改めて申請に対する処分をしなければなりません(52条2項)。さらに、裁決は争訟を裁断する行為ですから、裁決庁自身もこれを自由に取り消すことができません。これを不可変更力といい、最判昭和29年1月21日(裁決の不可変更力)が、農地委員会の訴願裁決について、実質的に法律上の争訟を裁判するものであって、特別の規定がない限り裁決庁自ら取り消すことはできないとしたものです。当事者を関与させて決着をつけた判断を、決めた側が後から覆せるのでは、争いが終わらないからです。「審査請求に対する裁決は,特別の規定がない限り,裁決庁自らにおいて取り消すことはできない」という肢、「当該裁決は,実質的には法律上の争訟を裁判するものであることから,特別の規定がない限り,裁決庁が自ら取り消すことはできないものと解されます」という肢は、いずれも正しいです。最判昭和43年11月7日も、一定の争訟手続に従い当事者を手続に関与させて紛争の終局的解決が図られ確定した処分は、行政庁も特別の規定のない限り取り消し又は変更し得ない拘束を受けるとしました。取消しによる不利益と取り消さない不利益の比較考量は、そのような手続を経ていない処分を職権で取り消す場合の基準であって、裁決には当てはまりません。裁決の誤りに気付いても比較考量で取り消せるとする「特別の規定がなくとも当該裁決を取り消すことは可能であるが」という肢は誤りです。不可変更力は裁決をした行政庁を拘束するだけで、裁決を受けた私人が取消訴訟でその違法を争うことは妨げません。職権取消し一般の制限は職権取消しと撤回の項目で扱います。

先生が裁決庁役(札「裁決庁」)で机に着き、机の上の「裁決書」に手を伸ばしかけて止めている。その手の上に深紅の×印と札「特別の規定なし」。先生の吹き出し「この裁決に誤りがあると気付いても、当事者を関与させて争いに決着をつけた判断だから、私自身

裁決に不服があれば裁決取消訴訟ですが、原処分主義の壁があります

裁決も処分ですから取消訴訟の対象になります。しかし行政事件訴訟法10条2項は、処分の取消しの訴えと裁決の取消しの訴えの両方を提起できる場合に、裁決の取消しの訴えでは処分の違法を理由として取消しを求めることができないと定めます。「裁決の取消訴訟においては,原処分の違法を理由として取消しを求めることができない」という肢は正しく、裁決取消訴訟で主張できるのは、審理手続の瑕疵や理由の不備といった裁決に固有の違法に限られます。これを原処分主義といい、同じ違法事由を二つの訴訟で重ねて審理して判断が食い違うことを避けるための役割分担です。逆に「原処分の取消訴訟においては、裁決固有の瑕疵を主張することもできる」という肢は誤りです。裁決の理由の程度は50条1項4号が定め、審理員意見書又は答申書と異なる内容であるときはその理由も記載します。理由提示一般の考え方は理由提示の項目のとおりです。原処分主義と裁決主義の詳細は不服申立てと取消訴訟の関係で扱います。

行政不服審査法 第48条

審査庁は、審査請求人の不利益に当該処分を変更し、又は当該事実上の行為を変更すべき旨を命じ、若しくはこれを変更することはできない。

行政不服審査法 第52条 第1項

裁決は、関係行政庁を拘束する。

論文ではこう使う

論文では、裁決の適法性を、要件審理、本案の判断、主文の内容の順に検討します。却下すべき場合に本案判断をした、あるいは適法な請求を誤って却下したといった要件審理の誤りは、それ自体が裁決固有の瑕疵になります。本案では、審査庁が違法だけでなく不当まで審査できることを前提に、裁量処分について妥当性の観点から判断できる点を指摘します。主文については、46条1項ただし書で変更権限の有無を確認し、48条の不利益変更禁止に触れていないかを点検します。申請拒否を取り消す場合は46条2項の義務付け的裁決の可否を論じます。最後に、裁決の拘束力により処分庁が同一の理由で同じ処分を繰り返せないこと、裁決庁自身も不可変更力により裁決を覆せないことを述べ、救済の実効性を結論づけます。

試験ではこう問われる

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