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公定力とは

こうていりょく

行政法 行政行為

公定力とは、行政行為に違法があっても、権限ある機関が取り消すまでは有効なものとして通用する効力です。条文に公定力という言葉はなく、法が取消訴訟という特別の仕組みを用意したこと、つまり取消訴訟の排他的管轄から導かれる裏返しの効力だと説明されます。

市が違法な課税処分をし、住民がその分の税金を払ったあとで、民事訴訟で「処分は違法だったから払った金を返せ」と求めたとします。しかし裁判所は、処分が取り消されていない以上その効力を前提に判断し、返還を認めません。処分の効力を否定したければ、出訴期間内に取消訴訟を起こすか審査請求をするしかないからです。これが公定力です。行政の決めたことをどの裁判でも蒸し返せるとすると法律関係が安定しないので、法は処分を争う窓口を取消訴訟に一本化し、その裏返しとして取り消されるまでは有効に扱うことにしています。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所(民事訴訟)」)で法壇に座る。法壇の前に住民の男性(札「住民」)が「課税処分」と書かれた紙を持ち、吹き出し「この処分は違法だから、払った税金を返してほしい」。先生の吹き出し「処分は取り消されていない。処

公定力は、取消訴訟によらなければ効力を否定できないという意味です

処分を受けた側は、不服があれば取消訴訟か審査請求で争うほかありません。別の訴訟で「あの処分は違法だから無効だ」と前提問題として主張することはできない、というのが公定力の実質です。行政事件訴訟法3条2項が取消訴訟を用意し、14条が出訴期間を定めているのは、処分の効力を争う道をこの手続に集める趣旨だと理解されます。逆に言えば、取消訴訟によらなければ判断を覆せないという効力が法律上与えられていない行為には、処分性もありません。最判平成15年9月4日(労災就学援護費の支給に関する決定)は、労災就学援護費の支給要件や手続の細目が法令でなく通達に委ねられていても、労働者災害補償保険法が保険給付と同様の手続で支給することができる旨を定めたものと解し、被災労働者等は労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な支給請求権を取得する仕組みだとして、支給しない旨の決定は法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者等の権利に直接影響を及ぼすから抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしました。「労災就学援護費について、労働者災害補償保険法及び同法施行規則は、その支給の実体的及び手続的な要件や金額について何ら定めていないから、労災就学援護費を支給しない旨の決定は、行政庁が公権力の行使として一方的に決定し、取消訴訟によらなければその判断を覆すことができないとの効力が法律上与えられたものとはいえず、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない」という肢は誤りです。

瑕疵が重大かつ明白なら無効で、公定力は生じません

違法の程度が重大かつ明白であれば、その行政行為は初めから無効で、取消しを待つまでもなく効力を持ちません。だから出訴期間が過ぎた後でも、無効を前提に争えます。課税処分と滞納処分の関係でも、課税処分の単なる違法は滞納処分に承継されませんが、無効の主張は別です。「課税処分の違法性は、滞納処分に承継されないことから、滞納処分の取消訴訟において、課税処分の違法を滞納処分の違法事由として主張することは許されないが、課税処分に重大かつ明白な違法があって無効であるとの主張をすることは許される」という肢は正しいです。無効な行政行為には公定力が及ばないので、どの手続でも効力がないことを前提にできるからです。最判昭和34年9月22日(農地買収処分無効確認事件)は、無効原因となる重大明白な違法とは、処分要件の存在を肯定する処分庁の認定に重大明白な誤認があることをいうと述べています。基準の中身は無効と取消しの区別で扱います。

税務署の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央に立ち、手に「課税処分」と書かれた紙を持つ。紙には大きなひびが入っていて、ひびの脇に札「重大かつ明白な瑕疵」。納税者の男性(札「納税者」)が「滞納処分の取消訴訟」と書かれた訴状を持ち、吹き出

国家賠償請求には公定力は及びません

金銭の賠償を求めるだけなら、処分の効力そのものを否定する必要はありません。処分は有効なまま残し、その処分が違法だったことによる損害を金銭で埋め合わせるだけなので、取消訴訟の排他的管轄と衝突しないからです。最判平成22年6月3日(固定資産評価と国家賠償)は、固定資産税の評価の誤りによる過大な課税について、行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではないとしました。「取消判決を得なければ国家賠償を請求できない」という肢は誤りです。刑事訴訟でも、処分違反を構成要件とする犯罪について裁判所が処分の違法を判断できるとされており、公定力は及ばないと考えられています。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所(国家賠償)」)で法壇に座る。法壇の前に家の所有者の男性(札「納税者」)が「固定資産税 過大な課税」と書かれた紙を持ち、吹き出し「評価が間違っていて税を多く払った。処分は取り消していないが損害を賠償して

公定力は違法を適法に変える力ではありません

公定力があっても、処分が適法になるわけではありません。違法なまま、ただ取り消されるまで有効として扱われるだけです。だから、取り消されていない処分についても国家賠償では違法と判断でき、先行処分が取り消されていなくても違法性の承継が認められる場合には後行処分の取消訴訟でその違法を主張できます。公定力を適法性の推定と取り違えると、違法性の承継や国家賠償の議論が崩れます。

最判平成22年6月3日(固定資産評価と国家賠償)

行政処分が違法であることを理由として国家賠償の請求をするについては、あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではない。

論文ではこう使う

論文では、公定力を単独で論じることはまれです。民事訴訟や国家賠償の中で「取消訴訟を経ていないが、処分の違法を前提にできるか」という形で出ます。国家賠償なら処分の効力を否定しないので公定力は及ばない、処分の効力を前提とする給付請求なら取消訴訟による必要があり、例外として無効事由の有無を検討する、という順で書きます。公定力の根拠を取消訴訟の排他的管轄に置き、条文上の明文はないと一言添えると、議論の出発点が明確になります。

試験ではこう問われる

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