違法性の承継とは
いほうせいのしょうけい
違法性の承継とは、先に行われた処分の違法を、後に続く処分の取消訴訟の中で後行処分の違法事由として主張できるかという問題です。原則として否定され、二つの処分が同一の目的のための一連の手続を構成し、先行処分を争う手続的保障が十分でない場合に例外的に認められます。
隣の土地に、道路に十分接していないのに知事の安全認定を受けて建物が建つことになり、その後に建築確認が出たとします。周辺の住民が気づくのは工事が始まる建築確認のあとで、そのとき安全認定を争う出訴期間はもう過ぎていることがあります。期間が過ぎた処分の違法を別の処分の裁判で持ち出すことは、法律関係を早く安定させるため原則として認められません。しかし、二つの処分が同じ目的のひと続きの手続で、先の処分を争う機会が実際には与えられていなかったときは、例外として後の処分の裁判で先の処分の違法を主張できます。
原則は承継されず、課税処分と滞納処分がその代表例です
行政行為は原則として個々に独立して適否が判断されます。先行処分には公定力があり、出訴期間(行政事件訴訟法14条)が過ぎれば不可争力が生じるので、後行処分の取消訴訟で先行処分の違法を蒸し返すことは原則として認められません。課税処分は納税義務の内容を確定させる処分で、滞納処分は確定した租税債権を強制的に実現する執行手続ですから、目的も効果も別の独立した行為です。最判平成6年9月13日も、課税処分と督促処分はそれぞれ目的及び効果を異にする別個の手続による処分で、前者の違法性は後者に承継されないとした下級審の判断を是認しています。「課税処分の違法性は、滞納処分に承継されない」という肢は正しいです。もっとも、課税処分に重大かつ明白な違法があって無効だという主張は、承継の問題ではなく無効の問題です。無効な行政行為には公定力が及ばないので、滞納処分の取消訴訟でも課税処分の無効を主張できます。「課税処分の違法性は、滞納処分に承継されないことから、滞納処分の取消訴訟において、課税処分の違法を滞納処分の違法事由として主張することは許されないが、課税処分に重大かつ明白な違法があって無効であるとの主張をすることは許される」という肢は正しいです。最判昭和48年4月26日(課税処分と当然無効)は、課税処分には「処分の存在を信頼する第三者の保護を考慮する必要がない」として、無効を認める余地を広く認めました。
例外は、目的の共通性と手続的保障の薄さの二つで説明します
最判平成21年12月17日(安全認定と建築確認)は、東京都建築安全条例の接道義務の例外を認める知事の安全認定と、その後の建築確認について、建築確認の取消訴訟で安全認定の違法を主張できるとしました。理由の第一は目的の共通性です。建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、もともと建築確認の手続の中で一体的に行われていたもので、いずれも避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われ、安全認定は建築確認と結合して初めてその効果を発揮します。「建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものであることを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである」という肢は正しいです。理由の第二は手続的保障の薄さです。安全認定は建築主の申請に基づいて建築主に対してされ、周辺住民への通知も公告も予定されておらず、建築確認があるまでは工事も行われないので、争おうとする者が安全認定の存在を速やかに知ることができるとは限りません。そのため、安全認定の適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難だとしました。「安全認定の適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難であることを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである」という肢は正しいです。
承継を認める理由に、処分性の否定や原告適格の否定を持ち出すのは判例と違います
この判決は、安全認定に処分性があることを当然の前提にしています。安全認定を受けた建築主は、建築確認の申請手続で接道義務違反がないものとして扱われる法的地位を得るので、安全認定はそれ自体が取消訴訟の対象になる処分です。判決が「安全認定が取り消されていなくても」と言っているのも、安全認定が取消訴訟で取り消され得る処分だからです。「安全認定に処分性が認められないことを前提として、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである」という肢は誤りです。処分性がないなら、そもそも承継を論じる必要がなく、直接その違法を主張できます。また、判決は周辺住民に安全認定の取消訴訟の原告適格があるかどうかについて何も判断していません。着目したのは、争おうとする者が安全認定の存在を知ることができるかという手続面の問題です。「周辺住民には安全認定の取消訴訟の原告適格が認められないことを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである」という肢も誤りです。判例が挙げたのは、あくまで目的の共通性と手続的保障の薄さの二つです。
承継を認めても、後行処分の取消訴訟の中で主張できるというだけです
承継が認められても、先行処分が取り消されるわけではありません。後行処分の取消訴訟で先行処分の違法を後行処分の違法事由として主張できるにとどまり、結論として取り消されるのは後行処分だけです。最判平成21年12月17日が認めたのも、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために接道義務の違反があると主張できるということにとどまります。安全認定そのものは取り消されないまま残りますが、それを前提にした建築確認が違法として取り消されることで、周辺住民の救済が図られます。
最判平成21年12月17日(安全認定と建築確認)
先行処分と後行処分は、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものであり、また、先行処分の適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。
論文ではこう使う
論文では、まず先行処分に処分性と出訴期間があることを確認し、公定力と不可争力から原則として承継は否定されると書きます。そのうえで、二つの処分が同一の目的のための一連の手続を構成し結合して初めて効果を発揮するか、先行処分を争う機会が通知や公告の仕組みの面で実質的に与えられていたかを事実に当てはめ、例外の可否を判断します。承継が認められる場合でも、取り消されるのは後行処分であることを結論で明示します。先行処分の瑕疵が重大かつ明白なら、承継ではなく無効の主張として別に立てます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。