附款とは
ふかん
附款とは、行政行為の主たる内容に付加される従たる定めで、行政行為の効果を制限したり、相手方に特別の義務を課したりするものです。条件・期限・負担・撤回権の留保・法律効果の一部除外の五つが挙げられます。
知事が採石業者に岩石採取の認可を出すとき、認可証に「汚泥が海に流れ出ないよう防止措置をとること」という一文を添えることがあります。認可を出すか出さないかの二択しかないと、少し心配がある申請はすべて不許可にするしかなくなり、申請者にも社会にも損です。そこで、法律が行政庁に判断の幅を認めている範囲で、認可に付け足しの定めを添えて個別の事情に応じた許認可を出せるようにしています。この付け足しが附款で、法律の目的に沿った必要最小限のものに限られます。
附款を付けられるのは、法律が裁量を認めている範囲に限られます
附款は法律が明文で認めている場合に付けられるのが原則ですが、それだけではありません。法律が当該行政行為について行政庁に裁量を認めているときは、その裁量権の範囲内で、行政目的の達成に必要な限度で附款を付けることができます。最判昭和38年4月2日は、地方公務員の任用に期限を付けることについて、それを必要とする特段の事由があり、法の趣旨に反しない場合には、特に法律にこれを認める旨の明文がなくても許されるとしました。「行政行為の附款は、法律で規定された事項以外の内容を付加して、行政行為の効果を制限したり、特別な義務を課したりするものであるが、附款を付し得ることが法律に明記されていない場合であっても、法律が当該行政行為について裁量を認めている場合には、その範囲内で附款を付すことができる」という肢は正しいです。裏を返せば、法律が要件を満たせば必ず処分をすべきものと定めている羈束行為には、附款を付けられません。建築確認は、計画が建築基準関係規定に適合するかを判断して確認する行為で、建築基準法6条4項は適合を確認したときは確認済証を交付しなければならないと定めているので、建築主事に確認を拒んだり効力の発生を留保したりする裁量はありません。近隣住民との協議も建築基準関係規定が定める確認の要件ではないので、「建築主事は、建築主と建築に反対する近隣住民とが一定期間協議することを停止条件として建築確認を行うことができる」という肢は誤りです。準法律行為的行政行為に附款を付けられないとされるのも同じ理由です。判断の出発点は、いつも根拠法令が行政裁量を認めているかどうかです。なお、法律効果の一部除外だけは性質が異なります。法令が本来与えている効果の一部を生じさせないのですから、裁量の範囲内という理由では足りず、法律自体の根拠が必要だとされています。
- 条件行政行為の効力の発生又は消滅を、成否の不確実な将来の事実にかからせる定め。効力を生じさせるものが停止条件、消滅させるものが解除条件
- 期限行政行為の効力の発生又は消滅を、到来することの確実な将来の事実にかからせる定め。始期と終期がある
- 負担許認可等を与えるに際し、相手方に特別の作為又は不作為の義務を命じる定め。不履行でも本体の効力は当然には失われない
- 撤回権の留保一定の場合に許認可等を撤回できることをあらかじめ明示しておく定め
- 法律効果の一部除外法令が本来認めている効果の一部を生じさせないこととする定め。法律の根拠を要する
附款には、法律の目的・比例原則・平等原則の限界があります
裁量の範囲内であっても、附款は根拠法令の目的と無関係な義務を課すことはできず、目的達成に必要な限度を超えてもいけません。採石法33条の7第1項は岩石採取計画の認可に条件を付けられると定め、同条2項は、その条件は認可に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、認可を受ける者に不当な義務を課すものであってはならないとしています。同法33条の4は、岩石の採取が他人に危害を及ぼし、農業、林業その他の産業の利益を損じて公共の福祉に反すると認めるときは認可をしてはならないと定めており、付近海域の水産業もここでいう産業に含まれます。汚泥の流出による水産資源への悪影響はまさに同法が防ごうとしている不利益なので、その防止措置を求める条件は法律の目的に沿い、通常考えられる措置として必要最小限度のものといえます。「Aの採石事業により汚泥が流出して付近海域の水産資源に悪影響が及ばないように、Aが汚泥流出の防止措置を採ることを法第33条の7第1項による条件として、知事が認可を行うことは違法である」という肢は誤りです。逆に、許認可と無関係な寄附を求める負担や、同種の事案で一部の者にだけ重い義務を課す附款は、目的違反や平等原則違反として裁量権の逸脱・濫用になります。最判昭和38年4月2日(行政行為の附款――小学校教員の期限付任用)は、地方公務員法が職員の身分を保障している以上、任用を無期限とするのが法の建前であるとしつつ、期限付任用も「それを必要とする特段の事由が存し、且つ、それが右の趣旨に反しない場合」に限って、法律に明文がなくても許されるとしました。期限という附款が、身分保障という法律の仕組みそのものを崩さない範囲でしか許されないことを示した判例です。
附款だけを取り消せるかは、本体と切り離せるかで決まります
附款に不服がある場合、附款だけの取消しを求める訴え(一部取消訴訟)が許されるのは、附款が本体の行政行為から可分であるときに限られます。不可分な場合は、処分全体の取消しを求めるほかありません。もっとも、附款が付されたこと自体が処分の取消訴訟を妨げるわけではありません。認可を受けた者であっても、条件によって義務を負い権利が制限されている以上、条件に従わなければ認可の取消しなどの不利益を受けかねない地位に置かれており、条件が除かれればその負担から解放されるという現実の利益があるので、取消しを求める法律上の利益があります(行政事件訴訟法9条1項)。「Aは認可を受けた場合であっても、法第33条の7第1項により認可に付された条件に不服があれば、処分の取消しの訴えを適法に提起できる」という肢は正しいです。附款が違法であっても、それが本体の処分と可分でないときは、処分全体が取り消されることになります。実際には、許認可を受けた側は本体を維持したまま附款だけを外したいのが通常ですから、可分性の判断が救済の実効性を左右します。
負担に違反しても、本体の効力は当然には失われません
解除条件であれば、その事実が生じた時点で行政行為の効力が当然に消滅します。これに対し負担は、相手方に独立の義務を課すだけですから、義務を履行しなくても許認可の効力が当然に失われることはありません。行政庁は、義務の履行を強制するか、撤回するかを改めて判断することになります。ここで撤回権の留保が意味を持ちますが、留保がなくても撤回は可能です。撤回権の留保は、相手方が処分の存続について抱く信頼をあらかじめ弱めておくもので、撤回に伴う損失補償を不要とする方向に働きます。最判昭和63年6月17日(実子あっせん医師指定撤回事件)は、医師の行為が法秩序上許容されないものであり、指定を存続させることが公益に適合しないと評価できる場合には、法令上明文の規定がなくても指定を撤回できるとしました。負担の不履行は、この公益判断の一材料になります。詳しくは職権取消しと撤回で扱います。
期限は、行政契約の形をとっても附款の限界の問題になります
許認可に終期を付けると、期限の到来によって効力が消滅します。ただし、更新が予定されている長期の事業については、期限は事業そのものの終期ではなく更新の時期を示すものと解されることがあります。始期を付ける場合も同じで、効力の発生が先送りされるだけで処分そのものは成立しています。実務では、許認可の期限を協定で実質的に定める場面が問題になります。最判平成21年7月10日(公害防止協定事件)は、産業廃棄物処分業者が町との公害防止協定で処分場の使用期限を定め、期限後は使用しないと約束した事案で、廃棄物処理法は処分業者に許可を受けた事業を継続すべき義務を課すものではなく、知事にも無期限に許可を継続すべき義務を課すものではないので、処分業者が自らの判断で事業や施設を廃止することは自由であるとし、協定で廃止時期を約束しても同法に何ら抵触しないとしました。「産業廃棄物の処分業者が、公害防止協定において、協定の相手方である町に対し、その事業や処理施設を将来廃止する旨を約束することは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく都道府県知事の許可に期限を付するに等しいため、同法の趣旨に反する」という肢は誤りです。許可は事業を適法に行える地位を与えるだけで、その地位を自ら手放すことまで禁じてはいないので、知事の許可権限を私人間の合意で左右したことにはならないという理解が要点です。
最判昭和38年4月2日(行政行為の附款――小学校教員の期限付任用)
それを必要とする特段の事由が存し、且つ、それが右の趣旨に反しない場合においては、特に法律にこれを認める旨の明文がなくても、許される。
論文ではこう使う
論文では、まず根拠法令が附款を明文で認めているかを確認し、なければ当該処分に裁量が認められるかを検討します。羈束行為なら附款は付せないと結論づけます。裁量が認められる場合は、附款の種類を条件・期限・負担・撤回権の留保・法律効果の一部除外のどれかに位置づけ、そのうえで限界を三段で論じます。第一に法律の目的との関連性、第二に目的達成に必要な限度を超えていないかという比例原則、第三に同種の事案との均衡という平等原則です。違法な附款があるときは、附款が本体と可分かを検討し、可分なら附款のみの取消し、不可分なら処分全体の取消しを求めることになると書きます。負担の不履行が問題になる事案では、本体の効力は当然には失われないことを確認したうえで、撤回の可否を公益と相手方の信頼の比較衡量で論じます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。