許可・認可・特許(講学上の分類)とは
きょか・にんか・とっきょ
許可・認可・特許とは、行政行為を国民の法的地位に何をするかで分けた講学上の分類です。許可とは法令による一般的な禁止を特定の場合に解除して本来の自由を回復させる行為、認可とは私人の法律行為の効力を補充して完成させる行為、特許とは本来なかった権利や法的地位を新たに設定する行為で、法令上の名称と講学上の分類は一致しません。
飲食店を開く許可、農地を売る許可、道路に看板を出す許可は、法令上はどれも「許可」ですが、中身は違います。飲食店は誰でも開ける自由が本来あり、衛生のために一度禁止してから個別に解いています。農地の売買は当事者の契約があって初めて成り立ち、役所の許可はその効力を完成させる要件です。道路は本来誰も独占できず、看板を出す権利は役所が新しく与えるものです。名称ではなく、自由を返すのか、契約を完成させるのか、新しい地位を与えるのかで分けると、無許可でした行為の効力や役所の裁量の広さの違いが読めるようになります。
許可は、禁じられていた自由を個別に回復させる行為です
飲食店を開く自由は本来誰にでもありますが、公衆衛生の見地から食品衛生法55条が一般的に禁じ、要件を満たす者に個別に解除しています。これが許可です。無許可営業は罰則の対象になるので、許可を受けて初めて営業を適法に行える地位が生じ、許可を拒否されればその地位が得られません。「食品衛生法に基づく飲食店の営業許可申請を行政庁が拒否する行為は、行為の前後における申請者の法的地位を変動させるものではないから、当該行為には処分性は認められない」という肢は誤りです。許可は本来の自由を回復させるものですから、要件を満たす限り与えなければならない羈束的な処分になりやすく、最判昭和47年5月19日(公衆浴場営業許可)も、公衆浴場法の許可制について、申請が所定の許可基準に適合する限り行政庁は許可を与えなければならないとしました。
- 許可法令による一般的な禁止を特定の場合に解除し、本来持っていた自由を回復させる行為。食品衛生法55条の飲食店営業許可、公衆浴場法2条の営業許可、運転免許
- 認可私人が行った法律行為の効力を補充して完成させる行為。農地法3条1項の農地の権利移転の許可、公共料金の認可
- 特許本来なかった権利又は法的地位を新たに設定する行為。道路法32条の道路占用許可、河川法23条の水利使用許可、公有水面埋立免許
無許可で営業しても、その営業上の契約は原則として有効です
許可は、行政上の取締りのために自由を制限する仕組みですから、許可を受けずにした行為が私法上も無効になるとは限りません。行政上の規制に違反した契約の効力は、その規制が単なる取締法規か、私法上の効力まで否定する効力規定かで決まります。最判昭和35年3月18日は、食品衛生法上の許可を受けていない者がした食肉の売買契約について、同法は単なる取締法規にすぎず、許可の有無は取引の私法上の効力に影響しないとしました。「DがEの経営する飲食店においてランチを注文し、Dが食事を終えた事例において、Eが食品衛生法第52条第1項に基づく飲食店営業許可を得ていない場合には、無許可営業は原則として当該営業上締結された契約の無効事由となるため、DはEからの飲食代金の支払請求に対し支払を拒否することができる」という肢は誤りです。無許可営業者は刑罰や営業停止の対象になりますが、客との契約まで無効にすると、かえって取引の安全を害します。許可の根拠規定は取締規定にとどまり、効力規定ではないというのが原則です。
認可は、私人の法律行為の効力を補充して完成させる行為です
これに対し認可は、私人の法律行為が有効になるための要件そのものです。農地法3条1項は農地の権利移転に知事等の許可を要するとし、同条6項は「第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない」と明記しています。法令上の名称は「許可」ですが、講学上は認可です。公共料金の認可や、公益法人の定款変更の認可も同じ仕組みで、認可を受けていない値上げや定款変更は効力を生じません。許可では無許可の契約が有効、認可では無認可の法律行為が無効という対比になり、これは規制が取締規定か効力規定かの違いから出てきます。認可は私人の法律行為を前提とするので、行政庁が自ら内容を作り替えて認可することはできず、認めるか認めないかの二択になるのが原則です。
特許は、本来なかった権利や地位を新たに与える行為です
道路法32条の道路占用許可は、本来誰にもない道路の排他的使用権を設定するもので、講学上は特許です。河川法23条の水利使用許可、公有水面埋立免許、公益事業の経営の免許も同じです。特許は公物や公共的な資源の配分ですから、どの申請者に与えるかについて広い裁量が認められ、公益上の必要が生じたときは撤回されることも予定されています。最判昭和49年2月5日(行政財産使用許可の撤回と損失補償)は、都有行政財産の使用許可によって与えられた使用権は、期間の定めのない場合であれば、行政財産本来の用途又は目的上の必要を生じたときはその時点で原則として消滅すべきものであるとして、撤回に伴う損失補償を原則として否定しました。特許によって与えられる地位が、もともと公益による制約を内在させていることの現れです。
法令上の名称ではなく、申請者の地位に何をするかで分類し、裁量の広さも変わります
分類の決め手は、その行為が奪われていた自由を返すものか、新たな地位を与えるものかです。自由の回復なら裁量は狭く、地位の付与なら裁量は広くなります。もっとも、許可であっても需給調整を含む場合には裁量が認められます。最判平成26年1月28日は、廃棄物処理法が市町村に一般廃棄物の処理責任を負わせ、一般廃棄物処理業の許可に一般廃棄物処理計画への適合などを要件としていることから、一般廃棄物処理業は専ら自由競争に委ねられるべき事業とは位置付けられておらず、許可の判断では申請者の能力だけでなく区域全体の需給状況の下で処理が適正に行われるかも審査することが求められるので、市町村長に一定の裁量があるとしました。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、一般廃棄物処理業は、専ら自由競争に委ねられるべき性格の事業とは位置付けられていないものであり、一般廃棄物処理業の許可をするか否かの判断に当たっては、申請者の能力だけではなく、一定の区域における一般廃棄物の処理がその発生量に応じた需給状況の下において適正に行われることが確保されるか否かを審査することが求められていることから、行政庁には一定の裁量が与えられていると解される」という肢は正しいです。逆に、設備の面からの規制にとどまる登録制では裁量は認められません。最判昭和56年2月26日は、毒物及び劇物取締法の登録は専ら設備の面から規制を加えるもので、製品の用途や目的による危険は他の法律の規制に委ねられているとして、用途や目的を理由に登録を拒否することは同法の趣旨に反し許されないとしました。「毒物及び劇物の輸入業や販売業の登録は、設備の面から規制を加えるものであるが、行政庁には専門技術的な裁量が認められていることから、設備だけではなく、登録の対象となる製品の用途や目的を考慮し、登録を拒否することができる」という肢は誤りです。許可の目的に既存業者の保護が含まれれば、既存業者に原告適格が認められます。最判昭和37年1月19日は、公衆浴場法の適正配置規制は国民保健と環境衛生の確保のほか、無用の競争による濫立を防いで既存業者の経営の安定を図る目的ももつので、既存業者の営業上の利益は単なる反射的利益ではなく法律上保護された利益だとしました。「公衆浴場法が設置場所の配置の適正を許可の要件とする趣旨は、国民保健及び環境衛生の確保のほか、濫立の防止により既存業者の利益を保護する目的をも有するから、既存の公衆浴場業者は、新規参入を求めてきた第三者に対する許可につき、その取消しを求める原告適格を有する」という肢は正しいです。
行政庁が結ぶ契約も、法令違反があっても当然には無効になりません
取締規定と効力規定の区別は、行政庁が当事者となる契約でも同じです。地方自治法234条2項は一般競争入札を原則とし、随意契約は政令で定める場合に限っています。最判昭和62年5月19日は、この制限に違反して締結された契約であっても私法上当然に無効になるものではなく、随意契約によれる事由のいずれにも当たらないことが何人の目にも明らかである場合や、相手方が随意契約によることが許されないことを知り又は知り得た場合のように、契約を無効としなければ規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り無効になるとしました。「地方自治法及び地方自治法施行令に定める随意契約の制限に違反して締結された契約であっても、私法上当然に無効になるものではない」という肢は正しく、「地方公共団体が随意契約の制限に関する法令に違反して締結した契約は、当該契約を無効としなければ、随意契約の締結に制限を加える法令の規定の趣旨を没却する結果となる特段の事情が認められる場合に限り、私法上無効になる」という肢も正しいです。契約の相手方の取引の安全と、履行済みの給付の清算をめぐる法律関係の安定に配慮した結論です。なお、受理を要する行為かどうかも同じ視点で整理できます。「認可を受けた後に岩石採取廃止の届出をした場合に、知事が届出を受理する行為は行政処分である」という肢は誤りです。届出は到達によって義務の履行が完了し(行政手続法37条)、受理という行政行為は介在しません。
農地法 第3条 第6項
第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。
論文ではこう使う
論文では、問題となる許認可がどの類型かを、根拠法令の仕組みから認定します。一般的禁止の解除なら許可、私人の法律行為の効力要件なら認可、新たな権利の設定なら特許です。そのうえで効果を引き出します。許可であれば、要件を満たす限り応答すべき羈束性と、無許可行為の私法上の効力が原則として維持されることを書きます。認可であれば、認可を欠く行為は効力を生じないことを条文で示します。特許であれば、配分の裁量が広いこと、公益上の必要による撤回が予定され損失補償が原則として不要であることを書きます。原告適格を論じる場面では、根拠法令が既存業者の利益を保護する趣旨を含むかを、目的規定と距離制限規定から読み取ります。名称ではなく仕組みで分類する、という順序を明示することが評価につながります。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。