原告適格とは
げんこくてきかく
原告適格とは、処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)として、取消訴訟を起こせる資格です。
隣の空き地に高いマンションを建てる許可が出て、日が当たらなくなりそうだとします。許可を受けたのはマンション業者で、あなたは名あて人ではありません。それでも取消訴訟を起こせるかどうかを決めるのが原告適格です。処分の名あて人は自分の権利を直接動かされるので当然に訴えられますが、周辺住民や競業者のような第三者は、根拠法令がその人の利益を守る趣旨を含んでいるときだけ訴えられます。裁判所は誰の言い分でも聞く場所ではなく、法律が守ろうとした利益を侵された人を救う場所だからです。
必要なのは法律上保護された利益であって、事実上の利益では足りません
行政事件訴訟法9条1項が求めるのは法律上の利益です。最判平成元年2月17日(新潟空港訴訟)は、「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうとしました。処分によって事実上不利益を受けるだけの人、つまり法律が一般公益を守る結果として反射的に利益を受けていたにすぎない人には、原告適格がありません。「処分の取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者及び直接的かつ重大な事実上の利益を有する者に限り、提起することができる」という肢は誤りです。条文は「直接的かつ重大な事実上の利益を有する者」にまで広げる文言を置いていないからです。ある利益が反射的利益にとどまるか、個々人の個別的利益としても保護されているかは、根拠法令の趣旨から読み取ります。
9条2項は、根拠法令の文言だけによらず四つの考慮要素で読み取りの幅を広げています
処分の相手方以外の者について法律上の利益の有無を判断するとき、裁判所は当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮します。趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌します。利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、処分が根拠法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案します。「処分の取消しの訴えの原告適格を判断するに当たっては、当該処分の根拠法令と目的を共通にする関係法令があるときは、その趣旨及び目的をも参酌すべきである」という肢は正しいです。「処分の取消しの訴えの原告適格を判断するに当たっては、当該処分が根拠法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきである」という肢も正しいです。いずれも9条2項の文言どおりだからです。この規定は平成16年改正で第三者の出訴の途を広げるために置かれ、判例の枠組みを条文にしたものです。最大判平成17年12月7日(小田急高架訴訟)は、根拠法規が不特定多数者の具体的利益を「専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず」個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むかを問う枠組みを示し、都市計画事業の認可について、事業地の周辺に居住し騒音・振動等による健康又は生活環境の著しい被害を直接的に受けるおそれのある住民に原告適格を認めました。
総合設計許可では、倒壊・炎上の被害が予想される範囲の住民にも、日照を阻害される住民にも原告適格が認められます
建築基準法の総合設計許可は、容積率や高さの制限を緩和して大きな建築物を建てられるようにする許可です。最判平成14年1月22日(総合設計許可と周辺住民)は、許可に係る建築物の倒壊・炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し、又はこれを所有する者に原告適格を認めました。さらに最判平成14年3月28日(総合設計許可と日照被害)は、高さ制限などの規定が周辺の建築物における日照等の良好な居住環境を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むとして、許可に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者にも原告適格を認めました。「日照を阻害される者は原告適格を有しない」という肢は誤りです。倒壊・炎上の危険は生命・身体に向けられた利益ですが、日照も生活環境上の利益として条文が個別に守っていると読めるからです。
生命・身体の安全は個別的利益として保護されやすく、周辺の土地の財産権は一般的公益に解消されやすいです
森林法10条の2の林地開発許可について、最判平成13年3月13日は、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害を発生させるおそれがないことを求める許可要件の規定は、災害による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民の生命・身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むとして、その住民に原告適格を認めました。他方で同じ規定から、周辺の土地の所有権等の財産権までを個々人の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは困難であるとし、環境の保全や水の確保を求める要件の規定も個々人の個別的利益を保護する趣旨を含まないとしました。「森林法に基づく林地開発許可について、同法の規定は、開発区域周辺の土地の所有権等の財産権を個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むから、開発区域周辺の土地を所有する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有する」という肢は誤りです。生命・身体の被害は一度生じると金銭では回復しにくいので条文が個別に守っていると読みやすく、財産上の損失は一般公益の保護の中で扱われると読まれやすいのです。
行政事件訴訟法 第9条 第2項
裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たっては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。
論文ではこう使う
論文では、9条1項の定義、9条2項の考慮要素、判例の判断枠組みの順に規範を積みます。当てはめでは、根拠法令の目的規定と技術基準の条文を引いて、誰のどの利益を守ろうとしたのかを示し、次に原告がその範囲に入るかを距離や被害の性質という事実で詰めます。関係法令の参酌を必ず一段挟んでください。生命・身体の安全と財産上の利益、生活環境上の利益を分けて、それぞれについて条文が個別的利益として守る趣旨を含むかを別々に論じると、林地開発許可や総合設計許可の判例と同じ構造になります。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。