訴えの変更・請求の併合・被告の変更とは
うったえのへんこう・せいきゅうのへいごう・ひこくのへんこう
訴えの変更・請求の併合・被告の変更とは、取消訴訟に関連する請求を一つの手続にまとめ、途中で訴えの形を組み替えるための仕組みです。行政事件訴訟法13条の関連請求を軸に、併合提起(16条・19条)・訴えの変更(21条)・被告の変更(15条)が並びます。
建築確認の取消しを求めて裁判を起こしたのに、審理の途中で建物が完成して検査も終わり、取り消す意味がなくなったとします。一から損害賠償の裁判をやり直すのでは、時間も費用も無駄です。処分をめぐる紛争は、損害の賠償や別の処分の取消しも一緒に解決したくなります。そこで行政事件訴訟法は、関連する請求を一つの手続に集める入口として関連請求を定め、併合して起こす、後から足す、請求の中身を切り替える、被告を直す、という道具をそろえました。同じ事実の争いは一か所で判断した方が、審理の重複も判断の食い違いも避けられるからです。
関連請求は13条が六つの号で定めており、種類の違う訴訟でも併せて起こせます
取消訴訟には関連請求に係る訴えを併合することができます(16条1項)。損害賠償請求は民事訴訟、取消訴訟は行政訴訟で手続の種類が違いますが、13条1号が関連請求としている以上、併合が認められます。無効等確認訴訟にもこれらの規定が準用されます(38条1項)。「無効確認訴訟と国家賠償請求訴訟とは同種の訴訟手続ではないものの、Xは、本件無効確認訴訟の提起後に、本件建築確認が違法であることを理由として、それにより生じた損害について、Y市に対する国家賠償法第1条第1項に基づく損害賠償請求に係る訴えを本件無効確認訴訟に併合して適法に提起することができる」という肢は正しいです。関連請求かどうかは条文の類型に当てはめて判断します。「固定資産評価審査委員会の審査決定は、個々の固定資産ごとにされるものであるから、同一の敷地にあって一つのリゾートホテルを構成している複数の建物の評価額に関する各審査決定の取消請求が、互いに行政事件訴訟法第13条第6号所定の関連請求に当たるということはできない」という肢は誤りで、最決平成17年3月29日は、各請求の基礎となる社会的事実は一体として捉えられるべきもので密接に関連し、争点も同一であるとして、互いに六号の関連請求に当たるとしました。別々の裁判所に係属してしまった場合には、関連請求に係る訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送できます(13条)。
- 一号当該処分又は裁決に関連する原状回復又は損害賠償の請求
- 二号当該処分とともに一個の手続を構成する他の処分の取消しの請求
- 三号当該処分に係る裁決の取消しの請求
- 四号当該裁決に係る処分の取消しの請求
- 五号当該処分又は裁決の取消しを求める他の請求
- 六号その他当該処分又は裁決の取消しの請求と関連する請求
処分と裁決の取消訴訟は、口頭弁論終結まで追加して併合でき、出訴期間は裁決取消訴訟の提起時で判断します
裁決の取消訴訟を起こしてみたところ、原処分そのものを争うべきだと気づくことがあります。19条1項は、原告が口頭弁論の終結に至るまで関連請求に係る訴えを追加して併合提起できるとし、20条は、裁決の取消訴訟に処分の取消訴訟を追加する場合について、被告の同意を要せず、出訴期間の遵守を裁決取消訴訟の提起時を基準に判断するという特則を置きました。したがって「処分についての審査請求を棄却した裁決の取消訴訟を提起した後であっても、原告は、法令に特別の定めがある場合を除き、当該訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、当該訴訟に併合して、当該処分の取消訴訟を適法に提起することができる」という肢は正しいです。この特則がなければ、原処分の出訴期間はとっくに過ぎていることが多く、原処分主義の下で原告が救済を受けられなくなってしまいます。申請型義務付け訴訟のように、法が併合提起を義務づける類型もあります(37条の3第3項)。もっとも「この場合の義務付けの訴えは、原則として申請拒否処分に対する取消訴訟と併合して提起しなければならないが、申請拒否処分が無効である場合には、義務付けの訴えを単独で提起することができる」という肢は誤りで、無効なら無効等確認訴訟と併合することになり、単独提起は認められません。併合された訴訟の弁論及び裁判は分離しないのが原則ですが(37条の3第4項)、「取消訴訟と義務付け訴訟が併合して提起されている場合、両訴訟の弁論及び裁判は、分離しないでしなければならないから、裁判所は、両訴訟に係る判決を同時にしなければならない」という肢は誤りで、審理の状況によっては取消しの訴えについてのみ先に終局判決ができます(37条の3第6項)。
国家賠償請求への訴えの変更は、被告が変わっても裁判所の決定で許されます
処分が完了して取消しを求める実益が失われたときは、損害賠償に切り替えたくなります。21条1項は、取消訴訟の目的たる請求を当該処分に係る事務の帰属する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求に変更することを、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論終結に至るまで許すとしています。被告が変わっても許されるところに意味があります。「指定確認検査機関による建築確認の取消しを求める訴えを提起した後、当該建築確認に係る建築物について完了検査が終了した場合に、上記訴えを、当該建築物について建築確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体に対する損害賠償を求める訴えに変更することは、許されない」という肢は誤りです。最決平成17年6月24日(指定確認検査機関による確認事務の帰属)は、指定確認検査機関の確認事務は建築主事が置かれた地方公共団体に帰属し、その地方公共団体が21条1項の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」に当たるとして、この訴えの変更を認めました。変更には裁判所の決定が必要で、相手方の意見をきかなければならず(21条3項)、決定に対しては即時抗告ができます(21条4項)。民事訴訟法143条の訴えの変更も、要件を満たせば重ねて使えます。
訴えの変更後の出訴期間は、訴訟物が同一か特段の事情がない限り、変更の時を基準に判断します
訴えを変更すると、新しい請求はその時に提起されたことになるのが原則です。「訴えの変更がされた場合における出訴期間の遵守の有無は、特別の規定のない限り、変更前後の請求の間に訴訟物の同一性が認められるとき、又は両者の間に存する関係から、変更後の新請求に係る訴えを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し、出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるときを除き、訴えの変更の時を基準として判断される」という肢は正しく、最判昭和61年2月24日(訴えの変更と出訴期間)の枠組みそのものです。訴訟物が同一であるとき、あるいは当初の訴えと同視すべき特段の事情があるときだけが例外です。逆に言えば、期限ぎりぎりに誤った訴訟類型で提起し、後から取消訴訟へ変更するという戦術は通用しません。20条のように法が明文で遡及を認めている場合と混同しないようにします。
被告を誤ったときの変更は、当初の提起時に遡ります
原告が被告を誤ることを制度は織り込んでいます。15条1項は、原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤ったときは、裁判所は原告の申立てにより決定で被告の変更を許すことができるとします。「取消訴訟において、原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤ったときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもって被告の変更を許すことができ、この決定に対しては、不服を申し立てることができない」という肢は正しいです(15条5項)。許可の決定があったときは、新たな被告に対する訴えは当初の訴えの提起の時に提起されたものとみなされ(15条3項)、従前の被告に対する訴えは取り下げられたものとみなされます(15条4項)。出訴期間を過ぎていても救われるのはこの遡及効のおかげです。申立てを却下する決定に対しては即時抗告ができます(15条6項)。平成16年改正で被告が行政主体になったため被告を誤る場面は減りましたが、住民訴訟や個別法に特則がある処分では今も問題になります。
行政事件訴訟法 第13条
取消訴訟と次の各号の一に該当する請求(以下「関連請求」という。)に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合において、相当と認めるときは、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送することができる。
論文ではこう使う
論文では、原告が複数の救済を求める設例で、どの請求をどう束ねるかを条文で示します。取消しと損害賠償なら13条1号の関連請求として16条で併合できると述べます。裁決だけを争っていた原告に原処分を争わせるなら、19条の追加的併合と20条の出訴期間の特則を組み合わせ、原処分主義の下でも救済が届くことを説明します。処分が完了して取消しの実益が消えた設例では、21条の訴えの変更により被告を行政主体に改めて損害賠償へ移行できると述べ、請求の基礎の同一性を当てはめます。被告を誤った設例では15条の遡及効を指摘し、出訴期間の徒過という結論を避けます。
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