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用語集 / 行政法 / 住民訴訟

住民訴訟(住民監査請求)とは

じゅうみんそしょう

行政法 その他の抗告訴訟・当事者訴訟

住民訴訟とは、地方公共団体の財務会計上の行為が違法であるとして、住民監査請求を経た住民が裁判所にその是正を求める民衆訴訟です(地方自治法242条の2)。自分の権利利益が害されたかどうかを問わず、住民であれば一人でも提起できます。

市が特定の業者に相場よりずっと高い値段で土地を買おうとしているとき、それで損をするのは市民全体であって、誰か一人の権利が侵されたわけではありません。取消訴訟は自分の権利利益が害された人しか使えないので、この場面では役に立ちません。そこで地方自治法は、住民なら誰でも、まず監査委員に監査を求め、それでも直らなければ裁判所に是正を求められる仕組みを置きました。住民が自分の財布のためではなく、地方公共団体の財産の使い方を正すために裁判所へ行く、という特別な訴訟です。

市役所の前の場面。先生が住民役(札「住民」)で、「住民監査請求」と書かれた封筒を監査委員の男性(札「監査委員」)に手渡している。監査委員の後ろに裁判所の建物の小さな絵と看板「住民訴訟(地方自治法242条の2)」。先生の吹き出し「市が相場より

監査請求を経ること、そして行為の日から1年以内が入口です

住民訴訟とは、地方公共団体の財務会計上の行為が違法であるとして、住民が是正を求める訴訟です(地方自治法242条の2)。自分が損をしたかどうかを問わない民衆訴訟なので、住民であれば一人でも提起できます。ただし先に住民監査請求を経なければならず、請求の内容も四つの号に限られます。監査請求は、当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、正当な理由があるときを除いてできません(242条2項)。秘密裏に行われた支出のように住民が知り得なかった場合が正当な理由の典型で、知ってから相当の期間内に請求したかで判断されます。怠る事実については、財産の管理を怠る状態が続く限り期間の制限は働きません。ただし、財務会計上の行為が違法無効であることを前提にして生じる請求権の行使を怠る事実については、その行為の日から1年の制限を受けます(最判昭和62年2月20日)。監査委員の審査の範囲について、最判昭和62年2月20日(住民監査請求と一事不再理)は、住民が主張する違法不当事由以外の点に監査が及ぶことを認めつつ、先行する監査請求と実質的に同一の請求を繰り返すことは許されないとしました。監査の結果や勧告に不服があるとき、または所定の期間内に監査がされないときに、住民は出訴できます。

  • 1号請求当該執行機関又は職員に対する当該行為の全部又は一部の差止めの請求
  • 2号請求行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求
  • 3号請求当該執行機関又は職員に対する当該怠る事実の違法確認の請求
  • 4号請求当該職員又は相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを執行機関又は職員に対して求める請求

四つの号は、何を求めるかで厳密に書き分けられています

1号は差止め、2号は処分の取消し又は無効確認、3号は怠る事実の違法確認、4号は損害賠償等の請求を執行機関に求めるものです。2号は民衆訴訟ですから、原告が取消しを求める法律上の利益を持つ必要はありません。「問題とされる事業に関して公金の支出を内容とする処分がされた事例において、Xは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たるか否かにかかわらず、法第242条の2第1項第2号の規定に基づき、その取消しを求める住民訴訟を、適法に提起することができる」という肢は正しいです。住民訴訟は国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、原告の個人的な権利利益の救済を目的としないからです(行政事件訴訟法5条)。1号の差止めは処分に限られません。「Xは、対象とする行為が処分に当たる場合に限り、法第242条の2第1項第1号の規定に基づき、その差止めを求める住民訴訟を、適法に提起することができる」という肢は誤りです。財務会計上の行為であれば事実行為でも差し止められます。差止めは、その行為がされることが相当の確実さをもって予測される段階で求めることができ、市長が宗教法人の行事に特定の日時に出席することが予定されている事例について、「当該出席行為に伴う公金の支出その他の法の定める財務会計上の行為について、法第242条の2第1項第1号の規定に基づき、その差止めを求める住民訴訟を、適法に提起することができる」という肢は正しいです。

裁判所の受付の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で受付台の奥に座る。左に住民の男性(札「住民X」)が「公金の支出処分の取消し(2号)」と書いた訴状を差し出し、吹き出し「私自身に法律上の利益はないが、この支出は違法だ」。先生の吹き出し「住民

被告は執行機関又は職員であり、職員個人を直接訴えることはできません

平成14年改正で、4号請求は住民が職員個人を直接訴える形から、執行機関に対して請求するよう求める形に改められました。ですから「市の住民であるXは、市が廃棄物運搬業者との間で締結した委託契約に基づく委託料の支出が違法であることを理由に、支出行為をした当時の市長個人を被告として、市への損害賠償の支払を求める住民訴訟を適法に提起することができる」という肢は誤りです。1号・3号・4号の被告は条文どおり当該執行機関又は職員で、権限が委任されている場合は現に権限を持つ者になります。「問題とされる処分がされることが相当の確実さをもって予測される事例において、Xは、総務部長Bを被告として、法第242条の2第1項第1号の規定に基づき処分の差止めを求める住民訴訟を適法に提起することができる」という肢は正しいです。これに対し2号請求には取消訴訟の規定が準用され(242条の2第11項・行政事件訴訟法43条1項)、被告は処分をした行政庁の所属する地方公共団体になります。「問題とされる処分が総務部長Bにより既にされた事例において、Xは、A市を被告として、法第242条の2第1項第2号の規定に基づき処分の取消しを求める住民訴訟を適法に提起することができる」という肢は正しいです。4号請求の被告は請求をすべき執行機関ですから、権限を委任した市長Cを被告として、受任者である総務部長Bに損害賠償の請求をすることを求めることができます。「Xは、市長Cを被告として、法第242条の2第1項第4号本文の規定に基づきBに損害賠償の請求をすることを求める住民訴訟を適法に提起することができる」という肢は正しいです。長は権限を委任していても、財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有する以上4号の当該職員に当たり、同時に執行機関でもあります(最判平成5年2月16日)。ですから「Xは、市長CのBに対する指揮監督上の過失を理由に法第242条の2第1項第4号本文の規定に基づきCに損害賠償の請求をすることを求める住民訴訟を提起するときは、市長以外の職員を被告としなければならない」という肢は誤りです。地方自治法には、請求の相手方となる職員以外の職員を被告にしなければならないという規定はありません。

裁判所の受付の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で受付台の奥に立ち、四つの窓口を指し分けている。窓口の看板は左から「1号 差止め」「2号 取消し」「3号 怠る事実」「4号 損害賠償の請求を求める」。1号・3号・4号の窓口の前には役所職員の

対象は財務会計上の行為に限られ、それ以外の不作為は争えません

住民訴訟が正すのは、公金の支出、財産の取得管理処分、契約の締結履行、債務その他の義務の負担、公金の賦課徴収や財産の管理を怠る事実です。行政庁が申請に応答しないといった財務に関係しない不作為は対象外で、「上記の不作為がA市の財務会計上の行為に関するものではない場合には、Xは、法第242条の2第1項第3号の規定に基づき、それが違法であることの確認を求める住民訴訟を、適法に提起することはできない」という肢は正しいです。他方、長が宗教行事に出席することに伴う公金の支出は財務会計上の行為ですから差止めの対象になり、市有地の上に宗教法人の礼拝の施設が存在する状態を解消させないことは財産の管理を怠る事実に当たります。「Xは、法第242条の2第1項第3号の規定に基づき、市長Cが町内会Dに上記の施設が存在する状態の解消を求めること等の当該土地の管理を怠る事実の違法確認を求める住民訴訟を、適法に提起することができる」という肢は正しいです。占用料相当額を請求しないことも怠る事実で、「市が特定の市有地を権原なく占用する者に対し占用料相当額の請求を怠ることの違法確認を求める住民訴訟を、市長を被告として適法に提起することができる」という肢は正しいです。

請求できる内容は各号の枠に収まるものに限られます

4号請求で求められるのは損害賠償又は不当利得の返還であって、契約上の債務の履行を請求せよという内容は含まれません。「町内会DがA市から貸付けを受けていた土地の貸付料の支払を滞っていた事例において、Xは、法第242条の2第1項第4号本文の規定に基づき、市長Cが町内会Dに契約による債務の履行としての貸付料の支払を請求することを求める住民訴訟を、適法に提起することができる」という肢は誤りです。契約という法律上の原因がある以上、貸付料の請求は不当利得の返還でも損害賠償でもないからです。この場合は3号の怠る事実の違法確認によります。また2号請求には取消訴訟の規定が準用されるので執行停止の申立て自体はできますが、住民訴訟は原告の個人的な権利利益を救済する訴訟ではないので、原告自身の事業の損害を重大な損害として持ち出すことはできません。「行政事件訴訟法第25条の規定の適用により、それが当該処分の相手方にされることによりXの経営する事業が受ける重大な損害を避けるため、執行停止の申立てを、適法にすることができる」という肢は誤りです。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。原告席の住民の男性(札「住民X」)が「執行停止の申立て」と書いた紙を掲げ、吹き出し「この支出が相手に払われると、私の会社の事業が重大な損害を受ける」。先生の吹き出し「2号には取消訴訟の

判決の効力と費用の負担にも独自の定めがあります

4号請求の認容判決が確定すると、執行機関は判決に従って請求をしなければなりません。「損害賠償の請求を命ずる判決が確定した場合には、A市の市長は、Cに対して損害賠償金の支払を請求することを義務付けられる」という肢は正しく、242条の3第1項は判決確定の日から60日以内の支払請求を定めています。それでも支払われないときは、地方公共団体が請求の訴えを提起します(同条2項)。訴訟の費用についても手当てがあり、242条の2第12項は、住民が勝訴した場合に弁護士報酬のうち相当と認められる額を地方公共団体に請求できるとしています。訴額については、最判昭和53年3月30日(住民訴訟と訴額)が財産権上の請求でないものとして扱う筋を示しました。住民の持ち出しを抑え、制度を使いやすくするための配慮です。

地方自治法 第242条の2 第1項

普通地方公共団体の住民は、前条第一項の規定による請求をした場合において、同条第五項の規定による監査委員の監査の結果若しくは勧告若しくは同条第九項の規定による普通地方公共団体の議会、長その他の執行機関若しくは職員の措置に不服があるとき、又は監査委員が同条第五項の規定による監査若しくは勧告を同条第六項の期間内に行わないとき、若しくは議会、長その他の執行機関若しくは職員が同条第九項の規定による措置を講じないときは、裁判所に対し、当該執行機関又は職員に対する次に掲げる請求をすることができる。

論文ではこう使う

論文では、まず問題の行為が財務会計上の行為に当たるかを条文の列挙に当てはめます。次に監査請求を経ているか、行為の日から1年以内かを確認し、期間を過ぎていれば正当な理由を検討します。そのうえで、何を実現したいかから号を選びます。これから行われる支出を止めたいなら1号、既にされた処分を消したいなら2号、請求しないことを正したいなら3号、損害を回復したいなら4号です。4号では被告が執行機関であること、判決後に242条の3の請求が続くことまで書くと構造の理解が伝わります。

試験ではこう問われる

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