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用語集 / 行政法 / 争点訴訟

争点訴訟(行訴法45条)と当事者訴訟の振分けとは

そうてんそしょうとうじしゃそしょうのふりわけ

行政法 その他の抗告訴訟・当事者訴訟

争点訴訟とは、私法上の法律関係に関する訴訟で、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無が前提問題として争われているものです(行政事件訴訟法45条)。訴訟自体は民事訴訟ですが、行政庁の訴訟参加などの規定が準用されます。

農地を買収された人が、いまの買受人を相手に「買収処分は無効だから土地は私のものだ」と所有権の確認を求めたとします。相手は私人で、求めているのは私法上の所有権ですから民事訴訟ですが、その中で行政処分が無効かどうかが決め手になります。こうした訴訟を争点訴訟といいます。無効な処分はもとから効力がないので、取消訴訟を経なくても民事の裁判所が無効と判断してよいのです。私法上の権利が目的なら争点訴訟、公法上の地位が目的なら当事者訴訟、処分の効力そのものを確定したいなら無効等確認訴訟と、目的で振り分けます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所(民事)」)で法壇に着く。左に農地の絵を持つ男性(札「買収された元の所有者」)、右に別の男性(札「買受人(私人)」)が向かい合って座る。元の所有者の吹き出し「買収処分は重大明白な瑕疵があって無効だ。だか

処分が無効なら、民事訴訟の中で効力を否定できます

争点訴訟とは、私法上の法律関係に関する訴訟において、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無が争われている訴訟をいいます(行政事件訴訟法45条)。訴訟の性質は民事訴訟のままで、抗告訴訟でも当事者訴訟でもありません。処分の効力は結論に至る前提問題として判断されるだけです。違法な処分でも取り消されるまでは有効として扱われる公定力は、取消訴訟の排他的管轄の反射にすぎません。無効な処分には取消訴訟による是正が予定されていないので、排他的管轄も及ばず、民事訴訟の裁判所が自ら無効と判断できます。無効かどうかは重大明白な瑕疵の有無で決まり(最判昭和34年9月22日(農地買収処分無効確認事件))、農地買収処分が無効なら、買収された者は買受人に対して所有権確認や明渡しを民事訴訟で求められます。無効な処分の効力を否定するのに取消判決は要らないという点が、取消しうべき瑕疵にとどまる処分との決定的な違いです。同じ理屈は先行処分が無効な場合の後続処分にも及びます。先行処分に取消原因の違法があるだけなら公定力と不可争力があるので、後続処分の取消訴訟でその違法を主張することは原則として許されませんが、先行処分が無効なら公定力も不可争力もなく、義務そのものが発生していないので、後続処分の取消訴訟でその無効を主張できます。「除却命令が無効であるとしても、これを、戒告の取消しを求めるために主張することはできない」という肢は誤りです。処分の無効が絡む紛争は、次の三つに振り分けられます。

  • 争点訴訟私法上の権利関係を争う訴訟で、処分の無効が前提問題になるもの。土地の所有権確認や明渡請求が典型
  • 無効等確認訴訟処分の効力の有無そのものの確認を求めるもの。36条後段では補充性が要る
  • 当事者訴訟公法上の法律関係を争うもの。地位確認や公法上の給付がこれに当たる

処分性のある行為でも、私人を相手にする民事訴訟は別に成り立ちます

許可を受けた事業者の活動を止めたい隣人は、許可の取消しを求めるのではなく、事業者を相手に人格権に基づく差止めを求めることもできます。これは行政庁の処分の効力を否定する訴えではないので、取消訴訟の排他的管轄とは関係がありません。設置許可は一般的な禁止を個別に解除するだけで、事業者に周辺住民との関係で操業する私法上の権利を与えるものではないからです。「施設周辺に居住するHが施設の操業により健康被害のおそれが生ずることを主張して、施設の操業を差し止めようとする場合には、Hは、施設設置許可の取消訴訟を提起することなく、人格権に基づきFを被告として操業の差止めを求める民事訴訟を適法に提起することができる」という肢は正しいです。したがって「原子炉の周辺住民が、人格権に基づき原子炉設置の差止めを求める民事訴訟を提起するには、あらかじめ原子炉設置許可の取消し又は無効確認の判決を得ておく必要がある」という肢は誤りです。国家賠償も同じで、処分の効力を否定するものではなく違法を理由に金銭の賠償を求めるだけなので、公定力に触れません。最判昭和36年4月21日は、行政処分が違法であることを理由に国家賠償を請求するには、あらかじめ取消し又は無効確認の判決を得ておく必要はないとしました。「行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするには、あらかじめ当該処分について取消し又は無効等確認の判決を得るか、当該処分の取消しの訴え又は無効等確認の訴えを併合して提起することを要する」という肢は誤りです。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所(民事)」)で法壇に着く。左に住宅の絵を背にした男性(札「周辺住民」)、右に工場の煙突の絵を背にした男性(札「施設の設置者(事業者)」)。住民の吹き出し「知事の設置許可は取り消していないが、健康被害が心

無効確認訴訟との振分けは、36条後段の補充性が決めます

私法上の訴えで目的を達せられるなら、無効等確認訴訟は使えません。これが36条後段の補充性であり、争点訴訟と無効確認訴訟はこの条文で切り分けられます。ただし判例は形式的な可能性ではなく紛争解決の実効性で判断します。もんじゅ訴訟(最判平成4年9月22日)は、周辺住民が設置者に対して人格権に基づく建設又は運転の差止めを求める民事訴訟を提起していても、その民事訴訟は設置許可処分の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えとはいえず、無効確認訴訟と比べて紛争を解決するための争訟形態としてより直截的で適切なものともいえないとして、無効確認の訴えを適法としました。民事差止めと無効確認は当事者も要件も違い、一方が使えることは他方の必要をなくさないからです。だから「原子炉の周辺に居住する住民は、同原子炉の設置者に対しその建設又は運転の差止めを求める民事訴訟を提起していたとしても、同原子炉の設置許可処分の無効確認を求める訴えを適法に提起することができる」という肢は正しいです。無効確認が補充性で不適法になるのは、処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えのほうが、紛争の解決にとってより直截で適切な場合に限られます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に着き、法壇の前に二枚の紙、左に「民事差止訴訟(設置者が相手)」、右に「無効確認訴訟(国が相手)」。左に原子炉の建物の絵を背にした男性(札「周辺住民」)の吹き出し「設置者相手の差止め訴訟も起こ

公法上の法律関係なら当事者訴訟、私法上なら争点訴訟です

両者の分かれ目は、争われている実体的な法律関係が公法上のものか私法上のものかです。収用裁決が無効であることを前提に土地の所有権を争うのは私法上の権利の争いですから、被告を起業者とする争点訴訟になります。「土地収用法に基づく権利取得裁決がされた場合に従前の土地所有者が起業者を被告として提起する、当該裁決の無効を前提とする土地所有権の確認を求める訴えは、行政事件訴訟法(以下「法」という。)第4条の当事者訴訟のうち、「当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの」である」という肢は誤りです。形式的当事者訴訟は、本来なら裁決を争う抗告訴訟によるべき紛争について法令が当事者の一方を被告と定めた場合に限られ、土地収用法133条が定めるのは損失補償に関する訴えだけです。所有権の確認について被告を定めた法令はなく、しかも争われているのは私法上の権利ですから、これは民事訴訟である争点訴訟です。他方、公務員としての地位や社会保障上の受給権を争うのは公法上の関係なので当事者訴訟です。被告も変わります。争点訴訟では私法上の権利の相手方である私人を被告とし、当事者訴訟では権利義務の帰属主体である国又は公共団体を被告とします。どちらを選ぶかは、勝訴したときに誰との間で何が確定するかで決まります。

先生が案内役(札「先生」)で、二枚の看板の分かれ道の前に立ち、左の道の看板「争点訴訟(民事訴訟):私法上の権利、被告は私人」、右の道の看板「当事者訴訟:公法上の地位、被告は国・公共団体」。左に土地の絵を持つ男性(札「元の土地所有者」)の吹き

行政主体の側が民事訴訟を使えるかにも限界があります

私法上の訴訟と行政の関係は、行政が原告になる場面でも問題になります。法律が行政上の強制徴収の仕組みを用意している金銭債権について、行政がそれを使わずに民事訴訟で取り立てることは許されません。最大判昭和41年2月23日は、農業共済組合が法律上特に独自の強制徴収の手段を与えられながら、この手段によることなく一般私法上の債権と同様に訴えを提起して民事執行の手段で債権の実現を図ることは、立法の趣旨に反し許されないとしました。「金銭債権に行政上の強制徴収という簡易迅速な手段が認められている以上、その手段によることなく、当該金銭債権に係る債務の履行を求める民事訴訟を提起することは許されないものと解されます」という肢は正しいです。他方、強制手段が定められていないからといって民事訴訟で代替できるわけでもありません。最判平成14年7月9日(条例上の義務と民事手続による執行)は、国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正や一般公益の保護を目的とするもので自己の権利利益の保護救済を目的とするものではないから法律上の争訟に当たらず、法律に特別の規定がある場合に限って提起できるとしました。ですから「建築工事の中止命令の不履行があったときにこれを強制的に履行させるための手段が当該条例に定められていない場合であれば、当該工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起することは許されるものと解されます」という肢は誤りです。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に着く。左に市役所の建物の絵を背にした男性(札「市(原告)」)が二枚の紙を持つ。一枚は「共済掛金の支払を求める」で横に札「法律に強制徴収の手段あり」、もう一枚は「工事の続行禁止を求める」で横に

争点訴訟に準用されるのは行政庁の参加・通知・職権証拠調べなどに限られ、拘束力と第三者効はありません

争点訴訟は民事訴訟ですから、抗告訴訟の規定がそのまま当てはまるわけではありません。45条が準用するのは、行政庁の訴訟参加(23条1項・2項)、処分庁への通知(39条)、釈明処分の特則としての資料の提出(23条の2)、職権証拠調べ(24条)などに限られます。処分の効力が争われているのに処分をした行政庁が何も知らないまま判断が下されるのを避け、行政庁の持つ資料を審理に取り込むためです。判決の効力は当事者間に及ぶだけで、33条の拘束力や32条の第三者効はありません。処分の無効という判断も前提問題の判断にとどまるので、既判力は生じず、別の訴訟で処分が有効と扱われる余地が残ります。効力を対世的に確定させたいなら、無効等確認訴訟を選ぶ必要があります。国家賠償の場面では、処分の違法を前提とする賠償請求に取消判決も無効確認判決も要らず、最判平成22年6月3日(固定資産税過納金の国家賠償請求事件)は、固定資産税の課税処分を取消訴訟で争わなくても、その違法を理由に過納金相当額の国家賠償を請求できることを確認しました。

行政事件訴訟法 第45条 第1項

私法上の法律関係に関する訴訟において、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無が争われている場合には、第二十三条第一項及び第二項並びに第三十九条の規定を準用する。

最判平成14年7月9日(条例上の義務と民事手続による執行)

国又は地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許される。

論文ではこう使う

論文では、依頼者が最終的に何を得たいかから逆算します。土地を取り戻したい、金銭の支払を免れたいなど私法上の結論が目的なら、争点訴訟として民事訴訟を立て、処分の無効を前提問題として主張します。そのうえで無効原因を重大明白説で論じます。公務員の地位や受給権のように公法上の地位が目的なら当事者訴訟を選びます。処分の効力自体を対世的に確定する必要があるときだけ無効等確認訴訟に進み、36条後段の補充性を、私法上の訴えでは紛争の実効的解決に足りないという形で乗り越えます。

試験ではこう問われる

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