司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 行政法 / 取消訴訟の排他的管轄

取消訴訟の排他的管轄とは

とりけしそしょうのはいたてきかんかつ

行政法 取消訴訟の訴訟要件

取消訴訟の排他的管轄とは、違法な行政処分の効力を否定するには、行政事件訴訟法が定める取消訴訟(3条2項)によらなければならないという建前です。処分が違法でも権限ある機関が取り消すまでは有効なものとして扱われる公定力は、この排他的管轄の反射的効果として説明されます。

違法な課税処分で税金を納めさせられた人が、民事の裁判で「あの処分は違法だから納めた分を返せ」と主張しても、裁判所は処分の効力を無いものとしては扱ってくれません。処分の効力を消す道は取消訴訟に限る、と法律が決めているからです。処分を前提に多くの人の法律関係が積み上がるので、効力を争う道を一本に絞り、期限も付けて早く安定させるのがねらいです。もっとも、これは効力を消す場面だけの話です。処分の効力はそのままに、違法だったことを理由に損害賠償を求めることまでは封じられていません。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央に立ち、目の前に「課税処分」と書かれた紙が台の上に置かれている。左に扉「取消訴訟」だけが開いていて、扉の上に札「処分の効力を消せる唯一の入口」。右に扉「民事訴訟」は閉じていて、扉に札「ここでは処分の効力は

排他的管轄は処分の効力の否定を取消訴訟に独占させる建前で、公定力はその反射です

処分が違法でも、権限ある機関が取り消すまでは有効なものとして扱われるという公定力は、行政行為に特別な優越性があるからではなく、法が効力を否定する道筋として取消訴訟を用意したことの裏返しにすぎません。最判昭和30年12月26日は、行政処分は、たとえ違法であっても、その違法が重大かつ明白で当該処分を当然無効ならしめるものと認むべき場合を除いては、適法に取り消されない限り完全にその効力を有するとしました。「行政処分は、たとえ違法であっても、適法に取り消されない限りその効力を有する」という肢は誤りです。判例が留保している無効の場合を除外せずに述べているからです。この建前が及ぶ範囲は、効力の否定には及ぶ、違法の主張には及ばない、無効な処分と処分性のない行為には及ばない、という三つの線で区切られます。

  • 効力の否定取消訴訟によらなければならない。出訴期間内に限られる
  • 違法の主張国家賠償請求や人格権に基づく差止めなど、処分の効力を動かさない請求には及ばない
  • 適用外無効な処分と処分性のない行為には及ばず、民事訴訟・当事者訴訟で争える

違法を理由に国家賠償を求めるのに、取消判決はいりません

国家賠償請求は金銭賠償を求めるだけで、処分の効力を動かしません。そこで排他的管轄は働かず、取消判決や無効確認判決を先に得ておく必要はありません。最判昭和36年4月21日はこの点を明らかにし、以後の実務を固めました。「行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするについては、あらかじめ当該行政処分について取消し又は無効確認の判決を得なければならないものではなく、このことは、当該行政処分が金銭を納付させることを直接の目的としており、その違法を理由とする国家賠償請求を認容したとすれば、結果的に当該行政処分を取り消した場合と同様の経済的効果が得られるという場合であっても異ならない」という肢は正しいです。課税処分のように、賠償を認めると納めた税額が事実上戻ってくる場面でも結論は変わらず、最判平成22年6月3日(固定資産税過納金の国家賠償請求事件)がそう判示しました。裏返しに、「行政処分が違法であることを理由として国家賠償請求をするには、あらかじめ当該処分について取消し又は無効等確認の判決を得るか、当該処分の取消しの訴え又は無効等確認の訴えを併合して提起することを要する」という肢は誤りです。併合提起を国家賠償請求の要件とする規定もありません。

先生が裁判官役(札「裁判所」)。左に男性(札「原告」)が「課税処分は違法」と書いた紙と「損害賠償請求」の紙を持って立つ。原告の後ろに薄く「取消判決」の紙に深紅の×印と札「先に取っておく必要なし」。先生の吹き出し「賠償は金銭を求めるだけで処分

出訴期間が過ぎても、違法の主張自体は封じられず、人格権に基づく民事の差止めにも取消判決はいりません

排他的管轄は効力を争う道に期限を付けるだけです。出訴期間が経過すれば処分の効力はもはや争えなくなりますが、違法であったこと自体を前提とする請求まで塞がれるわけではありません。「処分があったことを知った日から6か月を経過したとき又は処分の日から1年を経過したときは、正当な理由がない限り、処分の取消しの訴えを提起して当該処分の効力を争うことができなくなるとともに、国家賠償請求訴訟を提起して当該処分の違法性を主張することもできなくなる」という肢は、後半が誤りです。処分の効力を前提としない差止請求も同様です。「原子炉の周辺住民が、人格権に基づき原子炉設置の差止めを求める民事訴訟を提起するには、あらかじめ原子炉設置許可の取消し又は無効確認の判決を得ておく必要がある」という肢は誤りで、人格権に基づく差止めは設置許可の効力と無関係に成り立ちます。最判平成4年9月22日(もんじゅ訴訟)も、人格権に基づく差止めの民事訴訟が無効確認訴訟とは別に許されることを前提にしています。同じ理由で、「産業廃棄物処理業者Fが廃棄物の処理及び清掃に関する法律に基づく産業廃棄物処理施設(以下「施設」という。)の設置許可を県知事Gから受けた事例において、施設周辺に居住するHが施設の操業により健康被害のおそれが生ずることを主張して、施設の操業を差し止めようとする場合には、Hは、施設設置許可の取消訴訟を提起することなく、人格権に基づきFを被告として操業の差止めを求める民事訴訟を適法に提起することができる」は正しいです。設置許可は施設の設置の禁止を解除するだけで、周辺住民との関係で操業する私法上の権利を作り出すものではないからです。

産業廃棄物処理施設の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央。左奥に煙突のある施設と業者の男性(札「業者F(設置許可あり)」)。右手前に住民の男性(札「周辺住民H」)が「人格権に基づく操業差止め」の紙を持つ。住民の後ろに薄く「設置許可の取

無効な処分と処分性のない行為には排他的管轄が及ばず、どこででも無効や違法を主張できます

重大かつ明白な瑕疵のある処分は初めから効力を持たないので、取消訴訟によって効力を奪う必要がありません。最判昭和34年9月22日(農地買収処分無効確認事件)は、重大かつ明白な瑕疵のある買収処分を当然無効としました。そのため出訴期間の制限を受けず、民事訴訟や当事者訴訟の中で先決問題として無効を主張できます。この形の訴訟が争点訴訟で、行政事件訴訟法45条は、私法上の法律関係に関する訴訟で処分の存否又は効力の有無が争われるときは、行政庁の訴訟参加や職権証拠調べの規定を準用するとしています。買収処分が無効であることを前提に土地の所有権確認を求める訴えが典型です。無効等確認訴訟(36条)も用意されていますが、争点訴訟で足りる場面では補充性の要件に注意が必要になります。有効か無効かの区別は無効と取消しの項目で扱います。行政処分に当たらない行為にも排他的管轄は及びません。処分性が否定されれば、はじめから民事訴訟や当事者訴訟で争うほかなく、取消訴訟を経ないことを理由に主張が封じられることはありません。

取消訴訟でしか救えない利益があるからこそ、訴えの利益が残ります

排他的管轄は原告に不便を強いるだけではなく、取消訴訟を維持する理由にもなります。免職処分を受けた公務員が公職選挙に立候補して公務員の地位に戻れなくなっていても、処分が取り消されない限り給料請求権を裁判所で実現できないのであれば、取消しを求める実益が残ります。「仮に免職処分が取り消されても、当該公務員は、公務員たる地位を回復することはできませんが、免職処分は、それが取り消されない限り効力を有し、違法な免職処分さえなければ公務員として有するはずであった給料請求権その他の権利、利益につき裁判所に救済を求めることができなくなるので、当該免職処分の効力を排除する判決を求めることは、これらの権利、利益を回復するための必要な手段と考えられ、当該免職処分の取消しを求める訴えの利益は失われません」という肢は正しいです(最大判昭和40年4月28日)。この論法は訴えの利益の判断そのものであり、排他的管轄を認める建前と表裏をなしています。

先生が裁判官役(札「裁判所」)。左に元公務員の男性(札「免職処分を受けた公務員」)が「立候補」のたすきを掛けて立ち、足元に札「公務員の地位には戻れない」。男性の手に「免職処分」の紙、その先に鎖でつながれた金庫に札「給料請求権」。先生の吹き出

公定力は適法性の推定ではなく、刑事裁判での違法の判断も妨げません

公定力を排他的管轄の反射的効果と捉えると、及ぶ範囲は自ずと限られます。効力を否定する必要がない場面には及ばないので、国家賠償の違法判断にも、処分の違法を理由とする刑事事件の判断にも当然には及びません。違法な処分に従わなかったことを理由に処罰されるとき、裁判所は処分の違法を審理して無罪とすることができます。処分の効力を奪うのではなく、犯罪の成否を判断しているにすぎないからです。また、公定力は適法性の推定ではありません。訴訟で争われれば、処分の適法性は立証責任の分配に従って主張立証の対象となり、行政側が根拠を示せなければ処分は取り消されます。公定力があるから行政の言い分が正しいと推定される、という理解は誤りです。

論文ではこう使う

論文では、まず争いの中身が効力の否定か違法の主張かを切り分けます。効力を否定する請求なら、取消訴訟の排他的管轄から取消訴訟によるべきだと述べ、出訴期間内かを確認します。国家賠償請求なら、賠償は処分の効力を動かさないから取消判決を要しないという規範を立て、経済的効果が取消しと同じでも変わらないと補強します。処分が無効なら排他的管轄が及ばないと述べ、争点訴訟や無効等確認訴訟へ進みます。処分性が否定される行為については、そもそも取消訴訟の対象にならないから民事訴訟・当事者訴訟によると結び、救済の空白が生じないことを示します。

試験ではこう問われる

「取消訴訟の排他的管轄」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型8件と関係する過去問の肢7本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、行政法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語

行政行為

公定力

取消訴訟の訴訟要件

処分性

行政行為

違法性の承継

取消訴訟の訴訟要件

被告適格・管轄・出訴期間