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用語集 / 行政法 / 行政行為

行政行為(処分)の意義とは

ぎょうせいこういのいぎ

行政法 行政行為

行政行為とは、行政庁が法令に基づき、優越的な意思の発動として、国民に対し具体的に権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為です。講学上の概念で、取消訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)とほぼ重なります。

税務署から納税の告知が届けば、同意していなくても税を納める義務が生じます。市が土地を買う契約は相手が承諾しなければ成立しないのに、告知は役所の一方的な判断で相手の権利義務を動かします。このように、行政庁が法律に基づいて、相手の同意なしに特定の人の権利義務を直接決める行為を行政行為と呼びます。強い行為だからこそ法律の根拠が必要で、争うときは取消訴訟という決まった手続に乗せられ、放っておけば期間内に争えなくなるという特別な扱いを受けます。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、手元に「処分とは」と書かれた紙を置いている。紙には二つの箱があり、左の箱「公権力性:相手の同意なしに一方的に」、右の箱「直接具体的な法効果:特定の人の権利義務を直接動かす」。法壇の前に

行政行為は、相手の同意を得ずに一方的に権利義務を決める行為です

行政行為は法令用語ではなく講学上の概念ですが、公定力・不可争力・自力執行力といった特別の効力が認められ、取消訴訟の対象となる処分とほぼ重なるため、行政法の中心に置かれます。最判昭和39年10月29日(東京都ごみ焼却場事件)は、処分を「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているもの」と定義しました。ここから、公権力性(相手方の同意を要せず一方的に行われること)と、直接具体的な法効果(特定の者の権利義務に直接影響すること)の二つが要素として取り出されます。契約は相手方の同意を前提とするので行政行為ではなく、行政指導は法効果を持たないので行政行為ではありません。行政立法は一般的抽象的な規律なので、特定の者の権利義務を直接動かしません。この定義は処分性の判断枠組みそのものであり、行政行為の意義と処分性は表裏の関係にあります。

  • 下命・禁止一定の作為又は不作為の義務を命じる行為。納税の告知、違反建築物の除却命令、営業停止命令
  • 許可法令による一般的な禁止を特定の場合に解除し、本来の自由を回復させる行為。飲食店営業許可、運転免許
  • 免除法令により課された作為義務を特定の場合に解除する行為。就学義務の免除
  • 特許本来なかった権利又は法的地位を新たに設定する行為。道路占用許可、公有水面埋立免許
  • 認可私人が行った法律行為の効力を補充して完成させる行為。農地の権利移転の許可、公共料金の認可
  • 代理第三者がすべき行為を行政庁が代わって行い、本人がしたのと同じ効果を生じさせる行為
  • 確認特定の事実又は法律関係の存否を公権的に判断し確定する行為。建築確認、水俣病認定、当選人の決定
  • 公証特定の事実又は法律関係の存在を公に証明する行為。選挙人名簿への登録、各種の登記・登録
  • 通知特定の事項を相手方に知らせる行為で、法律上一定の効果が結び付くもの。代執行の戒告、納税の督促
  • 受理他人の行為を有効な行為として受け取る行為

命令的行為はもともとの自由を動かし、形成的行為は新しい地位を与えます

下命・禁止・許可・免除は、国民が本来持っている自由に対して義務を課し、又はその義務を外す行為で、命令的行為と呼ばれます。これに対し特許・認可・代理は、本来国民が持っていない権利や地位を作り出す行為で、形成的行為と呼ばれます。飲食店営業許可は、公衆衛生の見地から一般的に禁じられた営業を個別に解除するもので許可、道路占用許可は、本来誰にもない道路の排他的使用権を設定するもので特許です。両者を分ける実益は裁量の広さにあり、許可は要件を満たせば与えなければならない羈束的な処分になりやすく、特許は公益的な判断を伴うため裁量が広くなります。最判昭和47年5月19日(公衆浴場営業許可)は、公衆浴場法の許可制について、申請が所定の許可基準に適合する限り行政庁は許可を与えなければならない羈束的な処分であるとしました。分類の詳細は許可・認可・特許で扱います。

準法律行為的行政行為には、裁量も附款もないのが原則です

確認・公証・通知・受理は、行政庁の意思ではなく法律が効果を定めているため、準法律行為的行政行為と呼ばれ、理論上は裁量の余地がなく、附款を付けることもできないとされます。もっとも、この分類は絶対ではありません。最判昭和57年4月23日は、車両制限令12条に基づく道路管理者の特殊な車両の認定について、基準に適合しないことがやむを得ないかどうかの認定にすぎず基本的には裁量の余地のない確認的行為の性格をもつとしつつ、同条ただし書が認定に条件を付けることを認めていること、認定の制度の効用が許可の制度とほとんど変わらないことから、具体的事案に応じ道路行政上比較衡量的判断を含む合理的な行政裁量を行使することが全く許されないとするのは相当でないとしました。「車両制限令における道路管理者の特殊な車両の特例の認定は、基本的には裁量の余地のない確認的行為の性格を有するものであるから、具体的事案に応じ道路行政上比較衡量的判断を含む行政裁量を行使することは、許されない」という肢は誤りです。逆に、最判平成25年4月16日は、公害健康被害補償法に基づく水俣病認定は水俣病のり患の有無という客観的事実を確認する行為で、行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではないとし、裁判所が経験則に照らして諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個別的な因果関係の有無等を審理してり患の有無を個別具体的に判断すべきだとしました。「公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病認定は、水俣病のり患の有無という客観的事実を確認する行為であり、処分行政庁の判断はその裁量に委ねられるべき性質のものではない」という肢は正しく、確認的行為であることが裁量の否定に直結する場面もあります。受理については、「認可を受けた後に岩石採取廃止の届出をした場合に、知事が届出を受理する行為は行政処分である」という肢は誤りです。届出は、形式上の要件に適合していれば提出先の機関の事務所に到達したときに手続上の義務が履行されたものとされ(行政手続法37条)、行政庁の応答を待ちません。申請についても、事務所に到達したときは遅滞なく審査を開始しなければならないとされ(7条)、受理・不受理という中間の段階を挟むこと自体が否定されています。

県庁の窓口の場面。先生が知事役(札「知事」)で、採石業者の男性(札「採石業者」)が差し出した「岩石採取廃止の届出」と書かれた書類を受け取っている。書類がカウンターに置かれた瞬間を表す小さな矢印と「到達」の札。先生の吹き出し「届出は形式が整っ

行政行為は相手方に到達して初めて効力を生じます

行政行為は、行政庁の内部で意思決定があるだけでは成立せず、その意思が何らかの形式で外部に表示されることによって成立します(最判昭和29年9月28日)。ただし、成立と効力発生は別です。相手方の受領を要する行政行為は、相手方に告知され又は到達すること、つまり相手方の了知し得べき状態に置かれることによって初めて相手方に対する効力を生じます(最判昭和57年7月15日)。「行政行為は、その要件が充足され、行政庁が意思決定をして、これを表示することによって成立し、同時にその効力が発生する」という肢は誤りです。「行政行為の効力が生ずるのは、特段の定めのない限り、相手方が現実に当該行政行為を了知したか、当該行政行為が相手方の了知し得べき状態に置かれたときである」という肢が正しいです。最判平成11年10月22日も、申請に対する承認の効力は、特別の定めがない限り、承認が申請者に到達した時、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得べき状態に置かれた時に発生するとしています。現実に読んだことまでは要らず、了知し得る状態に置かれれば足ります。この到達の時点は、出訴期間の起算点である「処分があつたことを知つた日」(行政事件訴訟法14条1項)とも連動し、処分に係る通知の書面が相手方の住所に郵便で配達された場合には、反証のない限り配達された日がこれに当たります。

役所と郵便受けの二コマ。左のコマ: 先生が行政庁役(札「行政庁」)で「許可」と書かれた書面に判を押し、封筒に入れて郵便に出している。札「成立:意思を外部に表示したとき」。右のコマ: 相手方の男性(札「相手方」)の家の郵便受けに封筒が入ってい

規制行政と給付行政では、法律の根拠の要否と裁量の広さが変わります

義務を課し権利を制限する規制行政には、侵害留保の考え方により法律の根拠が必要です。これに対し補助金の交付や社会保障の給付といった給付行政については、侵害留保説では法律の根拠は不要とされ、予算や要綱を根拠に行われることがあります。ただし平等原則と信頼保護の統制は及びます。契約形式についても同じ区別が問題になります。侵害留保原則は行政が一方的かつ権力的に国民の法的地位を変動させる場合に法律の根拠を求めるもので、契約では相手方に義務が生じるのは相手方自身の意思表示に基づくからです。「国又は地方公共団体が、相手方に新たな義務を課することを内容とする契約を締結するに当たっては、法律による行政の原理ないし侵害留保原則の見地から、原則として、当該義務を課する法令上の根拠があることを要する」という肢は誤りです。最判平成21年7月10日も、産業廃棄物処分業者が公害防止協定で処分場の使用期限を約束した事案で、法律にそのような義務を課す規定がなくても、事業の廃止は処分業者自身の自由な判断で行えることだとして協定の効力を認めています。行政手続法も、申請に対する処分(第2章)と不利益処分(第3章)で手続を分け、規制と給付の性格の違いを制度に反映させています。

行政行為かどうかは、訴訟では処分性として争われます

行政行為は講学上の概念にとどまるため、実際の争点は、その行為を取消訴訟で争えるかという処分性の問題になります。食品衛生法は飲食店営業を営もうとする者に知事の許可を受けることを義務づけ、無許可営業を罰則付きで禁じているので、許可を受けて初めて営業を適法に行える地位が生じます。許可申請の拒否はこの地位の取得を否定し、申請者の法的地位を動かします。「食品衛生法に基づく飲食店の営業許可申請を行政庁が拒否する行為は、行為の前後における申請者の法的地位を変動させるものではないから、当該行為には処分性は認められない」という肢は誤りです。逆に、形式上は行政指導であっても処分性が認められることがあります。最判平成17年7月15日は、病院開設中止の勧告について、勧告に従わずに開設された病院は保険医療機関の指定を拒まれる仕組みがあり、国民皆保険制度の下では指定を受けられなければ実際上開設を断念せざるを得ないことから、処分性を認めました。「病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているものの、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものであり、その結果、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになるから、上記勧告は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる」という肢は正しいです。講学上の分類よりも、実際に相手方の法的地位にどう作用するかが決め手になります。

県庁の会議室の場面。先生が知事役(札「知事」)で「病院開設中止の勧告」と書かれた書面を病院経営者の男性(札「病院の開設者」)に渡している。書面の下に小さく「行政指導」の札。経営者の吹き出し「勧告は行政指導で従う義務はないはずでは」。先生の吹

最判昭和39年10月29日(東京都ごみ焼却場事件)

行政事件訴訟法第3条第2項にいう行政庁の処分とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。

論文ではこう使う

論文では、まず問題となる行為が行政行為に当たるかを、公権力性と直接具体的な法効果の二要素で検討します。次に、行政行為だとして、命令的行為か形成的行為か、法律行為的か準法律行為的かを位置づけ、そこから裁量の広狭と附款を付せるかを導きます。許可であれば要件を満たす限り応答すべき羈束性を、特許であれば公益判断を伴う広い裁量を出発点にします。そのうえで、瑕疵があれば取消しか無効かを重大明白説で振り分け、公定力を前提に取消訴訟の排他的管轄を確認し、国家賠償や刑事事件では公定力が及ばないことを指摘します。分類それ自体を論じるのではなく、分類から効果を引き出す順で書くのが基本です。

試験ではこう問われる

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