司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 行政法 / 不利益処分

不利益処分とは

ふりえきしょぶん

行政法 行政手続

不利益処分とは、行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分です(行政手続法2条4号)。申請により求められた許認可等を拒否する処分は、不利益処分に含まれません。

営業許可の取消し、業務停止命令、改善命令、免許の停止のように、行政庁が特定の人を名指しして義務を課したり権利を制限したりする処分が不利益処分です。受ける側の打撃が大きいので、行政手続法は第3章(12条〜31条)で、処分基準を定める努力、処分前に意見を聴く聴聞や弁明の機会の付与、処分と同時の理由提示という手続を用意しました。一方、申請を断る処分は申請者に不利益でも、申請に対する処分として第2章で保護されるので、不利益処分からは外されています。条文は次の四つを除きます。

先生が行政庁役(札「行政庁」)で机の中央。左に飲食店主の男性(札「名あて人」)が立ち、先生が処分書「営業許可の取消し」を差し出している。処分書の上に三つの札「処分基準を定めるよう努める」「聴聞・弁明で意見を聴く」「処分と同時に理由を示す」。

申請拒否処分は不利益処分ではなく、聴聞も弁明も要りません

申請拒否は申請者に不利益ですが、行政手続法は不利益処分から外しています(2条4号ロ)。申請に対する処分は第2章の手続で保護され、事前の意見陳述の機会はありません。したがって「申請拒否処分をするには聴聞を経なければならない」という肢は誤りです。逆に、いったん与えた許認可を取り消す処分は、申請者を名あて人としていても不利益処分であり、聴聞の対象になります。ハとニが除かれるのは、相手が自ら求めた結果であり、防御の機会を与える必要がないからです。

  • イ事実上の行為、およびその範囲・時期等を明らかにするために法律上必要とされる手続としての処分
  • ロ申請により求められた許認可等を拒否する処分、その他申請に基づき申請者を名あて人としてされる処分
  • ハ名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分
  • ニ許認可等の効力を失わせる処分で、その基礎となった事実が消滅した旨の届出を理由とするもの

処分基準は定めることも公にすることも努力義務です

行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについて法令の定めに従って判断するために必要な基準(処分基準)を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければなりません(12条1項)。審査基準(5条)が義務であるのに対し、処分基準は設定も公表も努力義務です。違反行為の態様は多種多様で画一的な基準を立てにくく、細かく公表すると制裁を免れる限度で違反する者を生むおそれがあるからです。「小売販売業許可取消処分について処分基準を定めたときは、これを公にしておかなければならない」「不利益処分をするかどうかについて必ず基準を定めなければならない」という肢はいずれも誤りです。処分基準は行政規則で裁判所を拘束せず、「行政庁は処分基準に従わない処分を行うことができないから、裁判所が処分基準に従って行われた処分を取り消すには処分基準が無効であるか取り消される必要がある」も誤りです。ただし公にされた処分基準には法的な効果が生じます。最判平成27年3月3日(裁量基準の効果と訴えの利益)は、先行処分を受けたことを加重事由とする処分基準が公にされている場合、特段の事情がない限り行政庁はその基準に従って後の処分を選択すべき羈束を受け、先行処分の効果が期間の経過で消えても、加重される期間内は取消しを求める訴えの利益が残るとしました。

先生が行政庁役(札「行政庁」)。机の上に二冊の冊子。左の冊子「審査基準(5条)」には札「定める:義務/公にする:義務」。右の冊子「処分基準(12条)」には札「定める:努力義務/公にする:努力義務」で、この右の冊子を深紅の枠で囲む。先生の吹き

許認可の取消し・資格の剥奪・役員の解任は聴聞、それ以外は弁明の機会です

許認可等を取り消す処分、名あて人の資格又は地位を直接に剥奪する処分、法人の役員の解任等を命ずる処分など重い処分は聴聞、それ以外は弁明の機会の付与です(13条1項)。行政庁が相当と認めるときは軽い処分でも聴聞にできます。弁明は書面で行うのが原則で、行政庁が口頭ですることを認めたときは口頭でできます(29条)。「弁明は書面を提出して行うことが原則であるが、行政庁が認める場合には口頭で行うことができる」は正しいです。処分の重さが途中で変わる場面も問われます。免許取消しのための聴聞中に、免許停止で足りると判断した場合、聴聞は弁明より手厚い手続で、重い処分について既に防御の機会を与えているので、そのまま免許停止処分ができます。「免許停止処分を行うことはできず、改めて弁明手続を執ることが必要」は誤りです。逆に、免許停止のための弁明手続中に免許取消しが妥当と判断した場合は、弁明手続では聴聞に固有の保障を尽くしていないので、より重い処分に必要な聴聞を改めて執らなければならず、「改めて聴聞手続を執ることが必要となる」は正しいです。省略できるのは公益上緊急に処分する必要があるときなど13条2項の場合だけです。

先生が行政庁役(札「行政庁」)で中央、左右に二つの場面。左: 聴聞の部屋(看板「聴聞:免許取消しの予定」)で名あて人の男性が出頭して意見を述べており、先生が処分書を「免許停止」に書き換えて、吹き出し「重い処分について既に手厚い聴聞で言い分を

聴聞では文書閲覧は当事者と参加人だけ、参加は主宰者の許可で認められます

聴聞は行政庁が指名する職員が主宰し(19条)、当事者は聴聞の期日に出頭して意見を述べ、証拠書類を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に質問できます(20条)。当事者と当該不利益処分がされたならば自己の利益を害されることとなる参加人は、聴聞の通知から終結までの間、処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができ、行政庁は第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ拒めません(18条)。閲覧できるのは当事者と参加人に限られるので、「不利益処分の発動に強い関心を持つライバル事業者が、聴聞手続において資料の閲覧を求めることができる」は誤りです。参加人は主宰者の許可を得て聴聞に参加でき(17条)、「サービスを受けている高齢者が、処分に反対するため主宰者の許可を得て聴聞手続に参加し、口頭で意見を述べることができる」は正しいです。「名宛人以外の利害関係者が聴聞手続に参加することは認められていない」という肢は誤りです。なお、聴聞を経てされた不利益処分について審査請求ができないとする旧27条の制限は平成26年改正で削られ、現行法では審査請求ができます。

理由は処分と同時に示し、処分基準の適用関係まで書かなければ足りません

不利益処分をする場合には、名あて人に対し同時に理由を示さなければならず(14条1項本文)、処分を書面でするときは理由も書面で示します(14条3項)。差し迫った必要がある場合は事後でよく、処分後相当の期間内に示します(14条1項ただし書・2項)。理由提示の程度について、最判平成23年6月7日(一級建築士免許取消処分事件)は、行政手続法14条1項本文の趣旨を、行政庁の判断の慎重と合理性を担保してその恣意を抑制するとともに、処分の理由を名宛人に知らせて不服の申立てに便宜を与えることにあるとし、公にされた処分基準が複雑な内容を定めている場合には、処分の原因となる事実と根拠法条だけでなく、処分基準の適用関係まで示さなければ理由提示として十分でないとしました。「処分基準の適用関係が全く示されていない理由提示は十分でない」は正しく、「処分基準の内容及び適用関係についてまで明らかにすることを要するものではない」は誤りです。処分基準が単純なら適用関係の摘示まで要らない場合もあります。聴聞のやり取りから理由を予測できたとしても、理由が十分かは示された書面の記載自体で判断するので、記載自体から分からなければ瑕疵は残ります。理由の不備は、後の裁決で具体的根拠が明らかにされても治癒されず(最判昭和47年12月5日)、「治癒される」という肢は誤りです。理由提示の全体は理由提示の項目で扱います。

先生が行政庁役(札「行政庁」)で「一級建築士 免許取消処分 通知書」を名あて人の男性(札「名あて人」)に手渡している。通知書の理由欄に三行「原因となる事実」「根拠法条」「処分基準の適用関係」があり、三行目を深紅の枠で囲む。机の脇に分厚い冊子

不利益処分を止めるには差止訴訟、裁量処分なら逸脱・濫用が必要です

不利益処分がされそうな段階で争う手段が差止訴訟(行政事件訴訟法37条の4)です。重大な損害を生ずるおそれがあり、他に適当な方法がないことが要件で、裁量処分については、その処分をすることが裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められることが判決の要件になります(同条5項)。「不利益処分について法令により行政裁量が認められる場合、裁判所が一定の処分をしてはならない旨を命ずる判決をするためには、その処分をすることが裁量権の逸脱・濫用と認められることが必要」は正しいです。裁量審査は行政裁量の項目で扱います。不利益処分の中でも授益的処分の取消しや撤回は、職権取消しと撤回の問題として、相手方の信頼と公益の比較衡量で制限されます。適用除外にも注意します。行政手続法3条は、刑事事件に関する処分、国税や地方税の犯則事件に関する処分、公務員に対する懲戒処分など、不利益処分でも第3章を適用しないものを列挙しており、公務員の懲戒に聴聞が要るとする肢は誤りです。条例・規則に根拠を置く地方公共団体の処分にも適用されず(3条3項)、行政手続条例によります。

行政手続法 第2条 第4号

不利益処分 行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分をいう。ただし、次のいずれかに該当するものを除く。(略)ロ 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請者を名あて人としてされる処分

論文ではこう使う

論文では、不利益処分の手続的瑕疵が取消事由になるかを、理由提示(14条)と聴聞・弁明(13条)に分けて論じます。理由提示は、趣旨(恣意抑制と不服申立ての便宜)から「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかを記載自体から了知できること」を規範とし、処分基準が公にされていれば適用関係の摘示まで求め、瑕疵は治癒されないと結びます。聴聞の欠缺や参加人の排除は防御権の侵害として独立の取消事由になり得ます。処分基準と異なる重い処分をした事案では、基準を公にした趣旨から合理的な理由の説明を要するとし、平等原則と信頼保護で裁量の逸脱・濫用を導きます。差止訴訟では、重大な損害・補充性・裁量逸脱の順に要件を立て、営業停止による回復困難な損害を当てはめます。

試験ではこう問われる

「不利益処分」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型8件と関係する過去問の肢48本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、行政法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語

行政裁量

行政裁量

行政手続

理由提示

行政手続

申請と届出

行政裁量

裁量基準