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行政手続法の適用除外とは

ぎょうせいてつづきほうのてきようじょがい

行政法 行政手続

行政手続法の適用除外とは、処分・行政指導・届出・命令等の手続の一般法である行政手続法の規定を、その手続になじまない領域には及ぼさないとする仕組みです(3条・4条)。除外された領域は、個別法の定める手続や地方公共団体の行政手続条例が規律します。

警察官に「事情を聞くから書類を出しなさい」と命じられた人が、その前に聴聞を開けと求めても、そうはなりません。県の職員が懲戒免職になるときも、行政手続法の聴聞ではなく公務員法の手続で争います。行政手続法は処分や行政指導の手続を定める一般法ですが、刑事手続、情報収集、公務員の身分、学校や刑務所の内部規律、地方公共団体の自主性のように、一律に当てはめるとかえって不都合な領域があります。そこで3条と4条は、どの処分や行政指導について第何章の規定を外すかを号ごとに書き分けています。

先生が役人役(札「行政庁」)で大きな一冊の本(表紙「行政手続法」)を開いて立つ。本の左ページに「第2章 申請に対する処分/第3章 不利益処分/第4章 行政指導/第6章 意見公募手続」。先生の前に4人の小さな男性が並び、それぞれ札「情報収集の

除外の単位は号ごとに違い、処分だけが外れるものと行政指導まで外れるものがあります

除外されると、第2章の申請に対する処分、第3章の不利益処分、第4章の行政指導、第4章の2の処分等の求め、第6章の意見公募手続のうち、条文が指定した部分が働きません。3条1項は、各号に掲げる処分及び行政指導については行政手続法の規定を適用しないと定めます。多くの号は処分と行政指導をまとめて外しますが、11号の専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分と、15号の不服申立てに対する裁決・決定その他の処分は処分だけを掲げ、行政指導はそもそも除外の対象に入っていません。実務で問われやすいのは14号です。報告や物件の提出を命ずる処分、立入検査の受忍を求める処分のように、職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的とするものは、相手に義務を課す処分であっても第3章が働きません。監督権限を行使する前提の情報収集に事前手続を一律に求めると情報収集の実効性が損なわれる上、本体の不利益処分の段階で手続保障を与えれば足りるからです。「行政手続法の不利益処分に関する規定は,職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分にも適用される」という肢は誤りです。処分の名あて人に不利益であるかどうかではなく、条文が掲げた事柄に当たるかどうかで決まります。

  • 5号刑事事件に関する法令に基づいて検察官・検察事務官・司法警察職員がする処分及び行政指導
  • 6号国税又は地方税の犯則事件、金融商品取引の犯則事件に関する法令に基づいてされる処分及び行政指導
  • 7号学校、講習所、訓練所、研修所において、教育、訓練、研修の目的を達成するため、学生、生徒、児童等に対してされる処分及び行政指導
  • 8号刑務所、少年刑務所、拘置所、留置施設、海上保安留置施設、少年院等において、収容の目的を達成するため、被収容者に対してされる処分及び行政指導
  • 9号公務員又は公務員であった者に対して、その職務又は身分に関してされる処分及び行政指導
  • 10号外国人の出入国、難民の認定又は帰化に関する処分及び行政指導
  • 11号専ら人の学識技能に関する試験又は検定の結果についての処分
  • 12号相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として法令の規定に基づいてされる裁定その他の処分
  • 14号報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導
  • 15号審査請求、再調査の請求その他の不服申立てに対する行政庁の裁決、決定その他の処分
税務署の場面。先生が税務職員役(札「行政庁」)で「報告・帳簿の提出を命ずる処分」と書いた紙を事業者の男性(札「名あて人」)に手渡す。男性の吹き出し「不利益な処分なのだから、その前に聴聞を開いてください」。先生の吹き出し「これは職務の遂行上必

公務員・被収容者・学生に対する処分は、内部関係の規律として外れます

9号は公務員又は公務員であった者に対して職務又は身分に関してされる処分を外しますから、懲戒免職や停職に聴聞や弁明の機会は要りません。争う場面では国家公務員法・地方公務員法の不利益処分審査請求が受け皿になります。8号は刑務所や少年院の被収容者に対する処分、7号は学校や研修所で学生・生徒に対してされる処分を外します。いずれも特別な在監関係・在学関係の内部規律として、一般法の手続を及ぼすのが適当でないという整理です。ただし外れるのは行政手続法の手続だけで、処分そのものの適法性は争えます。懲戒処分の重さの当否は裁量の逸脱・濫用として審査され、被収容者への処遇も個別法と憲法の枠で統制されます。

国会・裁判所の処分と、機関が固有の資格で名あて人となる処分は初めから外です

3条1項1号から3号は、国会の両院若しくは一院又は議会の議決によってされる処分、裁判所若しくは裁判官の裁判によりされる処分、国会の議決や同意を経てされるべき処分を、通常の行政作用でないものとして外します。3条2項は、法律の施行期日を定める政令や恩赦に関する命令など、命令等を定める行為のうち第6章の意見公募手続を適用しないものを列挙します。4条1項は、国の機関又は地方公共団体若しくはその機関に対する処分で、これらの機関等がその固有の資格において名あて人となるもの、及びこれらに対する行政指導を外します。行政手続法は私人の権利利益を守るために行政庁と私人との手続を定めた法律なので、行政主体どうしの関係にはなじまないからです。固有の資格とは、一般私人が立ち得ない特有の立場をいい、私人と同じ立場で許可を受ける場合は除外されません。最判令和2年3月26日(国による不服申立てと「固有の資格」)は、行政不服審査法7条2項の同じ語について、「一般私人とは異なり、国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場」をいうとし、その有無は、処分に係る事務・事業の実施主体が国の機関等に限られているか、限られていない場合でもその事務・事業を実施し得る地位の取得について国の機関等が一般私人に優先するなど特別に取り扱われているか等を考慮して判断するとしました。行政手続法4条1項の固有の資格も同じ意味に解されています。「法第7条第2項に規定する「固有の資格」とは、一般私人とは異なり、国の機関等であるからこそ立ち得る特有の立場をいい、その資格の有無は、処分に係る事務又は事業の実施主体が国の機関等に限られているか否か、また、限られていない場合であっても当該事務又は事業を実施し得る地位の取得について、国の機関等が一般私人に優先するなど特別に取り扱われているか否か等を考慮して判断すべきものである」という肢は正しいです。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央。左に国の機関を表す男性(背広、札「国の機関」)が2枚の紙を持つ。左の紙「私人と同じ立場で受ける許可」に「固有の資格なし→適用あり」、右の紙「国の機関だからこそ立てる立場での処分」に深紅の「固有の資格あり

条例・規則に基づく地方の処分と、地方の機関がする行政指導は行政手続条例によります

3条3項は、地方公共団体の機関がする処分のうち根拠規定が条例又は規則に置かれているもの、地方公共団体の機関がする行政指導、条例・規則に根拠を置く届出、地方公共団体の機関が命令等を定める行為を外します。法律に根拠のある処分は地方公共団体がしても適用されるので、処分の切り分けは根拠規定の所在です。これに対して行政指導は、根拠が法律にあるか条例にあるかを問わず一律に外れます。行政指導は法律上の根拠を要しない事実行為なので、その手続は地方自治の尊重から各団体が条例で定めるのが適当だからです。「行政手続法の行政指導に関する規定は,地方公共団体の機関がする行政指導にも適用される」という肢は誤りで、「行政手続法の行政指導に関する規定には,地方公共団体の機関が行う行政指導にも適用されるものがある」という肢も誤りです。知事が建築基準法の総合設計許可について申請内容の変更を求める場面も、法律に基づく事務であっても地方公共団体の機関がする行政指導なので同じです。「当該行政指導には,行政手続法の行政指導に関する規定が適用される」という肢は誤りです。除外したままでは公正・透明の確保という目的が地方で失われかねないので、46条は地方公共団体に、行政手続法の趣旨にのっとって必要な措置を講ずる努力義務を課しています。「地方公共団体は、行政指導に関する手続について、行政手続法の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」という肢は正しいです。

県庁の場面。先生が知事役(札「知事(地方公共団体の機関)」)。机の上に3枚の紙。左「法律に根拠のある処分」に「行政手続法 適用あり」、中央「条例に根拠のある処分」に深紅で「3条3項 適用除外」、右「行政指導(根拠を問わない)」に深紅で「3条

国の機関から地方公共団体への行政指導も、行政手続法の外にあります

4条1項が外すのは国の機関等が名あて人となる処分と行政指導です。固有の資格という限定が付くのは処分についてだけで、行政指導には付いていません。したがって、国の行政機関が地方公共団体に対して行う技術的助言や是正の促しには、地方公共団体が私人と同じ立場で受けるものかどうかを問わず、第4章は及びません。「国の行政機関が地方公共団体に対して行う行政指導には、行政手続法の規定は適用されない」という肢は正しいです。これらは地方自治法の関与の規定で規律され、国地方係争処理委員会への審査の申出が受け皿になります。意見公募手続については、3条3項が地方公共団体の機関が命令等を定める行為を外す一方、国の府省令・告示は対象です。39条4項は、公益上緊急に定める必要がある場合、法令の制定と同時に必要となる技術的な細目を定める場合、他の命令等の改正に伴う整理にすぎない場合などを、意見公募手続の例外として個別に掲げています。

適用除外でも憲法31条の手続保障と判例が築いた規律は残ります

行政手続法が外れても、処分の手続が全く自由になるわけではありません。最大判平成4年7月1日(成田新法事件)は、「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない」とし、告知・弁解・防御の機会を与えるかは、制限される権利利益の内容・性質、制限の程度、達成しようとする公益の内容・程度・緊急性等を総合較量して決まるとしました。行政手続法制定前の最判昭和46年10月28日(個人タクシー事件)も、聴聞の機会を与えず申請を却下した手続を違法としています。手続の違反が処分の取消事由になるかは手続の瑕疵の項目で扱います。なお、適用除外は行政手続法の話にとどまり、処分である以上は処分性が認められ、取消訴訟や審査請求の対象になります。

空港近くの建物の前。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央。左に建物の使用禁止命令の紙を持つ男性(札「名あて人」)が吹き出し「告知も弁解の機会もなく使用を禁止された。憲法31条に反する」。先生の吹き出し「憲法31条の保障は刑事手続ではないとい

行政手続法 第3条 第3項

地方公共団体の機関がする処分(その根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)及び行政指導、地方公共団体の機関に対する届出(前条第七号の通知の根拠となる規定が条例又は規則に置かれているものに限る。)並びに地方公共団体の機関が命令等を定める行為については、第二章から前章までの規定は、適用しない。

論文ではこう使う

論文では、まず適用除外に当たるかを条文で切り分けます。地方公共団体の処分なら、根拠規定が条例・規則か法律かを確認し、条例根拠なら3条3項で行政手続法の適用を否定した上で、当該団体の行政手続条例の同旨の規定を適用します。行政指導であれば、地方の機関がするものは根拠を問わず適用除外とし、46条の努力義務と条例の規定に乗せ換えます。国の処分で9号・14号などに当たる場合は、第3章が働かないことを述べた上で、憲法31条の手続保障が及ぶかを成田新法事件の総合較量の枠組みで検討し、制限される権利利益の性質と緊急性を当てはめます。そのうえで、告知・聴聞を欠いたことが処分の取消事由になるかを、防御の機会の実質的な欠落と結果への影響の観点から結論づけます。

試験ではこう問われる

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