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保有個人情報の開示・訂正・利用停止請求とは

ほゆうこじんじょうほうのかいじ・ていせい・りようていしせいきゅう

行政法 行政手続

保有個人情報の開示・訂正・利用停止請求とは、本人が、行政機関等の保有する自己を本人とする保有個人情報について、開示(個人情報保護法76条)、訂正(90条)、利用停止(98条)を求めることができる制度です。誰でも請求できる情報公開法と違い、請求できるのは本人と代理人に限られます。

役所は税や年金、診療の記録など、私たち一人ひとりの情報を大量に持っています。自分の情報がどう記録されているかを本人が確かめ、間違っていれば直させ、違法に使われていれば止めさせる仕組みが、個人情報保護法の三つの請求です。保有個人情報とは、行政機関等の職員が職務上作成し、又は取得した個人情報であって、職員が組織的に利用するものとして保有しているものをいい、行政文書等に記録されているものに限られます(60条1項)。他人の情報を見る制度ではないので、請求できるのは本人と代理人だけです。三つの請求は次のように並びます。

先生が行政機関の長役(札「行政機関の長等」)で窓口に座り、机の上に「保有個人情報」と書いた一人分のファイル。窓口の前に本人の男性(札「本人」)が三枚の請求書を順に差し出している。一枚目「開示請求」、二枚目「訂正請求:事実でない」、三枚目「利

請求できるのは本人と代理人で、対象は自己を本人とする情報です

76条1項の「何人も」は、自己を本人とする保有個人情報についてという限定と一体で読みます。他人の個人情報を本人でない者が請求することはできず、この点が「何人も」に制限のない情報公開法と決定的に違います。法定代理人のほか、本人の委任による任意代理人も本人に代わって請求できます(76条2項)。同じ文書でも、情報公開法で請求すれば個人識別情報として不開示になり、本人が個人情報保護法で請求すれば開示されることがあります。どちらの法律に乗せるかで結論が変わるため、問題文がどの請求かを確定することが先決です。最判令和3年6月15日(保有個人情報の開示請求――刑事施設被収容者の診療情報)は、刑事施設の被収容者が自らの診療情報の開示を求めた事案で、開示によって適正な業務の遂行に支障を及ぼすおそれの有無を具体的に検討すべきものとしました。

  • 開示請求何人も、自己を本人とする保有個人情報の開示を請求できる(76条1項)。未成年者・成年被後見人の法定代理人と、本人の委任による代理人も本人に代わって請求できる(76条2項)
  • 訂正請求開示決定に基づき開示を受けた保有個人情報の内容が事実でないと思料するときに、訂正(追加・削除を含む)を請求できる(90条1項)。開示を受けた日から90日以内(90条3項)
  • 利用停止請求違法に取得され、若しくは利用され、又は違法に提供されていると思料するときに、利用の停止・消去・提供の停止を請求できる(98条1項)。開示を受けた日から90日以内(98条3項)
先生が行政機関の長役(札「行政機関の長等」)で中央、机の上に同じ一冊の文書(札「Aの診療記録」)。左の窓口に他人の男性(札「請求者:本人ではない」)が「情報公開法で開示請求」の紙を出し、先生は文書を伏せて吹き出し「他人の個人識別情報だから不

対象は生存する個人の情報ですが、遺族固有の個人情報となる場合があります

個人情報は生存する個人に関する情報ですから(2条1項)、死者に関する情報はそれ自体としては開示請求の対象になりません。もっとも、死者に関する情報が同時に遺族自身に関する情報でもある場合には、遺族が自己の個人情報として開示を請求できます。「開示請求の対象となる個人情報は,生存する個人に関する情報に限られるが,死者に関する情報が死者の遺族の個人情報となる場合には,当該遺族が自己の個人情報として開示請求を行うことができる」という肢は正しいです。死亡した者の診療情報が遺族の遺伝的体質にかかわる場合などが当たります。保有個人情報は行政文書等に記録されているものに限られるので、職員の記憶や個人的なメモは対象外です。個人の私生活上の情報を公権力が扱うことの重みは、最判昭和56年4月14日(前科照会事件)が、前科等をみだりに公開されないことは法律上の保護に値する利益だとしたところにも表れています。

不開示事由は78条にあり、本人の情報であることを踏まえた特則があります

78条は、本人の生命・健康・生活・財産を害するおそれがある情報、開示請求者以外の個人に関する情報、法人等の正当な利益を害するおそれがある情報、国の安全等に関する情報、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報などを不開示情報として掲げます。構造は情報公開法5条に似ていますが、本人の情報であることに由来する違いがあります。第一に、開示請求者自身を識別する情報はここでは不開示事由になりません。第二に、80条は、不開示情報が含まれていても、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは開示できるとしています。不開示情報かどうかは情報の類型で形式的に決まるので、それを貫くと本人が自己の情報を確かめる利益が過度に害される場合があるからです。「行政機関の長は,開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても,個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは,当該保有個人情報を開示することができる」という肢は正しいです。第三者に関する情報が含まれる場合に意見書提出の機会を与えるかは行政機関の長の裁量で(86条1項)、第三者の情報を80条により開示しようとするときなど86条2項の場合に限って与えなければなりません。「開示請求者以外の第三者に関する情報が含まれているときは,行政機関の長は,当該第三者に意見書を提出する機会を与えなければならない」という肢は誤りです。

先生が行政機関の長役(札「行政機関の長等」)で机に座り、本人の男性(札「本人」)の開示請求に対して文書を手に持っている。文書の中の一部に印「不開示情報(78条)」が付いているが、先生はそれでも文書を差し出し、その手の上に深紅の札「80条:個

訂正請求は開示を受けた後に、期間内にしなければなりません

訂正請求ができるのは、開示決定に基づき保有個人情報の開示を受けた者です(90条1項1号)。内容が事実でないと思料するときに、追加・削除を含む訂正を請求でき、「開示決定に基づき保有個人情報の開示を受けた者は,当該保有個人情報の内容が事実でないと思料するときは,当該保有個人情報の訂正を請求することができる」という肢は正しいです。何が記録されているかを見てからでなければ、どこが間違っているかを指摘できないので、開示を受けていない段階でいきなり訂正を請求することはできず、また開示を受けた日から90日以内という期間制限があります。「何人も,法に基づく開示決定により開示を受けた保有個人情報の内容が事実でないと思料するときは行政機関の長に対して訂正を請求することができるが,この訂正の請求は,開示を受けた日から法定の期間内にしなければならない」という肢は正しいです。訂正の対象は事実の誤りに限られ、評価や判断の当否を争うものではありません。最判平成18年3月10日(レセプト訂正請求事件)は、訂正請求の対象となる事実の範囲について判断しています。

利用停止請求は違法な取得・利用・提供を理由とし、不服は審査請求でも訴訟でも争えます

利用停止請求は、保有個人情報が法令に違反して取得され、若しくは利用され、又は違法に提供されていると思料するときにすることができ、利用の停止・消去・提供の停止を求めます(98条1項)。訂正と同じく、開示を受けた者が開示を受けた日から90日以内に請求します。開示決定等、訂正決定等、利用停止決定等はいずれも処分ですから、審査請求と取消訴訟のどちらでも争えます。審査請求前置は採られておらず、「法に基づく不開示決定については,いわゆる不服申立前置の制度はとられておらず,不服を有する者は,行政不服審査法に基づく不服申立てをせずに直接裁判所に対して取消訴訟を提起することもできる」という肢は正しいです。審査請求があったときは、原則として情報公開・個人情報保護審査会に諮問します(105条)。審理員による審理手続は行われず、審査会が第三者機関として審理する点が行政不服審査法の一般の流れと異なります。審査会の仕組みは審理員と行政不服審査会の項目と並べて覚えます。

個人情報保護法 第76条 第1項

何人も、この法律の定めるところにより、行政機関の長等に対し、当該行政機関の長等の属する行政機関等の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができる。

論文ではこう使う

論文では、どの法律のどの請求かを最初に確定します。他人の情報を含む文書なら情報公開法の請求、自己の情報なら個人情報保護法の開示請求で、後者では請求者自身を識別する情報が不開示事由にならないことを指摘します。不開示決定を争う場合は、78条各号の該当性を検討し、事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれについては、抽象的な可能性では足りず具体的なおそれを要するとして、被収容者の診療情報に関する判例の枠組みを当てはめます。80条の裁量的開示の余地にも触れます。訂正請求では、開示を受けた者であること、90日の期間内であること、争っている点が事実の誤りであって評価の当否ではないことを順に確認し、記録の作成経緯に照らして訂正義務の有無を論じます。救済手段としては、審査請求と取消訴訟が自由に選べること、義務付け訴訟を併合提起して開示や訂正を実現できることを述べます。

試験ではこう問われる

「保有個人情報の開示・訂正・利用停止請求」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型6件と関係する過去問の肢6本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、行政法の肢別演習を

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