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開発許可とは

かいはつきょか

行政法 その他の行為形式

開発許可とは、主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更について、都道府県知事等が与える許可です(都市計画法29条1項)。無秩序な市街化を防ぎ、道路や排水施設を備えた良好な宅地を確保するための制度です。

山を切り開いて住宅地を造るとき、業者は工事の前に知事の開発許可を受けます。道路の幅、排水、がけの安全などを先に審査しないと、できあがった後では直せないからです。市街化区域では技術基準を満たせば許可され、市街化を抑える市街化調整区域では立地の基準まで満たさないと許可されません。許可は工事を適法にできる地位を与えるものなので、工事が終われば役目を終えますが、調整区域では建築の禁止を解く効果が残ります。この効果の違いが、争えるかどうかまで左右します。

県庁の開発審査の窓口の場面。先生が知事役(札「都道府県知事」)でカウンターに立ち、宅地の造成図面を広げた開発業者の男性(札「開発業者」)が「開発許可申請」の紙を出している。先生の後ろの壁に二枚の看板。左「市街化区域:33条の技術基準(道路・

33条の基準を満たせば許可しなければならず、34条は市街化調整区域だけに加わります

開発許可の基準は二段構えです。市街化区域内の開発行為は、道路や公園の配置、排水施設、地盤の安全などを定めた33条の技術基準を満たす限り許可しなければならない羈束的な仕組みです。これに対し市街化調整区域では、市街化を抑制すべき区域という性格から、33条の基準に加えて34条各号のいずれかに該当しなければ許可できません。34条各号の判断には、周辺の市街化を促進するおそれがないかといった評価を伴う要件が含まれ、知事に一定の判断の幅が認められます。したがって、同じ開発許可でも区域によって裁量の有無が変わります。申請には、開発行為に関係がある公共施設の管理者の同意が要ります(32条1項)。工事が完了すると検査を受けて検査済証が交付され、原則としてそれまでは建築物を建築できません(36条、37条)。許可を受けずに開発行為をした場合や、許可の内容に違反した場合には、都道府県知事等は工事の停止や建築物の除却などの違反是正命令を発することができます(81条)。

  • 33条の基準全区域に共通する技術基準。道路・公園・排水施設の配置、地盤の安全、給水施設などが定められ、要件を満たせば許可しなければなりません
  • 34条の基準市街化調整区域にだけ加わる立地基準。市街化を抑制すべき区域なので、日常生活に必要な店舗や既存集落の建築など、列挙された場合に限って許可できます
  • 32条の同意開発行為に関係がある公共施設の管理者の同意を得ることが申請の要件です
  • 36条・37条工事完了の検査と検査済証の交付。原則として検査済証の交付まで建築物を建築できません

市街化区域では、工事が完了して検査済証が交付されると訴えの利益が失われます

開発許可は、申請に係る開発行為が33条の要件に適合しているかを公権的に判断する行為で、これを受けなければ適法に開発行為を行うことができないという法的効果をもつにとどまります。工事が完了して検査済証が交付されれば、その効果は既に尽きており、許可を取り消しても工事のやり直しを命じる効果は生じません。最判平成5年9月10日はこの理由により、市街化区域内の開発許可について、工事完了後は取消しを求める訴えの利益が失われるとしました。工事完了後の建築は建築基準法の建築確認で規律されるので、予定建築物の建築確認がまだでも結論は変わりません。「市街化区域内にある土地を開発区域として都市計画法第29条による開発許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においても、予定建築物についていまだ建築確認がされていないときは、当該許可の取消しを求める訴えの利益は失われない」という肢は誤りです。理由づけを違反是正命令に求めることもできません。同判決は、開発許可の存在は違反是正命令を発するうえで法的障害にならず、許可が判決で取り消されても違反是正命令を発すべき法的拘束力は生じないとしました。是正命令は「命ずることができる」と定められた監督処分で、発するかどうかは知事の裁量に委ねられており、取消判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)は取り消された処分をめぐる対応を義務づけるだけだからです。「当該開発許可が判決で取り消された場合には,違法な開発行為であることが公権的に確定され,その拘束力により都道府県知事等は同法第81条に基づく違反是正命令を発すべき義務を負うことになるから,開発許可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない」という肢は誤りで、「開発許可が判決で取り消されたときは,当該取消判決に違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずることになる」という肢も誤りです。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、前に近隣住民の男性(札「周辺住民」)が「開発許可の取消し」と書いた訴状を持って立っている。男性の後ろに完成した住宅地の絵と札「工事完了・検査済証交付済み(市街化区域)」。先生の吹き出し

市街化調整区域では、工事完了後も訴えの利益が残ります

市街化調整区域内の開発許可には、市街化区域の許可にはない効果があります。調整区域では原則として建築物の建築が禁止されていますが(43条1項)、開発許可を受けた土地では予定建築物を建築できるという形で制限が解除されます。この効果は工事完了後も続きますから、許可が取り消されれば建築が禁止された状態に戻ります。最判平成27年12月14日はこの点を捉えて、市街化調整区域内の開発許可については、工事が完了し検査済証が交付された後も、予定建築物の建築が可能となるという法的効果が残っている限り訴えの利益が失われないとしました。市街化区域か市街化調整区域かで結論が反対になるのは、処分の効果が現在も残っているかが違うからです。訴えの利益の一般的な考え方は訴えの利益の項目で扱います。

同じ法廷だが場面は市街化調整区域。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、前に近隣住民の男性(札「周辺住民」)が「開発許可の取消し」の訴状を持つ。男性の後ろに完成した建物と札「工事完了(市街化調整区域)」、その隣に「43条1項 建築禁止

がけ崩れのおそれがある周辺住民には原告適格が認められますが、財産権までは保護されません

開発許可の技術基準は、開発区域内の安全だけでなく、周辺の土地の安全にも配慮しています。最判平成9年1月28日は、がけ崩れ等のおそれが多い土地に関する33条1項7号の規定について、開発区域内外の住民の生命身体の安全を個別的利益としても保護する趣旨を含むとして、がけ崩れ等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の住民に原告適格を認めました。もっとも、保護される利益の範囲は根拠法令の趣旨から個別に判断されます。森林法10条の2に基づく林地開発許可について、最判平成13年3月13日は、土砂の流出や崩壊、水害の防止を求める規定は近接する地域の住民の生命身体の安全等を個別的利益として保護する趣旨を含むとしつつ、周辺土地の所有権等の財産権までを個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは困難だとしました。「同法の規定は、開発区域周辺の土地の所有権等の財産権を個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むから、開発区域周辺の土地を所有する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有する」という肢は誤りです。生命身体の安全と財産上の利益とで扱いが分かれるのは、災害防止の規定が守ろうとしているのが人の安全だからです。判断枠組みは原告適格の項目のとおりです。

公共施設管理者の同意の拒否には処分性がありません

32条は、開発行為に関係がある公共施設の管理者の同意を申請の要件としています。同意が得られなければ許可申請ができませんから、事実上は開発を止める効果があります。しかし最判平成7年3月23日は、同意を拒否する行為それ自体は開発行為を禁止したり制限したりする効果をもつものではなく、同意を得られずに開発行為ができなくなっても開発行為を行おうとする者の権利ないし法的地位が侵害されたとはいえないとして、同意の拒否に処分性を認めませんでした。「都市計画法は開発行為による影響を受ける公共施設の管理者の同意を得ることを開発許可申請の要件としているが,公共施設の管理者が同意を拒否する行為自体は,開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえず,当該同意を拒否する行為には処分性は認められない」という肢は正しいです。開発を禁止する効果をもつのはあくまで29条の許可制であって、同意はその前提となる手続にとどまります。処分性の判断で、事実上の不利益と法的効果を区別する典型例です。

市の道路管理課の窓口の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央に立ち、左に開発業者の男性(札「開発業者」)が「32条の同意 申請」と書いた紙を持ち、右に道路管理者の男性(札「公共施設の管理者」)が「同意しません」の吹き出し。業者の吹き出し

市街化調整区域では、開発許可を受けずに建築することも原則として禁止されます

市街化調整区域の規制は開発行為だけに向けられたものではありません。都市計画法43条1項は、開発許可を受けた開発区域以外の区域内では、原則として建築物を新築し、改築し、又は用途を変更してはならないと定め、例外に当たる場合には知事の許可を要するとしています。開発行為を伴わない建築であっても規制が及びます。この建築許可の基準は34条に準じて定められており、許可をするかどうかの判断には知事の裁量が働きます。市街化を抑制すべき区域という区域区分の趣旨が、開発と建築の両面から貫かれています。区域区分そのものは都市計画決定によって定まりますが、その決定には処分性が認められませんから、区域区分の違法を争いたい者は、具体的な不許可処分の取消訴訟でその違法を主張することになります。区域区分の適否をめぐる判断は行政計画の計画裁量の問題です。

都市計画法 第32条 第1項

開発行為をしようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。

論文ではこう使う

論文では、まず区域の性格を確認します。市街化区域であれば33条の技術基準への適合が羈束的に判断されることを述べ、市街化調整区域であれば34条各号該当性に知事の判断の幅があることを指摘して、裁量審査の枠組みを立てます。周辺住民が原告となる事案では、33条のうちどの技術基準が誰の何を守るために置かれているかを特定し、がけ崩れによる生命身体への被害が予想される範囲かを当てはめて原告適格を論じます。工事が完了している事案では、市街化区域なら許可の効果が尽きたとして訴えの利益の消滅を認め、違反是正命令の義務付け訴訟や国家賠償へ請求を組み替えます。市街化調整区域なら43条1項による建築制限の解除という効果が残ることを指摘し、訴えの利益を肯定します。

試験ではこう問われる

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