行政計画とは
ぎょうせいけいかく
行政計画とは、行政権が一定の公の目的のために目標を設定し、その目標を達成するための手段を総合的に提示するものです。都市計画のように私人を法的に拘束する拘束的計画と、行政内部の指針にとどまる非拘束的計画があります。
自分の土地に家を建てようとしたら、市の都市計画で工業専用地域に指定されていて住宅が建てられない、あるいは区画整理の対象になっていて土地の形が変わる予定だと分かることがあります。役所が将来の街の姿を描いた計画は、ただの青写真ではなく、こうして個人の土地の使い方を直接縛ることがあります。だからこそ、どの計画が私人を法的に拘束するのか、計画のどの段階で裁判所に争えるのか、計画を決めるときの役所の判断にどこまで審査が及ぶのかが問題になります。
行政計画の中には私人を法的に拘束するものがあります
行政計画とは、行政権が一定の公の目的のために目標を設定し、その目標を達成するための手段を総合的に提示するものをいいます。計画という言葉から事実上の青写真を思い浮かべがちですが、都市計画のように法律の根拠に基づき私人の建築行為を直接制限するものもあります。計画は大きく二つに分かれます。経済計画や各種の振興計画のように行政内部の指針にとどまるものが非拘束的計画、都市計画の用途地域指定や土地区画整理事業計画のように私人の権利を直接制限するものが拘束的計画です。拘束的計画は法律の根拠を要し、法律の定める手続に従って決定され、効果として建築制限などが働きます。市街化区域と市街化調整区域の区分がされると調整区域内の開発は原則として抑制され、用途地域が指定されると建築基準法により用途や容積率の制限が当然に生じます。したがって「行政計画とは,行政権が一定の公の目的のために目標を設定し,その目標を達成するための手段を総合的に提示するものであるから,行政計画に分類される都市計画決定の内容が私人に対して法的拘束力を有することはない」という肢は誤りです。短答では、次の四つの計画について処分性の結論を覚えているかが繰り返し問われます。
- 土地区画整理事業計画の決定処分性が認められます(最大判平成20年9月10日)
- 用途地域の指定処分性は認められません(最判昭和57年4月22日)
- 土地改良事業の施行認可処分性が認められ、工事完了後も訴えの利益は残ります(最判平成4年1月24日)
- 第二種市街地再開発事業の計画決定処分性が認められます(最判平成4年11月26日)
計画裁量は広いですが、考慮すべき事項を落とせば違法になります
計画の策定では、何を目標とし、どの手段を選ぶかについて行政庁に広い判断の幅が認められます。これを計画裁量といいます。都市計画法13条1項が掲げる基準は適正な都市機能や健全な都市環境といった総合的なものにとどまるため、都市施設の規模や配置を定めるには諸般の事情を総合的に考慮した政策的・技術的な判断が欠かせないからです。もっとも、広いことと審査が及ばないことは別です。最判平成18年11月2日(小田急高架訴訟の本案判決)は、都市施設に関する都市計画の決定又は変更は、その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により重要な事実の基礎を欠く場合、又は事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと、判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等によりその内容が社会通念に照らし著しく妥当性を欠く場合に限り、裁量権の範囲を逸脱し又は濫用したものとして違法になるとしました。判断過程の統制、すなわち考慮すべき事項を考慮したか、考慮してはならない事項を考慮していないかという審査は計画裁量にも及びます。「都市施設に係る都市計画決定に当たっては,当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,政策的,技術的な見地から判断することが不可欠であり,このような判断は,これを決定する行政庁の広範な裁量に委ねられている」という肢の前段は正しいですが、「したがって,裁判所は,行政庁が判断の過程において考慮すべき事項を考慮せずに都市計画決定を行ったことを理由に挙げて,当該決定を違法とすることはできない」と続く後段は誤りです。審査の枠組みは行政裁量の項目で扱った判断過程審査がそのまま当てはまります。
土地区画整理事業計画の決定には処分性が認められます
かつての判例は、事業計画の決定は青写真にすぎず、事件の成熟性を欠くとして処分性を否定していました。最大判平成20年9月10日(土地区画整理事業計画)はこれを変更し、事業計画の決定が公告されると施行地区内の建築行為が知事の許可にかかり、宅地所有者等は換地処分を受けるべき地位に立たされるとして、その法的地位に直接的な影響が生じることを理由に処分性を認めました。あわせて、後続の換地処分の段階で争わせるのでは、事業が進んだ後に計画を覆すことになって実効的な権利救済にならないことも理由としています。「土地区画整理事業の事業計画の決定は,後続の仮換地指定や換地処分の取消訴訟によって権利救済の目的が十分達成でき,事件の成熟性が欠けることから,処分性は認められません」という肢は誤りです。詳しい手続の流れは土地区画整理事業の項目で扱います。
用途地域の指定には処分性が認められません
これに対し、最判昭和57年4月22日(用途地域の指定)は、工業地域を指定する都市計画決定について、その効果は当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課す法状態を生み出すものではあるが、新たに制約を課す法令が制定された場合と同様の、不特定多数の者に対する一般的抽象的なものにとどまるとして処分性を否定しました。区画整理事業計画との違いは、特定の施行地区内の特定の者が換地処分を受ける地位に立たされるかどうかにあります。「都市計画法に基づく用途地域の指定は,当該地域内の土地所有者等に建築制限等の制約を課し,その法的地位に変動をもたらすものであることから,処分性が認められます」という肢は誤りです。処分性が否定される結果、指定の違法は後続の建築確認拒否処分の取消訴訟で主張することになります。同判例も、建築を妨げられている者は、建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、地域指定が違法であることを主張してその処分の取消しを求める道が残されているとしています。「都市計画決定としての用途地域の指定は抗告訴訟の対象となる処分には当たらないため,用途地域指定を前提とする建築確認拒否処分に対して建築主が取消訴訟を提起した場合,建築主は当該取消訴訟において当該用途地域指定が違法であることを主張することはできない」という肢は誤りで、主張できます。この関係は違法性の承継の問題ではなく、処分でないものには公定力も取消訴訟の排他的管轄も生じないので、その違法は後続処分の取消訴訟で当然に主張できる、という理解によります。
計画は上位の計画に適合しなければならず、その適否は事業認可の段階でも問われます
都市計画法13条1項柱書きは、都市計画は公害防止計画に適合しなければならないと定めています。そこで計画の決定・変更に当たっては、都市計画法の趣旨目的に加えて、公害防止計画の根拠法令である環境基本法の趣旨目的も踏まえる必要があります。最大判平成17年12月7日(小田急高架訴訟の大法廷判決)は、公害防止計画に関する規定は、相当範囲にわたる騒音、振動等により健康又は生活環境に係る著しい被害が発生するおそれのある地域について、その発生を防止するために総合的な施策を講ずることを趣旨目的とするものだとしたうえで、都市計画の決定又は変更はこの趣旨目的を踏まえて行うことが求められるとしました。「都市計画法第13条第1項柱書きが,都市計画は公害防止計画に適合しなければならない旨を規定していることからすれば,都市計画の決定又は変更に当たっては,都市計画法の規定の趣旨及び目的に加えて,公害防止計画の根拠法令である環境基本法の公害防止計画に関する規定の趣旨及び目的を踏まえて行うことが求められる」という肢は正しいです。この理は同判決で、原告適格の判断において関係法令の趣旨目的を参酌する場面で働きました。また、都市計画法61条1号は事業認可の基準として事業の内容が都市計画に適合することを掲げますが、最判平成18年11月2日は、これを根拠に、都市計画事業認可が適法であるためにはその前提となる都市計画が適法であることが必要だとしました。違法な計画に適合しさえすれば認可できるとすると、違法な計画がそのまま事業として実現されてしまうからです。「都市計画決定と事業内容との適合性のみを求める趣旨であり,都市計画決定自体が適法であることまでも必要とする趣旨ではない」という肢は誤りです。
計画の変更は自由ですが、信頼を裏切れば違法になることがあります
計画は社会情勢の変動に応じて変わるものですから、行政主体は原則として従前の決定に拘束されません。しかし、計画の決定が特定の者に対する個別的具体的な勧告や勧誘を伴い、その者が相当長期にわたる多額の資金投入を余儀なくされる場合には、信頼を保護すべき要請が働きます。最判昭和56年1月27日(工場誘致施策と信頼の保護)は、損害を補償するなどの代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、やむを得ない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、不法行為責任を生じさせるとしました。計画変更それ自体が違法になるのではなく、代償的措置を欠く点が違法とされる構成です。詳しくは信義則の項目で扱います。
最大判平成20年9月10日(土地区画整理事業計画)
施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。
論文ではこう使う
論文では、計画の争い方を段階に分けて立てます。まず処分性です。最大判平成20年9月10日の枠組みに従い、計画決定によって施行地区内の特定の者が一定の手続に従った処分を受けるべき地位に立たされるか、建築制限などの規制が直接及ぶかを検討し、あわせて後続処分を待たせるのでは実効的な権利救済にならないことを補強事由として述べます。処分性が否定される一般的抽象的な計画であれば、後続の拒否処分の取消訴訟でその違法を主張する筋を示します。本案では計画裁量を前提に判断過程審査を用い、法が考慮を求める事項を落としていないか、他事考慮がないかを当てはめます。計画変更の事案では、勧告・勧誘の個別具体性と投資の規模・期間を拾い、代償的措置の有無から信義則違反による国家賠償を構成します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。