土地区画整理事業とは
とちくかくせいりじぎょう
土地区画整理事業とは、道路や公園を整備しながら宅地の区画形質を整えるために、従前の宅地に代わる土地を定めてそこへ権利を移す事業です。事業計画の決定、仮換地の指定、換地処分の順に進みます。
曲がった細い道と不揃いな宅地が並ぶ古い街を、まっすぐな道路と公園のある街に作り替える事業があります。地権者は少しずつ土地を出し合い(減歩)、その分は道路や公園、事業費に充てる保留地になり、代わりに新しい区画(換地)を受け取ります。何百人もの権利を一度に動かすので、計画を決めて公告し、工事の間は仮換地を使わせ、最後に換地処分で権利を確定するという段階を踏みます。段階ごとに地権者の地位が変わるため、どの段階のどの行為を裁判で争えるかが、行政法ではよく問われます。
事業計画の決定には処分性が認められます
かつての判例は、事業計画は事業の青写真にすぎず、その法的効果は一般的抽象的なものだとして処分性を否定し、後続の仮換地指定や換地処分を争えば足りるとしていました。最大判平成20年9月10日(土地区画整理事業計画)はこれを改め、計画決定の公告によって施行地区内の建築行為が制限され、宅地所有者等が換地処分を受けるべき地位に立たされることを理由に処分性を認めました。あわせて、換地処分がされた後に取消判決を得ても事情判決がされる可能性が大きく、実効的な権利救済を図る観点からは計画決定の段階で争わせるのが合理的だとしています。「土地区画整理事業の事業計画の決定は,後続の仮換地指定や換地処分の取消訴訟によって権利救済の目的が十分達成でき,事件の成熟性が欠けることから,処分性は認められません」という肢は誤りです。処分性の判断で、救済の実効性という視点を正面から用いた点でも重要な判例です。
仮換地の指定にも換地処分にも処分性があり、計画の違法は計画決定の段階で争います
仮換地の指定は、従前地の使用収益権を奪い、代わりに仮換地を使用収益させる行為ですから、権利義務に直接影響する処分です。換地処分も、公告の翌日から換地を従前の宅地とみなし、権利の帰属先を決める処分です。いずれも取消訴訟の対象になります。もっとも、事業計画の決定に処分性が認められた現在は、計画の違法を争いたい者は計画決定の段階で取消訴訟を提起しなければならず、出訴期間が経過した後に後続の処分の取消訴訟で計画の違法を主張することは、公定力の働きにより原則としてできません。争う時期が前倒しになったという点が実務上の意味です。換地計画の縦覧と意見書の提出、審査請求の前置など、法が用意する手続の順序も確認しておきます。
- 事業計画の決定と公告施行地区や設計の概要が定まり、以後は施行地区内の建築行為が知事等の許可にかかります(76条)
- 仮換地の指定工事のために、従前の宅地に代えて仮に使用収益できる土地を定めます(98条)。従前地の使用収益はできなくなります
- 換地処分工事完了後に換地計画に基づいて行われ、公告の翌日から換地が従前の宅地とみなされます(103条、104条)
- 清算金の徴収・交付換地が従前の宅地に照応しない分を金銭で調整します
工事と換地処分が完了しても訴えの利益は残り、原状回復の不能は事情判決で考慮します
工事も換地処分もすべて終わり、原状に回復することが社会通念上不可能になったとしても、取消しを求める利益が消えるわけではありません。最判平成4年1月24日(土地改良事業と訴えの利益)は、土地改良事業の施行認可について、認可後の一連の手続と処分は認可が有効に存在することを前提とするから、認可が取り消されれば換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかだとして、訴えの利益を認めました。原状回復が不可能であることは、行政事件訴訟法31条1項の事情判決の適用に際して考慮されるべき事柄です。「町営土地改良事業の施行認可処分の取消しを求める訴訟の係属中に,事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため,社会通念上事業施行以前の原状に回復することが不可能になったとしても,認可処分の取消しを求める訴えの利益は消滅しない」という肢は正しく、「事業施行地域を原状に回復することは社会通念上不可能であり,当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する」という肢は誤りです。取消判決で除去できる法的効果が残っている限り、事実として元に戻せないことは訴訟要件ではなく本案の問題だからです。
照応の原則に違反する換地処分は違法で、無効を主張して無効確認の訴えを起こすこともできます
換地は、従前の宅地と位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければなりません。これを照応の原則といいます。著しく照応を欠く換地は違法となり、取消しの対象になります。もっとも、照応するかどうかの判断には専門的な評価が伴うため、施行者に一定の判断の幅が認められ、著しく合理性を欠く場合に限って違法とされます。換地処分を受けた者が、照応の原則違反により処分は無効だと主張して争おうとするときは、行政事件訴訟法36条により無効確認の訴えを提起できます。最判昭和62年4月17日(換地処分無効確認訴訟の訴えの利益)は、登記等の手続がすべて終了した事案で、従前地の所有権確認や登記の抹消を求める民事訴訟によっては紛争を適切に解決できないとして、無効確認の訴えを適法としました。換地処分は多数の権利者に対して一体として行われるので、個別の民事訴訟で権利関係を組み替えるのは適切でないからです。「土地改良事業の施行に伴い土地改良区から所有地の換地処分を受けた者は、同処分に基づく登記等の手続が全て終了したときは、用途、地積等を総合的に勘案して当該換地が従前の土地に照応したものでなければならない旨のいわゆる照応の原則違反を理由とする同処分の無効確認を求める訴えを適法に提起することができない」という肢は誤りです。照応の原則違反が本当に無効事由に当たるかは本案で判断される問題であり、訴えを起こせるかどうかとは別です。
事情判決は、公益との衡量で請求を棄却しつつ違法を宣言する仕組みです
取消訴訟において、処分が違法であっても、これを取り消すことが公の利益に著しい障害を生ずる場合で、原告の受ける損害の程度や賠償の方法などを考慮して取消しが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は請求を棄却することができます(行政事件訴訟法31条1項)。このとき判決の主文で処分が違法であることを宣言しなければなりません。区画整理や土地改良のように、多数の権利関係が積み上がった事業では、取消しによる混乱が大きいため事情判決が用いられることがあります。原告は違法の宣言を足がかりに国家賠償を求めることになります。最大判平成20年9月10日が計画決定の段階で争わせるのが合理的だとした背景には、後の段階では事情判決で終わってしまうという事情がありました。
建築行為の制限は、事業計画の決定の公告から換地処分の公告まで続きます
事業計画の決定が公告されると、施行地区内で建築物の新築や増改築、宅地の形質の変更、重量が政令で定める限度を超える物件の設置をしようとする者は、知事等の許可を受けなければなりません(76条1項)。工事の妨げになる行為を抑えるためです。違反した者には、施行者の申立てに基づき原状回復等を命ずることができ、罰則も用意されています。この制限は換地処分の公告がある日まで続きますから、事業計画の決定は宅地所有者等にとって長期にわたる具体的な不利益をもたらします。最大判平成20年9月10日が処分性を認めた第一の理由はここにありました。なお、換地計画を定めるには関係権利者の同意が必要とされる場合があり、施行者の種類によって手続が異なります(最判昭和59年1月31日)。仮換地の指定を受けた者は従前地を使用収益できなくなりますが、所有権自体は換地処分まで従前地に残るという点も確認しておいてください。
最大判平成20年9月10日(土地区画整理事業計画)
施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきである。
論文ではこう使う
論文では、争う対象をどの段階に定めるかから始めます。事業計画の決定については、建築制限が及ぶこと、換地処分を受けるべき地位に立たされること、後の段階では事情判決により実効的な救済が得られないことを挙げて処分性を肯定します。出訴期間の経過が問題になる場面では、計画決定に処分性が認められる以上、後続処分の取消訴訟で計画の違法を主張することは公定力により原則として許されないと述べ、違法性の承継が認められる特段の事情があるかを検討します。換地処分の違法を争う事案では、照応の原則を規範として立て、施行者の判断に著しく合理性を欠く点があるかを当てはめます。無効を主張する事案では、民事訴訟では紛争を適切に解決できないことを示して36条の要件を満たすと述べます。事業が完了している場合は、訴えの利益は消滅しないとしたうえで、事情判決の要件を公益との衡量で当てはめ、違法宣言と国家賠償で救済を図る筋を示します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。