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用語集 / 行政法 / 行政財産と普通財産

行政財産と普通財産とは

ぎょうせいざいさんとふつうざいさん

行政法 その他の行為形式

行政財産と普通財産とは、公有財産を用途で分けた区別で、公用又は公共用に供される財産が行政財産、それ以外が普通財産です。行政財産は原則として貸付け・譲渡ができず、第三者の使用は目的外使用の許可という行政処分によりますが、普通財産の貸付けや売払いは私法上の契約です。

市民団体が市立中学校の体育館で集会を開きたいと申し込む場面を考えます。学校は教育のために置かれた市の財産ですから、市が土地を貸すときのように自由に契約できるわけではなく、教育の用途を妨げない範囲で校長や教育委員会が使用を許可するかどうかを決めます。他方、市が使い道のなくなった土地を売るときは、普通の売買です。同じ市の財産でも、いま行政の仕事や住民の利用に使われているかどうかで、使わせ方も、断られたときの争い方も変わります。

市役所の財産管理課の場面。先生が市長役(札「市長」)で、左右二枚の看板の間に立っている。左の看板「行政財産:庁舎・学校・道路・公園」の下に校舎の小さな絵、右の看板「普通財産:使い道のない土地」の下に空き地の小さな絵。左に市民団体の男性(札「

目的外使用を許可するかどうかは管理者の裁量に委ねられます

公有財産は、用途によって二つに分かれます。庁舎のように行政が自ら使う公用財産と、道路や公園のように住民の利用に供する公共用財産を合わせて行政財産といい、それ以外を普通財産といいます(地方自治法238条3項、4項)。行政財産はその用途又は目的を妨げない限度において使用を許可することができます(238条の4第7項)。最判平成18年2月7日(呉市教研集会事件)は、公立学校施設の目的外使用を許可するかどうかは原則として管理者の裁量に委ねられるとしました。条文が「許可することができる」と定めるにとどまり、学校施設は道路や公民館と違って本来学校教育の目的に使うべきものとして設置されているからです。学校教育上の支障がないからといって当然に許可しなければならないものではなく、行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的、態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできます。「管理者は,学校教育上の支障がないからといって当然に許可しなくてはならないものではなく,行政財産である学校施設の目的及び用途と目的外使用の目的,態様等との関係に配慮した合理的な裁量判断により使用許可をしないこともできる」という肢は正しく、「学校教育上支障がない場合には原則として許可すべきものであり,学校教育上の支障がないにもかかわらず不許可とすることは管理者の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用となる」という肢は誤りです。本来の用途に供するための財産である以上、許可は例外的な措置だという発想が出発点です。扱いは次のように違います。

  • 行政財産貸付け、交換、売払い、譲与、信託、私権の設定は原則としてできません(238条の4第1項)。用途又は目的を妨げない限度で使用を許可できます(同条7項)
  • 普通財産行政目的に供されていないので、貸付け、交換、売払いなど私法上の取引の対象になります(238条の5)
  • 目的外使用許可行政財産の本来の用途を妨げない範囲で、第三者に使用を認める行政処分。借地借家法の適用はありません
  • 使用許可の撤回公用又は公共用に供するため必要を生じたときは、許可を取り消すことができます(238条の4第9項)

裁量があっても、考慮要素を誤れば逸脱・濫用になります

裁量が認められることと、審査が及ばないことは別です。呉市の事件で最高裁は、管理者の裁量判断は使用の日時、場所、目的及び態様、使用者の範囲、使用の必要性の程度、許可した場合の弊害や影響、代替施設確保の困難性など諸般の事情を総合考慮してされるものだとしたうえで、混乱を招き児童生徒に教育上悪影響を与えるという理由でされた不許可処分について、重視すべきでない考慮要素を重視するなど考慮した事項に対する評価が明らかに合理性を欠き、他方で当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず、その結果社会通念に照らし著しく妥当性を欠くとして違法としました。「学校施設の目的外使用許可の判断が管理者の裁量に委ねられることを前提として,裁量処分をする際の考慮事項に着目した司法審査の在り方を示したものといえる」という肢は正しいです。従前の運用も考慮要素になります。同判決は、従前同一目的での申請を物理的支障のない限り許可してきた運用があっても、そのことから直ちに異なる取扱いが裁量権の濫用になるわけではないとしつつ、従前の許可の運用は使用目的の相当性やこれと異なる取扱いの動機の不当性を推認させたり、比例原則ないし平等原則の観点から考慮すべき要素となったりすることは否定できないとしました。「従前,同一目的での使用許可申請を物理的支障のない限り許可してきたという運用があったとしても,そのような従前の許可の運用が裁量権濫用に当たるか否かの判断において考慮すべき要素となるということはできない」という肢は誤りです。審査の枠組みは行政裁量の判断過程審査そのものです。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央。左に教育委員会の男性(札「教育委員会」)が「不許可:混乱を招き教育に悪影響」と書いた通知を持ち、右に教職員組合の男性(札「教研集会の主催者」)が「これまで毎年許可されてきた」と書いた記録を持っている。先

期間の定めのない使用許可の撤回に損失補償は原則として不要です

最判昭和49年2月5日(行政財産使用許可の撤回と損失補償)は、都有行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、権利自体にそのような制約が内在しているものとして付与されているとしました。行政財産は本来の用途のために保持されている財産ですから、それを妨げない限度で認められた使用権は、初めから本来の用途の必要に譲る性質を持っているわけです。ですから本来の用途上の必要から撤回されても、使用権者は特別の事情のない限り補償を求められません。「使用権者は,特別の事情のない限り,その取消しによる土地使用権喪失についての補償を求めることはできない」という肢は判示の内容として正しいです。特別の事情としては、使用権者が対価を支払って権利を取得し、その対価が用途上の必要が生じるまでの期間に相応するものと認められない場合などが挙げられます。授益的処分の撤回の一般論は職権取消しと撤回の項目で扱います。

都有地の場面。先生が都知事役(札「都知事」)で、「使用許可の撤回:本来の用途上の必要」と書いた通知を、土地の上に建物を建てて使っている男性(札「使用権者」)に渡している。男性の吹き出し「期間の定めなく使ってきたのに、補償はないのか」。先生の

普通財産の払下げは私法上の契約で、処分性がありません

普通財産は行政目的に供されていませんから、その売払いや貸付けは私法上の取引です。国が私人と対等の立場で結ぶ契約であって、優越的な地位から一方的に権利義務を形成するものではありません。最判昭和35年7月12日は、国有普通財産の払下げは私法上の売買であり、売渡申請書の提出とこれに対する払下許可という形式が採られていても、その法律上の性質に影響を及ぼすものではないとしました。申請書の提出と許可という形式は財産管理上の手続の便宜にすぎず、実質は売買契約の申込みと承諾です。「国有普通財産の払下げは,売渡申請書の提出及びこれに対する払下許可の形式が採られており,国が優越的地位に立って私人との間の法律関係を定めるものであるから,処分性が認められるものといえる」という肢は誤りですし、「国有の普通財産の売払いは,取消訴訟の対象となる処分に当たる」という肢も誤りです。これに対し、行政財産の目的外使用許可は行政処分ですから、不許可は取消訴訟の対象になり、許可の義務付けや仮の義務付けを求めることもできます。同じ財産の利用でも、財産の種類によって争訟方法が変わる点が出題の急所です。

国の財務局の窓口の場面。先生が財務局の担当者役(札「国の財産管理者」)で、「払下許可」と判の押された書類を、買主の男性(札「買主」)に渡している。男性の吹き出し「許可という形だから、これは行政処分ですか」。先生の吹き出し「普通財産の払下げは

使用許可が失効しても、退去を代執行で実現することはできません

使用許可の期限が過ぎれば使用権は消滅しますが、占有者が立ち退かないときに行政が実力で追い出せるわけではありません。行政代執行法2条が代執行の対象とするのは、他人が代わってすることのできる行為、すなわち代替的作為義務に限られます。退去は義務者自身がしなければ意味のない義務であって、他人が代わってすることのできる行為ではないからです。「市が庁舎の一部屋の使用許可を市の職員組合に与えていたが,当該使用許可の期限が経過した後も組合員が立ち退かない場合,同部屋からの組合員の退去について代執行をすることはできない」という肢は正しいです。人を部屋の外へ移動させるには直接強制の根拠となる個別の法律が要りますが、そのような法律はありません。この場合、財産の管理者は所有権に基づく明渡請求の民事訴訟を提起することになります。財産権の主体としての請求ですから法律上の争訟に当たり、行政上の義務の履行を求める訴えが不適法とされる場面とは区別されます。この対比は行政上の強制執行の項目で扱います。

市庁舎の一室の入口の場面。先生が市長役(札「市長」)で「使用許可 期限切れ」と書いた通知を持ち、部屋の中に職員組合の男性(札「職員組合」)が机に座って動かない。先生の隣に「代執行」と書いた札があり、その上に深紅の×印。先生の吹き出し「退去は

公物の利用関係には、一般使用・許可使用・特許使用の区別があります

道路や公園のような公共用物は、誰でも本来の用法に従って自由に使えます。これが一般使用です。これに対し、道路上に露店を出すなど本来の用法を超える利用は、管理者の許可を要する許可使用であり、電柱や水道管の設置のように排他的な使用権を設定するものは特許使用と呼ばれます。一般使用から生じる利益は反射的利益にとどまるのが原則で、道路の供用廃止を争う原告適格は容易には認められません。もっとも、生活に不可欠な通行の利益が害される場合には、個別的利益として保護される余地があります。許可使用や特許使用は行政処分ですから、拒否や撤回を取消訴訟で争えます。公物の管理に瑕疵があって損害が生じた場合には、国家賠償法2条の営造物責任が問題になります。

地方自治法 第238条の4 第7項

行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。

論文ではこう使う

論文では、まず財産の種類を確定します。行政財産であれば貸付けや私権の設定が原則としてできないことを述べ、目的外使用許可という行政処分の枠組みで論じます。許可を求める側からは、不許可処分の取消しと許可の義務付けを組み合わせ、本案では呉市教研集会事件の枠組みに従い、管理者の裁量を前提としつつ、考慮した事項の評価に明らかな合理性の欠如があるか、当然考慮すべき事項を落としていないかを当てはめます。従前の運用と異なる扱いをしている場合は、平等原則と信頼保護の観点から合理的な理由の説明を求めます。撤回の事案では、本来の用途上の必要から生じた撤回であれば使用権に内在する制約として補償を否定し、対価の支払など特別の事情があるかを検討します。

試験ではこう問われる

「行政財産と普通財産」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型7件と関係する過去問の肢14本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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