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用語集 / 行政法 / 求償・賠償責任者

求償・賠償責任者(国賠法3条)とは

きゅうしょうひようふたんしゃ

行政法 国家賠償・損失補償

求償・賠償責任者とは、公務員の選任監督者や営造物の設置管理者と、俸給・費用の負担者が異なるときに、その双方が賠償責任を負い、被害者はいずれにも請求できるという国家賠償法3条1項の仕組みと、賠償した者が内部関係で最終的な負担者や加害公務員に清算を求める求償の仕組みです。

国立公園の周回路に県がかけ橋を作り、その費用の半分近くを国が補助金で出していたとします。橋の手すりに欠陥があって観光客が転落したとき、被害者は県と国のどちらに賠償を求めればよいのかが問題になります。同じ施設でも、管理する主体とお金を出す主体が分かれることは珍しくありません。被害者が請求先を間違えて救済を受けられないことがないように、国家賠償法3条1項は費用を負担する者にも責任を負わせています。誰が最終的に負担するかは、あとで行政主体どうしの間で求償によって清算します。

国立公園の周回路のかけ橋の場面。橋の手すりが壊れていて、転落してけがをした観光客の男性(札「被害者」)が下で座り込み、吹き出し「県と国、どちらに賠償を求めればいいのか」。橋のたもとに先生が二人分描かれ、左の先生は県知事役(札「県:設置管理者

選任監督者と費用負担者が異なるときは双方が責任を負い、内部の清算は三つの求償で行います

国家賠償法3条1項は、公務員の選任監督に当たる者と、公務員の俸給・給与その他の費用、または営造物の設置管理の費用を負担する者が異なるときは、費用を負担する者もまた賠償の責に任ずると定めます。被害者はどちらを被告にしても構いません。同じ事務でも、権限の主体と費用の出所が分かれることが多いため、被害者が請求先を誤って救済を受けられなくなる事態を防ぐ規定です。内部での清算は、次の三つの求償の規定によって行われます。3条2項は、被害者に賠償した者が内部関係で損害を賠償する責任のある者に求償する規定です。1条2項は、国や公共団体が賠償したとき、加害公務員に故意又は重大な過失があればその公務員に求償する規定です。2条2項は、営造物の瑕疵について他に損害の原因について責めに任ずべき者があるときに、その者に求償する規定です。

  • 3条2項の求償被害者に賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任のある者に求償できる
  • 1条2項の求償国・公共団体が賠償したとき、加害公務員に故意又は重大な過失があれば、その公務員に求償できる
  • 2条2項の求償営造物の瑕疵について、他に損害の原因について責めに任ずべき者があるときは、その者に求償できる

費用負担者には、実質的に費用を負担している者も含まれます

3条1項の費用を負担する者は、法律上の負担義務を負う者に限られません。最判昭和50年11月28日は、国立公園内に県が設置した周回路のかけ橋の設置管理の瑕疵が問題となった事案で、補助金により設置費用の相当部分を負担していた国についても責任を認めました。「国家賠償法第2条第1項の営造物責任に関し,同法第3条第1項の「費用を負担する者」には,当該営造物の設置費用につき法律上負担義務を負う者だけでなく,この者と同等又はこれに近い設置費用を負担し,実質的にこの者と当該営造物による事業を共同して執行していると認められる者であって,当該営造物の瑕疵による危険を効果的に防止し得る者も含まれる」という肢は正しいです。反対に、「国は,B県に対する補助金の交付によりかけ橋の設置費用の2分の1近くを負担していたとしても,法律上の設置費用負担義務を負っていなければ,国家賠償法に基づいて損害賠償責任を負うことはない」という肢は誤りです。判例は、設置者に費用を単に贈与したにすぎない者は負担者に含まれないとしつつ、法律上その営造物を設置できる国が、自ら設置する代わりに地方公共団体に設置を認め、地方公共団体の負担額と同等かそれに近い補助を与える反面、法律上その地方公共団体に危険防止の措置を請求できる立場にあるときは、国は費用負担者に含まれるとしました。形式的な負担義務の有無だけで責任の所在を決めると、国庫から補助を受けて地方公共団体が設置した施設について、被害者が事実上の資力の差に苦しむ結果になります。この解釈は、被害者がどちらにも請求できる状態を確保するためのものです。

要件は、同等に近い費用の負担、事業の共同執行、危険を防止し得る地位です

実質的な費用負担者として責任を負わせるには、三つの要素がそろう必要があります。第一に、法律上の負担義務者と同等かこれに近い額の費用を負担していることです。第二に、実質的にその者と当該営造物による事業を共同して執行していると認められることです。第三に、営造物の瑕疵による危険を効果的に防止し得る地位にあることです。単に補助金を交付しただけでは足りず、事業への関与の度合いが問われます。補助の目的が営造物の安全性の確保に向けられていたか、設置や管理の基準を示していたかといった事情が、危険を効果的に防止し得る地位を基礎づけます。逆に、この三つを満たせば、法律に負担義務の定めがなくても責任を負います。補助金の割合が過半かどうかという形式だけで決まるのではなく、この三つの要素で判断されます。なお、3条1項は2条の営造物責任だけでなく、1条の公務員の選任監督についても働きます。公務員の俸給・給与その他の費用を負担する者が選任監督者と異なる場合が、その場面です。市町村立学校の教職員の給与を都道府県が負担する仕組みが典型で、この場合は市町村と都道府県の双方が責任を負います。

誰の事務かという問題と、費用を誰が負担するかという問題は別です

3条1項が働くのは、責任主体が二つ並び立つ場面に限られます。そもそも事務が国に帰属していない場合には、国は3条の費用負担者でもない限り責任を負いません。都道府県警察の警察官は都道府県公安委員会の管理の下に置かれた都道府県の職員で、交通犯罪の捜査も都道府県警察の事務として行われますから、「A県警察の警察官がいわゆる交通犯罪の捜査を行うにつき故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた場合においては,A県だけではなく,原則として,国もまた,国家賠償法第1条第1項に基づいて損害賠償責任を負う」という肢は誤りです。最判昭和54年7月10日は、この場合に1条1項の責任を負うのは原則として当該都道府県であり、国は原則としてその責めを負わないとしました。民間の機関が処分を行った場合も、事務の帰属で責任主体が決まります。最決平成17年6月24日(指定確認検査機関による確認事務の帰属)は、指定確認検査機関がした建築確認に関する事務は、建築主事が置かれた地方公共団体に帰属するとしました。民間の機関が行った行為だからといって、行政主体が責任を免れるわけではありません。被告をどこにするかを決めるときは、根拠法令が権限を配分している主体と、費用を負担している主体の両方を確かめる必要があります。

先生が裁判官役(札「裁判所」)で中央の法壇。左に被害者の男性(札「被害者」)が「国家賠償請求」の訴状を持ち、被告欄に「国」と書かれていて、その文字に深紅の×印、隣に「A県」と書き直されている。法壇の前に警察官の男性(札「A県警察の警察官」)

3条2項の求償は、内部関係で損害を負担すべき者に対して行います

被害者に賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任のある者に求償できます(3条2項)。最判平成21年10月23日(国家賠償法3条2項に基づく求償)は、この損害を賠償する責任のある者とは、被害者に対する賠償の原因となった事務を行うための経費をその事務の性質に応じて最終的に負担すべき者をいうとしました。費用の分担についての法令の定めや、補助の仕組みを手がかりに、最終的な負担者を決めることになります。3条1項は被害者を守るための規定、3条2項は行政主体の間の清算のための規定であり、役割が違います。被害者に対しては、1項によって責任を負う者が並び立ち、いずれも全額の賠償義務を負います。支払った側は、2項によって最終的な負担者に求償し、内部的な公平を回復します。したがって、実質的な費用負担者として賠償した国が、事務の帰属する県に求償するという流れもあり得ます。

二段の構図。上段: 左に被害者の男性(札「被害者」)、右に先生が大臣役(札「国:費用負担者」)で被害者に「賠償金」の袋を渡している。札「3条1項:被害者との関係。全額を賠償」。下段: 同じ先生(札「国」)が、県知事役の男性(札「県:事務の経

公務員への求償は故意又は重大な過失がある場合に限られ、共同故意なら連帯です

1条2項の求償は、公務員に故意又は重大な過失があるときに限られます。軽過失にとどまる公務員に求償できないのは、職務の遂行が萎縮するのを防ぐためです。複数の公務員が関与した場合について、最判令和2年7月14日(加害公務員に対する求償)は、共同して故意によって違法に他人に損害を加えた公務員らは、国等に対して連帯して求償債務を負うとしました。このような公務員らは被害者との関係だけでなく国等に対する関係でも一体を成すものであり、一部の者が無資力で弁済できない危険は、国等ではなく公務員らが負担するのが公平だという理由です。「当該公務員らは、国に対し、当該違法行為に係る各公務員の責任割合に応じた分割債務として、国家賠償法第1条第2項による求償債務を負う」という肢は誤りです。求償は行政主体と公務員の内部関係の問題であって、被害者が公務員個人に直接請求できるかどうかとは別の話です。被害者は、故意重過失があっても公務員個人に請求できません。条文が三か所で求償を定めていることを整理しておけば、どの場面の話かを取り違えずに済みます。

役所の会計課の場面。先生が大臣役(札「国」)で「求償」と書かれた一枚の請求書を掲げ、向かいに三人の公務員の男性(札「共同して故意に違法行為をした公務員ら」)が並んで立つ。三人の公務員は一本の深紅の縄で結ばれていて、札「連帯して求償債務を負う

国家賠償法 第3条 第1項

公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。

論文ではこう使う

論文では、まず被告の選択を説明します。事務の帰属する行政主体に対して1条または2条の責任を問い、これとは別に費用を負担する者がいれば3条1項により同じく請求できると書きます。実質的な費用負担者かどうかは、負担した費用の額、事業への関与の度合い、危険を防止し得る地位の三点を当てはめて判断します。賠償した後の清算では、3条2項の最終的な費用負担者に対する求償と、1条2項の加害公務員に対する求償を区別し、後者では故意又は重大な過失の有無を認定します。被害者との関係と内部関係を混ぜないことが、答案を整える鍵になります。

試験ではこう問われる

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