通達・訓令・告示とは
つうたつ・くんれい・こくじ
通達・訓令・告示とは、行政機関が発する文書をその働きで分けた呼び名です。訓令とは上級行政機関が下級行政機関の権限行使を指揮するために発する命令で、そのうち書面の形式をとるものが通達です。告示とは行政機関が一定の事項を公示するための形式で、内容によっては法規としての性質をもちます。
本省が「この条文はこう解釈して処理せよ」という文書を出先機関に送ることがあります。これが通達で、職員は職務上これに従いますが、国民は従う義務を負いません。国民を拘束できるのは法律とその委任を受けた命令だけで、通達は行政の内側の指示だからです。大臣が官報に載せる告示は、お知らせのこともあれば、学習指導要領のように法律の委任を受けて国民向けの基準を定めることもあり、中身で法規かどうかが決まります。
通達は行政の内部で下級機関を拘束しますが、法規ではありません
国家行政組織法14条2項は、各省大臣等がその機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し、訓令又は通達を発することができると定めています。通達は組織の上下関係に基づく命令ですから、下級行政機関と職員は職務上これに従わなければなりません。しかし、それは行政組織の内部の規律であって、国民や裁判所を拘束する法規ではありません。「各省大臣の発する通達は、その機関の所掌事務についての所管の諸機関及び職員に対する拘束力を有する命令又は示達であり、法規としての性質を有する」という肢は誤りです。所管の諸機関及び職員に対する命令又は示達だという前半の説明は14条2項のとおりで正しく、法規としての性質を有するという結論だけが誤っています。最判昭和43年12月24日も、通達は原則として法規の性質をもつものではなく、通達の内容が法令の解釈や取扱いに関するもので国民の権利義務に重大なかかわりをもつ場合でも変わらないと述べています。
- 訓令上級行政機関が下級行政機関の権限行使を指揮する命令。職員個人に向けられる職務命令とは区別される
- 通達訓令のうち書面によるもの。解釈基準や裁量基準を示すことが多い
- 告示所掌事務について公示を必要とする場合の形式。学習指導要領・国の関与に関する基準など
- 公示処分の相手方が不特定・多数の場合などに、掲示や官報で処分の内容を知らせる方法
通達は国民と裁判所を拘束せず、処分性もありません
最判昭和43年12月24日(墓地埋葬通達事件)は、墓地の管理者が他の宗派の信者の埋葬を拒むことができるかについての従来の取扱いを変更する通達について、一般の国民は直接これに拘束されず、通達により直接国民の権利義務が変動するものではないとして、取消訴訟の対象となる処分にあたらないとしました。裁判所も通達に示された法令解釈に拘束されず、自ら法令を解釈します。通達に反する処分の効力についても、同判決は、通達は元来法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合でも、そのことを理由として処分の効力が左右されるものではないとしています。「下級行政機関は上級行政機関の発する通達に拘束されるから、行政機関が通達に反する処分をした場合、当該処分は権限を逸脱して行われたものとして無効となる」という肢は誤りです。通達違反で生じるのは職員の内部的な責任の問題で、処分の効力は法令に適合しているかで決まります。ただし、通達の内容と実際の仕組みによっては、通達に従わないことが不利益に直結する場合に処分性が認められることがあります。最判平成17年7月15日は、医療法に基づく病院開設の中止勧告について、勧告に従わないことを保険医療機関の指定の拒否事由とする通達があり、勧告に従わなければ相当程度の確実さをもって指定を受けられなくなり、国民皆保険制度の下では病院の開設自体を断念せざるを得なくなることから、行政指導である勧告に処分性を認めました。「中止勧告に従わないことなどを保険医療機関の指定の拒否事由とする通達があり、中止勧告に従わない場合には相当程度の確実さをもって保険医療機関の指定を受けることができなくなること、その結果、国民皆保険制度の下では、病院の開設自体を断念せざるを得なくなることを考慮して、中止勧告の処分性を認めたものである」という肢は正しいです。処分性の判断枠組みは処分性で扱います。
通達を機縁とする処分も、根拠が法律にあれば適法です
通達で従来の解釈が改められ、その結果として新たに課税がされることがあります。このとき課税の根拠は法律であって通達ではありませんから、法律の留保や租税法律主義(憲法84条)に反するわけではありません。最判昭和33年3月28日(パチンコ球遊器事件)は、約10年間課税されてこなかったパチンコ球遊器が物品税法上の課税対象に当たるとする通達を機縁に課税された事案で、課税がたまたま通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に合致するものである以上、課税処分は法の根拠に基づく処分と解することができるとしました。「物品税法上の課税対象物品に当たる旨の通達が発せられたために、税務署長が法令の解釈を変更して行った物品税賦課処分は、法律の改正又は制定によらずに通達に基づいて国民に新たな不利益を課すものであるから、法律の留保原則に違反する」という肢は誤りです。通達が法律の正しい解釈を示していれば、通達を機縁とする処分は法律に基づく処分になるということです。なお、長年の非課税の取扱いを信頼していた納税者の保護は、信義則の枠組みで別に検討します。
告示には、法規としての性質をもつものがあります
国家行政組織法14条1項は、各省大臣等がその機関の所掌事務について公示を必要とする場合に告示を発することができると定めています。告示は本来一定の事項を国民に知らせるための形式にすぎませんが、その内容が法律やその委任を受けた命令の委任に基づいて、国民の権利義務や法律関係に関わる基準を定めるものであれば、形式ではなく実質によって法規としての性質が認められます。学習指導要領は、学校教育法と同法施行規則の委任を受けて、文部科学大臣が教育課程の基準として告示の形式で定めるものです。最判平成2年1月18日(伝習館高校事件)は、高等学校学習指導要領が法規としての性質を有するとし、これから逸脱した授業や考査をした教諭の懲戒免職処分を適法としました。「各省大臣の発する告示は、必要な事項を国民に公示するものにすぎず、文部科学大臣の発する告示である学習指導要領は、法規としての性質を有しない」という肢は誤りです。法規性が認められる告示は委任命令として扱われるので、委任の範囲を超えれば無効になります。最判令和2年6月30日(ふるさと納税に係る総務省告示)は、地方税法の委任を受けた告示が、過去の募集態様を指定の基準とした点について、委任の範囲を超えて違法としました。告示という形式は法規性を決めず、内容と委任の有無で決まります。
省令は法律又は政令の特別の委任がなくても執行命令として発せられます
大臣が定める規範には、通達のほか省令があります。省令は国民を拘束する法規命令ですが、国家行政組織法12条1項は、法律若しくは政令を施行するための省令と、法律若しくは政令の特別の委任に基づく省令を並べて定めています。前者が執行命令で、申請書の様式や添付書類、届出事項の細目のように法律や政令の実施に必要な手続的・細目的な事項を定めるにとどまり、国民の権利義務の内容を新たに作ったり変えたりするものではないので、個別の委任がなくても主任の行政事務の範囲内で発することができます。「各省大臣は、主任の行政事務について、法律又は政令の特別の委任に基づくことなく、法律又は政令を施行するための省令を発することができる」という肢は正しいです。これに対し、国民の権利を制限し義務を課す事項を定める委任命令については、法律の個別具体的な委任が必要で(12条3項)、委任の範囲を超えた命令は無効になります。法規命令と行政規則の区別は行政規則で扱います。
告示による一括の指定にも処分性が認められることがあります
告示が一般的な基準を定めるにとどまるように見えても、それによって直接に私権が制限されるのであれば、処分性が認められます。建築基準法42条2項のいわゆる二項道路について「告示により一定の条件に合致する道を一括して道路に指定する方法でされた建築基準法第42条第2項所定のいわゆるみなし道路の指定は、特定の土地について個別具体的にこれを指定するものではなく、不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定立するものにすぎないのであって、これによって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものでないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない」という肢は誤りです。最判平成14年1月17日は、指定によって、その道に接する敷地には建築基準法上の道路として扱われる効果が生じ、道路の部分には建築が制限されるので、一括指定という形式をとっていても、対象となる土地の所有者にとっては個別の処分を受けたのと変わらない法的効果が生じるとして、処分性を肯定しました。形式ではなく、国民の権利義務に対する具体的な効果で判断するという点が、通達との違いを分けます。
最判昭和43年12月24日(墓地埋葬通達事件)
行政機関がその機関の所掌事務について、命令又は示達をするため、所管の諸機関及び職員に対し発するものであり、これらの機関及び職員は、通達に拘束されるが、一般の国民は直接これに拘束されるものではない。
論文ではこう使う
論文で通達が出てくるのは、通達に反する処分の効力、通達に従った処分の適法性、通達自体の処分性の三つの場面です。効力の問題では、通達は法規ではないから処分の適法性は法令への適合で決まる、と原則を示し、通達に反する処分が違法になるのは、その通達が法令の正しい解釈を示しており、通達に反した結果として処分が法令にも違反する場合にすぎないと整理します。処分性の問題では、墓地埋葬通達事件の原則を示したうえで、通達を前提とした仕組みによって相手方が事実上不利益を強いられる場合には、中止勧告の事案のように例外的に処分性を認める筋を検討します。告示が問題になるときは、公示の形式という点にとらわれず、委任の有無と内容の性質から法規性を判断し、委任命令であれば委任の趣旨からの逸脱を審査します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。