国の行政組織とは
くにのぎょうせいそしき
国の行政組織とは、行政権が属する内閣を頂点に、内閣府と各省、その外局である委員会と庁、さらに地方支分部局が置かれる仕組みです。国家行政組織法は、法律で置かれる3条機関と、法律又は政令で置かれる8条機関を区別しています。
税金のことは税務署、道路のことは地方整備局、と国の窓口はいくつもありますが、どれも一つの組織の一部です。頂点には行政権をもつ内閣があり(憲法65条)、その統轄の下に内閣府と各省が置かれ、その外局として委員会と庁が、さらに地方に出先の機関が置かれます。国民の権利義務を直接左右しない組織の中身まで一つひとつ法律で決めると組織の改編が動かなくなるので、骨格は法律で、内部の部局は政令で定めるという役割分担になっています。国家行政組織法は、内閣府を除く行政機関について、この設置の形式と内部部局の定め方を規律しています。
府省や委員会は法律で、審議会等は法律又は政令で置かれます
府・省・委員会・庁という行政組織そのものは、国家行政組織法3条2項により法律で定められます。これに対し、審議会等の8条機関は、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより置くことができます。3条機関には法律が要り、8条機関は政令でもよい、という違いです。「国家行政組織法第8条は、国の重要な行政施策が法律又は政令に基づく審議会の下で、透明性を保障された手続において審議されるべきであるという趣旨に基づくことから、大臣が私的諮問機関を設置して、重要事項に関する調査審議を当該機関に諮問することは許されない」という肢は誤りです。8条機関として公式に置かれるものと、大臣が事実上開く懇談会とは別で、後者を禁ずる規定はありません。大臣が外部の知識を取り入れるために私人から意見を聴くことは、行政運営上当然に許されるからです。ただし私的諮問機関の答申に法的な重みはなく、これをもって必要的諮問を経たことにはなりません。
- 内閣行政権の主体。内閣総理大臣と国務大臣で構成し、職権は閣議によって行う
- 内閣府内閣の事務を助けるとともに、内閣総理大臣が分担管理する事務を扱う。内閣府設置法による
- 省国家行政組織法3条に基づき法律で置かれる。長は主任の大臣で、省令を発する
- 外局(委員会・庁)省に置かれる3条機関。委員会は合議制で職権行使の独立性をもち、庁は独任制
- 8条機関(審議会等)重要事項の調査審議や不服審査を合議で行う。法律又は政令で置かれる
- 地方支分部局法律の定めるところにより置かれる出先機関。国税局・税務署・地方整備局など
審議会の委員に利害関係者を任命することも許されます
8条機関は、専門知識を取り入れるだけでなく、利害の対立する立場を審議の場に乗せて調整する役割も担います。条文が「学識経験を有する者等」と書いているのも、委員を学識経験者に限らない趣旨です。「当該機関で審議する政策と利害関係を有する者又はその利益代表者をその構成員として任命することは、同条の趣旨に違反するほか、行政の中立性原則に反し許されない」という肢は誤りです。労働政策審議会が公益・労働者・使用者の三者で構成されるように、利益代表者を入れる構成はむしろ制度の前提です。もっとも、審議会は限られた委員からの情報収集にとどまるという批判があり、広く国民から直接意見を集める手法として意見公募手続が整備されました。「政策の企画立案等に関する情報を広く国民から直接に収集する手法として、行政手続法において意見公募手続が整備された」という肢は正しいです。
官房・局・部の設置は政令で定めることができます
組織の骨格は法律で定めますが、内部部局まで一つひとつ法律にすると機動的な組織改編ができません。そこで国家行政組織法7条4項は、官房、局及び部の設置及び所掌事務の範囲は政令で定めるとしています。「行政組織に対する立法上の規制を弾力化する目的から、国家行政組織法においては、官房、局及び部の設置は、法律によらずに政令で定めることができるものとされている」という肢は正しいです。置かれる官房と局の数に上限はありますが、設置そのものは法律事項ではありません。課や室はさらに下の省令事項です。行政組織の定めについて法律の留保がどこまで及ぶかという議論と結び付きますが、侵害留保説を前提にすれば、国民の権利義務を直接左右しない組織の内部構造は法律で定めなくてよいことになります。この点は法律による行政の原理の項目で扱います。
内閣府は内閣を助けるとともに、内閣総理大臣が行政事務を分担管理します
内閣府は、内閣官房を助けて重要政策の企画立案と総合調整を行う点で各省と異なる地位にありますが、同時に、内閣総理大臣を長とする分担管理の行政機関でもあります。内閣府設置法は、内閣総理大臣を内閣府に係る事項についての主任の大臣とし、内閣府の所掌事務を分担管理すると定めています。「内閣府は、内閣の事務を助けることを任務とする行政機関であるが、内閣府の長である内閣総理大臣は、各省大臣と同様に内閣の統轄の下で行政事務を分担管理する」という肢は正しいです。国の行政事務は、いずれかの大臣が分担して管理するのが原則で、この分担が競合したときに内閣法7条の裁定が働きます。「主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、閣議にかけて、これを裁定する」という肢は正しいです。
外局である行政委員会は職権行使について独立性をもちます
行政委員会は、準司法的な審判や準立法的な規則制定を担うため、大臣からの独立性が認められます。「国家行政組織法第3条の規定により省の外局として設置されている行政委員会は、その具体的な職権行使に当たっては、当該省の大臣の下級行政機関として、その指揮監督を全面的に受ける」という肢は誤りです。地方でも同じ考え方が働き、教育委員会のような行政委員会には固有の権限がありますが、独立しているからといって国の関与が一切できないわけではありません。「地方の実情に適応した教育を行わせることを旨とする教育に関する地方自治の原則によれば、国の行政機関は、地方公共団体で設置される教育委員会が有する教育に関する固有の権限に対して介入することができない」という肢は誤りです。判例(最大判昭和51年5月21日)は、国の行政機関が教育委員会の固有の権限に介入することには一定の制約があるとするにとどまり、一切の介入を否定してはいません。現に法律は、文部科学大臣による是正の指示を認めています。国の関与は法律の根拠に基づいて行われ、この枠組みは法定受託事務と自治事務・国の関与で扱います。
行政の担い手は行政機関に限られません
国の事務のすべてを府省が直接に担うわけではありません。国家行政組織法9条は、法律の定めるところにより地方支分部局を置くことができるとし、国税局・税務署・地方整備局・法務局などが置かれています。地方支分部局の長も、その所掌する事務について処分をすれば行政庁になります。さらに、国が自ら主体となって直接に実施する必要のない事務については、独立行政法人を設立して行わせる仕組みがあります。「国民生活及び社会経済の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事務及び事業であって、国が自ら主体となって直接に実施する必要のないものには、民間の主体に委ねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものがあり、このようなものについては、法律の定めるところにより独立行政法人を設立し、その事務を効率的かつ効果的に行わせる場合がある」という肢は正しいです。独立行政法人通則法2条1項の定義がそのとおり定めているからです。指定確認検査機関のように、私人が法律の定めに基づいて処分を行うこともありますが、これは法律が直接に権限を与えたものであって、行政主体が私人と委任契約を結ぶことによるのではありません。「この場合、行政主体が当該私人との間で委任契約を締結することになる」という肢は誤りです。
国家行政組織法 第8条
第3条の国の行政機関には、法律の定める所掌事務の範囲内で、法律又は政令の定めるところにより、重要事項に関する調査審議、不服審査その他学識経験を有する者等の合議により処理することが適当な事務をつかさどらせるための合議制の機関を置くことができる。
論文ではこう使う
論文で国の行政組織そのものを正面から論じることは多くありませんが、権限の所在と法律の根拠を確かめる場面で使います。処分の根拠法令が「主務大臣」と書いているときは、政令の委任と組織法の規定をたどって具体的な行政庁を特定し、そのうえで委任や専決があるかを検討します。審議会の答申を経ていない処分の適否を論ずるときは、諮問が法律上必要的か、答申に拘束力があるかを条文で確かめ、必要的諮問を欠く処分は手続の瑕疵として取消事由になると構成します。行政委員会の処分を争う場合は、独立性ゆえに大臣への審査請求ができないことがあるので、不服申立ての相手方を根拠法令で確かめます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。