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権限の委任・代理・専決とは

けんげんのいにん・だいり・せんけつ

行政法 行政組織

権限の委任・代理・専決とは、法律が行政庁に与えた権限を、他の機関が行使するときの三つの仕組みです。権限の委任は法律の根拠に基づいて権限そのものを受任機関に移し、権限の代理は権限を移さずに代理機関が本来の行政庁に代わって行使し、専決は権限も名義も動かさずに補助機関が内部で決裁します。

法律が大臣に与えた権限を、いつも大臣本人が使うわけではありません。大臣が一年に何万件もの処分を自分で決めることはできないので、他の機関に行わせる仕組みが用意されています。それが委任・代理・専決の三つで、権限が移るかどうか、法律の根拠が要るかどうか、誰の名で処分するかが違います。権限が移る委任だけは、法律が決めた権限の割り当てを変えることになるので法律の根拠が要り、受任機関の名で処分します。代理と専決は権限が移らないので、その処分は本来の行政庁の処分として効力を生じます。

三つの机を横に並べ、それぞれ上に看板「権限の委任」「権限の代理」「専決」。権限は深紅の鍵で表す。左: 先生が大臣役(札「大臣」)で鍵を隣の職員の男性に渡し、職員の名札は「受任機関」、職員の吹き出し「権限が私に移ったから、私の名前で処分する。

権限の委任は法律の根拠を要し、権限そのものが受任機関に移ります

法律が定めた権限の帰属を変えるのですから、委任には法律の根拠が要ります。行政庁の一存で権限の割り当てを変えることは、法律による行政の原理に反するからです。これに対し専決は、行政庁の名義で補助機関が事務処理をするだけで、外から見れば行政庁自身が権限を行使したことになりますから、法律の根拠は要りません。「権限の委任は法律上定められた処分権限の帰属を変更することから、法律の根拠を必要とするのに対し、専決は、補助機関が処分権限のある行政庁の名義でこれを行使するものであり、処分権限の移譲を伴わないことから、法律の根拠を必要としない」という肢は正しいです。同じ趣旨で「行政庁が他の行政機関に法律に基づく処分の権限を委任することは、法律の根拠がなければ行うことができないが、行政庁がその権限に属する行為を他の行政機関に専決させることは、法律の根拠がなくても行うことができる」も正しいです。委任がされると委任庁はその権限を失い、自ら行使することはできなくなります。

  • 権限の委任法律の根拠が必要。権限そのものが受任機関に移り、委任庁はその権限を失う。処分は受任機関の名で行う
  • 法定代理本来の行政庁に事故があるとき、又は欠けたときに、法律の定めによって当然に代理関係が生じる。権限は移らない
  • 授権代理本来の行政庁の授権によって代理関係が生じる。法律の根拠は不要とされるが、権限の全部の代理は許されない
  • 専決・代決内部の決裁にすぎず、権限の移転はない。法律の根拠は不要。処分は本来の行政庁の名で行う
先生が大臣役(札「大臣」)が深紅の鍵(札「権限」)を隣の職員の男性に渡し、職員の机の名札は「受任機関」、職員が自分の名で押印している。先生の吹き出し「法律で決めた権限の割り当てを変えるから、委任には法律の根拠がいる。渡したら私はもうこの権限

処分の名義は、委任なら受任機関、専決なら本来の行政庁です

権限が移るかどうかは、処分をした行政庁が誰かという形で現れます。「行政庁Aの有する処分の権限が行政機関Bに委任された場合、当該処分はBの名で行われ、Bが当該処分をした行政庁となる」という肢は正しく、「行政庁Aの権限とされている処分を行政機関Bが専決により行う場合、当該処分はAの名で行われ、Aが当該処分をした行政庁となる」という肢も正しいです。専決では、実際に決裁したのがBであっても、処分書はAの名義で作られ、法律上はAの権限行使です。ここが決まると、審査請求をどの行政庁にするか(行政不服審査法4条)、取消訴訟で処分庁がどこかが決まります。もっとも、取消訴訟の被告は処分庁そのものではなく、処分庁の所属する国又は公共団体です(行政事件訴訟法11条1項)。委任があっても専決があっても被告となる行政主体は変わらないので、被告適格の問題と処分庁の特定の問題は別の問題です。

専決では権限が移らないので、指揮監督関係も失われません

委任がされると、委任庁は当該権限を失いますが、受任機関が下級行政機関であれば、一般的な指揮監督権は残ります。一方、専決は内部の決裁にすぎませんから、指揮監督関係が失われる余地はそもそもありません。「上級行政機関から下級行政機関に対して、法律の規定に基づいて権限の委任が行われた場合には、当該権限の行使に関する限り、当該上級行政機関の当該下級行政機関に対する指揮監督関係は失われるが、専決が行われた場合にも、当該上級行政機関の当該下級行政機関に対する指揮監督関係は同様に失われる」という肢は誤りです。専決では処分の名義も権限の所在も動かないので、決裁を委ねた行政庁は当然に指揮監督を及ぼせるからです。委任と専決は、権限が移るか、名義が変わるか、法律の根拠が要るかの三点がすべて逆になります。専決でされた行為も法律上は本来の行政庁の行為ですから、最判平成3年12月20日(専決による支出と賠償責任)は、専決により支出がされた場合でも、本来の権限をもつ長がその責任を免れるわけではないとしています。

先生が大臣役(札「大臣」)で在席し、深紅の鍵(札「権限」)は先生の机に置いたまま。隣で補助機関の職員の男性が「大臣」の名義の書類に内部決裁の印を押している。職員の吹き出し「内部の決裁だけだから、外から見れば大臣の処分。法律の根拠はいらない」

法定代理は事故や欠缺によって法律上当然に生じ、権限は移りません

代理は、本来の行政庁の権限を代理機関が行使するもので、権限の帰属は動かず、行為の効果は本来の行政庁に帰属します。法定代理は、法律の定める事由が生じたときに当然に発生する狭義の法定代理と、本来の行政庁が代理者を指定する指定代理に分かれます。「内閣法第10条は権限の代理に関する規定ではなく、権限の委任に関する規定であるから、同条に基づき内閣総理大臣により指定された国務大臣が行った処分は、当該国務大臣の処分として法的効力を生じる」という肢は誤りです。内閣法10条は、主任の国務大臣に事故があるとき又は欠けたときに、内閣総理大臣又はその指定する国務大臣が「臨時に」職務を行うという規定で、権限の代理、それも指定代理の例です。臨時に職務を行うだけで権限そのものは移らないので、処分は本来の主任の大臣の処分として効力を生じます。授権代理は法律の根拠なしにできますが、権限の全部を代理させることは、法律が特定の機関に権限を与えた趣旨に反するので許されません。

先生が指定された国務大臣役(札「指定された国務大臣」)。隣に空いた椅子(札「主任の大臣:事故」)、その机に深紅の鍵(札「権限」)が置いたまま。先生が書類に押印し、吹き出し「内閣法10条は臨時に職務を行う規定だから、権限の代理、それも指定代理

私人に行政の権限を行使させるには、法律の定めが要ります

権限の委任は行政機関どうしの問題ですが、指定確認検査機関のように私人が行政処分を行う仕組みもあります。これは行政庁が契約で権限を渡したのではなく、法律が直接にその私人へ権限を与えたものです。市がコンビニエンスストアに住民票の写しの交付事務を委託した事例について、「本件契約により、A市長は住民に対し住民票の写しを交付する権限の一部をB社に委任したことになる」という肢は誤りです。契約は事実行為としての事務を委託したにとどまり、交付という公権力の行使の権限まで移すことは契約ではできません。行政法でいう権限の委任は行政機関の間で権限を移すことで、私人であるB社に権限が移ったとはいえないからです。権限の所在は、行政庁・行政機関の項目とあわせて、誰が処分をしたかという処分性の出発点になります。

先生が市長役(札「市長」)。左にコンビニエンスストアの店員の男性(札「B社:契約で事務を委託」)が住民票の写しを窓口で手渡している絵。深紅の鍵(札「交付する権限」)は先生の机に置いたまま。先生の吹き出し「契約で渡せるのは事実行為としての事務

地方公共団体でも、長の権限を委任し、又は補助機関に専決させることができます

地方自治法153条1項は、普通地方公共団体の長がその権限に属する事務の一部を補助機関である職員に委任し、又は臨時に代理させることができると定め、同条2項は、管理に属する行政庁に委任し、又は臨時に代理させることができるとしています。ここでの委任は法律の根拠に基づくもので、国の場合と同じく権限が移り、処分は受任した職員や行政庁の名で行われます。契約の締結や支出負担行為のような財務会計上の行為についても、長の権限を補助職員が専決する運用が広く行われています。最判平成3年12月20日(専決による支出と賠償責任)は、専決により違法な支出がされた場合に、専決した職員の行為であることを理由に長の責任が当然に否定されるわけではないとしました。専決は内部の決裁にすぎず、法律上はなお長の権限行使だからです。住民訴訟で誰に損害賠償を求めるかを考えるときに、この区別が効いてきます。

内閣法 第10条

主任の国務大臣に事故のあるとき、又は主任の国務大臣が欠けたときは、内閣総理大臣又はその指定する国務大臣が、臨時に、その主任の国務大臣の職務を行う。

論文ではこう使う

論文では、処分の名義人と権限の所在が争点になったとき、まず根拠法令を見て委任規定があるかを確かめます。委任規定があれば権限は受任機関に移り、以後は受任機関の名でした処分だけが有効で、委任庁がした処分は無権限で違法になります。委任規定がなければ、内部の専決にすぎないと構成し、本来の行政庁の名でされた処分として適法性を判断します。次に、権限の瑕疵が処分の効力に与える影響を考えます。無権限の処分は重大な瑕疵ですが、外観上明白といえるかを検討し、無効と取り消しうべき瑕疵のどちらかを決めます。取消訴訟では、被告は処分庁の所属する行政主体であり、処分庁の特定を誤っても被告を誤ったことにはならない点を押さえます。専決による行為であっても法律上は行政庁の行為ですから、賠償責任や監督責任の主体を長に求める議論につなげられます。

試験ではこう問われる

「権限の委任・代理・専決」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型9件と関係する過去問の肢8本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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