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用語集 / 商法

商法の用語集

短答式で問われる商法の用語を章ごとに。全193語。定義・条文・判例と図解で、肢の正誤を判断する根拠を押さえます。

会社法総論

5語

会社の種類と分類(公開会社・大会社・種類株式発行会社)

会社の種類と分類とは、会社法が会社を株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4つに分け(会社法2条1号)、そのうえで株式会社を、公開会社かどうか・大会社かどうか・種類株式発行会社かどうかといった基準で分類して、当てはめる規律を変えている仕組みです。

定款所定の目的と会社の権利能力

定款所定の目的とは、株式会社の定款に必ず記載される事業の目的のことで(会社法27条1号)、会社の権利能力はこの目的の範囲内に限られると考えられていますが、判例は目的の範囲を広く解し、目的を遂行するうえに直接又は間接に必要な行為はすべて目的の範囲内に含まれるとしています。

会社の公告(公告方法・電子公告)

会社の公告とは、会社が株主や債権者をはじめ不特定多数の人に向けて一定の事項を知らせる手続で、公告方法は官報に掲載する方法・時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法・電子公告の3つの中から定款で定め、定めがなければ官報になります(会社法939条)。

株式会社の登記事項

株式会社の登記事項とは、株式会社が設立の登記で登記しなければならない事項のことで、会社法911条3項が目的・商号・資本金の額・発行可能株式総数・取締役の氏名・代表取締役の氏名及び住所・取締役会設置会社である旨などを列挙しており、ここに掲げられた事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をします(915条1項)。

法人格否認の法理

法人格否認の法理とは、会社が社員とは別の法人であるという形式を貫くと正義・衡平に反する結果になる場合に、その事案に限って会社の独立した法人格を認めず、会社とその背後にいる個人や別の会社とを同一のものとして扱う考え方です。

設立

13語

発起人(資格・員数・株式の引受け)

発起人とは、株式会社を設立するために定款を作成し、これに署名又は記名押印した者です(会社法26条1項)。発起人は1人でも法人でもよく、各発起人は設立に際して設立時発行株式を1株以上引き受けなければなりません(25条2項)。

定款の作成と認証(絶対的記載事項・成立前の変更)

定款とは、発起人が作成して全員が署名又は記名押印する会社の根本規則で(会社法26条1項)、公証人の認証を受けて効力を生じます(30条1項)。定款には目的・商号・本店の所在地・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額・発起人の氏名又は名称及び住所を必ず記載します(27条)。

発行可能株式総数(設立時の定めと4倍規制)

発行可能株式総数とは、株式会社が発行することができる株式の総数として定款で定める上限の数です(会社法37条1項)。会社の成立の時までに定款で定めなければならず、公開会社では設立時発行株式の総数が発行可能株式総数の4分の1以上であること、増加後の発行可能株式総数が発行済株式の総数の4倍以下であることが求められます(37条3項・113条3項)。

現物出資と財産引受け(変態設立事項・設立費用・検査役の調査)

現物出資とは、金銭以外の財産を出資することで、設立の段階では発起人だけができます(会社法28条1号・34条1項)。財産引受けとは、発起人が会社の成立を条件として特定の財産を譲り受ける契約です(28条2号)。どちらも発起人の報酬・設立費用とともに、定款に記載しなければ効力を生じない変態設立事項とされ、原則として検査役の調査を受けます(33条)。

設立時発行株式の引受けと出資の履行(失権・権利株の譲渡・引受けの取消しの制限)

設立時発行株式の引受けとは、株式会社の設立に際して発行する株式を、発起人や設立時募集株式の引受人が引き受けることです。引受人は出資を履行し、会社の成立の時に株主になります(会社法50条1項・102条2項)。出資を履行しなければ株主となる権利を失い(36条・63条3項)、成立後は錯誤・詐欺・強迫を理由に引受けを取り消すことができません(51条2項・102条6項)。

払込みの仮装(見せ金・仮装払込みの責任)

払込みの仮装とは、発起人や株式の引受人が、実際には会社に資金を確保させる意思がないのに、払込みの外形だけを整えることです。仮装した者は会社に対して仮装した払込金額の全額を支払う義務を負い、支払がされるまでその株式について株主の権利を行使できません(会社法52条の2・102条の2・213条の2)。

設立時募集株式の引受けと払込金保管証明

設立時募集株式の引受けとは、募集設立において、発起人が引き受けた分以外の設立時発行株式について、発起人が引受人を募集し、申込者に割り当てて引き受けさせることです(会社法57条〜62条)。払込金保管証明とは、募集設立で発起人が払込みの取扱いをした銀行等に請求できる、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書です(64条)。

創立総会

創立総会とは、募集設立において、発起人と設立時募集株式の引受人からなる設立時株主が集まって開く、設立中の会社の意思決定機関です(会社法65条)。設立時取締役の選任や定款の変更、設立の廃止などを決議し、発起設立では開かれません。

設立時取締役(選任・解任・設立手続の調査)

設立時取締役とは、株式会社の設立に際して取締役となる者です(会社法38条1項)。発起設立では出資の履行が完了した後に発起人の議決権の過半数で選任し、募集設立では創立総会の決議で選任します。選任後遅滞なく設立の手続が法令・定款に違反していないかを調査し、取締役会設置会社では設立時代表取締役を選定します。

現物出資財産の不足額塡補責任

現物出資財産の不足額塡補責任とは、株式会社の成立の時における現物出資財産等(現物出資と財産引受けの目的財産)の価額が定款に記載された価額に著しく不足するときに、発起人と設立時取締役が連帯して会社に不足額を支払う義務です(会社法52条1項)。検査役の調査を経たとき、発起設立で注意を怠らなかったことを証明したときは免れますが、現物出資をした発起人と財産の譲渡人である発起人は免れません。

発起人・設立時取締役の責任(任務懈怠・会社不成立・擬似発起人)

発起人・設立時取締役の責任とは、発起人・設立時取締役・設立時監査役が設立についての任務を怠ったときに会社に対して負う損害賠償責任(会社法53条1項)と、職務について悪意又は重大な過失があったときに第三者に対して負う損害賠償責任(同条2項)、そして会社が成立しなかったときに発起人が連帯して負う責任(56条)をまとめた呼び名です。募集の広告に氏名と設立を賛助する旨を記載することを承諾した者は、発起人とみなされて同じ責任を負います(103条4項)。

設立の無効(設立無効の訴え)

設立の無効とは、株式会社の設立の手続に重大な瑕疵があるときに、会社の成立の日から2年以内に、株主・取締役・監査役・清算人などが会社を被告として提起する設立の無効の訴えによってのみ主張できる無効です(会社法828条1項1号・2項1号、834条1号)。認容判決は第三者にも効力が及びますが、遡及せず、会社は清算に入ります(838条・839条・475条2号)。

設立中の会社と開業準備行為

設立中の会社とは、定款が作成されてから設立の登記によって会社が成立するまでの間にある、会社になる前の団体のことです。発起人が設立中の会社の機関としてその権限の範囲内でした行為の効果は、成立後の会社に帰属すると考えられています。開業準備行為とは、会社の成立後すぐに事業を始められるように、成立前に店舗を借りたり原材料を仕入れたりする行為で、判例は発起人の権限に含まれないとしています。

株式の内容と株主の権利

8語

株主の権利(自益権と共益権・少数株主権)

株主の権利とは、株主がその有する株式につき会社に対して持つ権利の総称で、剰余金の配当を受ける権利や残余財産の分配を受ける権利のように株主自身の経済的利益のための権利を自益権、株主総会における議決権や各種の閲覧請求権・訴えの提起権のように会社の運営に関わる権利を共益権といいます(会社法105条1項)。共益権のうち1株でも行使できるものを単独株主権、総株主の議決権の100分の3以上といった持株要件を課されたものを少数株主権といいます。

株主平等原則(株主ごとに異なる取扱い)

株主平等原則とは、株式会社は株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならないという原則です(会社法109条1項)。株主ごとに異なる取扱いとは、公開会社でない株式会社が、剰余金の配当・残余財産の分配・議決権に関する事項について、株式の内容ではなく株主が誰かに着目して異なる取扱いを行う旨を定款で定めることです(同条2項)。

株主の権利の行使に関する利益の供与

株主の権利の行使に関する利益の供与とは、株式会社が、何人に対しても、株主の権利の行使に関し、会社又はその子会社の計算において財産上の利益を供与することで、会社法120条1項が禁じています。違反した供与を受けた者は利益を会社に返還し、供与に関与した取締役は連帯して供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負います(同条3項・4項)。

株式の共有(権利行使者の指定と通知)

株式の共有とは、相続などによって1個の株式が2以上の者に共同で帰属している状態です。共有者は、その株式についての権利を行使する者1人を定めて会社にその氏名又は名称を通知しなければ、株式についての権利を行使できず、会社が権利の行使に同意した場合だけが例外です(会社法106条)。

株式の種類と種類株式発行会社

株式の種類とは、剰余金の配当・残余財産の分配・議決権を行使することができる事項など会社法108条1項各号の事項について異なる定めをした、内容の異なる2以上の種類の株式のことです。種類株式発行会社とは、これらの事項について内容の異なる2以上の種類の株式を発行する株式会社をいい(2条13号)、定款にその定めがあれば、現に2種類を発行していなくても種類株式発行会社です。

議決権制限株式と取締役選任権付種類株式

議決権制限株式とは、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある種類の株式です(会社法108条1項3号・115条)。取締役選任権付種類株式とは、その種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役又は監査役を選任することを内容とする種類の株式です(108条1項9号)。

取得請求権付株式

取得請求権付株式とは、株主が株式会社に対してその株式を取得することを請求できる旨の定めがある株式です(会社法2条18号・107条1項2号・108条1項5号)。株主が請求すれば会社は請求の日にその株式を取得し、定款で定めた対価(金銭・社債・新株予約権・他の種類の株式など)を株主に交付します(166条・167条)。

取得条項付株式と全部取得条項付種類株式

取得条項付株式とは、会社が一定の事由が生じたことを条件としてその株式を取得することができる旨の定めがある株式です(会社法2条19号・107条1項3号・108条1項6号)。全部取得条項付種類株式とは、会社が株主総会の決議によってその種類の株式の全部を取得することができる旨の定めがある種類株式です(108条1項7号・171条1項)。

株式の譲渡と管理

14語

譲渡制限株式(定款の定めと承認機関・相続人等に対する売渡しの請求)

譲渡制限株式とは、会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として、譲渡によるその株式の取得について会社の承認を要する旨の定めを設けている場合のその株式です(会社法2条17号・107条1項1号・108条1項4号)。承認をするかどうかは株主総会(取締役会設置会社では取締役会)が決め、定款で別の機関にすることもできます(139条1項)。

譲渡等承認請求の手続(買取りの請求・みなし承認)

譲渡等承認請求とは、譲渡制限株式を譲り渡そうとする株主又は譲渡制限株式を取得した株式取得者が、会社に対し、その取得について承認をするか否かの決定をすることを請求することです(会社法136条・137条1項・138条)。会社が承認しない場合に会社又は指定買取人がその株式を買い取ることの請求を併せてすることができ、会社が期間内に決定を通知しなければ承認したものとみなされます(140条・145条)。

承認のない譲渡制限株式の譲渡の効力

承認のない譲渡制限株式の譲渡の効力とは、会社の承認を得ないでされた譲渡制限株式の譲渡が誰との関係で効力を持つかという問題で、判例は、譲渡当事者間では有効であり、会社に対する関係では効力を生じないとしています。

株券と株式の譲渡の方法(株券発行会社・株券発行前の譲渡・不所持・喪失登録)

株券とは、株式を表章する有価証券で、会社は定款で定めた場合に限り株券を発行します(会社法214条)。株券発行会社の株式の譲渡は株券を交付しなければ効力を生じず(128条1項)、株券を発行しない会社の株式の譲渡は当事者の意思表示で効力を生じ、株主名簿の記載が会社その他の第三者への対抗要件になります(130条1項)。

株主名簿と基準日

株主名簿とは、株主の氏名又は名称と住所、有する株式の数、株式を取得した日、株券発行会社では株券の番号を記載した会社の帳簿です(会社法121条)。基準日とは、会社が一定の日を定めて、その日に株主名簿に記載されている株主をその権利を行使することができる者と定める制度のことです(124条1項)。

名義書換(不当拒絶と名義書換未了の株主)

名義書換とは、株式を取得した者の氏名又は名称と住所を株主名簿に記載又は記録することで、株式取得者は会社に対して株主名簿記載事項の記載を請求できます(会社法133条1項)。株式の譲渡は名義書換をしなければ会社(株券を発行しない会社ではその他の第三者にも)に対抗できません(130条)。

振替株式

振替株式とは、株券を発行する旨の定款の定めがない会社の株式(譲渡制限株式を除く)で、振替機関が取り扱うものです(社債、株式等の振替に関する法律128条1項)。上場会社の株式がこれに当たり、株券の代わりに振替機関と口座管理機関が備える振替口座簿の記録によって権利の帰属と移転が決まります。

自己株式の取得(取得手続と財源規制)

自己株式の取得とは、株式会社が自分の発行した株式を取得することで、会社法155条に掲げる場合に限って認められます。株主との合意による有償の取得にはあらかじめ株主総会の決議で取得する株式の数・対価の内容と総額・期間を定める必要があり(156条)、株主に交付する対価の帳簿価額の総額は分配可能額を超えてはなりません(461条1項)。

自己株式の保有・消却・処分

自己株式とは、株式会社が有する自己の株式です(会社法113条4項)。会社は取得した自己株式を期間の制限なく保有でき、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議で消却することも(178条)、募集株式の発行等の手続で処分することも(199条1項)できます。

株式の併合

株式の併合とは、数個の株式を合わせてそれより少ない数の株式にすることで、会社はその都度、株主総会の特別決議で併合の割合・効力発生日・併合する株式の種類・効力発生日における発行可能株式総数を定めて行います(会社法180条・309条2項4号)。株主は効力発生日に、その前日に有する株式の数に併合の割合を乗じた数の株式の株主になります(182条1項)。

株式の分割と株式無償割当て

株式の分割とは、1株を2株にするように既存の株式を細分化して同じ種類の株式の数を増やすことで、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議で割合と基準日・効力発生日・種類を定めて行います(会社法183条)。株式無償割当てとは、株主に新たに払込みをさせないで会社の株式を割り当てることで、株主の有する株式と異なる種類の株式を割り当てることもできます(185条)。

単元株式数の定め

単元株式数の定めとは、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において1個の議決権を行使することができる1単元の株式とする旨の定款の定めです(会社法188条1項)。単元株式数は1,000と発行済株式の総数の200分の1のいずれも超えることができず、種類株式発行会社では株式の種類ごとに定めます(同条2項・3項)。

単元未満株主の権利(買取請求・売渡請求)

単元未満株主とは、単元株式数に満たない数の株式(単元未満株式)を有する株主で、その単元未満株式について株主総会と種類株主総会で議決権を行使できません(会社法189条1項)。単元未満株主の買取請求とは、自分の有する単元未満株式を会社に買い取るよう請求する権利で定款の定め無しにでき(192条)、売渡請求とは、単元未満株式と併せて単元株式数になる数の株式を会社に売り渡すよう請求する権利で定款の定めがある場合に限りできます(194条)。

特別支配株主の株式等売渡請求

特別支配株主の株式等売渡請求とは、株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を自分とその完全子法人で有する株主(特別支配株主)が、他の株主の全員に対し、その有する株式の全部を自分に売り渡すことを請求する制度です(会社法179条1項)。新株予約権も併せて売渡しを請求でき(同条2項)、対象会社の承認を受ければ株主総会の決議なしに取得日に全部を取得します(179条の3・179条の9)。

資金調達(募集株式・新株予約権・社債)

13語

募集事項の決定(公開会社と公開会社でない会社・株主割当て・支配株主の異動)

募集事項の決定とは、株式会社が新たに株式を発行し又は自己株式を処分するために引受人を募集するとき、募集株式の数・払込金額・払込期日・増加する資本金などを、その都度定める手続です(会社法199条1項)。公開会社でない会社では株主総会の特別決議で定め、公開会社では取締役会の決議で定めます(199条2項・201条1項・309条2項5号)。

有利発行(特に有利な金額)

有利発行とは、募集株式の払込金額が、その募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合の発行です(会社法199条3項)。公開会社であっても株主割当て以外の方法でこれをするには、取締役が株主総会でその金額で募集する理由を説明したうえ、株主総会の特別決議で募集事項を定めなければなりません(199条2項・3項・201条1項・309条2項5号)。

募集株式の引受けと出資の履行(相殺の禁止・失権・現物出資の検査役調査)

募集株式の引受けとは、募集に応じて申込みをした者が会社から割当てを受け、又は総数引受契約を結んで、募集株式の引受人となることです(会社法203条・204条・205条・206条)。出資の履行とは、引受人が払込期日又は期間内に払込金額の全額を払い込み、又は現物出資財産を給付することで(208条1項・2項)、これをした引受人が株主になります(209条1項)。

募集株式の発行等の差止請求

募集株式の発行等の差止請求とは、株式の発行又は自己株式の処分が法令若しくは定款に違反する場合、又は著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときに、株主が会社に対してその発行又は処分をやめることを請求できる制度です(会社法210条)。発行の効力が生じる前に株主の利益を守るための事前の救済で、通常は差止めの訴えを本案とする仮処分の申立てによって行います。

新株発行の無効原因(新株発行無効の訴え・不存在確認)

新株発行の無効原因とは、株式会社の成立後における株式の発行の無効を、新株発行無効の訴え(会社法828条1項2号)によって主張できる瑕疵のことです。条文に列挙はなく、判例は、発行された株式を前提に積み重なる取引の安全を重く見て、公開会社では重大な瑕疵に限って無効原因を認め、公開会社でない会社では株主総会の特別決議を欠く発行も無効原因になるとしています。

募集新株予約権の発行手続(募集事項の決定・有利発行)

募集新株予約権の発行手続とは、株式会社が新株予約権を引き受ける者を募集するときに、募集新株予約権の内容と数・払込みを要しないならその旨・払込金額・割当日などの募集事項を定め、申込みと割当てを経て新株予約権者を決める手続です(会社法238条〜245条)。募集事項の決定は株主総会の特別決議によるのが原則で、公開会社では特に有利な条件・金額のときを除いて取締役会の決議で定めます(238条2項・240条1項・309条2項6号)。

新株予約権者となる日と払込み

新株予約権者となる日とは、募集新株予約権の申込者が会社の割り当てた募集新株予約権の新株予約権者となる日のことで、会社法は払込みの有無にかかわらず割当日と定めています(245条1項)。払込みとは、募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要する場合に、新株予約権者が払込期日までに払込金額の全額を払い込むことで、これをしなければその新株予約権を行使できません(246条1項・3項)。

新株予約権の行使と自己新株予約権

新株予約権の行使とは、新株予約権者が行使する新株予約権の内容と数・行使する日を明らかにして権利を行使し、その日に行使に際して出資される財産の価額の全額を払い込み又は給付して、その日に目的である株式の株主となることです(会社法280条1項・281条・282条1項)。自己新株予約権とは、会社が有する自己の新株予約権のことで、会社はこれを取得し消却することはできますが、行使することはできません(255条1項・276条・280条6項)。

新株予約権の譲渡制限・買取請求・組織再編での承継

新株予約権の譲渡制限とは、譲渡による新株予約権の取得について会社の承認を要する旨を新株予約権の内容として定めることで(会社法236条1項6号・243条2項2号)、その新株予約権を譲渡制限新株予約権といいます。買取請求とは、譲渡制限を設ける定款変更や組織再編のときに新株予約権者が会社に新株予約権を公正な価格で買い取るよう請求できる制度で(118条・777条・787条・808条)、組織再編での承継とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転に際して相手方会社の新株予約権を新株予約権者に交付する仕組みです(236条1項8号・749条1項4号など)。

新株予約権の発行の差止めと無効の訴え

新株予約権の発行の差止めとは、募集新株予約権の発行が法令若しくは定款に違反する場合、又は著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときに、株主が会社に対してその発行をやめることを請求できる制度です(会社法247条)。新株予約権の発行の無効の訴えとは、発行の効力が生じた日から6か月以内(公開会社でない会社では1年以内)に、株主等又は新株予約権者が会社を被告として新株予約権の発行の無効を主張する訴えです(828条1項4号・2項4号・834条4号)。

社債の発行(発行できる会社・募集事項の決定・社債券・新株予約権付社債)

社債とは、会社法の規定により会社が行う割当てにより発生する、その会社を債務者とする金銭債権であって、募集事項の定めに従い償還されるものです(会社法2条23号)。社債の発行とは、会社が募集社債の総額・各社債の金額・利率・償還の方法と期限などの募集事項を定め(676条)、申込みと割当てを経て社債権者を決める手続で、株式会社だけでなく持分会社も清算株式会社も発行できます。

社債管理者と社債権者集会

社債管理者とは、会社が社債を発行するときに定めて、社債権者のために弁済の受領・債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託する者で、銀行・信託会社などに限られます(会社法702条・703条)。社債権者集会とは、社債の種類ごとに社債権者が組織する集会で、会社法に規定する事項と社債権者の利害に関する事項について決議し、その決議は裁判所の認可を受けて効力を生じます(715条・716条・734条1項)。

社債管理補助者

社債管理補助者とは、社債管理者を置かなくてよい社債(各社債の金額が1億円以上などの場合)について、会社が定めて社債権者のために社債の管理の補助を行うことを委託する者です(会社法714条の2)。令和元年改正で新設された制度で、社債管理者と違って権限は法定の最小限の行為と委託契約で定めた範囲に限られ、社債権者自身が権利を行使することを前提に、それを補助する立場に立ちます。

株主総会

16語

株主総会の権限(取締役会設置会社の決議事項)

株主総会の権限とは、株主総会が決議できる事項の範囲のことです。取締役会設置会社でない会社の株主総会は、会社法に規定する事項と株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議でき(会社法295条1項)、取締役会設置会社の株主総会は、会社法に規定する事項と定款で定めた事項に限り決議できます(295条2項)。

株主総会の招集通知(発出時期・方法・記載事項)

株主総会の招集通知とは、株主総会を招集する取締役が、総会の日の2週間前(公開会社でない会社では1週間前)までに株主に対して発する、日時・場所・目的である事項などを知らせる通知です(会社法299条1項・4項)。取締役会設置会社と書面・電磁的方法による議決権行使を定めた会社では書面でしなければならず、株主の承諾を得て電磁的方法によることもできます(299条2項・3項)。

株主総会の招集の決定と招集手続の省略

株主総会の招集の決定とは、株主総会を招集する取締役(取締役会設置会社では取締役会の決議)が、日時・場所、目的である事項、書面・電磁的方法による議決権行使を認めるかなどを定めることです(会社法298条1項・4項)。招集手続の省略とは、株主の全員の同意があるときに、招集の決定や通知の手続を経ないで株主総会を開催できることで、書面・電磁的方法による議決権行使を定めた場合はできません(300条)。

書面による議決権行使と電磁的方法による議決権行使

書面による議決権行使とは、株主総会に出席しない株主が、会社から交付された議決権行使書面に必要な事項を記載して法務省令で定める時までに会社に提出することで議決権を行使する制度です(会社法298条1項3号・301条1項・311条1項)。電磁的方法による議決権行使とは、会社の承諾を得て、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により会社に提供して議決権を行使する制度です(298条1項4号・312条1項)。

株主提案権(議題の提案・議案の提出・議案要領の通知請求)

株主提案権とは、株主が取締役に対して一定の事項を株主総会の目的とすることを請求する議題の提案権(会社法303条)、株主が総会の場で目的である事項につき議案を提出する議案の提出権(304条)、株主が提出しようとする議案の要領を招集通知に記載するよう請求する議案要領の通知請求権(305条)の三つを合わせた呼び名です。いずれも、その株主が議決権を行使できる事項に限って認められます。

議決権(相互保有株式・不統一行使・特別の利害関係を有する株主)

議決権とは、株主が株主総会の決議に加わる権利で、株主は1株につき1個(単元株式数を定款で定めた会社では1単元につき1個)の議決権を持ちます(会社法308条1項)。相互保有株式とは、会社がその経営を実質的に支配できる関係にある株主(総株主の議決権の4分の1以上を持つ会社など)の有する株式で、議決権がありません。不統一行使とは、株主がその有する議決権を統一しないで行使することで(313条)、特別の利害関係を有する株主も議決権を行使できますが、それによって著しく不当な決議がされたときは取消事由になります(831条1項3号)。

議決権の代理行使(代理人の資格を株主に限る定款)

議決権の代理行使とは、株主が代理人によってその議決権を行使することで、株主又は代理人は代理権を証明する書面を会社に提出し、代理権の授与は株主総会ごとにしなければなりません(会社法310条1項・2項)。代理人の資格を株主に限る定款とは、代理人をその会社の株主に限定する定款の定めで、判例はこれを有効としつつ、法人である株主がその職員・従業員を代理人とすることは定款に反しないとしています。

取締役等の説明義務

取締役等の説明義務とは、取締役・会計参与・監査役・執行役が、株主総会において株主から特定の事項について説明を求められた場合に、その事項について必要な説明をしなければならない義務です(会社法314条本文)。説明を求められた事項が総会の目的である事項に関しないものである場合、説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合、その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合には、説明を要しません(314条ただし書)。

株主総会の決議要件(普通決議・特別決議・特殊の決議と定足数)

株主総会の決議要件とは、決議が成立するために必要な出席(定足数)と賛成の数のことです。普通決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で行い(会社法309条1項)、特別決議は、議決権の過半数(定款で3分の1以上に引き下げられる)を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上で行います(309条2項)。特殊の決議は、株主の頭数と議決権の両方で加重した決議です(309条3項・4項)。

株主総会の議事(総会検査役・議事録・調査者)

株主総会の議事とは、総会の場で議長の下に行われる審議と採決の進め方と、それを支える制度のことです。総会検査役とは、会社又は総株主の議決権の100分の1以上を持つ株主の申立てにより、招集の手続と決議の方法を調査させるために裁判所が総会に先立って選任する検査役です(会社法306条)。議事録は総会の議事について作成して10年間本店に備え置く書面で、株主と債権者が閲覧できます(318条)。調査者とは、取締役等が総会に提出した資料を調査させるために総会の決議で選任する者です(316条1項)。

株主総会の決議の取消事由と裁量棄却

株主総会の決議の取消事由とは、株主等が決議の日から3か月以内に訴えをもって決議の取消しを請求できる瑕疵で、招集の手続又は決議の方法が法令・定款に違反し又は著しく不公正なとき、決議の内容が定款に違反するとき、特別の利害関係を有する者の議決権行使によって著しく不当な決議がされたときの三つです(会社法831条1項)。裁量棄却とは、招集の手続又は決議の方法の法令・定款違反について、違反する事実が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないと裁判所が認めるときに、請求を棄却できる制度です(831条2項)。

決議取消しの訴えの手続(原告・被告・提訴期間・取消事由の追加)

決議取消しの訴えとは、株主等が、取消事由のある株主総会の決議の日から3か月以内に、会社を被告として、訴えをもって決議の取消しを請求する形成の訴えです(会社法831条1項・834条17号)。原告は株主・取締役・監査役・清算人などの株主等と、決議の取消しによって株主や取締役となる者で、認容判決には対世効があります(838条)。

決議取消しの訴えの利益

決議取消しの訴えの利益とは、決議の取消しを求める判決を得ることに法律上の実益があるかという訴訟要件です。決議取消しの訴えは形成の訴えなので法律の要件を満たせば訴えの利益があるのが通常ですが、判例は、その後の事情の変化によって取消判決を得ても実益がなくなったときは、特別の事情のない限り訴えの利益を欠いて却下されるとしています。

決議無効確認の訴えと決議不存在確認の訴え(判決の効力)

決議無効確認の訴えとは、株主総会の決議の内容が法令に違反することを理由として、決議が無効であることの確認を訴えをもって請求するものです(会社法830条2項)。決議不存在確認の訴えとは、決議が存在しないことの確認を訴えをもって請求するもので(830条1項)、どちらも確認の利益がある限り誰でもいつでも提起でき、被告は会社で、請求を認容する確定判決は第三者に対しても効力を持ちます(834条16号・838条)。

株主総会の決議の省略と報告の省略

株主総会の決議の省略とは、取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合に、その提案につき議決権を行使できる株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときに、その提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす制度です(会社法319条1項)。報告の省略とは、取締役が株主の全員に報告すべき事項を通知し、報告を要しないことに株主の全員が書面又は電磁的記録で同意したときに、報告があったものとみなす制度です(320条)。

株主総会資料の電子提供措置

株主総会資料の電子提供措置とは、株主総会参考書類・議決権行使書面・計算書類及び事業報告・連結計算書類(株主総会参考書類等)の内容である情報を、電磁的方法により株主が提供を受けることができる状態に置く措置で(会社法325条の2)、定款にその旨の定めを置いた会社は、招集通知に際してこれらの書類を交付・提供することを要しなくなります(325条の4第3項)。令和元年改正で新設され、令和4年9月に施行された制度で、振替株式を発行する上場会社には定款の定めが義務づけられています。

機関設計と役員の選任・解任

8語

機関設計の基本ルール(取締役会・監査役・監査役会の設置義務)

機関設計の基本ルールとは、株式会社が株主総会と取締役のほかにどの機関を置かなければならず、どの機関を定款で置くことができるかを定めた決まりのことです。取締役はすべての株式会社に必置で(会社法326条1項)、取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・監査等委員会・指名委員会等は定款の定めで置くことができ(326条2項)、公開会社・監査役会設置会社などには取締役会が、取締役会設置会社には原則として監査役が、公開会社である大会社には監査役会と会計監査人が義務づけられます(327条・328条)。

大会社と会計監査人設置会社の機関設計

大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であるか、負債の部に計上した額の合計額が200億円以上である株式会社のことです(会社法2条6号)。会計監査人設置会社とは、会計監査人を置く株式会社又は会社法の規定により会計監査人を置かなければならない株式会社のことで(2条11号)、大会社と、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社は、公開会社かどうかにかかわらず会計監査人を置かなければなりません(327条5項・328条)。

役員の資格と兼任禁止(欠格事由・株主に限る定款)

役員の資格とは、誰が取締役・会計参与・監査役になれるかについての会社法の制限のことです。取締役になれないのは法人と一定の犯罪で刑に処せられた者などに限られ(会社法331条1項)、監査役にも同じ欠格事由が準用されます(335条1項)。兼任禁止とは、監査する側とされる側が同じ人になるのを防ぐため、監査役が会社・子会社の取締役や使用人を兼ねることなどを禁じる規律のことです(335条2項・333条3項・331条4項・400条4項)。

役員の選任(決議要件・累積投票・補欠役員)

役員の選任とは、取締役・会計参与・監査役(と会計監査人)を株主総会の決議で選ぶことです(会社法329条1項)。選任の決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上まで引き下げられる)を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数(定款で引き上げられる)で行います(341条)。累積投票とは、2人以上の取締役を選任するときに、株主の請求により、1株につき選任する取締役の数と同数の議決権を与えて1人に集中投票できるようにする制度で(342条)、補欠役員とは、役員が欠けた場合に備えてあらかじめ選任しておく役員のことです(329条3項)。

役員の任期と欠員(権利義務役員・一時役員)

役員の任期とは、取締役・会計参与・監査役がその地位にとどまる期間のことで、取締役は選任後2年以内、監査役は選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(会社法332条1項・336条1項)。欠員とは、役員が欠けた場合や法律・定款で定めた員数を欠いた場合のことで、任期満了又は辞任で退任した役員が後任の就任まで引き続き権利義務を有する権利義務役員(346条1項)と、裁判所が選任する一時役員(346条2項)、監査役等が選任する一時会計監査人(346条4項)で埋めます。

役員の解任(決議要件・正当な理由)

役員の解任とは、株主総会の決議によって、任期の途中で取締役・会計参与・監査役(と会計監査人)をその地位から外すことです。役員と会計監査人はいつでも株主総会の決議で解任でき、正当な理由は要りませんが、正当な理由なく解任された者は会社に解任によって生じた損害の賠償を請求できます(会社法339条)。取締役の解任は普通決議で足り(341条)、監査役・累積投票で選任された取締役・監査等委員である取締役の解任は特別決議によります(309条2項7号)。

役員の解任の訴え

役員の解任の訴えとは、役員の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、その役員を解任する旨の議案が株主総会で否決されたときに、総株主の議決権又は発行済株式の100分の3以上を6か月前から引き続き有する株主(公開会社でない会社では保有期間は不要)が、株主総会の日から30日以内に、会社と当該役員の双方を被告として、訴えをもって解任を請求する制度のことです(会社法854条・855条)。

社外取締役と社外監査役(要件・設置義務)

社外取締役とは、株式会社の取締役であって、その会社又は子会社の業務執行取締役・執行役・使用人でなく、就任前10年間もそうでなかったこと、親会社等の関係者や兄弟会社の業務執行取締役等でないこと、取締役・重要な使用人等の配偶者・二親等内の親族でないことのすべてに当たる者のことです(会社法2条15号)。社外監査役とは、監査役であって、就任前10年間その会社又は子会社の取締役・会計参与・執行役・使用人でなかったことなど同様の要件を満たす者のことです(2条16号)。

取締役・取締役会・代表取締役

13語

取締役会の権限と専決事項(重要な業務執行の決定・職務執行状況の報告)

取締役会の権限とは、取締役会設置会社の業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定及び解職という取締役会の三つの職務のことです(会社法362条2項)。専決事項とは、重要な財産の処分及び譲受け、多額の借財、重要な使用人の選任・解任、内部統制システムの整備など、取締役会が自ら決めなければならず取締役に委任できない重要な業務執行の決定のことで(362条4項)、代表取締役と業務執行取締役は3か月に1回以上、職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません(363条2項)。

取締役会の招集

取締役会の招集とは、取締役会を開くために招集権者が各取締役(監査役設置会社では各取締役及び各監査役)に通知を発する手続のことです。取締役会は各取締役が招集するのが原則ですが、招集する取締役を定款又は取締役会で定めたときはその取締役が招集し(会社法366条1項)、通知は取締役会の日の1週間(定款でこれを下回る期間を定められる)前までに発します(368条1項)。

取締役会の決議(定足数・決議要件・特別利害関係・決議の省略・議事録)

取締役会の決議とは、議決に加わることができる取締役の過半数(定款で引き上げられる)が出席し、その過半数(定款で引き上げられる)をもって行う取締役会の意思決定のことです(会社法369条1項)。決議について特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができず(同条2項)、議事録に異議をとどめなかった取締役は決議に賛成したものと推定され(同条5項)、定款の定めがあれば取締役全員の書面等による同意で決議を省略できます(370条)。

特別取締役による取締役会の決議

特別取締役による取締役会の決議とは、取締役が6人以上で、そのうち1人以上が社外取締役である取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く)が、重要な財産の処分及び譲受けと多額の借財についての取締役会の決議を、あらかじめ選定した3人以上の取締役(特別取締役)のうち議決に加わることができるものの過半数が出席し、その過半数で行うことができるとする制度のことです(会社法373条1項)。

代表取締役の選定と解職

代表取締役の選定とは、取締役の中から会社を代表する取締役を定めることで、取締役会設置会社では取締役会が選定し(会社法362条2項3号・3項)、取締役会設置会社でない会社では定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議で定めます(349条3項)。解職とは、取締役の地位は残したまま代表取締役の地位だけを取締役会の決議で奪うことです(362条2項3号)。

代表取締役の権限と代表権の制限・濫用(取締役会決議を欠く行為の効力)

代表取締役の権限とは、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限のことで、この権限に加えた制限は善意の第三者に対抗できません(会社法349条4項・5項)。代表権の濫用とは、代表取締役が自己又は第三者の利益を図る目的で代表権の範囲内の行為をすることで、相手方がその目的を知り又は知ることができたときは会社に効力が及びません。取締役会決議を欠く行為とは、重要な財産の処分など取締役会の決議を要する取引を代表取締役が決議を経ずにした場合のことで、判例は原則として有効とし、相手方が決議を経ていないことを知り又は知り得たときに限り無効としています。

表見代表取締役

表見代表取締役とは、株式会社が代表取締役以外の取締役に社長、副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合の、その取締役のことです。会社は、その取締役がした行為について、善意の第三者に対して責任を負います(会社法354条)。代表権があるかのような外観を会社が作り出した以上、その外観を信頼した相手方を守るという権利外観法理の規定です。

取締役の善管注意義務・忠実義務と監視義務

善管注意義務とは、会社と委任の関係に立つ取締役が、善良な管理者の注意をもって職務を行う義務のことで(会社法330条・民法644条)、忠実義務とは、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、会社のため忠実にその職務を行う義務のことです(355条)。監視義務とは、取締役会を構成する各取締役が、代表取締役や他の取締役の職務の執行を監視し、必要があれば取締役会を通じて是正する義務のことで、善管注意義務の一内容として判例が認めたものです。

競業取引

競業取引とは、取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をすることです。取締役がこれをしようとするときは、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)において、その取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならず(会社法356条1項1号・365条1項)、取締役会設置会社では取引後、遅滞なく、重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(365条2項)。

利益相反取引(直接取引・間接取引と承認)

利益相反取引とは、取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をすること(直接取引)と、会社が取締役の債務を保証するなど取締役以外の者との間で会社と取締役の利益が相反する取引をすること(間接取引)です。取締役は、これらの取引をしようとするときは、株主総会(取締役会設置会社では取締役会)において重要な事実を開示し、その承認を受けなければなりません(会社法356条1項2号・3号・365条1項)。

取締役の報酬等(株主総会決議による決定)

取締役の報酬等とは、取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益のことで、定款に定めがないときは、額が確定しているものはその額、確定していないものは具体的な算定方法、募集株式・募集新株予約権はその数の上限など、金銭でないものはその具体的な内容を株主総会の決議によって定めます(会社法361条1項)。取締役が自分たちの報酬を自由に決めるお手盛りを防ぐため、決定を株主の判断に委ねた規定です。

退職慰労金

退職慰労金とは、取締役の退任に際して会社が支給する金銭のことで、それが在職中の職務執行の対価として支給されるものである限り会社法361条1項の報酬等に含まれ、定款の定め又は株主総会の決議によらなければ支給できません。取締役が死亡した場合の弔慰金も、在職中の職務執行の対価であるときは同じです。

取締役会非設置会社の業務執行と代表

取締役会非設置会社の業務執行と代表とは、取締役会を置かない株式会社で、取締役が定款に別段の定めがある場合を除き業務を執行し、取締役が2人以上あるときは業務を取締役の過半数で決定し(会社法348条1項・2項)、各取締役が会社を代表するが、定款・定款の定めに基づく取締役の互選・株主総会の決議で代表取締役を定めることもできる(349条1項〜3項)という仕組みのことです。

監査役・会計監査人・委員会型の会社

12語

監査役の権限と義務(業務監査・調査権・取締役会への報告・監査範囲の限定)

監査役の権限とは、取締役(会計参与設置会社では取締役及び会計参与)の職務の執行を監査するために各監査役に与えられた権限のことで、事業の報告を求め会社や子会社の業務及び財産の状況を調査する権限、取締役会への出席と報告、取締役の違法行為の差止請求などがこれに当たります(会社法381条〜385条)。監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある会社の監査役は、これらの業務監査の権限を持ちません(389条)。

監査役の独立性の保障(選任議案への同意・意見陳述・報酬)

監査役の独立性の保障とは、監査される側である取締役が監査役の人事や待遇を握って監査を骨抜きにしないよう、会社法が監査役の地位を守るために置いた一連の規律のことです。取締役が監査役の選任議案を株主総会に提出するには監査役(監査役会設置会社では監査役会)の同意が要ること(343条)、監査役が株主総会で選任・解任・辞任について意見を述べられること(345条4項)、報酬は取締役と別に定款又は株主総会の決議で定め配分は監査役の協議によること(387条)、任期を短縮できないこと(336条)、解任には特別決議が要ること(309条2項7号)がこれに当たります。

監査役会(構成・常勤監査役・招集と決議)

監査役会とは、すべての監査役で組織する合議体で(会社法390条1項)、監査報告の作成、常勤の監査役の選定及び解職、監査の方針や調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定を職務とします(同条2項)。監査役会設置会社では監査役は3人以上で、その半数以上が社外監査役でなければならず(335条3項)、公開会社である大会社は監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社でない限り監査役会を置かなければなりません(328条1項)。

会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表

会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表とは、株式会社が取締役(取締役であった者を含む)を訴え、又は取締役から訴えられる場合に、誰が会社を代表して訴訟を追行するかの規律のことです。監査役設置会社では監査役が会社を代表し(会社法386条1項1号)、株主からの取締役の責任を追及する訴えの提起の請求を受けるのも監査役です(同条2項1号)。監査役設置会社でない会社では、株主総会又は取締役会が定めた者が代表し(353条・364条)、その定めがなければ代表取締役が代表します(349条4項)。

会計監査人の選任と解任(任期・報酬・一時会計監査人)

会計監査人の選任とは、株主総会の決議によって公認会計士又は監査法人を会計監査人に選ぶことで(会社法329条1項・337条1項)、その議案の内容は監査役(監査役会設置会社では監査役会、監査等委員会設置会社では監査等委員会、指名委員会等設置会社では監査委員会)が決定します(344条・399条の2第3項2号・404条2項2号)。任期は1年で、定時株主総会で別段の決議がなければ再任されたものとみなされ(338条)、株主総会の決議でいつでも解任できるほか(339条1項)、職務上の義務違反などがあるときは監査役全員の同意で解任できます(340条)。

会計監査人の権限と義務

会計監査人の権限とは、株式会社の計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査し、会計監査報告を作成するために会計監査人に与えられた権限のことで(会社法396条1項)、いつでも会計帳簿を閲覧・謄写し取締役等に会計に関する報告を求める権限(同条2項)と、必要があるときに子会社に会計に関する報告を求め、会社や子会社の業務及び財産の状況を調査する権限(同条3項)がこれに当たります。義務としては、取締役の不正行為や法令違反の重大な事実を発見したときの監査役(監査役会)への報告義務(397条1項)と、定時株主総会で出席を求める決議があったときの出席・意見陳述義務(398条2項)があります。

会計参与

会計参与とは、取締役と共同して計算書類及びその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を作成することを職務とする株式会社の役員で(会社法374条1項)、公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければなりません(333条1項)。どの機関設計の会社でも定款の定めで置くことができ(326条2項)、株主総会の決議で選任します(329条1項)。

監査等委員会設置会社(構成・監査等委員である取締役の選任と任期・業務執行の決定の委任)

監査等委員会設置会社とは、監査等委員会を置く株式会社のことで(会社法2条11号の2)、監査役を置かず、取締役である監査等委員3人以上(過半数は社外取締役)で組織する監査等委員会が取締役の職務の執行を監査します(327条4項・331条6項・399条の2)。監査等委員である取締役は他の取締役と区別して株主総会で選任し(329条2項)、任期は2年で短縮も伸長もできず(332条1項・2項・4項)、会計監査人を必ず置かなければなりません(327条5項)。

監査等委員会と監査等委員の権限

監査等委員会とは、監査等委員会設置会社において全ての監査等委員で組織し、取締役(会計参与設置会社では取締役及び会計参与)の職務の執行の監査と監査報告の作成、株主総会に提出する会計監査人の選任・解任・不再任の議案の内容の決定、監査等委員でない取締役の選任・解任・辞任と報酬等についての意見の決定を職務とする機関です(会社法399条の2)。業務及び財産の状況の調査は監査等委員会が選定する監査等委員が行い(399条の3)、取締役会への報告と違法行為の差止請求は各監査等委員が行います(399条の4・399条の6)。

指名委員会等設置会社の三委員会(指名・監査・報酬)

指名委員会等設置会社の三委員会とは、指名委員会、監査委員会及び報酬委員会のことで、それぞれ取締役の中から取締役会の決議で選定した3人以上の委員で組織し、その過半数は社外取締役でなければなりません(会社法400条1項〜3項)。指名委員会は株主総会に提出する取締役の選任・解任議案の内容を、監査委員会は執行役等の職務の執行の監査と会計監査人の選任等の議案の内容を、報酬委員会は執行役等の個人別の報酬等の内容を決定します(404条)。

執行役と代表執行役

執行役とは、指名委員会等設置会社において、取締役会の決議によって委任を受けた業務執行の決定と業務の執行を行う機関で(会社法418条)、取締役会の決議で選任・解任します(402条2項・403条1項)。代表執行役とは、取締役会が執行役の中から選定する会社を代表する執行役で、執行役が1人のときはその者が代表執行役に選定されたものとされ(420条1項)、代表取締役と同じく会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持ちます(同条3項・349条4項)。

指名委員会等設置会社の取締役会(執行役への決定の委任)

指名委員会等設置会社の取締役会とは、経営の基本方針や内部統制システムの整備などの決定と執行役等の職務の執行の監督を職務とする取締役会のことで(会社法416条1項)、その決議によって、法定の事項を除き業務執行の決定を執行役に委任することができます(同条4項)。監査役会設置会社の取締役会が重要な財産の処分や多額の借財の決定を取締役に委任できない(362条4項)のと違い、これらの決定も執行役に委任できます。

役員等の責任と株主代表訴訟

9語

任務懈怠責任と経営判断の原則

任務懈怠責任とは、取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人(役員等)がその任務を怠ったときに、株式会社に対して負う損害賠償責任のことです(会社法423条1項)。経営判断の原則とは、取締役の経営上の判断について、その決定の過程と内容に著しく不合理な点がない限り善管注意義務違反にならないとする判断の枠組みで、経営にはリスクが伴い事後的な結果論で取締役を萎縮させるべきでないことを理由とします。

利益相反取引・競業取引をした取締役の責任(任務懈怠の推定・損害額の推定・無過失責任)

任務懈怠の推定とは、取締役が自己又は第三者のために会社と取引をし、又は会社が取締役の債務を保証するなど取締役と利益が相反する取引をして会社に損害が生じた場合に、その取締役、取引を決定した取締役、承認決議に賛成した取締役が任務を怠ったものと推定されることです(会社法423条3項)。自己のために直接取引をした取締役は帰責事由がないことを証明しても責任を免れず(428条1項)、競業取引については任務懈怠の推定はなく、承認を受けずにした競業取引によって取締役や第三者が得た利益の額が会社の損害の額と推定されます(423条2項)。

役員等の責任の免除と責任限定契約(総株主の同意・一部免除)

役員等の責任の免除とは、役員等が株式会社に対して負う任務懈怠責任(会社法423条1項)を消滅させることで、全部の免除には総株主の同意が要り(424条)、役員等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときに限り、最低責任限度額を超える部分を株主総会の特別決議(425条)又は定款の定めに基づく取締役会の決議等(426条)で一部免除することができます。責任限定契約とは、業務執行取締役等でない取締役・会計参与・監査役・会計監査人(非業務執行取締役等)との間で、善意・無重過失のときの責任を定款で定めた額の範囲内で会社があらかじめ定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額に限る契約で、定款の定めに基づいて締結します(427条)。

役員等の第三者に対する責任

役員等の第三者に対する責任とは、取締役・会計参与・監査役・執行役・会計監査人(役員等)がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときに、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任のことです(会社法429条1項)。判例は、これを第三者保護のために法が特に定めた責任とし、悪意・重過失は第三者への加害についてではなく会社に対する任務懈怠について要り、会社が損害を受けた結果として第三者に生じた間接損害も賠償の対象になるとしています。

株主代表訴訟の要件(原告適格・提訴請求・対象となる責任)

株主代表訴訟とは、株主が会社に代わって、発起人・設立時取締役・設立時監査役・役員等・清算人の責任を追及する訴え(責任追及等の訴え)を会社のために提起する制度です(会社法847条)。公開会社では6か月前から引き続き株式を有する株主が、まず会社に訴えの提起を請求し、請求の日から60日以内に会社が訴えを提起しないときに自ら提起できます(同条1項・3項)。判例は、対象となる取締役の責任に、取締役の地位に基づく責任のほか、会社との取引によって負担した債務についての責任も含まれるとしています。

株主代表訴訟の手続(管轄・担保提供・訴訟参加・和解・判決の効力)

株主代表訴訟の手続とは、株主が会社のために提起する責任追及等の訴えについて会社法が定める訴訟上の規律のことで、会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄(会社法848条)、被告の申立てによる担保提供命令(847条の4第2項・3項)、株主から会社への訴訟告知と会社による公告又は通知(849条4項・5項)、株主や会社の訴訟参加(同条1項・3項)、会社が当事者でない和解の通知・催告(850条)、勝訴株主の費用請求と敗訴株主の責任(852条)、馴れ合い判決に対する再審の訴え(853条)がこれに当たります。

特定責任追及の訴え(多重代表訴訟)

特定責任追及の訴えとは、完全子会社の取締役等の責任(特定責任)を、その会社の最終完全親会社等の株主が、完全子会社のために追及する責任追及等の訴えのことで(会社法847条の3)、多重代表訴訟とも呼ばれます。最終完全親会社等の総株主の議決権又は発行済株式の100分の1以上を6か月前から引き続き有する株主が、責任を負う役員等のいる完全子会社に対して提訴請求をし、60日以内に訴えが提起されないときに自ら提起できます。

取締役の違法行為の差止めと業務執行に関する検査役

取締役の違法行為の差止めとは、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし、又はそのおそれがある場合に、株主や監査役がその取締役に対してその行為をやめることを請求する制度のことです(会社法360条・385条)。株主の差止めは会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときにでき、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では回復することができない損害が生ずるおそれがあるときに限られます(360条3項)。業務執行に関する検査役とは、業務の執行に不正の行為や法令・定款違反の重大な事実を疑うに足りる事由があるときに、総株主の議決権又は発行済株式の100分の3以上を有する株主の申立てで裁判所が選任し、会社の業務及び財産の状況を調査する者です(358条)。

補償契約と役員等賠償責任保険契約

補償契約とは、役員等がその職務の執行に関し法令違反を疑われ又は責任の追及を受けたことに対処するための費用や、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合の損失の全部又は一部を、株式会社が補償することを約する会社と役員等との契約のことです(会社法430条の2第1項)。役員等賠償責任保険契約とは、役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は責任の追及に係る請求を受けることによって生ずる損害を保険者が塡補することを約する保険契約で、役員等を被保険者とするものです(430条の3第1項)。いずれも内容の決定には株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議が要ります。

計算

8語

計算書類と事業報告(作成・監査・承認・公告)

計算書類とは、株式会社が各事業年度ごとに作る貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・個別注記表のことで、事業報告は、その事業年度の会社の事業の状況を文章で報告する書類です(会社法435条2項)。計算書類と事業報告は、附属明細書とともに作成され、会社の型に応じた監査と取締役会の承認を経て、株主に提供され、定時株主総会の承認又は報告の対象となり、計算書類のうち貸借対照表は定時株主総会の後に公告されます。

資本金と資本準備金への計上

資本金とは、設立又は株式の発行に際して株主となる者が会社に払込み又は給付をした財産の額を基礎に定まる計算上の数額で、会社が株主に分配してはならない財産の目安として貸借対照表の純資産の部に計上されるものです(会社法445条1項)。資本準備金への計上とは、払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額を資本金として計上せず、その額を資本準備金として積み立てることです(445条2項・3項)。

資本金の額と発行済株式総数が変わる行為

資本金の額と発行済株式総数が変わる行為とは、会社が株式について行う行為のうち、どれが資本金の額を増減させ、どれが発行済株式の総数を増減させるかという区別のことです。資本金の額は払込み又は給付を受けた株式の発行によって増え(会社法445条1項)、発行済株式の総数は株式の発行で増えて消却・併合で減りますが、両者は連動せず、自己株式の取得や処分のように、どちらも変えない行為や片方だけを変える行為があります。

資本金の額の減少(決議・債権者異議・無効の訴え)

資本金の額の減少とは、株式会社が株主総会の決議で、減少する資本金の額・準備金とする額・効力発生日を定めて資本金の額を減らすことです(会社法447条1項)。資本金は債権者のために会社に留め置く財産の基準なので、減少には必ず債権者異議手続が要り(449条)、その無効は効力発生日から6か月以内に訴えをもってのみ主張できます(828条1項5号)。

準備金の額の減少と剰余金の処分

準備金の額の減少とは、株主総会の決議で、減少する準備金の額・資本金とする額・効力発生日を定めて資本準備金や利益準備金の額を減らすことで(会社法448条1項)、欠損の填補や剰余金の配当の財源にするためにもできます。剰余金の処分とは、剰余金の額を減少して資本金や準備金を増やしたり(450条・451条)、損失の処理や任意積立金の積立てをしたりすること(452条)で、いずれも株主総会の決議によります。

剰余金の配当(決定機関・配当財産・準備金の積立て)

剰余金の配当とは、株式会社がその株主(会社自身を除く)に対して、株主総会の決議で配当財産の種類と帳簿価額の総額・割当てに関する事項・効力発生日を定めて、会社の財産を分配することです(会社法453条・454条1項)。配当財産は金銭に限られず、持株数に応じて割り当て、分配可能額の範囲内で行い、減少する剰余金の10分の1を準備金に積み立てます。

分配可能額と自己株式取得の財源規制

分配可能額とは、剰余金の額を基礎に、自己株式の帳簿価額や最終事業年度の末日後の変動などを加減して算定される、会社が株主に分配してよい上限の額です(会社法461条2項)。自己株式取得の財源規制とは、剰余金の配当と461条1項に列挙された自己株式の取得について、株主に交付する金銭等の帳簿価額の総額が効力発生日の分配可能額を超えてはならないとする規律です(461条1項)。

違法配当の責任(分配可能額の超過・期末の欠損填補)

違法配当の責任とは、分配可能額を超えて剰余金の配当や自己株式の取得がされた場合に、金銭等の交付を受けた株主と、その職務を行った業務執行者・議案を提案した取締役が、会社に対して連帯して交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務のことです(会社法462条1項)。期末の欠損填補責任とは、分配の時点では分配可能額の範囲内でも、その事業年度の末に欠損が生じたときに、業務執行者が欠損の額を会社に支払う義務のことです(465条1項)。

組織再編・事業譲渡

12語

合併(当事会社・合併対価・権利義務の承継)

合併とは、2以上の会社が契約によって1つの会社に合体することで、一方の会社が存続して他方の権利義務の全部を承継する吸収合併(会社法2条27号)と、当事会社の全部が消滅して新しく設立する会社が権利義務の全部を承継する新設合併(2条28号)があります。消滅会社の権利義務は合併契約で定めた効力発生日に包括的に承継され、消滅会社の株主には合併契約の定めに従って合併対価が交付されます。

組織再編の効力発生日と登記

組織再編の効力発生日とは、吸収合併・吸収分割・株式交換では契約で定めた日(会社法749条1項6号・758条7号・768条1項6号)、新設合併・新設分割・株式移転では設立会社の成立の日(設立の登記の日)のことで、この日に権利義務の承継や株式の取得の効力が生じます(750条1項・754条1項など)。登記は、吸収型では効力発生後2週間以内にする事後の公示で、新設型では会社の成立をもたらす効力発生の要件です。

会社分割(吸収分割・新設分割)

会社分割とは、株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、分割後に他の会社に承継させる吸収分割(会社法2条29号)又は分割により設立する会社に承継させる新設分割(2条30号)のことです。承継される権利義務は分割契約・分割計画の定めに従って効力発生日に包括的に移転し、分割会社は権利義務の全部を承継させても解散しません。

株式交換と株式移転

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることで(会社法2条31号)、株式移転とは、1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることです(2条32号)。いずれも完全親子会社の関係を作る組織再編で、完全子会社となる会社の株主は株式を失う代わりに完全親会社から対価を受け取り、完全子会社の財産や法人格には変動がありません。

事業譲渡(株主総会決議・債務の承継・合併や分割との違い)

事業譲渡とは、会社が一定の事業目的のために組織化され有機的一体として機能する財産を、取引行為としての契約によって他人に譲渡することで、事業の全部又は重要な一部の譲渡をするには株主総会の特別決議による契約の承認が要ります(会社法467条1項1号・2号、309条2項11号)。合併や会社分割と違って包括承継ではないので、債務を免責的に移すには債権者の同意が要り、財産の移転には個別の対抗要件が要ります。

組織再編の承認決議と簡易・略式手続(書面の備置き)

組織再編の承認決議とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転の契約や計画について各当事会社が株主総会の特別決議で受ける承認のことです(会社法783条1項・795条1項・804条1項、309条2項12号)。簡易手続とは対価が小さいなど株主への影響が軽い場合に、略式手続とは相手方が総株主の議決権の10分の9以上を持つ特別支配会社である場合に、その会社の株主総会の承認を省く仕組みです(784条・796条・805条)。

組織再編における反対株主の株式買取請求(請求できる株主)

組織再編における反対株主の株式買取請求とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転に反対する株主が、会社に対して自己の有する株式を公正な価格で買い取るよう請求できる権利です(会社法785条1項・797条1項・806条1項)。請求できる株主は、議決権を行使できる株主については株主総会に先立つ反対の通知と総会での反対の両方をした株主で、議決権を行使できない株主と、略式手続などで株主総会の決議を要しない場合の特別支配会社以外の株主も含まれます。

株式買取請求の手続と公正な価格

株式買取請求の手続とは、反対株主が株式買取請求をした後、会社との協議で価格を定め、協議が調わなければ効力発生日から30日経過後の30日以内に裁判所に価格の決定を申し立て、買取りは効力発生日に効力を生じ、請求の撤回には会社の承諾が要るという一連の流れです(会社法785条7項・786条)。公正な価格とは、買取りの価格の基準で、判例は、組織再編がなかった場合と経済的に同等の状態を確保し、企業価値の増加があればその適切な分配も保障する価格をいい、基準日は株式買取請求がされた日であるとしています。

組織再編の債権者異議手続

組織再編の債権者異議手続とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転・組織変更によって債務者や責任財産が変わるおそれのある債権者に、会社が官報公告と各別の催告で1か月以上の期間を与えて異議を述べる機会を保障し、異議を述べた債権者には弁済・担保の提供・財産の信託をする手続です(会社法789条・799条・810条・779条)。異議を述べられる債権者の範囲は、組織再編の種類と当事会社の立場で決まっています。

組織再編の差止請求と無効の訴え

組織再編の差止請求とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転が法令又は定款に違反する場合などに、不利益を受けるおそれのある株主が効力発生前に自分の会社に対してその組織再編をやめることを請求できる制度です(会社法784条の2・796条の2・805条の2)。組織再編の無効の訴えとは、効力発生後にその無効を主張するための訴えで、効力発生日から6か月以内に株主等・破産管財人・承認しなかった債権者などが提起でき、認容判決は第三者にも効力が及び、組織再編は将来に向かって効力を失います(828条1項7号〜12号、838条、839条)。

株式交付

株式交付とは、株式会社(株式交付親会社)が他の株式会社(株式交付子会社)をその子会社とするために、株式交付子会社の株式を譲り受け、その株式の譲渡人に対価として株式交付親会社の株式を交付することです(会社法2条32号の2)。令和元年改正で設けられた組織再編の一種で、株式交換と違って発行済株式の全部ではなく子会社とするのに足りる数の株式を取得でき、株式交付子会社の側では株主総会の承認などの手続を要しません。

詐害的な会社分割(残存債権者の保護)

詐害的な会社分割とは、分割会社が、承継会社や設立会社に承継されない債務の債権者(残存債権者)を害することを知ってする会社分割のことで、優良な事業や財産だけを新しい会社に移して債権者を置き去りにする濫用を指します。残存債権者の保護とは、残存債権者が承継会社・設立会社に対して承継した財産の価額を限度として債務の履行を直接請求できる制度(会社法759条4項・764条4項)と、判例が認める詐害行為取消権や商号続用の責任の類推適用による救済のことです。

解散・清算・会社の訴訟・持分会社

9語

会社の組織に関する訴えと会社非訟事件(対世効・将来効・認諾の可否)

会社の組織に関する訴えとは、会社の設立の無効の訴え、新株発行の無効の訴え、株主総会等の決議の取消し・無効確認・不存在確認の訴え、合併・会社分割・株式交換などの組織再編の無効の訴えのように、会社をめぐる法律関係を多数の関係者について画一的に確定するため、会社法が被告・管轄・判決の効力を特別に定めた訴えの総称です(会社法834条)。会社非訟事件とは、株式買取請求の価格の決定や検査役の選任のように、裁判所が当事者の争いを判決で裁くのではなく、後見的な立場から決定で処理する会社法上の手続のことです(会社法868条以下)。

解散と清算

解散とは、定款で定めた存続期間の満了・解散事由の発生、株主総会の決議、合併、破産手続開始の決定、解散を命ずる裁判によって、会社が営業活動をやめて清算に入る原因となる事実のことです(会社法471条)。清算とは、解散した会社が、現務を結了し、債権を取り立てて債務を弁済し、残余財産を株主に分配して法律関係を後始末する手続のことで、会社の法人格は清算の結了によって消滅します(会社法475条・476条・481条)。

定款の変更

定款の変更とは、会社の成立後に、会社の根本規則である定款の内容を改めることで、株式会社では株主総会の決議(原則として特別決議)によって行い、公証人の認証は要りません(会社法466条・309条2項11号)。持分会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって行います(会社法637条)。

持分会社の種類と社員の責任(合名・合資・合同)

持分会社とは、合名会社・合資会社・合同会社の総称で、社員の氏名と責任の種類を定款に書き、社員の人的な結びつきで運営される会社のことです(会社法575条・576条)。社員の責任は、合名会社は無限責任社員のみ、合資会社は無限責任社員と有限責任社員、合同会社は有限責任社員のみで組織され、無限責任社員は会社財産で債務を完済できないときなどに連帯して会社の債務を弁済する補充的な責任を負い、有限責任社員は出資の価額のうち未履行の分を限度として責任を負います(会社法580条)。

持分会社の設立と出資

持分会社の設立とは、社員になろうとする者が定款を作成して全員が署名又は記名押印し、本店の所在地で設立の登記をすることによって合名会社・合資会社・合同会社を成立させる手続のことで、定款に公証人の認証は要りません(会社法575条・579条)。出資とは、社員が会社に財産などを拠出することで、無限責任社員は労務や信用も出資できますが、有限責任社員の出資は金銭その他の財産に限られます(会社法576条1項6号)。

持分会社の業務執行

持分会社の業務執行とは、合名会社・合資会社・合同会社の事業を社員自身が決定し実行することで、社員は定款に別段の定めがある場合を除き各自が業務を執行し、社員が2人以上あれば業務は社員の過半数で決定し、常務は各社員が単独で行うことができます(会社法590条)。定款で業務を執行する社員を定めることもでき、業務を執行する社員は会社を代表し、善管注意義務・忠実義務と競業・利益相反の規制を負います(会社法591条〜595条・599条)。

持分の譲渡と社員の加入・退社

持分の譲渡とは、持分会社の社員がその社員としての地位を他人に移転することで、他の社員の全員の承諾が無ければできず、業務を執行しない有限責任社員の持分だけは業務を執行する社員の全員の承諾で足ります(会社法585条)。社員の加入とは新たな社員を迎えることで、その社員に係る定款の変更をした時に効力を生じ(会社法604条)、退社とは社員が会社の存続中に社員の地位を失うことで、任意退社・法定退社・除名などがあり、退社した社員は持分の払戻しを受けます(会社法606条〜611条)。

持分会社の計算(計算書類・出資の払戻し・合同会社の特則)

持分会社の計算とは、合名会社・合資会社・合同会社の会計帳簿・計算書類の作成と保存、利益の配当、出資の払戻し、持分の払戻しに関する規律のことです(会社法614条〜636条)。無限責任社員がいる合名会社・合資会社では社員が出資の払戻しを請求でき債権者による計算書類の閲覧も無いのに対し、全員が有限責任の合同会社には、債権者の閲覧請求権、利益の配当と出資・持分の払戻しの財源規制、資本金の額の減少の債権者異議手続という特則が置かれています。

組織変更と持分会社の種類の変更

組織変更とは、株式会社がその組織を変更して合名会社・合資会社・合同会社になること、又は合名会社・合資会社・合同会社がその組織を変更して株式会社になることで、法人格の同一性を保ったまま会社の種類を株式会社と持分会社の間で切り替える手続です(会社法2条26号・743条)。持分会社の種類の変更とは、合名会社・合資会社・合同会社の間で社員の責任の別を定款で変えることで、組織変更ではなく定款の変更によって行います(会社法638条・639条)。

商法総則

14語

商人の意義(固有の商人・擬制商人・小商人・未成年者)

商人とは、自己の名をもって商行為をすることを業とする者のことで(固有の商人。商法4条1項)、店舗その他これに類似する設備によって物品を販売することを業とする者と鉱業を営む者は、商行為を業としなくても商人とみなされます(擬制商人。商法4条2項)。小商人とは営業のために使用する財産の価額が法務省令で定める金額を超えない商人のことで、商業登記などの規定が適用されず(商法7条)、未成年者も商人になることができ、営業を行うときは登記をしなければなりません(商法5条)。

絶対的商行為と営業的商行為

絶対的商行為とは、利益を得て譲渡する意思でする動産・不動産・有価証券の有償取得やその譲渡、取引所の取引、手形その他の商業証券に関する行為のように、行為の性質から誰が1回しても商行為となる行為のことです(商法501条)。営業的商行為とは、賃貸する意思でする物の取得・賃貸、製造・加工、運送、作業・労務の請負、出版・印刷・撮影、場屋の取引、両替その他の銀行取引、保険、寄託の引受け、仲立ち・取次ぎ、商行為の代理の引受け、信託の引受けのように、営業としてするときに商行為となる行為のことです(商法502条)。

附属的商行為と会社の行為の商行為性

附属的商行為とは、商人がその営業のためにする行為のことで、営業資金の借入れや従業員の雇入れのように、それ自体は絶対的商行為・営業的商行為に当たらなくても商行為とされ、商人の行為は営業のためにするものと推定されます(商法503条)。会社の行為の商行為性とは、会社がその事業としてする行為と事業のためにする行為が商行為とされ(会社法5条)、会社の行為は商行為と推定されるので、争う側が事業のためにするものでないことを主張立証しなければならないという判例の規律のことです。

個人商人の登記事項(商号・支配人・未成年者の登記)

個人商人の登記事項とは、会社でない商人について商法が商業登記簿に登記すべきものと定めた事項のことで、未成年者が営業を行うときの登記(商法5条)、後見人が営業を行うときの登記(6条)、支配人の選任と代理権の消滅の登記(22条)は義務であり、商号の登記は商人が任意にすることができます(11条2項)。登記した事項に変更が生じ又は消滅したときは、遅滞なく変更・消滅の登記をしなければなりません(10条)。

商業登記の効力(登記前の対抗・登記後の正当な事由・不実の登記)

商業登記の効力とは、商法・会社法の規定により登記すべき事項について、登記の前は善意の第三者に対抗できず、登記の後は第三者が正当な事由によって登記があることを知らなかったときを除いて対抗できるという規律(商法9条1項・会社法908条1項)と、故意又は過失によって不実の事項を登記した者はその事項が不実であることを善意の第三者に対抗できないという規律(商法9条2項・会社法908条2項)のことです。

商号の選定と商号単一の原則(不正目的の商号使用の差止め)

商号の選定とは、商人が営業上自己を表すために用いる名称である商号を定めることで、個人商人は氏や氏名に限らずどのような名称でも商号にすることができます(商法11条1項。商号選定自由の原則)。商号単一の原則とは、1個の営業については1個の商号しか用いることができないという原則のことで、数種の独立した営業を行うときは営業ごとに別の商号を使うことができます。不正の目的で他の商人と誤認されるおそれのある名称・商号を使用する者に対しては、営業上の利益を侵害され又は侵害されるおそれがある商人は、侵害の停止・予防を請求することができます(商法12条)。

商号の譲渡

商号の譲渡とは、商人がその商号を他人に移転することで、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限って認められ(商法15条1項)、譲渡の効力は当事者の合意で生じますが、登記をしなければ第三者に対抗することができません(同条2項)。

名板貸人の責任(会社の名板貸しを含む)

名板貸人の責任とは、自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人が、自分がその営業を行うものと誤認してその他人と取引をした者に対し、その他人と連帯して、その取引によって生じた債務を弁済する責任のことです(商法14条・会社法9条)。許諾した側を名板貸人、許諾を受けて他人の商号で営業する側を名板借人と呼び、会社が自己の商号の使用を許諾した場合も同じ責任を負います。

営業譲渡・事業譲渡と商号の続用(譲受人の責任・債務引受けの広告)

商号の続用とは、営業・事業を譲り受けた者が譲渡人の商号を引き続き使用することで、この場合には譲受人も譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負い(商法17条1項・会社法22条1項)、譲渡人の債務者が譲受人にした弁済は善意・無重過失なら有効になります(同条4項)。商号を続用しない譲受人も、譲渡人の債務を引き受ける旨の広告をしたときは債権者からの請求を受けます(商法18条・会社法23条)。

営業譲渡・事業譲渡の効果と譲渡人の競業避止義務(詐害営業譲渡)

営業譲渡・事業譲渡とは、一定の営業目的のため組織化され有機的一体として機能する財産を譲渡し、譲渡人がその営業活動を譲受人に受け継がせる契約のことで、合併と違って資産や債権債務は当然には移転せず個別の移転手続を要します。譲渡人の競業避止義務とは、営業を譲渡した商人・事業を譲渡した会社が、別段の意思表示がない限り、同一・隣接の市町村の区域内で20年間同一の営業を行ってはならない義務のことです(商法16条・会社法21条)。詐害営業譲渡とは、譲渡人が残存債権者を害することを知ってした営業譲渡のことで、残存債権者は承継した財産の価額を限度として譲受人に債務の履行を請求できます(商法18条の2・会社法23条の2)。

商業帳簿

商業帳簿とは、商人がその営業のために使用する財産について作成する会計帳簿と貸借対照表のことで、商人は一般に公正妥当と認められる会計の慣行に従い、法務省令の定めるところにより、適時に、正確な商業帳簿を作成し、帳簿閉鎖の時から10年間、商業帳簿と営業に関する重要な資料を保存しなければなりません(商法19条)。

支配人(選任・代理権・営業避止義務)

支配人とは、商人(会社)に代わってその営業(事業)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持つ商業使用人のことで、商人が選任して営業所(会社では本店又は支店)において営業を行わせます(商法20条・21条、会社法10条・11条)。支配人の代理権に加えた制限は善意の第三者に対抗できず、支配人は商人の許可が無ければ自ら営業をすること・競業取引・他の商人の使用人や会社の取締役になることができません(商法21条3項・23条)。

表見支配人とその他の商業使用人(ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人・物品販売店舗の使用人)

表見支配人とは、支配人ではないのに、商人の営業所(会社では本店又は支店)の営業の主任者であることを示す名称を付された使用人のことで、相手方が悪意の場合を除き、その営業所の営業に関する一切の裁判外の行為をする権限を有するものとみなされます(商法24条・会社法13条)。その他の商業使用人として、ある種類又は特定の事項の委任を受けた使用人はその事項に関する一切の裁判外の行為をする権限を持ち(商法25条・会社法14条)、物品の販売等を目的とする店舗の使用人は相手方が悪意の場合を除き店舗に在る物品の販売等をする権限を有するものとみなされます(商法26条・会社法15条)。

代理商(締約代理商・媒介代理商)

代理商とは、商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で、その商人の使用人でないもののことです(商法27条)。本人である商人を代理して契約を締結する締約代理商と、商人と相手方の契約の成立に向けて媒介をする媒介代理商があり、いずれも商人から独立した商人で、代理した契約も媒介した契約も本人と相手方の間に成立します。

商行為

17語

商行為の代理(顕名のない代理・本人の死亡と代理権)

商行為の代理とは、本人にとって商行為となる行為を代理人がする場合のことで、代理人が本人のためにすることを示さなくてもその行為は本人に対して効力を生じ、相手方が本人のためにすることを知らなかったときは代理人に対しても履行を請求できます(商法504条)。商行為の委任による代理権は、本人の死亡によっては消滅しません(商法506条)。

商人間の契約の申込みと諾否通知義務(物品保管義務を含む)

諾否通知義務とは、商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときに、遅滞なく諾否の通知を発しなければならない義務のことで、これを怠った商人は申込みを承諾したものとみなされます(商法509条)。商人が営業の部類に属する申込みとともに物品を受け取ったときは、申込みを拒絶しても申込者の費用でその物品を保管しなければなりません(商法510条)。

多数当事者間の債務の連帯(連帯債務・連帯保証)

多数当事者間の債務の連帯とは、数人の者がその一人又は全員のために商行為となる行為によって債務を負担したときはその債務が連帯債務になり、主たる債務が主たる債務者の商行為によって生じたとき又は保証が商行為であるときは保証が連帯保証になるという商法の規律のことです(商法511条)。民法の分割債務の原則と単純保証の原則の例外です。

商人の報酬請求権と利息請求権(立替金・商人間の金銭消費貸借)

商人の報酬請求権とは、商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときに、特約が無くても相当な報酬を請求できる権利のことです(商法512条)。利息請求権とは、商人間の金銭消費貸借で利息の約定が無くても貸主が法定利息を請求でき、商人が営業の範囲内で他人のために金銭を立て替えたときに立替えの日以後の法定利息を請求できる権利のことです(商法513条)。

商事法定利率と商事消滅時効の廃止(旧514条・旧522条)

商事法定利率とは、商行為によって生じた債務の法定利率を年6分としていた旧商法514条の規律のことで、商事消滅時効とは、商行為によって生じた債権の消滅時効期間を5年としていた旧商法522条の規律のことです。いずれも平成29年民法改正に伴って削除され、現在は利率が民法404条、時効が民法166条1項によります。

商人間の留置権と流質契約(債務の履行の場所)

商人間の留置権とは、商人間においてその双方のために商行為となる行為によって生じた債権が弁済期にあるときに、債権者がその弁済を受けるまで、債務者との間の商行為によって自己の占有に属した債務者所有の物又は有価証券を留置できる権利のことで、民法の留置権と違って債権と物の牽連性を要しません(商法521条)。流質契約とは、弁済期前に質物の所有権を質権者に取得させる約定のことで、商行為によって生じた債権を担保する質権では民法の禁止が外れます(商法515条)。

確定期売買の解除

確定期売買の解除とは、商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合に、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方が直ちに履行を請求した場合を除き、解除の意思表示が無くても契約を解除したものとみなされる規律のことです(商法525条)。

買主の検査・通知義務(商人間の売買)

買主の検査・通知義務とは、商人間の売買において、買主が目的物を受領したときは遅滞なく検査し、種類・品質・数量に関する契約不適合を発見したときは直ちに売主に通知しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除ができなくなる規律のことです(商法526条)。直ちに発見できない不適合は6か月以内に発見して直ちに通知しなければなりません。

売主の供託・競売権と買主の保管義務(商人間の売買)

売主の供託・競売権とは、商人間の売買で買主が目的物の受領を拒み又は受領できないときに、売主が目的物を供託し、又は相当の期間を定めて催告した後に裁判所の許可なく競売に付すことができる権利のことです(商法524条)。買主の保管義務とは、契約を解除した買主も、売主と営業所が同一の市町村に無いときは売主の費用で目的物を保管又は供託しなければならない義務のことです(商法527条)。

交互計算

交互計算とは、商人間又は商人と商人でない者との間で平常取引をする場合に、一定の期間内の取引から生ずる債権及び債務の総額について相殺をし、その残額の支払をすることを約する契約のことです(商法529条)。組み入れた個々の債権は期末の相殺まで個別に行使・処分できず、これを交互計算不可分の原則といいます。

匿名組合

匿名組合とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約のことです(商法535条)。出資は営業者の財産に属し、匿名組合員は営業者の業務を執行せず、営業者の行為について第三者に対して権利義務を持ちません。

仲立営業(仲立人の義務と報酬)

仲立営業とは、他人間の商行為の媒介をすることを業とする仲立人の営業のことで、仲立人は契約の当事者にならず、媒介した契約は当事者間に成立します(商法543条)。仲立人は見本の保管義務と結約書の交付義務を負い、その手続を終えた後でなければ報酬を請求できず、報酬は当事者双方が等しい割合で負担します(商法545条・546条・550条)。

問屋営業(準問屋・運送取扱人を含む)

問屋営業とは、自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れをすることを業とする問屋の営業のことで、売買契約は問屋と相手方の間に成立し、問屋が自ら権利を取得し義務を負います(商法551条・552条)。自己の名で販売・買入れ以外の行為を取り次ぐ者は準問屋、自己の名で物品運送の取次ぎをする者は運送取扱人で、問屋の規定が準用されます(商法558条・559条)。

運送人の損害賠償責任(賠償額の定型化・高価品の特則・責任の消滅・旅客運送)

運送人の損害賠償責任とは、運送人が運送品の受取から引渡しまでの間の滅失・損傷・延着について負う責任のことで、滅失・損傷の賠償額は引渡しがされるべき地及び時の市場価格で定まり(商法576条)、高価品は種類と価額の通知が無ければ責任を負わず(商法577条)、引渡しから1年以内に裁判上の請求が無いと消滅します(商法585条)。旅客から引渡しを受けた手荷物についても無償で物品運送人と同じ責任を負います(商法592条)。

荷受人の権利と運送人の不法行為責任

荷受人の権利とは、物品運送契約の当事者でない荷受人が、運送品が到達地に到着したとき又は運送品の全部が滅失したときに、運送契約によって生じた荷送人の権利と同一の権利を取得することです(商法581条)。運送人の不法行為責任とは、運送品の滅失等について運送人が荷送人・荷受人に対して負う不法行為による損害賠償責任のことで、賠償額の定型化や高価品の特則などの規定が準用されます(商法587条)。

場屋営業者の責任(寄託を受けた商人の注意義務を含む)

場屋営業者の責任とは、旅館・飲食店・浴場など客の来集を目的とする場屋における取引を業とする者が、客から寄託を受けた物品の滅失・損傷について不可抗力によることを証明しなければ免れない責任と、寄託を受けていない携帯品について注意を怠ったときに負う責任のことです(商法596条)。高価品は種類と価額を通知して寄託した場合に限り責任を負い(商法597条)、責任に係る債権は1年で時効消滅します(商法598条)。商人が営業の範囲内で寄託を受けたときは、報酬を受けなくても善良な管理者の注意で保管します(商法595条)。

商慣習(商慣習と事実たる慣習)

商慣習とは、商取引の社会で反復して行われ、法的確信にまで高まった慣習のことで、商事に関して商法に定めが無い事項については民法に優先して適用されます(商法1条2項)。事実たる慣習とは、法的確信にまで至らない慣習のことで、当事者がそれによる意思を持つときに任意規定に優先して契約の内容になります(民法92条)。

手形行為と振出し

9語

手形理論(創造説・契約説と交付欠缺・意思表示の瑕疵)

手形理論とは、手形債務がいつ、どのような行為によって発生するかの説明の仕方のことで、手形の作成・署名で発生するとする創造説と、相手方への交付で発生するとする交付契約説・発行説が対立し、交付前に手形が盗まれた場合(交付欠缺)の取得者の保護の仕方に違いが表れます。

手形要件と有益的・無益的・有害的記載事項

手形要件とは、手形法が手形に必ず記載すべきものと定めた事項のことで、約束手形では手形文句・一定の金額を支払う単純な約束・満期・支払地・受取人・振出日と振出地・振出人の署名の7つです(手形法75条)。これ以外の記載は、書けば効力がある有益的記載事項、書いても無いものとみなされる無益的記載事項、書くと手形が無効になる有害的記載事項に分かれます。

白地手形と白地補充権(不当補充・補充権の時効)

白地手形とは、後で取得者に補充させる意思で、手形要件の一部を空欄のまま署名して流通に置いた未完成の手形のことで、その空欄を埋める権利を白地補充権といいます。合意と異なる補充(不当補充)は善意・無重過失の所持人に対抗できず(手形法10条)、満期白地の補充権は5年で時効にかかります。

未補充の白地手形による権利行使(支払呈示・訴えの提起)

未補充の白地手形による権利行使とは、白地を埋めないまま支払呈示や訴えの提起をすることで、白地手形は補充があるまで未完成の手形なので、呈示には効力が無く、訴えも補充しないままでは認容されません。ただし判例は、白地のままの訴え提起に時効の完成猶予の効力を認めています。

手形の署名と法人の手形行為(代表機関の表示)

手形の署名とは、手形行為をする者が手形上に自分の名を記すことで、自署のほか記名捺印でもできます。法人の手形行為は、法人名と代表関係を表示したうえで代表者自身が署名してする必要があり、会社名と社印だけでは法人の手形行為になりません。

手形の偽造と無権代理(偽造者の責任・表見代理・追認)

手形の偽造とは、権限の無い者が代理の形を取らずに直接他人名義の署名を手形に表すことで、代理人として署名する無権代理と区別されます。無権代理人は手形法8条によって自ら手形上の責任を負い、判例は偽造者にも同条を類推適用して責任を負わせ、本人の追認と表見代理の類推適用も認めています。

手形の変造

手形の変造とは、権限の無い者が手形の記載内容を変更することで、変造後の署名者は変造した文言に従い、変造前の署名者は原文言に従って責任を負います(手形法69条)。

手形行為独立の原則

手形行為独立の原則とは、手形上の一つの署名が行為能力の欠如・偽造などの理由で署名者に義務を負わせられないものであっても、他の署名者の債務はそのために効力を妨げられないという原則です(手形法7条)。方式の瑕疵による無効には働きません。

原因関係と手形関係(支払のために・支払に代えて)

原因関係とは手形を授受する元になった売買などの法律関係のことで、手形関係とは手形そのものから生ずる権利義務のことです。手形は原因債務の「支払に代えて」振り出されれば原因債務が消滅し、「支払のために」振り出されれば両方の債務が併存し、当事者の意思が明らかでなければ支払のために振り出されたものと推定されます。

手形の流通と支払・小切手

13語

裏書の方式と効力(白地式裏書・担保的効力・無担保裏書・裏書禁止)

裏書とは、手形の所持人が手形又は補箋に署名して手形上の権利を他人に譲渡する行為で、被裏書人を書かずにする白地式裏書もあります。裏書によって手形上の一切の権利が移転し(権利移転的効力)、裏書人は引受け・支払を担保する責任を負いますが(担保的効力)、無担保裏書や新たな裏書を禁じる記載もできます。

裏書の連続(資格授与的効力・被裏書人欄の抹消)

裏書の連続とは、手形の記載上、受取人から最後の被裏書人まで各裏書の記載が切れ目なく続いていることで、裏書の連続する手形の所持人は適法な所持人と推定されます(手形法16条1項。資格授与的効力)。連続の有無は紙面の記載だけで形式的に判断し、被裏書人欄だけが抹消された裏書は白地式裏書として扱われます。

特殊の裏書(取立委任裏書・隠れた取立委任裏書・期限後裏書・戻裏書)

特殊の裏書とは、通常の譲渡裏書と効力の異なる裏書のことで、取立ての代理権だけを与える取立委任裏書(「取立てのため」と記載する公然のものと、譲渡裏書の形式でする隠れたもの)、支払拒絶証書作成後又は作成期間経過後にされて債権譲渡の効力しか持たない期限後裏書、手形債務者に対してする戻裏書があります。

手形の善意取得

手形の善意取得とは、裏書の連続した手形を裏書によって悪意・重過失なく取得した者が、譲渡人が無権利者であっても手形上の権利を原始取得することです(手形法16条2項)。取得時に善意であれば足り、盗まれた者に2年間の回復請求は認められません。

人的抗弁の切断と悪意の抗弁(後者の抗弁・二重無権の抗弁・融通手形の抗弁)

人的抗弁の切断とは、手形債務者が振出人その他所持人の前者に対する人的関係に基づく抗弁を所持人に対抗できないことで、悪意の抗弁とは、所持人が債務者を害することを知って手形を取得したときに限って対抗できる例外のことです(手形法17条)。所持人自身の裏書の原因関係が消滅した場合(後者の抗弁・二重無権の抗弁)や融通手形の抗弁も、ここで扱います。

手形保証

手形保証とは、手形上の債務者のために第三者(又は手形上の署名者)が手形又は補箋に署名して、その手形の支払を担保する手形行為です(手形法30条〜32条)。保証人は保証された者と同一の責任を負い、主たる債務が方式の瑕疵以外の理由で無効でも保証は有効です。

支払呈示と支払呈示期間

支払呈示とは、手形の所持人が満期に支払場所で手形を示して支払を求めることで、支払呈示期間とは、確定日払などの手形では支払をすべき日とこれに次ぐ2取引日をいいます(手形法38条1項)。期間内に呈示しなければ裏書人に対する遡求権を失いますが、振出人に対する権利は時効まで行使できます。

手形の支払と支払免責

手形の支払とは満期に手形金を支払うことで、支払免責とは、満期に支払をする者が、悪意又は重大な過失が無い限り、所持人が無権利者であっても責任を免れることです(手形法40条3項)。支払う者は裏書の連続の整否を調べる義務はありますが、裏書人の署名を調べる義務はありません。

遡求(遡求の要件と遡求義務者)

遡求とは、満期に支払が無かったときに、手形の所持人が裏書人などの遡求義務者に対して手形金額・利息・費用の支払を求めることです(手形法43条)。支払呈示期間内の呈示と支払拒絶が要件で、遡求義務者は所持人に対して合同して責任を負います。

手形上の権利の消滅時効と利得償還請求権

手形上の権利の消滅時効とは、約束手形の振出人に対する権利は満期の日から3年、裏書人に対する遡求権は1年、受け戻した裏書人の再遡求権は6か月で消滅するという短期の時効のことです(手形法70条)。利得償還請求権とは、手形上の権利が時効や手続の欠缺で消滅したときに、所持人が振出人・引受人・裏書人に対してその受けた利益の限度で償還を求める権利です(85条)。

除権決定と手形の喪失

除権決定とは、手形を喪失した所持人が公示催告の手続を経て裁判所から得る、その手形を無効とする決定のことで、申立人は手形なしに手形上の権利を行使できるようになります。除権決定は申立人に手形を所持するのと同じ地位を回復させるにとどまり、それより前に善意取得した者の権利は失われません。

為替手形(引受け・支払人・約束手形との違い)

為替手形とは、振出人が支払人に対して一定の金額を受取人に支払うよう委託する証券で、支払人の名称が手形要件です(手形法1条)。支払人は引受けをして初めて主たる債務者になり、振出人は引受け・支払を担保する遡求義務者です。約束手形は振出人自身が支払を約束する証券で支払人がなく、振出人が第一次的な支払義務を負います。

小切手(一覧払・支払呈示期間・線引小切手・支払保証)

小切手とは、振出人が銀行(支払人)に対して一定の金額を受取人又は持参人に支払うよう委託する証券で、支払の手段として、支払人は銀行に限られ、常に一覧払で、支払呈示期間は振出日から10日、引受けはできません(小切手法3条・4条・28条・29条)。線引小切手は支払先を銀行や取引先に限ることで不正な取得者への支払を防ぎ、支払保証は支払人が支払義務を負う唯一の方法です。

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