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株式の共有(権利行使者の指定と通知)とは

かぶしきのきょうゆう

商法 株式の内容と株主の権利

株式の共有とは、相続などによって1個の株式が2以上の者に共同で帰属している状態です。共有者は、その株式についての権利を行使する者1人を定めて会社にその氏名又は名称を通知しなければ、株式についての権利を行使できず、会社が権利の行使に同意した場合だけが例外です(会社法106条)。

会社の創業者が亡くなり、持っていた株式を3人の子が相続したとします。遺産分割が終わるまで、その株式は3人の共有(準共有)になります。株主総会で3人がばらばらに議決権を行使しようとすれば、会社は誰の意思を株主の意思として扱えばよいか分かりません。そこで会社法106条は、共有者が権利を行使する者1人を決めて会社に通知することを求め、通知が無ければ会社が同意しない限り権利を行使できないとしています。会社の事務処理の便宜のための規定なので、共有者の内部でどう決めるかは民法の共有の規定に戻って考えます。

株主総会の受付の場面。先生が会社の受付係役(札「株式会社」)でカウンターに座り、向かいに3人の男性(札「共同相続人A」「共同相続人B」「共同相続人C」)が並ぶ。3人の間に株券の絵が1枚だけ浮かび札「相続した株式(準共有)」。真ん中のBが書面

共有者は権利行使者1人を定めて会社に通知しなければ権利を行使できず、会社が同意した場合だけが例外です

株式が2以上の者の共有に属するときは、共有者は、その株式についての権利を行使する者1人を定め、会社に対しその者の氏名又は名称を通知しなければ、その株式についての権利を行使できません(106条本文)。ただし、会社が権利を行使することに同意した場合はこの限りではありません(同条ただし書)。要るのは会社への通知であって会社の同意ではなく、会社の同意は通知を欠くときの例外です。「共有者は,当該株式についての権利を行使する者一人を定め,会社の同意を得なければ,当該株式についての権利を行使することができない」という肢は誤りです。「株式会社に対し,その者の氏名又は名称を通知しなければ,株式会社が同意しない限り,当該権利を行使することができない」という肢は正しく、新株予約権(237条)と社債(686条)にも同じ規律があります。指定と通知を株主総会の都度やり直す規定は無く、いったん通知すれば変更や撤回の通知があるまで効力が続きます。「株主総会の都度,権利行使者の指定及び通知がされなければならない」という肢は誤りです。共同相続した株式は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割までは共同相続人の準共有になります(最判平成26年2月25日)。

権利行使者の指定は持分の価格の過半数で決められ、指定された者は共有者間に意見の相違があっても自分の判断で議決権を行使できます

権利行使者をどう決めるかについて会社法に規定は無く、民法の共有の規定によります。全員一致を要求すると共有者の1人が反対するだけで権利行使が止まり、会社の運営にも支障が出るので、判例は、権利行使者の指定は共有物の管理に関する行為として、持分の価格に従いその過半数で決することができるとしています(最判平成9年1月28日)。「その株式に係る権利を行使する者を指定するときは,持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができる」という肢は正しいです。指定されて会社に通知された権利行使者は、会社との関係で株式の権利を単独で行使する地位に立ちます。判例は、共有者の間で個々の決議事項について逐一合意を要するとの取決めがあり、ある事項について意見の相違が生じたときでも、権利行使者は自己の判断に基づき議決権を行使できるとしています(最判昭和53年4月14日)。会社が共有者の内部事情を調べなければ議決権の効力が決まらないのでは、106条の狙いである画一的な処理ができないからです。「その指定された者は,自己の判断に基づき議決権を行使することができない」という肢は誤りです。

教室の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に3人の人物の絵を描き、それぞれの下に持分「2分の1」「4分の1」「4分の1」。左の2分の1の人物と中央の4分の1の人物を線で結び、札「合わせて4分の3 持分の価格の過半数」とその札を深紅の枠で囲む。右

106条は民法の共有の規定に対する特別の定めで、指定と通知を欠く権利行使は、民法の共有の規定に従っていれば会社の同意で適法になります

判例は、106条本文は共有に属する株式の権利の行使の方法について民法の共有に関する規定に対する「特別の定め」(民法264条ただし書)を設けたものであり、同条ただし書は会社が同意した場合に本文の適用が外れることを定めたにとどまるとしました(最判平成27年2月19日)。「権利行使者の指定及び通知を要する旨の会社法の規定は,民法の共有の規定に対する特別の定めに当たる」という肢は正しいです。本文の適用が外れた後の権利行使の可否は民法の共有の規定で決まるので、指定と通知を欠いたままされた権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは、会社が同意しても適法にはなりません。逆に、民法の共有の規定に従っていれば、会社の同意によって適法に行使できます。共有株式の議決権の行使は、直ちに株式を処分し又は内容を変更することになるなど特段の事情のない限り株式の管理に関する行為なので、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決せられます(民法252条1項)。したがって、取締役選任決議の議決権は、持分の価格の過半数を有する共有者が会社の同意の下で行使できます。「その過半数を有する株式の共有者は,権利行使者の指定及び通知がされなければ,その株式会社の同意があっても,取締役選任決議の議決権を行使することはできない」という肢は誤りです。共有者全員が共同して議決権を行使するときも、民法の共有の規定に反しないので、会社の側から行使を認めることができます。「共有者全員が議決権を共同して行使するときでも,会社から議決権の行使を認めることは許されない」という肢は誤りです。106条ただし書が無かった旧規定の下の判例は、全員が共同して行使する場合を除いて会社の側から認めることは許されないとしていましたが(最判平成11年12月14日)、現在はただし書と平成27年の判例で考えます。

指定と通知を欠く共同相続人には、特段の事情がない限り決議不存在確認の訴えの原告適格がありません

106条の「権利」には議決権や配当を受ける権利だけでなく、株主総会の決議の効力を争う訴えを起こす権利も含まれます。判例は、株式を相続により準共有するに至った共同相続人が準共有株主としての地位に基づいて株主総会の決議不存在確認の訴えを提起する場合も、権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、特段の事情がない限り原告適格を有しないとしました(最判平成2年12月4日)。「権利行使者の指定及び通知がされていないときは,特段の事情がない限り,原告適格を有しない」という肢は正しいです。特段の事情が認められたのは、会社の側が総会決議があったものとして取締役選任の登記までしていながら、訴訟では指定と通知が無いことを理由に原告適格を争った事案で、同じ訴訟の中で106条の趣旨を都合よく使い分けることは信義則に反するとされました。

会社からの通知や催告は、受領者の通知が無ければ共有者の1人にすれば足ります

権利行使者の指定と通知(106条)とは別に、共有者は、会社が株主に対してする通知又は催告を受領する者1人を定めて会社に通知しなければなりません(126条3項)。その通知が無い場合、会社が株式の共有者にする通知又は催告は、そのうちの1人にすれば足ります(同条4項)。共有者側の怠りから生じる負担を会社に負わせないための規定です。「通知又は催告を受領する者1人の氏名又は名称を通知していないときは,当該株式会社が株主に対してする通知又は催告は,当該共有者の全員に対してしなければならない」という肢は誤りで、「そのうちの1人に対してすれば足りる」という肢は正しいです。

会社法106条

株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

会社法126条4項

前項の規定による共有者の通知がない場合には、株式会社が株式の共有者に対してする通知又は催告は、そのうちの一人に対してすれば足りる。

最判平成27年2月19日(会社法106条但書の法意)

共有に属する株式について会社法106条本文の規定に基づく指定及び通知を欠いたまま当該株式についての権利が行使された場合において、当該権利の行使が民法の共有に関する規定に従ったものでないときは、株式会社が同条ただし書の同意をしても、当該権利の行使は、適法となるものではない。

論文ではこう使う

論文では、共同相続した株式について相続人の1人が株主総会で議決権を行使し、会社がそれを認めて決議がされた事案で、決議の効力を問われたときに使います。「本件株式は遺産分割前であり共同相続人の準共有に属する。会社法106条本文は民法の共有の規定に対する特別の定めであり、同条ただし書により会社が同意した場合は本文の適用が外れ、権利行使の可否は民法の共有の規定による(最判平成27年2月19日)。議決権の行使は株式の管理に関する行為であるから持分の価格の過半数で決せられる(民法252条1項)ところ、Bの持分は2分の1にとどまり過半数で決したとはいえないから、会社の同意があっても議決権の行使は適法でなく、決議の方法が法令に違反するものとして取消事由(831条1項1号)になる」と展開します。原告適格を問われたときは、最判平成2年12月4日の規範と特段の事情(会社の側が決議の存在を前提に行動していたか)を当てはめます。

試験ではこう問われる

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