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用語集 / 商法 / 株主の権利

株主の権利(自益権と共益権・少数株主権)とは

かぶぬしのけんり

商法 株式の内容と株主の権利

株主の権利とは、株主がその有する株式につき会社に対して持つ権利の総称で、剰余金の配当を受ける権利や残余財産の分配を受ける権利のように株主自身の経済的利益のための権利を自益権、株主総会における議決権や各種の閲覧請求権・訴えの提起権のように会社の運営に関わる権利を共益権といいます(会社法105条1項)。共益権のうち1株でも行使できるものを単独株主権、総株主の議決権の100分の3以上といった持株要件を課されたものを少数株主権といいます。

会社の株を1株でも持てば株主になります。株主は配当を受け取れますが、それだけではなく、株主総会で議決権を行使し、議事録や会計帳簿を見せるよう求め、取締役の責任を追及する訴えを起こすこともできます。会社法105条は、配当・残余財産の分配・議決権を株主の権利の代表として挙げています。株主は会社の持ち主として会社の運営を見張る立場にあるので、会社の側で勝手に権利を奪うことはできず、一方で会社の秘密や業務に深く踏み込む権利には、乱用されないように持株要件や裁判所の許可という歯止めが付いています。

教室の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板の中央に株券の絵を1枚描き、そこから左右に矢印を伸ばす。左の矢印の先に札「自益権」と小さな文字「剰余金の配当を受ける権利 残余財産の分配を受ける権利」、右の矢印の先に札「共益権」と小さな文字「議決権 閲

株主の権利は自益権と共益権に分かれ、配当と残余財産の分配を両方とも奪う定款の定めは無効です

株主は、その有する株式につき、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権その他会社法の規定により認められた権利を有します(105条1項)。配当や残余財産の分配のように株主自身の経済的な利益のための権利を自益権、議決権や閲覧請求権・訴えの提起権のように会社の運営に関わる権利を共益権と呼びます。株式は出資の対価として経済的な利益を受ける地位なので、剰余金の配当を受ける権利と残余財産の分配を受ける権利の両方を全部与えない定款の定めは効力を有しません(105条2項)。どちらか一方だけを与えない定款の定めは置けます。「株式会社は,株主に剰余金の配当を受ける権利及び残余財産の分配を受ける権利の全部を与えない旨を定款で定めることができない」という肢は正しいです。共益権も株主の地位に含まれる権利なので、株主の一身に専属するものではなく、株式とともに相続人に承継されます。判例は、社員総会の決議の取消しの訴えの原告が訴訟の係属中に死亡した事案で、相続人は被相続人の法律上の地位を包括的に承継するから、訴訟の原告たる地位をも承継するとしています(最大判昭和45年7月15日)。「株主の株主総会決議取消請求権などの共益権は一身専属的権利であるため、当該訴訟は、原告の死亡によって終了し、相続により株式を取得した相続人が承継することはない」という肢は誤りです。「相続により株式を取得した相続人はその訴訟の原告たる地位を承継せず,その訴訟は当然に終了する」という肢も誤りです。

共益権には1株でも行使できる単独株主権と、持株要件のある少数株主権があり、要件は定款で緩められても引き上げられません

共益権のうち、議決権や株主総会の議事録の閲覧請求、責任追及等の訴え(株主代表訴訟)のように1株の株主でも行使できる権利を単独株主権といいます。公開会社では責任追及等の訴えに6か月前から引き続き株式を有することが要りますが、持株数の要件はありません(847条1項)。「株主代表訴訟を提起することができるのは,総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主又は発行済株式総数の100分の3以上の数の株式を6か月前から引き続き有する株主である」という肢は誤りです。これに対し、会社の業務に深く踏み込む権利には持株要件が課され、これを少数株主権といいます。株主総会の招集の請求は、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主ができ(297条1項)、公開会社でない会社では6か月の保有期間は要りません(同条2項)。請求の後遅滞なく招集の手続が行われないときは、請求した株主は裁判所の許可を得て自ら株主総会を招集できます(同条4項1号)。「株主が取締役に対し適法に株主総会の招集を請求したにもかかわらず,遅滞なく招集の手続が行われない場合には,その株主は,裁判所の許可を得て,自ら株主総会を招集することができる」という肢は正しいです。取締役の解任は株主総会の決議事項なので、「代表取締役を取締役から解任することを議題とすること及びその理由を示して,株主総会の招集を請求することができる」という肢も正しいです。持株要件を満たさない株主の請求を取締役が拒めることは、株式の数に応じた平等な取扱いの例外に当たります。持株要件は、少数派の株主が多数派や経営陣を監督するための歯止めなので、条文の括弧書は「これを下回る割合を定款で定めた場合」だけを認め、定款で引き上げることはできません。「株主総会の招集を請求することができる株主を総株主の議決権の3分の1以上の議決権を有する株主とする旨を定款で定めることができる」という肢は誤りです。株主総会の招集の手続と決議の方法を調査させる検査役の選任は、会社自身か、総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主が申し立てることができます(306条1項)。会社が申し立てるのに株主の同意は要りません。「会社は,株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため,当該株主総会に先立ち,裁判所に対し,検査役の選任の申立てをすることができる」という肢は正しく、「総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主の同意がある場合に限り」申し立てることができるという肢は誤りです。

少数株主権の持株要件(いずれも定款で引き下げられます)

  • 株主総会の招集の請求: 総株主の議決権の100分の3以上を6か月前から引き続き保有(297条1項。公開会社でない会社は保有期間なし)
  • 業務の執行に関する検査役の選任の申立て: 総株主の議決権の100分の3以上又は発行済株式の100分の3以上(358条1項。保有期間の要件なし)
  • 会計帳簿の閲覧又は謄写の請求: 総株主の議決権の100分の3以上又は発行済株式の100分の3以上(433条1項。保有期間の要件なし)
  • 株主総会の招集手続等に関する検査役の選任の申立て: 総株主の議決権の100分の1以上(306条1項。公開会社である取締役会設置会社では6か月の保有期間が要る)
  • 責任追及等の訴え: 持株数の要件はなく、公開会社では6か月前から引き続き保有(847条1項・2項)

業務の執行に関する検査役の選任を申し立てた株主は、裁判の時まで持株要件を満たし続けなければなりません

株式会社の業務の執行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主又は発行済株式の100分の3以上の数の株式を有する株主は、会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に検査役の選任を申し立てることができます(358条1項)。「代表取締役による会社の業務執行に関し,法令に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは,会社の業務及び財産の状況を調査させるため,裁判所に対し,検査役の選任の申立てをすることができる」という肢は正しいです。検査役の調査は会社の業務と財産に強く干渉するので、持株要件は申立ての時に満たしていれば足りるものではなく、申立人の適格として裁判の時まで保ち続ける必要があります。判例は、申立ての時には総株主の議決権の100分の3以上を有していた株主が、その後の会社の新株発行によって100分の3未満しか有しないものとなった事案で、会社が申立てを妨害する目的で新株を発行したなどの特段の事情のない限り、申立ては申立人の適格を欠くものとして不適法であり却下を免れないとしました(最決平成18年9月28日)。「その後,当該株式会社が新株を発行したことにより,当該株主が当該持株要件を満たさないものとなった場合には,特段の事情のない限り,当該申立ては,申立人の適格を欠くものとして不適法となる」という肢は正しいです。

裁判所の窓口の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で机に座り、向かいに申立人の男性株主(札「株主 申立ての時 3.2%」)が立つ。机の上に申立書「検査役の選任の申立て(会社法358条1項)」。株主の後ろに会社のビルの絵と、ビルから飛び出す新

会計帳簿の閲覧の請求は理由を具体的に示せば足り、競業者からの請求は意図を問わず拒めます

総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主又は発行済株式の100分の3以上の数の株式を有する株主は、会社の営業時間内はいつでも、請求の理由を明らかにして、会計帳簿又はこれに関する資料の閲覧又は謄写を請求できます(433条1項)。理由を明らかにさせるのは、閲覧の対象となる帳簿の範囲を画し、会社に拒絶事由があるかを判断させるためなので、理由は具体的に書かなければなりません。しかし、会社の内部にある情報を持たない株主に、その理由を基礎付ける事実が実際にあることまで立証させる根拠はありません。判例は、請求の理由は具体的に記載されなければならないが、記載された請求の理由を基礎付ける事実が客観的に存在することについての立証を要すると解すべき法的根拠はないとしています(最判平成16年7月1日)。「当該請求の理由を明らかにし,かつ,当該請求の理由を基礎付ける事実が客観的に存在することを立証しなければならない」という肢は誤りです。会社は、433条2項各号の拒絶事由に当たる場合を除いて請求を拒めません。拒絶事由は、権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求したとき、会社の業務の遂行を妨げ株主の共同の利益を害する目的で請求したとき、請求者が会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み又はこれに従事するものであるとき、知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求したとき、過去2年以内にそのような通報をしたことがあるときの5つです。このうち競争関係の拒絶事由は、会計帳簿という営業上の秘密が競業者に流れる危険を類型的に防ぐものなので、請求者の内心は要件になっていません。判例は、株主が会社と競業をなす者であるなどの客観的事実が認められれば足り、会計帳簿の閲覧謄写によって知り得る情報を自己の競業に利用するなどの主観的意図があることを要しないとしています(最決平成21年1月15日)。「会計帳簿の閲覧によって知り得る情報を自己の事業に利用するなどの主観的意図がないときであっても,当該請求を拒むことができる」という肢は正しいです。株主名簿の閲覧の請求(125条2項)は株主と債権者の単独株主権で、拒絶事由(同条3項)に競争関係は入っていないので、競業者であることだけでは拒めません。

会社の受付の場面。先生が会社の担当者役(札「株式会社」)でカウンターの内側に立ち、カウンターの奥の棚に厚い帳簿の束と札「会計帳簿」。向かいに男性株主(札「株主 100分の3以上」)が立ち、手に書面「閲覧請求書 理由: ○○取引の妥当性を調べ

議事録や議決権行使書面の閲覧は、書類ごとに閲覧できる人と裁判所の許可の要否が違います

株主総会の議事録は、株主と債権者が会社の営業時間内はいつでも閲覧又は謄写を請求でき、裁判所の許可は要りません(318条4項)。監査役設置会社でも同じです。「監査役設置会社において,株主が株主総会の議事録を閲覧又は謄写するためには,裁判所の許可を得る必要がある」という肢は誤りです。取締役会の議事録は、株主がその権利を行使するため必要があるときに閲覧又は謄写を請求できますが(371条2項)、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では裁判所の許可が要ります(同条3項)。これらの会社では取締役の職務執行の監査を監査役や委員会が担う一方、取締役会の議事録には経営上の秘密が多く含まれるからです。債権者は役員の責任を追及するため必要があるときに裁判所の許可を得て請求できます(同条4項)。「監査役設置会社の株主は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、取締役会議事録の閲覧又は謄写をすることができる」という肢は正しいです。指名委員会等設置会社の各委員会の議事録も、株主は裁判所の許可を得て閲覧又は謄写を請求します(413条3項)。書面による議決権行使で提出された議決権行使書面は、株主が会社の営業時間内はいつでも、請求の理由を明らかにして閲覧又は謄写を請求できますが(311条4項)、債権者に閲覧を認める規定はなく、株主総会において決議をした事項の全部につき議決権を行使することができない株主も請求できません(310条7項括弧書)。「株主総会において決議事項の全部について議決権を行使することができない株主は、当該株主総会について提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写をすることができない」という肢は正しいです。株主と債権者がともに裁判所の許可なく閲覧できる書面を選ばせる問題では、株主総会議事録は当たり、議決権行使書面(債権者は閲覧できません)、取締役会議事録と各委員会の議事録(監査役設置会社等では株主も許可が要ります)は当たりません。

会社の本店の資料室の場面。先生が会社の担当者役(札「監査役設置会社」)で、壁の棚に並ぶ4つの書類箱を男性株主(札「株主」)に示す。箱の札は左から「株主総会議事録 株主も債権者も いつでも閲覧」「取締役会議事録 株主は裁判所の許可が要る」「各

会社法105条

株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。
一 剰余金の配当を受ける権利
二 残余財産の分配を受ける権利
三 株主総会における議決権
2 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

会社法297条1項

総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

会社法433条2項

前項の請求があったときは、株式会社は、次のいずれかに該当すると認められる場合を除き、これを拒むことができない。(略)
三 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。

最判平成16年7月1日(帳簿閲覧請求の要件)

株主が会社に対し会計帳簿等の閲覧謄写を請求するための要件として請求の理由は、具体的に記載されなければならないが、その記載された請求の理由を基礎付ける事実が客観的に存在することについての立証を要すると解すべき法的根拠はない。

論文ではこう使う

論文では、会社が株主の会計帳簿閲覧請求を拒めるかを問われたときに、433条1項の持株要件と「請求の理由を明らかにして」の要件を事実に当てはめ、次に同条2項の拒絶事由を一つずつ検討します。「請求の理由は具体的に記載されなければならないが、その理由を基礎付ける事実の立証までは要しない(最判平成16年7月1日)。本件の請求理由は〜であり具体性を欠くとはいえない。次に、Xは甲社と実質的に競争関係にある乙社の代表取締役であるから、433条2項3号の拒絶事由がある。同号は客観的事実があれば足り主観的意図を要しない(最決平成21年1月15日)から、Xに情報を利用する意図が無くても甲社は請求を拒むことができる」と書きます。少数株主権の持株要件の基準時が問われたときは、検査役選任の事案の判例(最決平成18年9月28日)を引き、申立て後に会社の新株発行で要件を欠いたときは妨害目的などの特段の事情がない限り不適法になることを、検査役の調査が会社に強い干渉となる点から理由付けます。

試験ではこう問われる

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