株主総会の議事(総会検査役・議事録・調査者)とは
かぶぬしそうかいのぎじ
株主総会の議事とは、総会の場で議長の下に行われる審議と採決の進め方と、それを支える制度のことです。総会検査役とは、会社又は総株主の議決権の100分の1以上を持つ株主の申立てにより、招集の手続と決議の方法を調査させるために裁判所が総会に先立って選任する検査役です(会社法306条)。議事録は総会の議事について作成して10年間本店に備え置く書面で、株主と債権者が閲覧できます(318条)。調査者とは、取締役等が総会に提出した資料を調査させるために総会の決議で選任する者です(316条1項)。
株主総会の当日は、議長が議事を進め、取締役が議案を説明し、株主が質問し、採決します。会社法は、この進め方が公正に行われるための道具をいくつか置いています。総会が荒れそうなときは、会社や株主が前もって裁判所に頼んで検査役を送り込み、手続と採決の様子を記録してもらえます。取締役が出した資料が信用できなければ、総会の決議で調査する人を選べます。会計監査人を呼んで意見を聞くこともできます。終わった後は議事録を10年間本店に置き、株主と債権者はいつでも見ることができます。
株主総会は取締役が提出した資料を調査する者を決議で選任でき、会計監査人は出席を求める決議があれば出席して意見を述べます
株主総会は、その決議によって、取締役・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人がその総会に提出し又は提供した資料を調査する者を選任することができます(316条1項)。計算書類や監査報告が正確かどうかを株主が総会の場で自分で確かめるのは難しいので、総会の決議で専門家に調べさせる仕組みです。普通決議で足り、取締役会設置会社でも招集通知に議題として載っていなくても選任できます(309条5項ただし書)。「株主総会においては,その決議によって,取締役がその株主総会に提出し,又は提供した資料を調査する者を選任することができる」という肢は正しいです。少数株主の請求により招集された総会(297条)では、会社の業務と財産の状況を調査する者も選任できます(316条2項)。会計監査人は、計算書類等が法令・定款に適合するかどうかについて監査役と意見を異にするときは、定時株主総会に出席して意見を述べることができます(398条1項)。これとは別に、定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は定時株主総会に出席して意見を述べなければなりません(398条2項)。こちらは権利ではなく義務です。「会計監査人は,定時株主総会において出席を求める決議があったときは,その株主総会に出席して意見を述べなければならない」という肢は正しいです。
会社又は議決権の100分の1以上を持つ株主は、総会に先立って裁判所に検査役の選任を申し立てることができます
株式会社又は総株主(決議事項の全部に議決権のない株主を除く)の議決権の100分の1(定款で引き下げられる)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続と決議の方法を調査させるため、その総会に先立ち、裁判所に対し検査役の選任の申立てをすることができます(306条1項)。公開会社である取締役会設置会社の株主は6か月前から引き続き持っていることが要ります(306条2項)。会社自身が申し立てるときに株主の同意は要りません。「会社は,株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため,当該株主総会に先立ち,裁判所に対し,検査役の選任の申立てをすることができる」という肢は正しく、「会社は,総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主の同意がある場合に限り,…検査役の選任の申立てをすることができる」という肢は誤りです。申立てがあれば、裁判所は不適法として却下する場合を除いて検査役を選任しなければならず(306条3項)、検査役は調査の結果を裁判所に報告し(306条5項)、裁判所は必要があれば取締役に一定期間内の総会の招集や調査結果の株主への通知を命じます(307条1項)。この検査役の選任は、当事者が争う訴訟ではなく、会社法上の非訟事件の手続によります(868条1項)。「株主総会の招集手続等に関する検査役の選任」は非訟事件の手続によるものに当たります。
株主が議事録を閲覧・謄写するのに裁判所の許可は要らず、特別の利害関係を有する者が議長を務めても決議は無効になりません
株主総会の議事については議事録を作成し(318条1項)、会社は総会の日から10年間本店に、5年間その写しを支店に備え置きます(318条2項・3項)。株主と債権者は、会社の営業時間内はいつでも議事録の閲覧又は謄写を請求できます(318条4項)。裁判所の許可が要るのは親会社の社員が請求する場合だけです(318条5項)。取締役会の議事録は、監査役設置会社などでは株主が裁判所の許可を得て閲覧するのと対照的です(371条3項)。「監査役設置会社において,株主が株主総会の議事録を閲覧又は謄写するためには,裁判所の許可を得る必要がある」という肢は誤りです。株主総会議事録は、株主も会社債権者も裁判所の許可なしに閲覧できる書面に当たります。総会の議事を進める議長について会社法は資格を定めておらず、定款で社長が議長になると定めるのが通例です。決議について特別の利害関係を有する者が議長として議事を主宰しても、それは決議の内容が法令に違反する場合(830条2項)ではないので、決議が無効になることはありません。「株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議長として議事を主宰した場合には,その株主総会の決議は,無効である」という肢は誤りです。議長が自分の利害に沿うように審議を打ち切るなど公正を欠く議事運営をしたときは、決議の方法が著しく不公正であるとして取消事由(831条1項1号)になり得ます。
会社法306条1項
株式会社又は総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
会社法316条1項
株主総会においては、その決議によって、取締役、会計参与、監査役、監査役会及び会計監査人が当該株主総会に提出し、又は提供した資料を調査する者を選任することができる。
会社法398条2項
定時株主総会において会計監査人の出席を求める決議があったときは、会計監査人は、定時株主総会に出席して意見を述べなければならない。
論文ではこう使う
論文では、議長の議事整理や動議の扱いが決議方法の瑕疵に当たるかを論じる場面で使います。「議長は総会の秩序を維持し議事を整理する権限を持つ(会社法315条1項)が、その行使は公正でなければならず、株主の質問や動議を合理的な理由なく打ち切り採決した場合は、決議の方法が著しく不公正(831条1項1号)に当たる」と規範を置き、審議の時間、説明義務(314条)の履行、動議の内容と採決の経過をあてはめます。総会検査役の報告書がある事案では、その報告が招集手続・決議方法の事実認定の証拠になることに触れ、検査役の選任の申立てが議決権の100分の1以上の株主にも認められる少数株主権であること(306条1項)を確かめます。議長が特別の利害関係を有していた事案では、無効事由ではなく取消事由の問題として整理します。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。