書面による議決権行使と電磁的方法による議決権行使とは
しょめんによるぎけつけんこうしとでんじてきほうほうによるぎけつけんこうし
書面による議決権行使とは、株主総会に出席しない株主が、会社から交付された議決権行使書面に必要な事項を記載して法務省令で定める時までに会社に提出することで議決権を行使する制度です(会社法298条1項3号・301条1項・311条1項)。電磁的方法による議決権行使とは、会社の承諾を得て、議決権行使書面に記載すべき事項を電磁的方法により会社に提供して議決権を行使する制度です(298条1項4号・312条1項)。
株主が何千人もいる会社では、総会の会場に来られる人はごく一部です。来られない株主にも賛否を伝えてもらうため、会社が招集通知と一緒に参考書類と投票用紙を送り、株主がそれを返送して投票するのが書面による議決権行使で、インターネットで同じことをするのが電磁的方法による議決権行使です。株主が1000人以上いる会社には書面投票を必ず認めさせ、少ない会社では会社の判断で採用します。投票用紙を出した株主も、気が変われば総会に来て直接投票できます。
議決権を行使できる株主が1000人以上の会社は書面による議決権行使を定めなければならず、大会社かどうかは関係ありません
出席しない株主が書面によって議決権を行使できるとするかどうかは、取締役(取締役会設置会社では取締役会)が招集に際して定める事項です(298条1項3号・4項)。もっとも、株主(その総会で決議できる事項の全部につき議決権を行使できない株主を除く)の数が1000人以上である場合には、取締役はこれを定めなければなりません(298条2項本文。上場会社で委任状勧誘をする一定の会社は除かれます)。基準は議決権を行使できる株主の数であって、資本金5億円以上又は負債200億円以上という大会社かどうかではありません。「大会社においては,株主の数が1000人未満でも,株主総会を招集する場合には,株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができる旨を定めなければならない」という肢は誤りです。定めるのは招集の決定事項なので、定款の定めは要りません。「株主の数が1000人以上である場合であっても,定款に定めがない限り,株主総会に出席しない株主は,書面によって議決権を行使することができない」という肢は誤りです。書面投票と電磁的方法による議決権行使(298条1項4号)は別の制度なので、1000人以上の会社が電磁的方法による行使を定めても、書面による行使を定める義務は免れません。「電磁的方法による議決権の行使をすることができる旨を定めたときは,当該株主が書面による議決権の行使をすることができる旨を定めることを要しない」という肢は誤りです。書面投票を定めた会社は、招集通知を総会の日の2週間前までに書面で発し(299条1項・2項1号)、株主総会参考書類と議決権行使書面を交付します(301条1項)。電子投票を定めた会社も参考書類を交付します(302条1項)。
議決権行使書面を提出した株主も総会に出席して議決権を行使でき、代理人による行使もできます
書面による議決権行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに会社に提出して行い、行使した議決権の数は出席した株主の議決権の数に算入します(311条1項・2項)。書面投票は出席しない株主に議決権行使の機会を与える制度であって、書面を提出した株主から出席の機会を奪うものではありません。株主は質問や動議など議決権以外の権利も総会の場で行使できるので、議決権行使書面を提出した株主も総会に出席でき、出席して同じ議案に議決権を行使すれば、先にした書面による行使は効力を失うと解されています。「株主は,議決権行使書面によって議決権を行使した場合には,その議決権行使に係る議題について株主総会に出席することができない」という肢と、「株主総会に先立って議決権行使書面をあらかじめ会社に提出した株主は,当該株主総会に出席して議決権を行使することができない」という肢はいずれも誤りです。代理人によって議決権を行使すること(310条1項)も妨げられません。「議決権行使書面を株式会社に提出した場合には,同一の議案について,代理人によってその議決権を行使することができない」という肢は誤りです。書面による行使と電磁的方法による行使の両方を定めた会社では、同じ株主が同一の議案について両方の方法で内容の異なる行使をすることがあり得るので、取締役会はその取扱いに関する事項を招集の決定事項として定めることができます(298条1項5号・会社法施行規則63条)。「株主が同一の議案につき両方の方法により重複してそれぞれの内容が異なる議決権の行使をしたときの取扱いに関する事項を定めることができる」という肢は正しいです。
議決権行使書面は株主が閲覧できますが、決議事項の全部に議決権のない株主は閲覧できず、会社債権者にも閲覧権はありません
会社は提出された議決権行使書面を総会の日から3か月間本店に備え置き、株主は営業時間内はいつでも理由を明らかにして閲覧又は謄写を請求でき、会社は権利の確保・行使に関する調査以外の目的の請求などに当たらない限り拒めません(311条3項〜5項)。電磁的方法による行使の記録も同じです(312条4項〜6項)。ここでいう株主からは、その総会で決議をした事項の全部につき議決権を行使できない株主が除かれます(310条7項括弧書)。「株主総会において決議事項の全部について議決権を行使することができない株主は、当該株主総会について提出された議決権行使書面の閲覧又は謄写をすることができない」という肢は正しいです。閲覧できるのは株主だけで、株主総会議事録や計算書類と違って、会社債権者が議決権行使書面を閲覧できる規定はありません。吸収合併契約の承認を議案とする株主総会で書面又は電磁的方法によって議案に反対する議決権の行使をした株主は、総会に先立って合併に反対する旨を会社に通知したものと認められ、総会で反対したことと合わせて反対株主として株式買取請求ができます(785条2項1号イ・797条2項1号イ)。「書面又は電磁的方法によって当該議案に反対する議決権の行使をした場合には,当該株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨を株式会社に対し通知したものと認められ,反対株主として株式買取請求をすることができる」という肢は正しいです。
会社法298条2項
取締役は、株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。次条から第三百二条までにおいて同じ。)の数が千人以上である場合には、前項第三号に掲げる事項を定めなければならない。ただし、当該株式会社が金融商品取引法第二条第十六項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社であって法務省令で定めるものである場合は、この限りでない。
会社法311条1項
書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を株式会社に提出して行う。
会社法311条2項
前項の規定により書面によって行使した議決権の数は、出席した株主の議決権の数に算入する。
論文ではこう使う
論文では、書面投票をした株主が総会に出席したり代理人を送ったりした事案で、どの議決権行使を有効と数えるかを論じる場面で使います。「書面による議決権行使(会社法311条1項)は出席しない株主のための制度であるから、株主本人が出席して議決権を行使したときは、後の行使が先の書面による行使を撤回したものと解され、出席した株主の議決権として数える」と書き、代理人の出席や委任状との重複では、会社が合理的な取扱いを招集の決定事項として定めていたか(施行規則63条)を確かめます。1000人以上の株主がいる会社が書面投票を定めなかった総会は、招集の決定の法令違反(298条2項)として決議取消事由(831条1項1号)の検討につなぎます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。