株主総会資料の電子提供措置とは
かぶぬしそうかいしりょうのでんしていきょうそち
株主総会資料の電子提供措置とは、株主総会参考書類・議決権行使書面・計算書類及び事業報告・連結計算書類(株主総会参考書類等)の内容である情報を、電磁的方法により株主が提供を受けることができる状態に置く措置で(会社法325条の2)、定款にその旨の定めを置いた会社は、招集通知に際してこれらの書類を交付・提供することを要しなくなります(325条の4第3項)。令和元年改正で新設され、令和4年9月に施行された制度で、振替株式を発行する上場会社には定款の定めが義務づけられています。
上場会社は株主が何万人もいて、招集通知のたびに分厚い参考書類や計算書類を印刷して郵送してきました。令和元年の改正で、これらの資料をウェブサイトに載せて株主が見られる状態にしておけば、紙の交付は要らないことになりました。これが電子提供措置で、上場会社は必ずこの制度を使います。会社は総会の3週間前からウェブサイトに資料を載せ続け、株主にはアクセス先を書いた短い招集通知だけを送ります。インターネットを使えない株主のために、紙で欲しいと会社に請求すれば紙の書面をもらえる権利が残されています。
定款の定めを置いた会社は、総会の3週間前の日又は招集通知を発した日のいずれか早い日から総会の日後3か月まで電子提供措置をとり、書類の交付を要しません
株式会社は、取締役が株主総会の招集の手続を行うときに、株主総会参考書類、議決権行使書面、437条の計算書類及び事業報告、444条6項の連結計算書類(株主総会参考書類等)の内容である情報について電子提供措置をとる旨を定款で定めることができます(325条の2)。振替株式を発行する会社(上場会社)はこの定款の定めを置かなければならず(社債、株式等の振替に関する法律159条の2第1項)、この定款の定めは登記事項です(911条3項12号の2)。定款の定めがある会社の取締役は、取締役会設置会社であるか書面投票・電子投票を定めた場合には、株主総会の日の3週間前の日又は招集通知を発した日のいずれか早い日(電子提供措置開始日)から株主総会の日後3か月を経過する日までの間(電子提供措置期間)、招集の決定事項、株主総会参考書類と議決権行使書面に記載すべき事項、株主から請求のあった議案の要領、計算書類及び事業報告、連結計算書類などの情報について継続して電子提供措置をとらなければなりません(325条の3第1項)。招集通知に際して議決権行使書面を交付するときは、その事項の電子提供措置は要りません(325条の3第2項)。有価証券報告書を提出する会社が電子提供措置開始日までにこれらの事項を記載した有価証券報告書をEDINETで提出するときも、その事項については電子提供措置を要しません(325条の3第3項)。総会の日後3か月まで続けるのは、決議取消しの訴えの提訴期間中、株主が資料を確かめられるようにするためです。電子提供措置をとる会社では、招集通知に際して株主総会参考書類等を交付し又は提供することを要しません(325条の4第3項)。
招集通知は公開会社でなくても2週間前までに発し、電子提供措置をとっている旨などを記載すれば足ります
電子提供措置をとる場合の招集通知は、公開会社でない会社であっても株主総会の日の2週間前までに発しなければなりません(325条の4第1項。299条1項の読替え)。株主がウェブサイトの資料を見て検討する期間を確保するためです。通知には、日時・場所、目的である事項、書面投票・電子投票を認める旨のほか、電子提供措置をとっている旨、EDINETで提出したときはその旨、法務省令で定める事項(ウェブサイトのアドレスなど)を記載すれば足り、法務省令で定めるその他の招集決定事項(298条1項5号)の記載は要りません(325条の4第2項)。株主が議案要領の通知を請求した場合(305条1項)は、招集通知に記載する代わりにその議案の要領について電子提供措置をとります(325条の4第4項)。電子提供措置期間中に、情報が提供を受けられる状態に置かれなくなったり改変されたりする中断が生じても、会社が善意無重過失又は正当な事由があり、中断の時間の合計が期間の10分の1を超えず、総会の日までの中断も開始日から総会の日までの期間の10分の1を超えず、会社が中断を知った後速やかにその旨・時間・内容について電子提供措置をとったときは、中断は電子提供措置の効力に影響を及ぼしません(325条の6)。これらの規定は種類株主総会にも準用されます(325条の7)。
株主は電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求でき、会社はこれを定款で奪えません
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある会社の株主(電磁的方法による招集通知の発出を承諾した株主を除く)は、会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができます(325条の5第1項)。インターネットを利用できない株主が情報から遮断されないようにするための権利で、取締役は、招集通知に際して、議決権の基準日までに書面交付請求をした株主にその書面を交付しなければなりません(325条の5第2項)。「株主総会参考書類等の内容である情報について電子提供措置をとる旨の定めがある株式会社の株主は、当該株式会社に対し、電子提供措置事項を記載した書面の交付を請求することができない」という肢は誤りです。会社は、電子提供措置事項のうち法務省令で定めるものの全部又は一部を交付する書面に記載しないことができる旨を定款で定めることができますが(325条の5第3項)、請求権そのものを奪うことはできません。書面交付請求をした株主について、請求の日から1年を経過したときは、会社は書面の交付を終了する旨を通知し、異議があれば1か月以上の催告期間内に述べるよう催告でき、期間内に異議を述べなかった株主の請求は効力を失います(325条の5第4項・5項)。株主総会の招集通知に関する一般の規律(決議事項の全部に議決権のない株主や5年以上通知が到達しない株主に通知を要しないことなど)は、電子提供措置をとる会社でも変わりません。
会社法325条の5第1項
電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主(第二百九十九条第三項(第三百二十五条において準用する場合を含む。)の承諾をした株主を除く。)は、株式会社に対し、第三百二十五条の三第一項各号(第三百二十五条の七において準用する場合を含む。)に掲げる事項(以下この条において「電子提供措置事項」という。)を記載した書面の交付を請求することができる。
会社法325条の4第3項
第三百一条第一項、第三百二条第一項、第四百三十七条及び第四百四十四条第六項の規定にかかわらず、電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社においては、取締役は、第二百九十九条第一項の通知に際して、株主に対し、株主総会参考書類等を交付し、又は提供することを要しない。
会社法325条の4第1項
前条第一項の規定により電子提供措置をとる場合における第二百九十九条第一項の規定の適用については、同項中「二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))」とあるのは、「二週間」とする。
論文ではこう使う
論文では、上場会社の株主総会の招集手続の適法性を確かめる前提として使います。「甲社は振替株式を発行する会社であり、電子提供措置をとる旨の定款の定めがある(会社法325条の2)。取締役は総会の日の3週間前の日又は招集通知を発した日のいずれか早い日から総会の日後3か月を経過する日まで株主総会参考書類等の事項について電子提供措置をとり(325条の3第1項)、招集通知は2週間前までに発しなければならない(325条の4第1項)」と手続を並べ、電子提供措置の開始の遅れや中断が招集手続の法令違反(831条1項1号)に当たるか、中断については325条の6の救済要件を満たすかを検討します。書面交付請求をした株主に書面を交付しなかった事案では、325条の5第2項の違反としてその株主への招集手続の瑕疵を認定し、裁量棄却(831条2項)の可否につなぎます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。