議決権(相互保有株式・不統一行使・特別の利害関係を有する株主)とは
ぎけつけん
議決権とは、株主が株主総会の決議に加わる権利で、株主は1株につき1個(単元株式数を定款で定めた会社では1単元につき1個)の議決権を持ちます(会社法308条1項)。相互保有株式とは、会社がその経営を実質的に支配できる関係にある株主(総株主の議決権の4分の1以上を持つ会社など)の有する株式で、議決権がありません。不統一行使とは、株主がその有する議決権を統一しないで行使することで(313条)、特別の利害関係を有する株主も議決権を行使できますが、それによって著しく不当な決議がされたときは取消事由になります(831条1項3号)。
株主総会での発言力は持っている株式の数で決まり、1株に1個の議決権があります。ただし例外があります。A社がB社の議決権の4分の1以上を持っていると、B社の経営はA社の意のままなので、B社が持つA社株式の議決権はA社の経営陣が自分で自分に投票するのと同じになります。そこでB社の議決権は認めません。逆に、証券会社のように他人の分も預かって株式を持つ株主には、預け主ごとに賛否を分けて投票することを認めます。決議に利害のある株主でも投票はでき、その結果がひどく不当なときにだけ後から決議を取り消せます。
会社がその株主である他の会社の議決権の4分の1以上を持つときは、その他の会社は議決権を持ちません
株主は株主総会においてその有する株式1株につき1個の議決権を持ち、単元株式数を定款で定めている会社では1単元の株式につき1個の議決権を持ちます(308条1項)。ただし、株式会社がその総株主の議決権の4分の1以上を有することその他の事由を通じて、その株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主は除かれます(308条1項括弧書・会社法施行規則67条)。A株式会社がその株主であるB株式会社の議決権の総数の4分の1以上を持つ場合、B社はA社の株主総会において議決権を持ちません。A社の経営陣がB社の役員人事などを通じてB社の議決権行使を左右でき、自分が株主でないのに自社の総会を支配できてしまうからで、この相互保有株式の議決権の制限は会社支配の公正を維持するための規律に当たります。会社は自己株式について議決権を持たず(308条2項)、単元未満株主は単元未満株式について議決権を行使できず(189条1項)、議決権制限株式の株主はその制限の範囲で議決権を行使できません(108条1項3号)。自己株式を特定の株主から有償で取得する決議では、その特定の株主は議決権を行使できません(160条4項)。
株主は議決権を統一しないで行使でき、他人のために株式を有する者でないときは会社が拒めます
株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができます(313条1項)。信託の受託者や名義人のように他人のために株式を持つ株主が、背後の実質的な持ち主ごとに分かれた意思をそのまま議決権行使に反映させるための制度です。「株主は,その有する議決権を統一しないで行使することはできない」という肢は誤りです。取締役会設置会社では、株主は総会の日の3日前までに、不統一行使をする旨とその理由を会社に通知しなければなりません(313条2項)。会社は、その株主が他人のために株式を有する者でないときは、不統一行使を拒むことができます(313条3項)。自分のためだけに株式を持つ株主が賛否を分ける必要はなく、会社の集計の手間を増やすだけだからです。「株式会社は,株主が他人のために株式を有する者でないときは,当該株主が株主総会においてその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる」という肢は正しいです。
特別の利害関係を有する株主も議決権を行使でき、著しく不当な決議がされたときに取消事由になります
取締役会の決議では特別の利害関係を有する取締役は議決に加われませんが(369条2項)、株主総会の決議については、特別の利害関係を有する株主の議決権行使を禁じる規定はありません。株主は会社に忠実義務を負わず、議決権は自分の利益のために行使してよい権利だからです。会社法は、特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がされたときを、決議取消しの訴えの取消事由としています(831条1項3号)。議決権の行使自体は許したうえで、結果が著しく不当なときに事後に取り消す仕組みです。「株主総会の決議について特別の利害関係を有する株主は,その決議において,議決権を行使することができない」という肢は誤りです。取消事由であって無効事由ではないので、「株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことは,当該決議の無効事由となる」という肢も誤りです。特別の利害関係を有する者が議長として議事を主宰しただけでは、決議は無効になりません。
会社法308条1項
株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
会社法313条3項
株式会社は、第一項の株主が他人のために株式を有する者でないときは、当該株主が同項の規定によりその有する議決権を統一しないで行使することを拒むことができる。
会社法831条1項3号
株主総会等の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき。
論文ではこう使う
論文では、多数派株主が自分に有利な決議(自分への退職慰労金、少数派の締出しなど)を通した事案で使います。「株主は取締役と異なり会社に忠実義務を負わないから、決議について特別の利害関係を有する株主も議決権を行使できる(会社法369条2項と対比)。もっとも、その行使によって著しく不当な決議がされたときは取消事由になる(831条1項3号)」と規範を置き、特別の利害関係(決議によって他の株主と共通しない個人的な利益を受けるか)と著しい不当性(決議の内容が会社や他の株主の利益を害し、多数決の濫用といえるか)を順にあてはめます。相互保有株式や自己株式の議決権が数えられていた事案では、308条1項括弧書・2項によりその議決権を除いて定足数と賛成数を計算し直し、決議方法の法令違反(831条1項1号)につなぎます。
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