株主総会の招集の決定と招集手続の省略とは
かぶぬしそうかいのしょうしゅうのけっていとしょうしゅうてつづきのしょうりゃく
株主総会の招集の決定とは、株主総会を招集する取締役(取締役会設置会社では取締役会の決議)が、日時・場所、目的である事項、書面・電磁的方法による議決権行使を認めるかなどを定めることです(会社法298条1項・4項)。招集手続の省略とは、株主の全員の同意があるときに、招集の決定や通知の手続を経ないで株主総会を開催できることで、書面・電磁的方法による議決権行使を定めた場合はできません(300条)。
株主総会を開くには、まず誰かが「いつ、どこで、何を決めるか」を決めなければなりません。これを決めるのは取締役で、取締役会を置く会社では取締役会の決議で決めます。開く場所は昔は本店のある場所に限られていましたが、いまは制限がありません。招集の手続は株主の準備のための仕組みなので、株主全員がよいと言えば省いて開くことができます。経営陣が総会を開こうとしないときのために、議決権の100分の3以上を持つ株主には招集を請求する権利があり、応じてもらえなければ裁判所の許可を得て自分で招集できます。
招集地に制限はなく、定時株主総会は事業年度の終了後一定の時期に招集すれば足ります
定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならず(296条1項)、臨時株主総会は必要がある場合にはいつでも招集でき(296条2項)、株主が招集する場合を除いて取締役が招集します(296条3項)。「定時株主総会は,毎事業年度の終了後3か月以内に招集しなければならない」という肢は誤りです。多くの会社が事業年度末から3か月以内に開くのは、事業年度末を基準日とした場合に基準日株主が権利を行使できるのが3か月以内に限られる(124条2項)ためで、296条1項の要求ではありません。取締役は招集に際して、日時と場所、目的である事項があるときはその事項、書面・電磁的方法による議決権行使を認めるときはその旨などを定め(298条1項)、取締役会設置会社ではこの決定は取締役会の決議によります(298条4項)。場所は定めなければなりませんが、本店の所在地やこれに隣接する地に限るという規定は会社法にはありません。旧商法にあった招集地の規制は会社法で削除されました。「株主総会は,会社の本店の所在地において招集しなければならない」という肢と、「株主総会は,定款に別段の定めがある場合を除き,本店の所在地又はこれに隣接する地に招集しなければならない」という肢はいずれも誤りです。株主の出席を著しく困難にする場所を選べば、招集の手続が著しく不公正であるとして取消事由になり得ます。場所を定めたうえで、その場所にいない株主を、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話できる方法で出席させることもできます。「株式会社は、株主総会の場所に存しない株主を、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、当該株主総会に出席させることはできない」という肢は誤りです。
株主全員の同意があれば公開会社でも招集手続を省略できますが、書面投票・電子投票を定めた場合はできません
株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができます(300条本文)。招集手続は株主の利益を守るための制度なので、守られる株主全員が同意していれば省いても不利益は生じないからです。この規定を公開会社でない会社に限る定めはなく、公開会社でも省略できます。「株主総会は,会社法上の公開会社でない株式会社に限り,株主の全員の同意があるときは,招集の手続を経ることなく開催することができる」という肢は誤りです。同意の方式に決まりはなく、書面や電磁的記録でする必要はありません。「株主の同意は,書面又は電磁的記録によりしなければならない」という肢は誤りです。ただし、書面又は電磁的方法による議決権行使を認める旨を定めた場合は省略できません(300条ただし書)。出席しない株主の議決権行使は、招集通知に際して交付される株主総会参考書類と議決権行使書面によって支えられているからです。「当該株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとされた場合には、株主の全員の同意があるときであっても、招集の手続を経ることなく開催することはできない」という肢は正しいです。株主総会において延期又は続行の決議があった場合には、後日開かれる延会・継続会は当初の総会と同一の総会の一部なので、招集の決定と通知の規定は適用されず、改めて招集通知を発する必要はありません(317条)。「株主総会においてその延期の決議があった場合,後日開催されるその株主総会につき,改めて株主に対する招集通知を発しなければならない」という肢は誤りです。
総株主の議決権の100分の3以上を持つ株主は招集を請求でき、遅滞なく招集されなければ裁判所の許可を得て自ら招集できます
総株主の議決権の100分の3(定款で引き下げられる)以上の議決権を6か月(定款で短縮できる)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(その株主が議決権を行使できる事項に限る)と招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができます(297条1項)。公開会社でない会社では6か月の保有期間は要りません(297条2項)。代表取締役の解任を議題とする招集の請求もできます。「会社法所定の要件を満たす株主は,取締役に対し,代表取締役を取締役から解任することを議題とすること及びその理由を示して,株主総会の招集を請求することができる」という肢は正しいです。定款で変えられるのは持株要件と保有期間を緩める方向だけなので、総株主の議決権の3分の1以上に引き上げる定款の定めはできません。「株主総会の招集を請求することができる株主を総株主の議決権の3分の1以上の議決権を有する株主とする旨を定款で定めることができる」という肢は誤りです。請求した株主の議決権が100分の3に満たないときに取締役が請求を拒めるという規律は、持株数によって株主を異なって扱うもので、株主平等の原則の例外に当たります。請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合、又は請求の日から8週間以内の日を総会の日とする招集通知が発せられない場合には、請求をした株主は裁判所の許可を得て自ら株主総会を招集することができます(297条4項)。「株主が取締役に対し適法に株主総会の招集を請求したにもかかわらず,遅滞なく招集の手続が行われない場合には,その株主は,裁判所の許可を得て,自ら株主総会を招集することができる」という肢は正しいです。株主は1株につき1個の議決権を持ち(308条1項)、招集通知を受けたことは議決権行使の要件ではないので、通知を受けなかった株主も出席して議決権を行使できます。「株主総会の招集通知を受けなかった株主は,当該株主総会に出席しても,議決権を行使することができない」という肢は誤りです。
会社法300条
前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。
会社法297条1項
総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
会社法317条
株主総会においてその延期又は続行について決議があった場合には、第二百九十八条及び第二百九十九条の規定は、適用しない。
論文ではこう使う
論文では、招集の決定を欠く総会や、代表取締役が取締役会の決議なしに招集した総会の決議の効力を論じる場面で使います。「取締役会設置会社では招集事項の決定は取締役会の決議による(会社法298条4項)から、これを欠く招集は招集手続の法令違反に当たり決議取消事由(831条1項1号)になる。もっとも株主全員が出席し異議なく決議に加わった全員出席総会では、招集手続は株主の利益のための制度である以上、株主全員の同意(300条)があったものとして決議は有効と解される」と書き、300条ただし書(書面投票を定めた場合)に当たらないかを確かめます。少数株主が招集した総会では、297条の持株要件・請求・裁判所の許可を順に認定し、許可を得ずに招集した総会の決議は不存在になり得ることにつなぎます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。