株主平等原則(株主ごとに異なる取扱い)とは
かぶぬしびょうどうげんそく
株主平等原則とは、株式会社は株主をその有する株式の内容及び数に応じて平等に取り扱わなければならないという原則です(会社法109条1項)。株主ごとに異なる取扱いとは、公開会社でない株式会社が、剰余金の配当・残余財産の分配・議決権に関する事項について、株式の内容ではなく株主が誰かに着目して異なる取扱いを行う旨を定款で定めることです(同条2項)。
100株持つ株主と1株持つ株主がいれば、配当は100対1になり、議決権も100個対1個になります。会社は株主を「その有する株式の内容及び数に応じて」平等に扱わなければならず(会社法109条1項)、多数派が会社を動かす仕組みの中で少数派の株主が不当に不利に扱われないようにするための原則です。種類株式で配当に差を付けることは「内容に応じた」取扱いなので原則どおりですし、小さな会社では株主の顔ぶれに応じて配当や議決権を変えたい事情があるので、公開会社でない会社に限って株主ごとに異なる取扱いが認められています。
平等とは株式の内容と数に比例した取扱いのことなので、種類株式で配当に差を付けることは原則の例外ではありません
株主平等原則は、同じ内容の株式であれば、持株数に比例して同じ取扱いをすることを求めます。剰余金の配当について内容の異なる種類株式(108条1項1号)を発行し、優先株式の株主に先に配当することは、株式の内容の違いに応じた取扱いなので、原則に反しておらず、原則の例外でもありません。「この原則の例外としてふさわしくないもの」を選ばせる問題では、「剰余金の配当に関する優先株式を新たに発行し,既存の株式の株主に優先して優先株式の株主に剰余金の配当をすることができる」という規律が、例外に当たらないものに当たります。これに対し、同じ内容の株式の中で持株数に比例しない扱いをする規律は、原則の例外として会社法が特に認めたものです。株主割当てで株主が割当てを受ける募集株式の数に1株に満たない端数があるときはこれを切り捨てること(202条2項ただし書)、一定の数の株式をもって1単元とし単元未満株主に議決権を与えないこと(188条1項)、総株主の議決権の100分の3に満たない株主の株主総会の招集の請求を取締役が拒めること(297条1項)は、いずれも原則の例外に当たります。
公開会社は、株式の数にかかわらず株主に同額の配当をする内容の種類株式を発行できません
種類ごとに配当額に差を付けることはできますが、同じ種類の株式の中では、配当は株式の数に応じて割り当てなければなりません(454条3項)。株主の頭数で同額を配る配当は、株式の数に応じた取扱いではないので、種類株式の内容としても定められません。公開会社でない会社であれば、次の段落の株主ごとに異なる取扱いの定款の定め(109条2項)によってそのような配当を定めることができますが、公開会社にはこの定めが認められていません。「会社法上の公開会社は,株主に対してその有する当該種類の株式の数にかかわらず同額の剰余金の配当をすることを内容とする種類の株式を発行することはできない」という肢は正しいです。
公開会社でない会社は、配当・残余財産の分配・議決権について株主ごとに異なる取扱いを定款で定めることができ、その定款変更には特殊の決議が要ります
公開会社でない株式会社は、109条1項の規定にかかわらず、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、株主総会における議決権(105条1項各号の権利)に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができます(109条2項)。株式の内容ではなく、株主が誰かに着目して差を付ける定めなので、属人的な定めとも呼ばれます。この定めがある場合、その株主の有する株式は、その権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして第2編と第5編の規定を適用します(同条3項)。「会社法上の公開会社でない会社は,残余財産の分配を受ける権利に関する事項について,株主ごとに異なる取扱いをする旨を定款で定めることができる」という規律は、株主平等原則の例外に当たります。この定めを設け又は変更する定款変更(廃止を除く)は、株主の経済的利益と議決権に直接差を付けるので、総株主の半数以上であって、総株主の議決権の4分の3以上に当たる多数による特殊の決議が要ります(309条4項)。全部の株式の内容として譲渡制限の定めを設ける定款変更は、議決権を行使することができる株主の半数以上であって、その株主の議決権の3分の2以上に当たる多数による別の特殊の決議なので(309条3項1号)、分母も割合も違います。「全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款変更の決議と,…株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款の定めを設ける定款変更の決議とは,決議要件が同じである」という肢は誤りです。
二つの特殊の決議
- 全部の株式に譲渡制限の定めを設ける定款変更: 議決権を行使することができる株主の半数以上、かつその株主の議決権の3分の2以上(309条3項1号)
- 株主ごとに異なる取扱いの定めを設け又は変更する定款変更(公開会社でない会社): 総株主の半数以上、かつ総株主の議決権の4分の3以上(309条4項)
株主平等原則の趣旨は新株予約権無償割当てにも及びますが、株主の共同の利益を守るための相当な差別的取扱いまでは禁じません
株主平等原則は109条1項の文言上は株式の取扱いに関する規定ですが、株主としての資格に基づいて行われる会社の行為全般の指針になります。判例は、敵対的買収に対する防衛策として買収者だけ行使できない新株予約権を全株主に無償で割り当てた事案で、新株予約権無償割当ては株主としての資格に基づき行われ、その内容は同一であることが前提とされるから株主平等原則の趣旨が及ぶとしたうえで、特定の株主による経営支配権の取得に伴い会社の企業価値が毀損され、会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになるような場合には、その防止のために当該株主を差別的に取り扱っても、その取扱いが衡平の理念に反し相当性を欠くものでない限り、直ちに同原則の趣旨に反するものではないとしました(最決平成19年8月7日)。企業価値が毀損されるかどうかは最終的には株主自身が判断すべきことなので、株主総会の手続が適正で判断の前提となる事実に重大な瑕疵がない限り、その判断は尊重されます。
会社法109条1項・2項
株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。
会社法309条4項
前三項の規定にかかわらず、第百九条第二項の規定による定款の定めについての定款の変更(当該定款の定めを廃止するものを除く。)を行う株主総会の決議は、総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、総株主の議決権の四分の三(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
論文ではこう使う
論文では、買収防衛策や特定の株主だけを優遇する施策が株主平等原則に反しないかを問われたときに使います。「新株予約権無償割当ては株主としての資格に基づいて行われるから、株主平等原則(会社法109条1項)の趣旨が及ぶ。もっとも、特定の株主による経営支配権の取得により会社の企業価値が毀損され株主の共同の利益が害される場合には、その防止のために当該株主を差別的に取り扱っても、衡平の理念に反し相当性を欠くものでない限り、同原則の趣旨に反しない(最決平成19年8月7日)」と規範を立て、株主総会の決議の有無とその手続の適正、買収者への対価の有無から相当性を当てはめます。公開会社でない会社で株主ごとに配当や議決権を変える定めが問題になるときは、109条2項の定款の定めと309条4項の特殊の決議を経ているかを先に確かめます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。