定款の変更とは
ていかんのへんこう
定款の変更とは、会社の成立後に、会社の根本規則である定款の内容を改めることで、株式会社では株主総会の決議(原則として特別決議)によって行い、公証人の認証は要りません(会社法466条・309条2項11号)。持分会社では、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって行います(会社法637条)。
定款は会社のルールブックですが、事業の目的を広げたり本店を移したりするたびに書き換えます。設立のときの定款は公証人の認証を受けて中身を固めますが、成立後の書き換えは株主総会の特別決議で足り、改めて認証を受ける必要はありません。ただし、株式を自由に売れなくする変更や、会社が株主から株式を取り上げられるようにする変更は株主の地位を直接揺るがすので、普通より重い決議や株主全員の同意が要るように段階が付けてあります。持分会社では、社員どうしの信頼で成り立つ会社なので、原則として社員全員の同意が要ります。
株式会社の定款の変更は株主総会の特別決議によって行い、成立後の変更に公証人の認証は要りません
株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって定款を変更することができます(466条)。この決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上に引き下げられる)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の多数で行う特別決議です(309条2項11号)。公証人の認証を受けなければ効力を生じないのは設立の際に発起人が作成する定款だけで(30条1項)、成立後の定款の変更に認証を要求する規定はありません。「株式会社の成立後に定款を変更する場合には、当該定款の変更は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない」という肢は誤りです。成立前は認証を受けた定款を原則として変更できませんが(30条2項)、募集設立では創立総会の決議によって定款を変更することができ(96条)、この場合にも改めて認証を受ける必要はありません。「公証人による定款の認証を受けた後に,創立総会の決議により定款を変更した場合には,改めて公証人の認証を受ける必要はない」という肢は正しいです。定款の変更が登記事項に関わるときは変更の登記をしますが、登記は定款の変更の効力要件ではありません。株主総会の決議を要しない定款の変更もあります。単元株式数を減少し、又は単元株式数についての定款の定めを廃止する変更は、株主に不利益を与えないので、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)によってすることができます(195条1項)。「単元株制度を廃止する旨の定款変更は,株主総会決議によらないで行うことができる」という肢は正しいです。株式の分割と同時にする発行可能株式総数の増加(184条2項)も同様です。
全部の株式を譲渡制限株式にする定款の変更は、総株主の同意ではなく特殊決議によります
定款を変更して、発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨の定めを設けるときは(107条1項1号)、議決権を行使することができる株主の半数以上であって、当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数による決議が必要です(309条3項1号)。頭数の要件が加わる点で特別決議より重い、いわゆる特殊決議です。株式を自由に譲渡できるという株主の基本的な利益を奪う変更なので決議を重くしましたが、株主全員の同意までは要求されていません。「株式会社は、定款を変更して、その発行する全部の株式の内容として、譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けようとする場合には、株主全員の同意を得なければならない」という肢と、「会社が,定款を変更して,その発行する全部の株式の内容として,譲渡による当該株式の取得について会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける場合には,総株主の同意を得なければならない」という肢はいずれも誤りです。反対する株主には株式買取請求権が与えられます(116条1項1号)。なお、譲渡を一切「禁止」する定めは株式譲渡自由の原則(127条)に反して許されないと解されており、譲渡に会社の承認を要する定めと読んでも株主全員の同意は要りません。「株式の発行後に定款を変更して当該株式について譲渡を禁止する定めを設けようとするときは,当該株式を有する株主全員の同意を得なければならない」という肢は誤りです。公開会社でない株式会社が、剰余金の配当・残余財産の分配・議決権について株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款の定め(109条2項)を設け又は変更するときは、総株主の半数以上であって総株主の議決権の4分の3以上という、さらに重い特殊決議によります(309条4項)。分母が出席株主ではなく総株主である点と、4分の3である点が異なります。「株式会社の発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設ける定款変更の決議と,会社法上の公開会社でない株式会社において,剰余金配当を受ける権利に関する事項について,株主ごとに異なる取扱いを行う旨の定款の定めを設ける定款変更の決議とは,決議要件が同じである」という肢は誤りです。
発行後の株式に取得条項を付ける定款の変更は、その株式を有する株主全員の同意が要ります
会社が一定の事由が生じたことを条件として株式を取得できる旨の定め(取得条項)は、株主の意思と関係なくその地位を奪うものです。そこで、定款を変更して、発行する全部の株式の内容として取得条項(107条1項3号)を設け、又はその内容を変更(廃止を除く)するときは、株主全員の同意を得なければなりません(110条)。種類株式発行会社が、ある種類の株式の発行後に定款を変更して、当該種類の株式の内容として取得条項(108条1項6号)を設け、又は変更(廃止を除く)するときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意が必要です(111条1項)。「種類株式発行会社は、ある種類の株式の発行後に定款を変更して、当該種類の株式の内容として、当該種類株式発行会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができる旨の定款の定めを設けようとする場合には、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない」という肢は正しいです。これに対し、ある種類の株式を譲渡制限株式又は全部取得条項付種類株式にする定款の変更は、全員の同意ではなく、その種類の株主の種類株主総会の決議(譲渡制限を付けるときは324条3項1号の特殊決議、全部取得条項を付けるときは324条2項1号の特別決議)がなければ効力を生じません(111条2項)。全部の株式に譲渡制限を付けるときは株主総会の特殊決議、ある種類の株式に取得条項を付けるときは種類株主全員の同意、と重さが違う点が比べられます。
持分会社の定款の変更は原則として総社員の同意によりますが、社員の変動が定款の変更とみなされる場合があります
持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款の変更をすることができます(637条)。社員の氏名・住所・責任の種類・出資の目的と価額が定款の絶対的記載事項なので(576条1項)、社員の加入・退社・出資の変更はすべて定款の変更を伴い、新たな社員の加入は定款の変更をした時に効力を生じます(604条2項)。持分会社の種類も定款の定めで決まるので、合名会社・合資会社・合同会社の間の移行は組織変更ではなく定款の変更によります(638条)。一方、社員の変動が自動的に定款の変更とみなされる場合があります。社員が死亡した場合にその相続人が持分を承継する旨の定款の定めがあるときは、相続人が持分を承継した時にその相続人に係る定款の変更をしたものとみなされ(608条3項)、合資会社の有限責任社員が退社して無限責任社員だけになれば合名会社となる定款の変更を、無限責任社員が退社して有限責任社員だけになれば合同会社となる定款の変更をしたものとみなされます(639条)。「持分会社の社員が死亡した場合に当該社員の相続人が当該社員の持分を承継する旨の定款の定めがあるときは、当該持分会社は、当該相続人が当該持分を承継した時に、当該相続人に係る定款の変更をしたものとみなされる」という肢と、「合資会社の無限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が有限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合同会社となる定款の変更をしたものとみなされる」という肢はいずれも正しいです。
定款の変更の決議要件の段階
- 株主総会の決議を要しない: 単元株式数の減少・廃止(195条1項。取締役の決定/取締役会の決議)、株式の分割に伴う発行可能株式総数の増加(184条2項。現に2以上の種類の株式を発行している会社を除く)
- 特別決議(309条2項11号): 定款の変更の原則。目的・商号・本店・発行可能株式総数の変更など。発行可能株式総数は廃止できず、公開会社では発行済株式総数の4倍まで(113条)
- 特殊決議(309条3項1号): 全部の株式に譲渡制限を設ける変更。議決権を行使できる株主の半数以上かつその議決権の3分の2以上。反対株主に株式買取請求権(116条1項1号)
- 特殊決議(309条4項): 公開会社でない会社の属人的な定め(109条2項)の設定・変更。総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上
- 種類株主総会の決議(111条2項): ある種類の株式に譲渡制限(324条3項1号の特殊決議)・全部取得条項(324条2項1号の特別決議)を付ける変更
- 株主全員の同意(110条)/種類株主全員の同意(111条1項): 発行後の株式に取得条項を設ける・変更する(廃止を除く)
- 総社員の同意(637条): 持分会社の定款の変更の原則。定款で別段の定めができる
会社法466条
株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。
会社法111条1項
種類株式発行会社がある種類の株式の発行後に定款を変更して当該種類の株式の内容として第百八条第一項第六号に掲げる事項についての定款の定めを設け、又は当該事項についての定款の変更(当該事項についての定款の定めを廃止するものを除く。)をしようとするときは、当該種類の株式を有する株主全員の同意を得なければならない。
会社法637条
持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。