組織変更と持分会社の種類の変更とは
そしきへんこうともちぶんがいしゃのしゅるいのへんこう
組織変更とは、株式会社がその組織を変更して合名会社・合資会社・合同会社になること、又は合名会社・合資会社・合同会社がその組織を変更して株式会社になることで、法人格の同一性を保ったまま会社の種類を株式会社と持分会社の間で切り替える手続です(会社法2条26号・743条)。持分会社の種類の変更とは、合名会社・合資会社・合同会社の間で社員の責任の別を定款で変えることで、組織変更ではなく定款の変更によって行います(会社法638条・639条)。
合同会社だった会社を株式会社にして上場を目指す、あるいは株式会社を身内だけの合同会社にする、という乗り換えが組織変更です。株主が社員になり、資本金の規制や無限責任という債権者の引当てが入れ替わるので、組織変更計画を作り、株主全員の同意を取り、債権者に異議を述べる機会を与える重い手続が要ります。これに対し、合名会社が合同会社になるような持分会社どうしの乗り換えは、社員の責任の別を定款で書き換えるだけで済み、組織変更には当たりません。片方の種類の社員が全員いなくなった合資会社も、自動的に別の種類に移ります。
持分会社の間の種類の変更は定款の変更によるので、組織変更計画は要りません
会社法上の組織変更は、株式会社が持分会社になること、又は持分会社が株式会社になることだけを指します(2条26号)。合名会社・合資会社・合同会社の違いは、社員の全部又は一部が無限責任社員か有限責任社員かという定款の定めの違いなので(576条2項〜4項)、持分会社の間の移行は定款の変更で行います。合名会社は、有限責任社員を加入させ又は社員の一部を有限責任社員とする定款の変更で合資会社に、社員の全部を有限責任社員とする定款の変更で合同会社になります(638条1項)。合資会社は、社員の全部を無限責任社員とする定款の変更で合名会社に、全部を有限責任社員とする定款の変更で合同会社になり(同条2項)、合同会社は、社員の全部を無限責任社員とする定款の変更で合名会社に、無限責任社員を加入させ又は一部を無限責任社員とする定款の変更で合資会社になります(同条3項)。「合同会社は,その社員の全部を無限責任社員とする定款の変更をすることにより,合名会社となる」という肢は正しいです。この定款の変更は原則として総社員の同意によりますが(637条)、組織変更計画の作成(743条)は要りません。「合同会社が合名会社となるには,組織変更計画を作成しなければならない」という肢と、「合名会社が合同会社となるためには,組織変更計画を作成しなければならない」という肢はいずれも誤りです。
合資会社の社員が無限責任社員だけ又は有限責任社員だけになると、合名会社又は合同会社となる定款の変更をしたものとみなされます
合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両方がいる会社なので、どちらかの種類の社員が全員退社すると定款上の種類と社員構成が合わなくなります。会社法は、この場合に会社を解散させるのではなく、残った社員に合う種類に自動的に移すこととしました。合資会社の有限責任社員が退社したことにより社員が無限責任社員のみとなった場合には合名会社となる定款の変更をしたものとみなされ(639条1項)、無限責任社員が退社したことにより社員が有限責任社員のみとなった場合には合同会社となる定款の変更をしたものとみなされます(同条2項)。「合資会社の有限責任社員が退社したことによりその会社の社員が無限責任社員のみとなったときは,その会社は,合名会社となる定款の変更をしたものとみなされる」という肢と、「合資会社の無限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が有限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合同会社となる定款の変更をしたものとみなされる」という肢はいずれも正しいです。したがって、合資会社の社員が1人になっても、その1人が無限責任社員なら合名会社、有限責任社員なら合同会社として存続し、解散事由である「社員が欠けたこと」(641条4号)には当たりません。「合資会社は,社員が1人となったときは,解散する」という肢は誤りです。
株式会社は合名・合資・合同のいずれにも組織変更でき、組織変更には総株主の同意と債権者異議手続が要ります
会社は組織変更をすることができ、その場合には組織変更計画を作成しなければなりません(743条)。株式会社が組織変更をするときは、組織変更後の持分会社が合名会社・合資会社・合同会社のいずれであるかの別、目的・商号・本店の所在地、社員の氏名・住所・責任の別・出資の価額、効力発生日などを組織変更計画で定めます(744条1項)。合名・合資・合同のどれにもなれます。「株式会社は、合名会社、合資会社又は合同会社に組織変更することができない」という肢は誤りです。組織変更をする株式会社は、効力発生日の前日までに組織変更計画について総株主の同意を得なければなりません(776条1項)。株主が持分会社の社員になり、無限責任を負わされることもあるので、多数決ではなく全員の同意を要求したものです。組織変更をする株式会社の債権者は、組織変更について異議を述べることができます(779条1項)。株式会社の資本金・剰余金分配の規制が外れることで債権者の引当てが変わるからです。「組織変更をする株式会社の債権者は,当該株式会社に対し,組織変更について異議を述べることができない」という肢は誤りです。組織変更をする株式会社は効力発生日に持分会社となり、株主は社員となり、新株予約権は消滅します(745条)。持分会社が株式会社になる組織変更も、組織変更計画を作り(746条1項)、定款に別段の定めが無ければ総社員の同意を得て(781条1項)、債権者異議手続を経て(同条2項・779条)、効力発生日に株式会社となります(747条)。組織変更をした会社は、効力発生日から2週間以内に、組織変更前の会社について解散の登記、組織変更後の会社について設立の登記をします(920条)。法人格は同一のまま続くので、登記上の解散・設立であって清算は行いません。
組織変更と持分会社の種類の変更の比較
- 組織変更(2条26号): 株式会社⇄持分会社。組織変更計画の作成(743条・744条・746条)、株式会社では総株主の同意(776条1項)、持分会社では総社員の同意(781条1項。定款で別段可)、債権者異議手続(779条・781条2項)、効力発生日に変更(745条・747条)、解散と設立の登記(920条)
- 持分会社の種類の変更(638条): 合名⇄合資⇄合同。社員の責任の別を変える定款の変更(原則として総社員の同意。637条)。組織変更計画・債権者異議手続は不要
- みなし定款変更(639条): 合資会社の社員が無限責任社員のみ→合名会社、有限責任社員のみ→合同会社。解散しない
- 組織変更の無効: 効力発生日から6か月以内に組織変更の無効の訴え(828条1項6号)。被告は組織変更後の会社(834条6号)
会社法2条26号
組織変更 次のイ又はロに掲げる会社がその組織を変更することにより当該イ又はロに定める会社となることをいう。イ 株式会社 合名会社、合資会社又は合同会社 ロ 合名会社、合資会社又は合同会社 株式会社
会社法639条1項
合資会社の有限責任社員が退社したことにより当該合資会社の社員が無限責任社員のみとなった場合には、当該合資会社は、合名会社となる定款の変更をしたものとみなす。
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