合併(当事会社・合併対価・権利義務の承継)とは
がっぺい
合併とは、2以上の会社が契約によって1つの会社に合体することで、一方の会社が存続して他方の権利義務の全部を承継する吸収合併(会社法2条27号)と、当事会社の全部が消滅して新しく設立する会社が権利義務の全部を承継する新設合併(2条28号)があります。消滅会社の権利義務は合併契約で定めた効力発生日に包括的に承継され、消滅会社の株主には合併契約の定めに従って合併対価が交付されます。
二つの会社が一つになるのが合併です。片方が残って相手を丸ごと引き継ぐのが吸収合併、両方が消えて新しい会社が全部を引き継ぐのが新設合併です。事業譲渡と違って、消える会社の財産も借金も契約も、一つ一つ移す手続をしなくても効力発生日に自動的に残る会社へ移ります。消える会社の株主は株式を失う代わりに、合併契約で決めた対価(残る会社の株式やお金など)を受け取ります。何でも対価にできる柔軟さと、債権者や株主が不利にならないための手続が、合併の決まりの中心です。
合併の相手方は会社に限られ、新設合併の設立会社は持分会社でもよく、消滅会社の権利義務は効力発生日に包括的に承継されます
会社は、他の会社と合併をすることができ、合併をする会社は合併契約を締結しなければなりません(748条)。合併の当事会社は株式会社と持分会社のいずれでもよいですが、会社以外の法人や個人とは合併できません。新設合併で設立する会社も株式会社に限られず、持分会社を設立する新設合併の規定が別に置かれています(755条・756条)。「新設合併の場合,設立会社を株式会社としなければならない」という肢は誤りです。吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継し(750条1項)、新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継します(754条1項)。承継は包括承継なので、消滅会社の債務も個々の債権者の同意なしに当然に移り、債権者は債権者異議手続で保護されます。判例も、合併で一部の債務を承継しない旨の決議をしても無効であるとしています。「吸収合併消滅株式会社と吸収合併存続株式会社の各株主総会で特別決議による承認を得ることができれば,吸収合併存続株式会社が吸収合併消滅株式会社の債務を承継しないこととすることができる」という肢は誤りです。消滅会社は合併によって解散し(471条4号)、清算手続を経ずに消滅します。「吸収合併の場合には、消滅会社はそれによって当然に解散し、事業の全部の譲渡の場合にも、譲渡会社はそれによって当然に解散する」という肢は、事業の全部を譲渡した会社は当然には解散しないので誤りです。解散して清算をする株式会社は、自らが存続会社となる合併をすることができません(474条1号)。清算株式会社は清算の目的の範囲内でしか活動できないからです。「解散したことにより清算をする株式会社は,当該株式会社を存続会社とする吸収合併をすることができない」という肢は正しいです。消滅会社となることはできます。
合併対価には限定がなく、無対価でも、存続会社の親会社株式や譲渡制限株式でもよく、合併差損が生じる合併もできます
吸収合併契約には、存続会社が消滅会社の株主に「その株式又は持分に代わる金銭等を交付するときは」その内容を定めると規定されており(749条1項2号)、対価は存続会社の株式、社債、新株予約権、新株予約権付社債、それ以外の財産のいずれでもよく、対価を交付しないこともできます。完全親会社が完全子会社を吸収する場合など、交付する相手がいない合併があるからです。「吸収合併の場合,存続会社は,消滅会社の株主に対し,合併対価を何ら交付しないこととすることができる」という肢は正しく、「吸収合併において,吸収合併消滅株式会社の株主に対して吸収合併存続株式会社の株式を交付しない合併は,認められていない」という肢は誤りです。存続会社の親会社の株式を対価とする合併(三角合併)もでき、そのために存続会社は効力発生日までの間、交付に必要な限度で親会社株式を取得することができます(800条1項)。「存続会社は,その親会社の株式を消滅会社の株主に対して合併対価として交付することはできない」という肢は誤りです。消滅会社が公開会社であっても、対価を存続会社の譲渡制限株式とすることはできます。ただし、公開会社の株主が譲渡できない株式を押し付けられることになるので、消滅会社が公開会社で種類株式発行会社でなく、株主に交付する対価の全部又は一部が譲渡制限株式等であるときは、合併契約の承認は特別決議ではなく、議決権を行使できる株主の半数以上であってその議決権の3分の2以上の賛成を要する特殊決議によります(783条1項・309条3項2号)。「消滅会社が会社法上の公開会社である場合には,存続会社は,消滅会社の株主に対し,合併対価として存続会社の譲渡制限株式を交付することはできない」という肢は誤りです。存続会社が承継する債務の額が資産の額を超える場合や、交付する対価の帳簿価額が承継する純資産額を超える場合(合併差損)も、合併は禁じられておらず、取締役が存続会社の株主総会でその旨を説明すれば足ります(795条2項)。「吸収合併の場合,いわゆる合併差損が生ずる合併は,することができない」という肢は誤りです。
対価は消滅会社の株主に持株数に応じて割り当て、消滅会社の自己株式と存続会社の有する消滅会社株式には割り当てられず、端数は切り捨てられません
対価の割当てに関する定めは、消滅会社の株主の有する株式の数に応じて金銭等を交付する内容でなければなりません(749条3項)。割当てを受ける「吸収合併消滅株式会社の株主」からは、吸収合併消滅株式会社と吸収合併存続株式会社が除かれています(749条1項3号かっこ書)。消滅会社が保有する自己株式に対価を割り当てても、消滅会社は効力発生日に消滅するので意味がなく、存続会社が保有する消滅会社の株式に自社の株式を割り当てれば自己株式を無償で取得することになるからです。この除外は対価の種類を問いません。「存続会社は,消滅会社の自己株式については,合併対価が金銭であっても,合併対価を割り当てることはできない」という肢は正しく、「甲株式会社を存続会社,乙株式会社を消滅会社とする吸収合併をする場合においては,甲株式会社は,その有する乙株式会社の株式についても自社の株式を割り当てることができる」という肢は誤りです。交付する株式の数に1株に満たない端数が生じるときは、端数の合計数に相当する数の株式を競売するなどして、その代金を端数に応じて株主に交付しなければならず(234条1項)、切り捨てることはできません。「吸収合併存続株式会社が当該吸収合併消滅株式会社の株主に対して交付しなければならない株式の数に1株に満たない端数があるときは,吸収合併存続株式会社は,その端数を切り捨てることができる」という肢は誤りです。新設合併では対価の柔軟化が認められておらず、消滅会社の株主に設立会社の株式を交付することが前提になっているので(753条1項6号・7号)、設立会社の株式が1株も発行されないことはありません。「新設合併において,新設合併設立株式会社の株式が1株も発行されないことは,あり得ない」という肢は正しいです。
消滅会社の新株予約権は効力発生日に消滅し、新株予約権者に交付できるのは存続会社の新株予約権か金銭で、株式は交付できず、承継しない定めもできます
吸収合併消滅株式会社の新株予約権は、効力発生日に消滅します(750条4項)。消滅会社が新株予約権を発行しているときは、合併契約で、新株予約権者に対してその新株予約権に代わる存続会社の新株予約権を交付するか、金銭を交付するかと、その内容・数・額を定めます(749条1項4号・5号)。株式を交付する定めは認められていません。「存続会社は,消滅会社の新株予約権の新株予約権者に対し,その有する新株予約権に代えて存続会社の株式を交付することができる」という肢は誤りです。金銭を交付する定めもできるので、存続会社が新株予約権を引き継がない内容にすることもできます。「合併により消滅会社の権利義務は存続会社に包括的に承継されるので,消滅会社が発行していた新株予約権を,存続会社が承継しないものとすることはできない」という肢は誤りです。消滅会社が新株予約権の内容として、合併の際に存続会社の新株予約権を交付する旨を定めていても(236条1項8号イ)、それは消滅会社と新株予約権者の間の定めにすぎず、存続会社がそのとおりの合併契約に同意しなければ実現しません。定めと合併契約の条件が合わないときは、新株予約権者に新株予約権買取請求権が認められます(787条1項1号)。「吸収合併消滅株式会社が発行した新株予約権の内容として,合併をする場合には当該新株予約権の新株予約権者に合併後存続する株式会社の新株予約権を交付することとする旨が定められていたときは,その定めに従い,当該吸収合併消滅株式会社が発行した新株予約権の新株予約権者に吸収合併存続株式会社の新株予約権が交付される」という肢は誤りです。合併契約の承認は原則として各当事会社の株主総会の特別決議によります(783条1項・795条1項・309条2項12号)。解散の決議も特別決議なので(471条3号・309条2項11号)、「会社の解散の決議と,吸収合併消滅株式会社においてする吸収合併契約の承認の決議とは,決議要件が同じである」という肢は正しいです。
合併対価に関する決まり
- 対価の種類: 存続会社の株式・社債・新株予約権・新株予約権付社債・その他の財産(親会社株式を含む)のいずれでもよく、無対価も可(749条1項2号)
- 譲渡制限株式を対価にする: 可。消滅会社が公開会社で種類株式発行会社でないときは消滅会社の承認が特殊決議(783条1項・309条3項2号)
- 割当て: 持株数に応じて(749条3項)。消滅会社の自己株式と存続会社の有する消滅会社株式には割り当てない(749条1項3号かっこ書)
- 端数: 競売等をして代金を交付(234条1項)。切捨て不可
- 新株予約権者への交付: 存続会社の新株予約権か金銭(749条1項4号)。株式は不可
- 新設合併: 設立会社の株式を必ず交付(753条1項6号・7号)。設立会社は持分会社でもよい(755条)
会社法750条1項
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。
会社法749条3項
第一項に規定する場合には、同項第三号に掲げる事項についての定めは、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社並びに前項第一号の種類の株式の株主を除く。)の有する株式の数(前項第二号に掲げる事項についての定めがある場合にあっては、各種類の株式の数)に応じて金銭等を交付することを内容とするものでなければならない。
会社法474条
株式会社が解散した場合には、当該株式会社は、次に掲げる行為をすることができない。一 合併(合併により当該株式会社が存続する場合に限る。) 二 吸収分割による他の会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部の承継
論文ではこう使う
論文で合併比率の不公正を争う事例では、まず合併の効力が効力発生日に生じ(750条1項)、消滅会社の株主が合併契約の定めに従って対価を取得する(750条3項)ことを押さえたうえで、不満のある株主の救済として、効力発生前の差止請求(784条の2)、株式買取請求(785条)、効力発生後の合併無効の訴え(828条1項7号)の順に検討します。対価の柔軟化によって対価の種類自体は広く認められているので、争点は種類ではなく比率の相当性と手続の瑕疵に置きます。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。