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組織再編の承認決議と簡易・略式手続(書面の備置き)とは

そしきさいへんのしょうにんけつぎとかんいりゃくしきてつづき

商法 組織再編・事業譲渡

組織再編の承認決議とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転の契約や計画について各当事会社が株主総会の特別決議で受ける承認のことです(会社法783条1項・795条1項・804条1項、309条2項12号)。簡易手続とは対価が小さいなど株主への影響が軽い場合に、略式手続とは相手方が総株主の議決権の10分の9以上を持つ特別支配会社である場合に、その会社の株主総会の承認を省く仕組みです(784条・796条・805条)。

合併や会社分割は会社の土台を変えるので、当事会社それぞれで株主総会の特別決議が要るのが原則です。ただ、相手が自社の株式を9割以上持つ親会社なら総会を開いても結果は見えていますし、大きな会社が小さな会社を吸収するだけなら大きな会社の株主にはほとんど影響がありません。そこで、前者を略式手続、後者を簡易手続として株主総会を省けるようにしました。省けるのはあくまで影響の軽い側の会社の総会だけで、省いた分は買取請求権や差止請求で株主を守ります。また株主と債権者が判断できるように、契約の内容は総会の前から本店に備え置きます。

教室の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に2つの図。左の図は大きな箱「親会社(議決権の10分の9以上)」から小さな箱「子会社」へ矢印、下に札「略式手続(784条1項・796条1項) 子会社の株主総会は不要 反対通知があっても不要」。右の図は大

承認は原則として各当事会社の株主総会の特別決議ですが、消滅会社等の株主に譲渡制限株式等を交付するときは特殊決議や総株主の同意になります

吸収合併・吸収分割・株式交換をする場合、消滅株式会社等(消滅会社・分割会社・完全子会社)は効力発生日の前日までに株主総会の決議で吸収合併契約等の承認を受けなければならず(783条1項)、存続株式会社等(存続会社・承継会社・完全親会社)も同じです(795条1項)。新設型では消滅株式会社等が新設合併契約等の承認を受けます(804条1項)。これらの決議は特別決議です(309条2項12号)。ただし例外があります。合併で消滅する会社や株式交換をする会社が公開会社であり、株主に交付する対価の全部又は一部が譲渡制限株式等であるときは、議決権を行使できる株主の半数以上であってその議決権の3分の2以上の賛成を要する特殊決議になります(309条3項2号・3号)。消滅会社の株主に持分会社の持分を交付するときは総株主の同意が要ります(783条2項)。したがって、各当事会社がいずれも特別決議で承認するという一般論は正確ではありません。株主総会の承認を要するという規律は、組織再編が株主の地位や持株の価値を変える会社の基礎的変更であることから、株主保護を直接の目的とする規律に当たります。指名委員会等設置会社では、株主総会の承認を要しない合併契約等に限って内容の決定を執行役に委任でき、承認を要するものは委任できません(416条4項)。「株主総会の決議による承認を要しない合併契約を除き,委員会設置会社の取締役会は,その決議によって,執行役に当該合併契約の内容の決定を委任することができない」という肢は正しいです(出題当時の「委員会設置会社」は現在の指名委員会等設置会社です)。

略式手続では相手方が特別支配会社である会社の株主総会が不要で、株主が反対を通知しても決議は要りませんが、公開会社の株主に譲渡制限株式を交付する合併・株式交換には使えず、新設合併にはありません

存続会社等が消滅株式会社等の特別支配会社(総株主の議決権の10分の9以上を有する会社)であるときは、消滅株式会社等の株主総会の承認は要りません(784条1項本文)。逆に消滅会社等が存続株式会社等の特別支配会社であるときは、存続株式会社等の株主総会の承認が要りません(796条1項本文)。これが略式手続で、事業譲渡の468条1項と同じ発想です。10分の9を持つ株主が賛成している以上、総会を開いても結果は変わらないからです。そのため、略式手続では一定数の株主が反対を通知しても株主総会は要らず、反対株主は株式買取請求権と差止請求権で保護されます。「吸収分割承継株式会社が吸収分割株式会社の特別支配会社である場合であっても,一定数の株式を有する当該吸収分割株式会社の株主が吸収分割に反対する旨を当該吸収分割株式会社に対し通知したときは,当該吸収分割株式会社は,株主総会の決議によって,吸収分割契約の承認を受けなければならない」という肢と「合併当事者の一方が特別支配会社であるいわゆる略式合併において,合併についての株主総会決議が不要とされる会社の株主の一定数が異議を申し出た場合には,株主総会決議を不要とすることはできない」という肢は誤りです。ただし、吸収合併又は株式交換で対価の全部又は一部が譲渡制限株式等であり、消滅会社・完全子会社が公開会社で種類株式発行会社でないときは、略式手続を使えず株主総会(特殊決議)が要ります(784条1項ただし書)。少数株主が譲渡できない株式を押し付けられるからです。この例外は吸収合併と株式交換に限られ、吸収分割には適用されません。分割会社の株主は対価を直接受け取らないからです。「吸収分割承継会社が吸収分割会社の特別支配会社である場合において,吸収分割承継会社が吸収分割に際して吸収分割会社に対して譲渡制限株式を交付するときであって,吸収分割会社が公開会社であり,かつ,種類株式発行会社でないときは,吸収分割会社は,株主総会の決議によって,吸収分割契約の承認を受けなければならない」という肢は誤りです。存続会社側の略式手続にも、公開会社でない存続株式会社等が譲渡制限株式を交付する場合は使えないという例外があります(796条1項ただし書)。新設合併・新設分割・株式移転では当事会社がすべて消滅するか新会社を作るので、略式手続の規定は置かれていません。「甲株式会社と乙株式会社が新設合併により丙株式会社を設立する場合において,甲株式会社が乙株式会社の特別支配会社であるときは,乙株式会社は,株主総会の決議によって,新設合併契約の承認を受けることを要しない」という肢は誤りです。

会社の受付の場面。先生が総務担当役(札「存続会社 総務」)で、受付の棚に書類「吸収合併契約等(782条・794条)」を備え置いている。棚の上の掲示に横長の年表、左から札「備置開始日(総会の2週間前の日など)」「株主総会」「効力発生日」「効力

簡易手続は存続会社等では対価が純資産額の5分の1以下、分割会社では承継資産が総資産額の5分の1以下のときに使えますが、公開会社でない存続会社等が自社の株式を交付する場合は決議が要り、反対通知で決議が必要になるのは存続会社等の側だけです

存続株式会社等が交付する対価の合計額(株式は1株当たり純資産額を乗じた額)が存続株式会社等の純資産額の5分の1を超えないときは、存続株式会社等の株主総会の承認は要りません(796条2項本文)。小さな会社を取り込むだけなら存続会社の株主への影響が軽いからです。ただし、合併差損が生じる場合(795条2項各号)と、存続株式会社等が公開会社でなく対価として譲渡制限株式を交付する場合(796条1項ただし書)は、簡易手続を使えません。公開会社でない会社では募集株式の発行に株主総会の特別決議が要る(199条2項)のと釣り合いをとるためです。「その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けた存続会社は,吸収合併に際して消滅会社の株主に対して当該存続会社の株式を交付する場合には,当該株式の数に一株当たり純資産額を乗じて得た額が当該存続会社の純資産額の5分の1を超えないときであっても,株主総会の決議によって,吸収合併契約の承認を受けなければならない」という肢は正しいです。さらに、簡易手続の要件を満たす場合でも、法務省令で定める数の株式を有する株主が通知又は公告の日から2週間以内に反対を通知したときは、存続株式会社等は株主総会の承認を受けなければなりません(796条3項)。分割会社の側では、承継させる資産の帳簿価額の合計額が分割会社の総資産額の5分の1を超えないときに株主総会の承認が要らず(784条2項・805条)、こちらには反対通知による例外がありません。分割会社は対価を受け取る側で、事業の一部を切り出すだけだからです。「吸収分割により吸収分割承継株式会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が吸収分割株式会社の総資産額の5分の1を超えない場合であっても,一定数の株式を有する当該吸収分割株式会社の株主が当該吸収分割に反対する旨を当該吸収分割株式会社に対し通知したときは,当該吸収分割株式会社は,株主総会の決議によって,吸収分割契約の承認を受けなければならない」という肢は誤りです。簡易分割の分割会社の株主には株式買取請求権もありません(785条1項2号・806条1項2号)。

承認決議を省ける場合

  • 略式(784条1項・796条1項): 相手方が特別支配会社(議決権の10分の9以上)。反対通知があっても決議不要。例外: 吸収合併・株式交換で公開会社かつ種類株式発行会社でない消滅会社等の株主に譲渡制限株式等を交付するとき、公開会社でない存続会社等が譲渡制限株式を交付するとき。新設型には無い
  • 簡易・存続会社等側(796条2項): 対価の額が純資産額の5分の1以下。例外: 合併差損、公開会社でない存続会社等が譲渡制限株式を交付、一定数の株主の反対通知(796条3項)
  • 簡易・分割会社側(784条2項・805条): 承継資産の帳簿価額が総資産額の5分の1以下。反対通知の例外なし。分割会社の株主に買取請求権なし
  • 事業譲渡等(468条1項・2項): 相手方が特別支配会社、又は事業の全部の譲受けの対価が純資産額の5分の1以下(反対通知で決議が必要)

吸収合併契約等は備置開始日から本店に備え置き、消滅会社では効力発生日まで、存続会社等では効力発生後6か月までです

消滅株式会社等は、吸収合併契約等備置開始日から、吸収合併契約等の内容その他法務省令で定める事項を記載した書面又は電磁的記録を本店に備え置かなければなりません(782条1項)。備置開始日は、承認の株主総会の日の2週間前の日、買取請求のための株主への通知又は公告の日、債権者異議手続の公告又は催告の日などのうち最も早い日です(782条2項)。存続株式会社等も同じく備え置きます(794条1項)。株主が承認や買取請求を判断し、債権者が異議を述べるかを判断するための事前開示です。「吸収合併等の各当事会社は,いずれも,吸収合併契約等備置開始日から,吸収合併契約等の内容等を記載し,又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない」という規律は、株主が承認の議決権行使や株式買取請求をするかを判断するための事前開示なので、株主保護を直接の目的とする規律に当たります(債権者も閲覧できますが、債権者の保護は債権者異議手続が担います)。備置きの終期は、消滅会社では効力発生日(消滅するため)、分割会社・完全子会社と存続株式会社等では効力発生日後6か月を経過する日です(782条1項・794条1項)。効力発生後も備え置くのは、無効の訴えの提起を検討する株主や債権者のためです。「存続会社は,吸収合併契約締結日から吸収合併の効力発生日までの間,吸収合併契約の内容を記載した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならないが,吸収合併の効力発生後はこれらを備え置く必要はない」という肢は誤りです。新設型では新設合併契約等備置開始日から設立会社の成立の日後6か月(新設合併消滅会社は成立の日)まで備え置きます(803条1項)。効力発生後は、これとは別に、承継した権利義務などを記載した事後開示の書面を6か月間備え置きます(791条・801条・811条)。

会社法784条1項

前条第一項の規定は、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社又は株式交換完全親会社(以下この目において「存続会社等」という。)が消滅株式会社等の特別支配会社である場合には、適用しない。ただし、吸収合併又は株式交換における合併対価等の全部又は一部が譲渡制限株式等である場合であって、消滅株式会社等が公開会社であり、かつ、種類株式発行会社でないときは、この限りでない。

会社法796条3項

前項本文に規定する場合において、法務省令で定める数の株式(前条第一項の株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)を有する株主が第七百九十七条第三項の規定による通知又は同条第四項の公告の日から二週間以内に吸収合併等に反対する旨を存続株式会社等に対し通知したときは、当該存続株式会社等は、効力発生日の前日までに、株主総会の決議によって、吸収合併契約等の承認を受けなければならない。

会社法794条1項

吸収合併存続株式会社、吸収分割承継株式会社又は株式交換完全親株式会社(以下この目において「存続株式会社等」という。)は、吸収合併契約等備置開始日から効力発生日後六箇月を経過する日までの間、吸収合併契約等の内容その他法務省令で定める事項を記載し、又は記録した書面又は電磁的記録をその本店に備え置かなければならない。

論文ではこう使う

論文で承認決議を欠く組織再編の効力を論じるときは、まずその会社で株主総会の承認が必要だったか(略式・簡易の要件と例外)を条文で確定します。必要だったのに決議を欠けば組織再編の無効原因になり、無効の訴え(828条1項)で争うことになります。簡易手続の要件を満たす存続会社の株主は差止請求もできない(796条の2ただし書)ので、株主の救済手段は買取請求権の有無とあわせて場合分けして書きます。

試験ではこう問われる

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