組織再編の効力発生日と登記とは
そしきさいへんのこうりょくはっせいびととうき
組織再編の効力発生日とは、吸収合併・吸収分割・株式交換では契約で定めた日(会社法749条1項6号・758条7号・768条1項6号)、新設合併・新設分割・株式移転では設立会社の成立の日(設立の登記の日)のことで、この日に権利義務の承継や株式の取得の効力が生じます(750条1項・754条1項など)。登記は、吸収型では効力発生後2週間以内にする事後の公示で、新設型では会社の成立をもたらす効力発生の要件です。
合併や会社分割の効力がいつ生じるかは、相手の会社が既にあるかどうかで決まります。相手が既にある吸収合併・吸収分割・株式交換では、契約に書いた日に効力が生じ、登記はその後2週間以内にする届出にすぎません。新しい会社を作る新設合併・新設分割・株式移転では、受け皿の会社が登記されるまで存在しないので、設立の登記をした日に効力が生じます。ただし、吸収合併で消える会社が解散したことは、登記するまで誰に対しても主張できません。取引相手が消えたはずの会社と取引してしまうのを防ぐためです。
吸収合併・吸収分割・株式交換は契約で定めた効力発生日に効力が生じ、登記の日ではありません
吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継します(750条1項)。効力発生日は吸収合併契約で定める日で(749条1項6号)、当事会社の合意で変更することもできます(790条1項)。吸収合併の登記は、効力が生じた日から2週間以内に本店の所在地でする事後の公示であって(921条)、効力発生の要件ではありません。「吸収合併存続会社は,吸収合併の登記をした日に,吸収合併消滅会社の権利義務を承継する」という肢、「吸収合併の効力は,合併の登記の日に生ずる」という肢、「吸収合併の効力は,吸収合併存続会社が本店の所在地において変更の登記をすることにより生ずる」という肢はいずれも誤りです。吸収分割承継株式会社も、効力発生日に、吸収分割契約の定めに従い吸収分割会社の権利義務を承継し(759条1項)、株式交換完全親株式会社は、効力発生日に、株式交換完全子会社の発行済株式の全部を取得し(769条1項)、完全子会社の株主は効力発生日に対価の定めに従って完全親会社の株主となります(769条3項1号)。株式交換は既存の会社の間で株式を移すだけなので、株式交換そのものの登記は要求されず、完全親会社が新株を発行して資本金の額などが変わるときに変更の登記をするにとどまります(915条1項)。「株式交換完全子会社の株主は,株式交換の登記がされた日に,株式交換完全親会社の株主となる」という肢は誤りです。ただし、債権者異議手続が終了していないときや組織再編を中止したときは、効力発生日が来ても効力は生じません(750条6項・759条10項・769条6項)。
新設合併・新設分割・株式移転は設立会社の成立の日、すなわち本店所在地で設立の登記をした日に効力が生じ、契約や計画に効力発生日を定めるものではありません
新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継します(754条1項)。株式会社は本店の所在地において設立の登記をすることによって成立するので(49条)、設立の登記をした日が成立の日であり、その日に効力が生じます。新設分割(764条1項)と株式移転(774条1項)も同じです。新設型では承継の受け皿となる会社が登記の前には存在しないので、登記が効力発生の要件になります。したがって、新設合併契約や新設分割計画・株式移転計画には効力発生日を定める事項がなく、設立の登記は、株主総会の承認決議の日や債権者異議手続が終了した日などのうち最も遅い日から2週間以内にします(922条・924条・925条)。「新設合併設立会社は,その本店の所在地において設立の登記をした日に,新設合併消滅会社の権利義務を承継する」という肢は正しく、「新設合併において,新設合併設立株式会社は,合併契約に定められた新設合併がその効力を生ずる日から2週間以内に,新設合併設立株式会社の設立の登記をしなければならない」という肢は誤りです。
効力発生の時期と登記
- 吸収合併: 契約で定めた効力発生日(750条1項)。登記は効力発生日から2週間以内(921条)
- 吸収分割: 契約で定めた効力発生日(759条1項)。登記は効力発生日から2週間以内(923条)
- 株式交換: 契約で定めた効力発生日(769条1項・3項)。株式交換自体の登記はない。完全子会社に変更の登記は要らない
- 新設合併・新設分割・株式移転: 設立会社の成立の日=本店所在地での設立登記の日(754条1項・764条1項・774条1項・49条)。契約・計画に効力発生日の定めはない
- いずれも、債権者異議手続が終わっていなければ効力は生じない
吸収合併による消滅会社の解散は、登記の後でなければ悪意の第三者にも対抗できず、吸収分割で承継した財産の対抗要件は財産ごとに別に備えます
吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができません(750条2項)。消滅会社が法人格を失ったことは外からは分からないので、登記までは第三者が消滅会社をなお存在するものとして扱えるようにした規定です。商業登記の一般原則(908条1項)は登記前でも悪意の第三者には対抗できるとしますが、750条2項は善意・悪意を区別していないので、その特則として、登記前は悪意の第三者にも解散を対抗できないと解されています。「吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は,吸収合併の登記の後でなければ,これをもって第三者に対抗することができない」という肢は正しく、「吸収合併の場合,消滅会社の解散は,吸収合併の登記の前でも,悪意の第三者に対抗することができる」という肢は誤りです。吸収分割では、承継会社が効力発生日に権利義務を承継しますが(759条1項)、吸収分割の登記(923条)からは分割があった事実しか分からず、どの財産が承継されたかは公示されません。そのため、承継した個々の財産を第三者に対抗するには、不動産なら所有権移転登記(民法177条)、債権なら債務者への通知又は承諾(民法467条)というように、財産の種類に応じた対抗要件を別に備える必要があります。同一の不動産について差押えと吸収分割による承継が競合したときの優劣は、差押えの登記と所有権移転登記の先後で決まります。「同一の不動産について,その差押えと吸収分割による権利義務の承継との間の優劣は,不動産の差押えの登記の時と吸収分割承継会社が吸収分割の登記をした時の先後で決する」という肢は誤りです。
会社法750条2項
吸収合併消滅会社の吸収合併による解散は、吸収合併の登記の後でなければ、これをもって第三者に対抗することができない。
会社法754条1項
新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する。
会社法921条
会社が吸収合併をしたときは、その効力が生じた日から二週間以内に、その本店の所在地において、吸収合併により消滅する会社については解散の登記をし、吸収合併後存続する会社については変更の登記をしなければならない。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。