司法試験・予備試験AIブートラボ 司法試験AIブートラボ
用語集 / 商法 / 株式交換と株式移転

株式交換と株式移転とは

かぶしきこうかんとかぶしきいてん

商法 組織再編・事業譲渡

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることで(会社法2条31号)、株式移転とは、1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることです(2条32号)。いずれも完全親子会社の関係を作る組織再編で、完全子会社となる会社の株主は株式を失う代わりに完全親会社から対価を受け取り、完全子会社の財産や法人格には変動がありません。

ある会社を丸ごと100%子会社にしたいとき、株主一人一人から株式を買い集めるのは大変です。そこで、株主総会の決議で、子会社になる会社の株式を全部まとめて親会社に移し、株主には代わりに親会社の株式などを渡す仕組みが株式交換です。親会社になる会社が既にあれば株式交換、持株会社を新しく作ってその下に入るなら株式移転です。合併と違って子会社は会社として残り、財産も契約もそのままで、株主の顔ぶれだけが入れ替わります。だから子会社の債権者は原則として異議を述べる立場にありません。

株主総会の会場の場面。先生が議長役(札「議長 完全子会社となる会社」)で壇上に立ち、壇上の掲示に「第1号議案 株式交換契約の承認(767条・783条1項) 特別決議」。会場の株主の男性たちが持つ株券「当社株式」に矢印が付き、壇上の横の箱「完

株式交換は完全親会社となる会社との契約によりますが、株式移転は株式移転計画によるので契約の相手方がいません

株式会社は株式交換をすることができ、その場合には、発行済株式の全部を取得する会社(株式交換完全親会社)との間で株式交換契約を締結しなければなりません(767条)。既にある2つの会社の間の組織再編なので、当事者双方が契約で内容を決めます。これに対して株式移転は、1又は2以上の株式会社が、発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させるもので、完全親会社となる会社は株式移転によって初めて成立するので、契約の相手方がおらず、株式移転をする会社が株式移転計画を作成します(772条1項)。2以上の会社が共同して株式移転をするときは共同して計画を作成します(772条2項)。「株式交換及び株式移転のいずれも、一の株式会社が当該株式会社の株式を取得する会社との間でその旨の契約を締結しなければ、することができない」という肢は、株式移転について誤りです。いずれも完全子会社となる会社では株主総会の特別決議による承認が要り(783条1項・804条1項・309条2項12号)、株式交換では完全親会社でも承認決議が要ります(795条1項)。指名委員会等設置会社では、株主総会の承認を要しない株式交換契約に限り、その内容の決定を執行役に委任することができます(416条4項)。「委員会設置会社にあっては,株主総会の決議による承認を要しない株式交換契約について,その内容の決定を執行役に委任することができる」という肢は正しいです(出題当時の「委員会設置会社」は現在の指名委員会等設置会社です)。

株式交換完全親会社は株式会社か合同会社でよく合名会社はなれませんが、株式移転の設立完全親会社は株式会社に限られ、発行済株式の一部だけを取得させることはできません

株式交換の定義は、発行済株式の全部を「他の株式会社又は合同会社」に取得させることなので(2条31号)、完全親会社になれるのは株式会社と合同会社で、合名会社と合資会社はなれません。無限責任社員のいる会社の持分を対価として押し付けると、完全子会社の株主が意に反して無限責任を負わされかねないからです。「合名会社は,株式交換完全親会社となることができないが,合同会社は,株式交換完全親会社となることができる」という肢は正しいです。株式移転は「新たに設立する株式会社」に取得させるものなので(2条32号)、設立完全親会社は株式会社に限られます。「株式交換完全親会社及び株式移転設立完全親会社のいずれも、株式会社であることを要する」という肢は、株式交換完全親会社について誤りです。また、株式交換も株式移転も「発行済株式の全部」を取得させる制度で(2条31号・32号、769条1項・774条1項)、完全親子会社の関係を作ることが目的なので、発行済株式の一部だけを取得させることはできません。「株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社の発行済株式の一部のみを取得することとなる株式移転を行うことはできない」という肢は正しいです。一部の株式だけを取得して子会社にする目的で令和元年改正により設けられたのが株式交付です。

教室の場面。先生が黒板の前に立ち、黒板に2列の表。左列の見出し「株式交換」、右列の見出し「株式移転」。行は上から「決め方|相手の会社との契約(767条)|株式移転計画(772条)相手がいない」「完全親会社|株式会社か合同会社(合名会社は不可

株式交換では完全親会社の株式を交付しないこともできますが、株式移転では設立完全親会社の株式を必ず交付し、完全子会社が種類株式発行会社なら種類ごとに異なる扱いができます

株式交換契約では、完全親会社が完全子会社の株主に「その株式に代わる金銭等を交付するときは」その内容を定めるとされており(768条1項2号)、対価は完全親会社の株式、社債、新株予約権、金銭その他の財産のいずれでもよく、完全親会社の株式を交付しないことも、金銭だけを交付することもできます。「B社は、A社との間で株式交換契約を締結し、Cらに対価として金銭又はB社の株式を交付することによって、Cらの有するA社の株式を取得することができる」という肢は正しいです。これに対して株式移転計画では、設立完全親会社が完全子会社の株主に交付する設立完全親会社の株式の数を必ず定めなければならず(773条1項5号)、完全子会社の株主は設立完全親会社の成立の日にその株主となります(774条2項)。新しく設立する会社には株主が要るからです。「株式交換をする場合、株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社の株主に対し、株式交換完全親会社の株式を交付しないこととすることができるが、株式移転をする場合、株式移転設立完全親会社は、株式移転完全子会社の株主に対し、株式移転設立完全親会社の株式を交付しなければならない」という肢は正しいです。対価は完全子会社の株主の持株数に応じて割り当てますが(768条3項)、完全子会社が種類株式発行会社であるときは、株式の種類の内容に応じて、ある種類の株式の株主には対価を割り当てないことや、種類ごとに異なる取扱いをすることを定めることができます(768条2項)。「株式交換完全子会社が種類株式発行会社であるときは,その会社の発行する種類の株式の内容に応じ,ある種類の株式の株主に対しては対価を交付しないこととすることができる」という肢は正しいです。完全子会社の新株予約権については、株式交換契約で、新株予約権者に完全親会社の新株予約権を交付する旨とその内容を定めることができ(768条1項4号・5号)、定めが新株予約権の内容の条件に合致しないときなどは新株予約権者に買取請求権があります(787条1項3号)。「株式交換完全親株式会社は,株式交換契約に定めることにより,株式交換に際して,株式交換完全子会社の新株予約権の新株予約権者に対し,当該新株予約権に代わる当該株式交換完全親株式会社の新株予約権を交付することができる」という肢は正しいです。

株式交換と株式移転の違い

  • 根拠となる書面: 株式交換は株式交換契約(767条)、株式移転は株式移転計画(772条)
  • 完全親会社: 株式交換は株式会社又は合同会社(2条31号)、株式移転は新設する株式会社(2条32号)
  • 対価: 株式交換は金銭等なら何でもよく完全親会社の株式を交付しなくてもよい(768条1項2号)、株式移転は設立完全親会社の株式を必ず交付(773条1項5号)
  • 効力発生: 株式交換は契約で定めた効力発生日(769条1項)、株式移転は設立完全親会社の成立の日(774条1項)
  • 共通: 発行済株式の全部を取得させる。一部だけはできない。完全子会社の法人格・財産は変わらない

株式交換は契約で定めた効力発生日に効力が生じて完全子会社に変更の登記は要らず、株式移転は設立完全親会社の成立の日に効力が生じます

株式交換完全親株式会社は、効力発生日に、完全子会社の発行済株式(完全親会社が既に有するものを除く)の全部を取得し(769条1項)、完全子会社の株主は、対価の定めに従い、効力発生日に完全親会社の株主などになります(769条3項)。完全子会社の株式が譲渡制限株式であっても、完全子会社が譲渡を承認したものとみなされます(769条2項)。株式交換で変わるのは完全子会社の株主の構成だけで、完全子会社の商号・資本金・役員などの登記事項には変動がないので、完全子会社が株式交換による変更の登記をする必要はありません。「株式交換完全子会社は,株式交換の効力が生じた日から2週間以内に,その本店の所在地において,株式交換による変更の登記をしなければならない」という肢は誤りです。完全親会社が対価として新株を発行して資本金の額や発行済株式総数が変わるときは、完全親会社が変更の登記をします(915条1項)。株式移転は、設立完全親会社がその成立の日、すなわち設立の登記の日に完全子会社の発行済株式の全部を取得するので(774条1項・49条)、株式移転計画に効力発生日を定める事項はありません。「株式移転は、株式移転計画において定められた効力発生日に、その効力を生ずる」という肢は誤りです。完全子会社の債権者は、会社の財産に変動がないので原則として異議を述べることができず、株式交換で完全親会社が完全子会社の新株予約権付社債を承継する場合の社債権者と、対価が完全親会社の株式以外である場合の完全親会社の債権者だけが異議を述べられます(789条1項3号・799条1項3号)。詳しくは組織再編の債権者異議手続で扱います。

会社法767条

株式会社は、株式交換をすることができる。この場合においては、当該株式会社の発行済株式の全部を取得する会社(株式会社又は合同会社に限る。以下この編において「株式交換完全親会社」という。)との間で、株式交換契約を締結しなければならない。

会社法772条1項

一又は二以上の株式会社は、株式移転をすることができる。この場合においては、株式移転計画を作成しなければならない。

会社法774条1項

株式移転設立完全親会社は、その成立の日に、株式移転完全子会社の発行済株式の全部を取得する。

試験ではこう問われる

「株式交換と株式移転」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型8件と関係する過去問の肢27本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

読んだあとに、商法の肢別演習を

この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。

関連する用語

組織再編・事業譲渡

組織再編の効力発生日と登記

組織再編・事業譲渡

会社分割(吸収分割・新設分割)

役員等の責任と株主代表訴訟

特定責任追及の訴え(多重代表訴訟)

組織再編・事業譲渡

株式買取請求の手続と公正な価格

組織再編・事業譲渡

組織再編の債権者異議手続

組織再編・事業譲渡

組織再編の差止請求と無効の訴え

組織再編・事業譲渡

株式交付