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募集新株予約権の発行手続(募集事項の決定・有利発行)とは

ぼしゅうしんかぶよやくけんのはっこうてつづき

商法 資金調達(募集株式・新株予約権・社債)

募集新株予約権の発行手続とは、株式会社が新株予約権を引き受ける者を募集するときに、募集新株予約権の内容と数・払込みを要しないならその旨・払込金額・割当日などの募集事項を定め、申込みと割当てを経て新株予約権者を決める手続です(会社法238条〜245条)。募集事項の決定は株主総会の特別決議によるのが原則で、公開会社では特に有利な条件・金額のときを除いて取締役会の決議で定めます(238条2項・240条1項・309条2項6号)。

新株予約権は「あらかじめ決めた値段で将来この会社の株式を買える権利」です。役員や従業員に報酬として配れば株価を上げる動機になり、投資家に売れば資金調達にもなります。発行の手続は募集株式とよく似ていて、まず募集事項を決め、申込みと割当てを経て新株予約権者が決まります。将来株式に変わる権利なので、安く配れば既存の株主の持株比率と株式の価値が薄まります。そこで募集事項の決定は株主総会の特別決議が原則で、公開会社では取締役会に任せつつ、特に有利な条件・金額のときだけ株主総会に戻します。

取締役会の会議室の場面。先生が取締役役(札「公開会社の取締役会」)で長机の上座に座り、机の上に書類「募集新株予約権の募集事項 内容と数・払込金額・割当日」。黒板に板書「原則 取締役会の決議(240条1項)」、その下に「特に有利な条件・金額の

公開会社では取締役会で定め、特に有利な条件又は金額のときだけ株主総会の特別決議が要ります

会社は募集のたびに、募集新株予約権の内容(目的である株式の数、行使に際して出資される財産の価額、行使期間など。236条1項)と数、金銭の払込みを要しないこととする場合はその旨、要する場合は払込金額又はその算定方法、割当日、払込みの期日を定めるときはその期日などを募集事項として定めます(238条1項)。募集事項の決定は株主総会の決議によらなければならず(238条2項)、この決議は特別決議です(309条2項6号)。公開会社では238条3項各号の場合を除いて「株主総会」を「取締役会」と読み替えるので(240条1項)、取締役会の決議で定めます。株主総会の特別決議に戻るのは、金銭の払込みを要しないこととすることが引受人に特に有利な条件であるとき(238条3項1号)と、払込金額が特に有利な金額であるとき(同項2号)だけで、このときは取締役がその株主総会で理由を説明します。公開会社が取締役に職務執行の対価としていわゆるストック・オプションを無償で発行する場合も、無償とすることが職務執行の対価に見合っていて特に有利な条件でなければ、取締役会の決議で足ります。「金銭の払込みを要しないこととすることが当該取締役に特に有利な条件でないときであっても,株主総会の特別決議によって,当該募集新株予約権の募集事項を定めなければならない」という肢と、「いわゆるストック・オプションとして募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないで募集新株予約権を発行するには,募集事項の決定を株主総会の特別決議によってしなければならない」という肢はいずれも誤りです(取締役の報酬等として株主総会の決議が別に要ることは、取締役の報酬の規律によります。361条1項4号)。有利かどうかは、新株予約権そのものの払込金額や条件で判断し、行使に際して出資される財産の価額(行使価額)が発行時の株価より低いことだけで決まるものではありません。「募集新株予約権の行使に際して出資される財産の価額が当該募集新株予約権の発行時の株価より著しく低い場合には,その募集事項の決定は,株主総会の特別決議によらなければならない」という肢は誤りです。公開会社は取締役会の決議で募集事項を定めたときは、割当日の2週間前までに株主に募集事項を通知するか公告しなければなりません(240条2項・3項)。

公開会社でない会社では株主総会の特別決議で定め、取締役会に委任しても株主への通知・公告は要りません

公開会社でない会社では、取締役会設置会社であっても、募集事項は株主総会の特別決議で定めます(238条2項・309条2項6号)。株主総会は、その決議によって募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社では取締役会)に委任することができ、このときは委任に基づいて決定できる募集新株予約権の内容と数の上限、無償とするならその旨、有償なら払込金額の下限を定めます(239条1項)。委任の決議は、割当日が決議の日から1年以内の募集についてだけ効力を持ちます(239条3項)。株主への通知・公告の義務(240条2項・3項)は、取締役会の決議で募集事項を定める公開会社についての特則なので、公開会社でない会社が委任を受けた取締役会で募集事項を定めても、通知・公告は要りません。「取締役会がその委任に基づいて募集事項を決定した場合には,甲株式会社は,割当日の2週間前までに,当該募集事項を株主に通知し,又は公告しなければならない」という肢は誤りです。公開会社でない会社では株主総会で株主自身が委任を決めているからです。新株予約権の行使で取得することになる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式を除く)の総数を引いた数を超えてはなりませんが、行使期間の初日がまだ到来していない新株予約権は数えません(113条4項)。発行可能株式総数1万株・発行済株式8500株(自己株式500株を含む)の会社が、行使期間の初日を割当日の1年後として目的である株式の数10株の新株予約権300個を発行することは、行使期間が始まっていないので枠を超えず、できます。

株主総会の会場の場面。先生が議長役(札「議長」)で演台に立ち、演台の前に札「公開会社でない会社」。黒板に板書「募集事項の決定を取締役会に委任(239条1項)」「数の上限・払込金額の下限を定める」「割当日が1年以内の募集に限る」。黒板の右下に

株主割当ては定款の定めで取締役会の決議にでき、会社は自己株式について割当てを受ける権利を持ちません

会社は募集に際し、株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えることができ、このときは募集事項のほか、その旨と申込みの期日を定めます(241条1項)。株主は持株数に応じて割当てを受ける権利を持ちますが、会社自身は除かれ、1に満たない端数は切り捨てます(241条2項)。「甲株式会社も,自己株式について当該権利を有する」という肢は誤りです。株主割当ての募集事項は、定款に取締役の決定で定められる旨の定めがある取締役会設置会社でない会社では取締役の決定、定款に取締役会の決議で定められる旨の定めがある会社では取締役会の決議、公開会社では取締役会の決議、それ以外は株主総会の決議で定めます(241条3項)。公開会社でない取締役会設置会社でも、定款にこの定めを設けることができます。「取締役会の決議によって募集事項等を定めることができる旨の定款の定めを設けることはできない」という肢は誤りです。株主割当てでは238条2項から4項まで・239条・240条は適用されません(241条5項)。会社は申込みの期日の2週間前までに株主に募集事項などを通知し(241条4項)、期日までに申込みをしない株主は権利を失います(243条4項)。募集事項のうち払込みの期日は「定めるときは、その期日」(238条1項5号)なので、必ず定めなければならないものではなく、定めないときは行使期間の初日の前日が払込期日になります(246条1項)。「募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めなければならない」という肢は誤りです。会社は、募集によらずに、株主に対して新たに払込みをさせないで新株予約権を割り当てること(新株予約権無償割当て)もでき、これは株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議で定めます(277条・278条3項)。「株式会社は、株主に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当てをすることができる」という肢は正しいです。清算株式会社も、清算の目的の範囲内で募集株式・募集新株予約権・募集社債の発行をすることができます(487条2項1号参照)。

募集新株予約権の募集事項を定める機関

  • 公開会社でない会社: 株主総会の特別決議(238条2項・309条2項6号)。特別決議で取締役(取締役会)に委任できる(239条1項)。委任しても通知・公告は要らない
  • 公開会社: 取締役会の決議(240条1項)。割当日の2週間前までに通知又は公告(240条2項・3項)。無償とすることが特に有利な条件、又は払込金額が特に有利な金額のときだけ株主総会の特別決議(238条3項)
  • 株主割当て: 公開会社は取締役会、定款の定めがあれば取締役の決定又は取締役会の決議、それ以外は株主総会(241条3項)。有利発行の規律は適用されない(241条5項)
  • 新株予約権無償割当て: 株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議。定款で別段の定めができる(278条3項)

会社法238条3項

次に掲げる場合には、取締役は、前項の株主総会において、第一号の条件又は第二号の金額で募集新株予約権を引き受ける者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
一 第一項第二号に規定する場合において、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。
二 第一項第三号に規定する場合において、同号の払込金額が当該者に特に有利な金額であるとき。

会社法240条1項

第二百三十八条第三項各号に掲げる場合を除き、公開会社における同条第二項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。

会社法277条

株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の新株予約権の割当て(以下この節において「新株予約権無償割当て」という。)をすることができる。

論文ではこう使う

論文では、ストック・オプションや買収防衛策として新株予約権が発行された事案で、まず「募集事項の決定は株主総会の特別決議によるが(会社法238条2項・309条2項6号)、公開会社では取締役会の決議による(240条1項)。もっとも無償とすることが特に有利な条件に当たるときは株主総会の特別決議を要する(238条3項1号)」と決定機関を確定し、取締役への発行なら報酬等としての株主総会の決議(361条1項4号)が別に要ることを落とさずに書きます。特に有利な条件・金額かは、新株予約権の公正な価値(オプションとしての価値)と払込金額との開きで判断し、行使価額が株価より低いことだけで決めないと書きます。買収防衛策の事案では、新株予約権無償割当て(277条)が株主総会(取締役会)の決議でできることを示したうえで、差止め(247条)の検討につなぎます。

試験ではこう問われる

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