社債管理者と社債権者集会とは
しゃさいかんりしゃとしゃさいけんしゃしゅうかい
社債管理者とは、会社が社債を発行するときに定めて、社債権者のために弁済の受領・債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託する者で、銀行・信託会社などに限られます(会社法702条・703条)。社債権者集会とは、社債の種類ごとに社債権者が組織する集会で、会社法に規定する事項と社債権者の利害に関する事項について決議し、その決議は裁判所の認可を受けて効力を生じます(715条・716条・734条1項)。
社債を買う投資家は多数で持ち分は小さいので、会社が利息を払わなくなっても自分で取り立てるのは大変です。そこで会社法は、社債を発行する会社に、銀行などを社債管理者として選び、社債権者のために弁済を受け取ったり債権を守ったりする仕事を任せることを原則として義務づけています。1口1億円以上のような大口の社債は投資家が自分で守れるので、置かなくてかまいません。社債権者の全員にかかわることは、社債権者集会で多数決により決めますが、少数の社債権者が不当に扱われないよう、決議は裁判所の認可を受けて初めて効力を持ちます。
社債を発行するときは原則として社債管理者を置きますが、各社債の金額が1億円以上などのときは置かなくてよいです
会社は社債を発行する場合には、社債管理者を定め、社債権者のために弁済の受領・債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければなりません(702条本文)。ただし、各社債の金額が1億円以上である場合その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この限りではありません(702条ただし書)。大口の社債権者は自分で権利を守れるからです。「会社は,社債を発行する場合には,各社債の金額を問わず,社債管理者を定め,社債権者のために,社債の管理を行うことを委託しなければならない」という肢は誤りです。社債管理者を定めないときは、その旨を募集事項に定めます(676条7号)。社債管理者になれるのは銀行・信託会社とこれらに準ずる者として法務省令で定める者に限られます(703条)。社債管理者を定めた場合のその氏名・名称は、会社の登記事項(911条3項)に含まれておらず、登記を要しません。
社債管理者は公平かつ誠実に管理する義務を負い、債権の実現を保全するための裁判上の行為に裁判所の許可は要りません
社債管理者は、社債権者のために公平かつ誠実に社債の管理を行わなければならず(704条1項)、社債権者に対して善良な管理者の注意をもって管理を行う義務を負います(704条2項)。「社債管理者は,社債権者のために,公平かつ誠実に社債の管理を行わなければならない」という肢は正しいです。社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、又は債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を持ちます(705条1項)。この権限は法律上当然に与えられるもので、裁判所の許可は要りません。裁判所の許可が要るのは、これらの行為のために社債発行会社の業務と財産の状況を調査するときです(705条4項)。「社債管理者は,社債に係る債権の実現を保全するために必要があるときは,裁判所の許可を得て,裁判上の行為をすることができる」という肢は誤りです。これに対し、社債の全部についてする支払の猶予・責任の免除・和解と、社債の全部についてする訴訟行為や倒産手続に属する行為は、社債権者集会の決議によらなければできません(706条1項)。社債管理者が会社法や社債権者集会の決議に違反する行為をしたときは、社債権者に対し連帯して損害を賠償する責任を負います(710条1項)。社債管理者は社債発行会社と社債権者集会の同意を得て辞任でき(711条1項)、義務に違反したときなどは裁判所が社債発行会社又は社債権者集会の申立てにより解任できます(713条)。
社債権者集会の決議は裁判所の認可で効力を生じ、支払の猶予などは特別の決議によります
社債権者は社債の種類ごとに社債権者集会を組織し(715条)、集会は会社法に規定する事項と社債権者の利害に関する事項について決議できます(716条)。招集するのは社債発行会社又は社債管理者で(717条2項)、ある種類の社債の総額の10分の1以上を持つ社債権者は招集を請求できます(718条1項)。社債権者は持っている社債の金額に応じて議決権を持ち(723条1項)、社債発行会社は自己の社債について議決権を持ちません(723条2項)。決議は出席した議決権者の議決権の総額の2分の1を超える議決権を持つ者の同意で可決するのが原則です(724条1項)。社債の全部についてする支払の猶予・責任の免除・和解、訴訟行為や倒産手続に属する行為に関する事項など(706条1項各号)を可決するには、議決権者の議決権の総額の5分の1以上で、かつ出席した議決権者の議決権の総額の3分の2以上の議決権を持つ者の同意が要ります(724条2項)。「社債の全部についてするその支払の猶予に関する事項を可決するには,議決権を有する社債権者の過半数が出席し,かつ,出席した議決権者の議決権の総額の3分の2以上の議決権を有する者の同意がなければならない」という肢は、株主総会の特別決議の要件をなぞっている点で誤りです。決議があったときは招集者が1週間以内に裁判所に認可を申し立て(732条)、社債権者集会の決議は裁判所の認可を受けなければ効力を生じません(734条1項)。認可された決議はその種類の社債のすべての社債権者に効力を持ちます(734条2項)。「社債権者集会の決議は,裁判所の認可を受けなければ,その効力を生じない」という肢は正しいです。議決権者の全員が書面などで同意したときは、集会を開かずに決議があったものとみなされ、この場合は認可の規定が適用されません(735条の2第1項・4項)。
決議の方法の法令違反や著しい不公正は、決議取消しの訴えではなく裁判所の不認可で処理します
裁判所は、集会の招集の手続又は決議の方法が法令や募集のための説明資料に違反するとき、決議が不正の方法によって成立するに至ったとき、決議が著しく不公正であるとき、決議が社債権者の一般の利益に反するときは、決議の認可をすることができません(733条)。株主総会の決議と違って、社債権者集会の決議には取消しの訴えの制度がなく、決議の瑕疵はすべて認可の段階で裁判所が審査します。「社債権者集会の決議の方法が法令に違反し,又は著しく不公正なときは,社債権者は,訴えをもってその決議の取消しを請求することができる」という肢は誤りです。資本金の額の減少や組織再編の債権者異議手続で社債権者が異議を述べるには、社債権者集会の決議によらなければなりません(740条1項)。一部の社債権者が抜け駆けして異議を述べることを防ぎ、社債権者の意思を統一するためです。社債管理者があるときは、委託契約に別段の定めがない限り、社債管理者が社債権者のために異議を述べることができます(740条2項)。「社債管理者の設置がされていない社債の社債権者が,当該社債を発行した株式会社に対し,資本金の額の減少について異議を述べるには,社債権者集会の決議によらなければならない」という肢は正しいです。
会社法702条
会社は、社債を発行する場合には、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない。ただし、各社債の金額が一億円以上である場合その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この限りでない。
会社法705条1項
社債管理者は、社債権者のために社債に係る債権の弁済を受け、又は社債に係る債権の実現を保全するために必要な一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
会社法734条1項
社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない。
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