社債管理補助者とは
しゃさいかんりほじょしゃ
社債管理補助者とは、社債管理者を置かなくてよい社債(各社債の金額が1億円以上などの場合)について、会社が定めて社債権者のために社債の管理の補助を行うことを委託する者です(会社法714条の2)。令和元年改正で新設された制度で、社債管理者と違って権限は法定の最小限の行為と委託契約で定めた範囲に限られ、社債権者自身が権利を行使することを前提に、それを補助する立場に立ちます。
1口1億円以上の社債は社債管理者を置かなくてよいので、実際には多くの社債が社債管理者なしで発行されてきました。ところが発行会社が倒産すると、社債権者は誰が仲間なのかも分からず、倒産手続への参加の届出すら自分でしなければなりません。そこで令和元年の改正で、社債管理者ほど重い義務と権限を持たず、社債権者の権利行使を手伝う役として社債管理補助者が作られました。倒産手続への参加や配当要求など最小限の行為は法律で権限が与えられ、それ以外は契約で決めた範囲でだけ動き、社債権者に情報を知らせる役目を負います。
社債管理者を置かない社債に限って置くことができ、担保付社債には置けません
会社は、702条ただし書の場合、すなわち各社債の金額が1億円以上である場合その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、社債管理補助者を定め、社債権者のために社債の管理の補助を行うことを委託することができます(714条の2本文)。社債管理者を置かなければならない社債には置けず、置くかどうかも会社の任意です。社債が担保付社債であるときは、担保付社債信託法による受託会社が社債権者のために担保権を管理するので、社債管理補助者を置くことはできません(714条の2ただし書)。社債管理補助者を定めることとするときは、その旨を募集事項に定めます(676条8号の2)。社債管理補助者になれるのは、社債管理者になれる銀行・信託会社など(703条各号)のほか、法務省令で定める者で(714条の3)、会社法施行規則で弁護士・弁護士法人・弁護士・外国法事務弁護士共同法人が加えられています(施行規則171条の2)。社債管理者の委託契約や担保付社債の信託契約の効力が生じたときは、社債管理補助者の委託契約は終了します(714条の6)。
権限は倒産手続参加などの法定の行為と委託契約で定めた範囲に限られ、社債の全部についての行為には社債権者集会の決議が要ります
社債管理補助者は、委託契約の定めがなくても、社債権者のために、破産手続参加・再生手続参加・更生手続参加、強制執行又は担保権の実行の手続における配当要求、清算手続での債権の申出をする権限を持ちます(714条の4第1項)。これらは社債権者が自分で期限内にしなければ権利を失うおそれのある行為で、社債管理補助者を置く最低限の意味がここにあります。これに加えて、委託契約に定める範囲内で、社債に係る債権の弁済を受けること、705条1項の裁判上・裁判外の行為、706条1項各号の行為(支払の猶予・免除・和解、訴訟行為など)、会社に社債の総額について期限の利益を喪失させる行為をする権限を持ちます(714条の4第2項)。社債管理者が705条1項の一切の行為を法律上当然にできるのと違い、社債管理補助者は契約で与えられた範囲でしか動けません。さらに、契約で権限があっても、社債の全部についてする支払の請求、社債の全部に係る債権に基づく強制執行・仮差押え・仮処分、社債の全部についてする訴訟行為や倒産手続に属する行為(手続参加を除く)と、706条1項各号の行為や期限の利益の喪失は、社債権者集会の決議によらなければできません(714条の4第3項)。社債権者の全体に影響する判断は社債権者自身がするという建前です。社債管理補助者は社債権者集会を招集でき(717条3項)、社債権者は社債管理補助者に対して集会の招集を請求できます(718条1項)。
社債管理者と社債管理補助者の違い
- 置く場面: 社債管理者は原則必置(702条本文)。社債管理補助者は社債管理者を置かなくてよい社債に任意で置く(714条の2)。担保付社債には置けない
- 資格: 社債管理者は銀行・信託会社など(703条)。社債管理補助者はこれに加えて弁護士・弁護士法人(714条の3・施行規則)
- 権限: 社債管理者は弁済の受領・債権の保全に必要な一切の行為を当然に持つ(705条1項)。社債管理補助者は倒産手続参加・配当要求・債権の申出だけが法定で、他は委託契約の範囲内(714条の4第1項・2項)
- 社債権者集会の決議が要る行為: 社債管理者は706条1項各号。社債管理補助者はそれに加えて社債の全部についての支払の請求・強制執行・訴訟行為など(714条の4第3項)
- 責任: 社債管理者は違反行為について連帯して損害賠償(710条1項)。社債管理補助者は連帯でなく各自が責任を負い、複数いるときは各自その権限を行う(714条の5・714条の7)
社債権者に報告する義務を負い、公平誠実義務と善管注意義務が準用されます
社債管理補助者は、委託契約に従い、社債の管理に関する事項を社債権者に報告し、又は社債権者がこれを知ることができるようにする措置をとらなければなりません(714条の4第4項)。社債権者自身が権利を行使する前提なので、そのための情報を届けることが中心的な役目です。社債管理者についての公平誠実義務と善管注意義務(704条)、利益相反のときの特別代理人の選任と個別の社債権者を表示しなくてよいこと(707条・708条)、会社法又は社債権者集会の決議に違反したときの損害賠償責任(710条1項)、辞任(711条)、解任(713条)、事務を承継する者の選定(714条)の規定は、社債管理補助者に準用されます(714条の7)。ただし損害賠償は「連帯して」の部分が読み替えで外れ、各自が責任を負います。2以上の社債管理補助者があるときは各自がその権限に属する行為をし、両方が賠償責任を負うときは連帯債務者になります(714条の5)。社債権者集会の決議の省略(735条の2)は社債管理補助者が提案した場合にも使え、債権者異議手続では知れている債権者に社債管理補助者が含まれます(740条3項)。社債管理者と違い、社債管理補助者が社債権者のために異議を述べられる規定(740条2項)はありません。
会社法714条の2
会社は、第七百二条ただし書に規定する場合には、社債管理補助者を定め、社債権者のために、社債の管理の補助を行うことを委託することができる。ただし、当該社債が担保付社債である場合は、この限りでない。
会社法714条の4第1項
社債管理補助者は、社債権者のために次に掲げる行為をする権限を有する。
一 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
二 強制執行又は担保権の実行の手続における配当要求
三 第四百九十九条第一項の期間内に債権の申出をすること。
会社法714条の4第4項
社債管理補助者は、第七百十四条の二の規定による委託に係る契約に従い、社債の管理に関する事項を社債権者に報告し、又は社債権者がこれを知ることができるようにする措置をとらなければならない。
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