新株予約権者となる日と払込みとは
しんかぶよやくけんしゃとなるひとはらいこみ
新株予約権者となる日とは、募集新株予約権の申込者が会社の割り当てた募集新株予約権の新株予約権者となる日のことで、会社法は払込みの有無にかかわらず割当日と定めています(245条1項)。払込みとは、募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要する場合に、新株予約権者が払込期日までに払込金額の全額を払い込むことで、これをしなければその新株予約権を行使できません(246条1項・3項)。
募集株式では、お金を払い込んだ人がその日に株主になります。株式は会社の元手そのものだからです。これに対し新株予約権は「将来株式を買える権利」にすぎず、会社の元手になるのは権利を行使して出資したときです。そこで会社法は、申込者が会社から割当てを受ければ、権利の代金を払っていなくても割当日に新株予約権者になるとしました。代金を期日までに払わなかった人は、権利は持っていても行使できず、その権利は消えます。代金の払込みは出資ではないので、会社が承諾すれば現物や相殺で済ませることもできます。
申込者は払込みをしなくても割当日に新株予約権者になり、払込期日に新株予約権者になるのではありません
募集新株予約権の引受けの申込みをした者は、割当日に、会社の割り当てた募集新株予約権の新株予約権者になります(245条1項1号)。総数引受契約で引き受けた者も割当日にその新株予約権の新株予約権者になります(同項2号)。割当日は募集事項として必ず定める日で(238条1項4号)、募集株式の引受人が出資の履行をした日に株主になるのと違い(209条1項)、払込みをしたかどうかは関係ありません。「募集に応じて募集新株予約権の引受けの申込みをした者は,募集新株予約権の払込金額の全額を払い込まなくても,割当日に,発行会社から割り当てられた募集新株予約権の新株予約権者となる」という肢は正しく、「募集新株予約権の割当てを受けた申込者は,払込期日に,払込みをした募集新株予約権の新株予約権者となる」という肢は誤りです。募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものであるときは、新株予約権者となる者はその社債の社債権者にもなります(245条2項)。
払込期日までに全額を払い込まなければ行使できず、その新株予約権は消滅します
募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要する場合(238条1項3号)、新株予約権者は、行使期間の初日の前日(払込みの期日を定めたときはその期日)までに、会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所で払込金額の全額を払い込まなければなりません(246条1項)。この払込期日までに全額の払込み(これに代わる財産の給付や相殺を含む)をしないときは、その募集新株予約権を行使することができません(246条3項)。新株予約権者が新株予約権を行使できなくなったときは、その新株予約権は消滅します(287条)。「新株予約権者が当該払込期日までに募集新株予約権の払込金額の全額の払込みをしないときは,当該募集新株予約権は消滅する」という肢は正しいです。割当日に新株予約権者になるが行使には払込みが要る、という構造を押さえると、「募集新株予約権の引受けの申込みをした者は,割当日に,甲株式会社の割り当てた募集新株予約権の新株予約権者となるが,募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要する場合には,募集新株予約権についての払込期日までに,払込金額の全額の払込みをしなければ,当該募集新株予約権を行使することができない」という肢が正しいことも分かります。
会社の承諾を得れば、金銭以外の財産の給付や会社に対する債権による相殺で払込みに代えられます
新株予約権者は、会社の承諾を得て、払込金額の払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付し、又は会社に対する債権をもって相殺することができます(246条2項)。募集株式の引受人が出資の履行の債務と会社に対する債権を相殺できない(208条3項)のと違うのは、募集新株予約権の払込金額は新株予約権という権利の対価であって、株式の対価である出資ではないからです。出資に当たるのは新株予約権を行使するときの払込みで、こちらは募集株式と同じく相殺できません(281条3項)。相殺にも財産の給付にも会社の承諾が要ります。「新株予約権者は,会社の承諾を得て,募集新株予約権の払込金額の払込みに代えて,当該会社に対する債権をもって相殺することができる」という肢と、「払込金額に相当する金銭以外の財産を給付しようとする場合だけでなく,その株式会社に対する債権をもって相殺する場合にも,当該株式会社の承諾を得なければならない」という肢はいずれも正しいです。
募集株式と募集新株予約権の違い
- 権利者になる日: 募集株式は出資の履行をした払込期日又は履行をした日に株主(209条1項)。募集新株予約権は払込みの有無にかかわらず割当日に新株予約権者(245条1項)
- 払わなかったとき: 募集株式は当然に株主となる権利を失う(208条5項)。募集新株予約権は行使できず(246条3項)、新株予約権が消滅する(287条)
- 相殺: 募集株式の出資の履行は引受人から相殺できない(208条3項)。募集新株予約権の払込みは会社の承諾があれば相殺・現物給付ができる(246条2項)。行使に際しての出資は相殺できない(281条3項)
会社法245条1項
次の各号に掲げる者は、割当日に、当該各号に定める募集新株予約権の新株予約権者となる。
一 申込者 株式会社の割り当てた募集新株予約権
二 第二百四十四条第一項の契約により募集新株予約権の総数を引き受けた者 その者が引き受けた募集新株予約権
会社法246条2項
前項の規定にかかわらず、新株予約権者は、株式会社の承諾を得て、同項の規定による払込みに代えて、払込金額に相当する金銭以外の財産を給付し、又は当該株式会社に対する債権をもって相殺することができる。
会社法246条3項
第二百三十八条第一項第三号に規定する場合には、新株予約権者は、募集新株予約権についての払込期日までに、それぞれの募集新株予約権の払込金額の全額の払込み(当該払込みに代えてする金銭以外の財産の給付又は当該株式会社に対する債権をもってする相殺を含む。)をしないときは、当該募集新株予約権を行使することができない。
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