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用語集 / 商法 / 新株予約権の譲渡制限・買取請求・組織再編での承継

新株予約権の譲渡制限・買取請求・組織再編での承継とは

しんかぶよやくけんのじょうとせいげんかいとりせいきゅうそしきさいへんでのしょうけい

商法 資金調達(募集株式・新株予約権・社債)

新株予約権の譲渡制限とは、譲渡による新株予約権の取得について会社の承認を要する旨を新株予約権の内容として定めることで(会社法236条1項6号・243条2項2号)、その新株予約権を譲渡制限新株予約権といいます。買取請求とは、譲渡制限を設ける定款変更や組織再編のときに新株予約権者が会社に新株予約権を公正な価格で買い取るよう請求できる制度で(118条・777条・787条・808条)、組織再編での承継とは、合併・会社分割・株式交換・株式移転に際して相手方会社の新株予約権を新株予約権者に交付する仕組みです(236条1項8号・749条1項4号など)。

役員や従業員に報酬として配った新株予約権が、知らない人に転売されては困ります。そこで新株予約権には、株式と同じように「譲渡には会社の承認が要る」という内容を付けられます。ただ、新株予約権はまだ出資していない権利なので、会社が譲渡を承認しなくても会社に買い取らせる仕組みはありません。その代わり、株式に譲渡制限が付く定款変更や、会社が合併・分割・株式交換で別の会社になるときは、新株予約権の価値が下がるので、公正な価格での買取請求や相手方会社の新株予約権への引継ぎが用意されています。

会社の受付の場面。先生が会社の担当者役(札「株式会社」)でカウンターの内側に立ち、向かいに男性新株予約権者(札「新株予約権者」)が書面「譲渡制限新株予約権の譲渡等承認請求」を差し出している。先生の手元の回答書に「承認しない」と書かれ、その下

譲渡制限新株予約権では、会社が譲渡を承認しなくても買取りや指定買取人の指定の義務はありません

新株予約権者はその新株予約権を譲渡することができます(254条1項)。ただし新株予約権付社債に付された新株予約権は、社債が消滅した場合を除き、新株予約権のみを譲渡することはできません(254条2項)。会社は新株予約権の内容として、譲渡による取得について会社の承認を要する旨を定めることができ(236条1項6号)、この定めのある新株予約権が譲渡制限新株予約権です(243条2項2号)。譲渡制限新株予約権の新株予約権者は、他人に譲り渡そうとするときは会社に承認をするかどうかの決定を請求でき(262条)、取得した者の側からも請求できます(263条)。会社は株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の決議で承認するかどうかを決め、請求者に通知します(265条)。譲渡制限株式では、会社が承認しないときは会社が買い取るか指定買取人を指定しなければなりませんが(140条)、譲渡制限新株予約権にはこの規定がありません。新株予約権者はまだ出資をしていないので、投下資本の回収の道を保障する必要がないからです。「当該株式会社が譲渡を承認しない旨の決定をするときは,当該株式会社又は当該株式会社の指定する者が当該譲渡制限新株予約権を買い取ることを請求することはできない」という肢は正しく、「譲渡による譲渡制限新株予約権の取得を承認しない旨の決定をしたときは、当該譲渡制限新株予約権を買い取る者を指定し、又は当該譲渡制限新株予約権を買い取らなければならない」という肢は誤りです。

新株予約権買取請求は譲渡制限を設ける定款変更と組織再編で認められ、公開会社になる定款変更では認められません

会社が発行する全部の株式の内容として譲渡制限の定めを設ける定款変更をするときは全部の新株予約権の新株予約権者が、ある種類の株式の内容として譲渡制限又は全部取得条項の定めを設ける定款変更をするときはその種類の株式を目的とする新株予約権の新株予約権者が、会社に対して自己の新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求できます(118条1項)。行使して取得する株式が売りにくくなり、新株予約権の価値が下がるからです。「ある種類の株式の内容として譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要することの定めを設ける定款の変更をする場合には,当該種類の株式を目的とする新株予約権を有する新株予約権者は,…自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる」という肢は正しいです。会社は定款変更日の20日前までに新株予約権者に通知又は公告し、買取請求は20日前の日から前日までにします(118条3項〜5項)。新株予約権付社債に付された新株予約権の買取請求では、併せて社債の買取りも請求しなければなりません(118条2項)。これに対し、譲渡制限を廃止して公開会社になる定款変更は新株予約権の価値を下げないので、買取請求を認める規定がありません。「定款を変更して会社法上の公開会社となる場合には,当該新株予約権の新株予約権者は,…自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる」という肢は誤りです。組織変更(777条1項)と、吸収合併・吸収分割・株式交換(787条1項)、新設合併・新設分割・株式移転(808条1項)でも、承継の定めが新株予約権の内容として定めた条件に合わない場合などに買取請求ができます。事業譲渡では譲渡会社の新株予約権者に買取請求を認める規定がなく、吸収分割では吸収分割会社の新株予約権者に認められるので、「事業譲渡をする場合には,譲渡会社の新株予約権者は,…買い取ることを請求することができないが,吸収分割をする場合には,吸収分割会社の新株予約権者は,…買い取ることを請求することができる」という肢は正しいです。

教室の場面。先生が教壇に立ち、黒板に2列の表。見出しは左から「譲渡制限を設ける定款変更」「公開会社になる定款変更」。行「新株予約権買取請求(118条)」の欄に、左は「できる」、右は「できない」。右の「できない」を深紅の枠で囲む。先生の吹き出

組織再編では相手方会社の新株予約権又は金銭を交付でき、内容の定めがあっても当然にそのとおり承継されるわけではありません

会社は新株予約権の内容として、合併で消滅する場合に存続会社又は設立会社の新株予約権を交付する旨とその条件、吸収分割・新設分割・株式交換・株式移転の場合に承継会社・設立会社・完全親会社の新株予約権を交付する旨とその条件を定めることができます(236条1項8号)。「合併により当該株式会社が消滅するときは,当該新株予約権の新株予約権者に合併後存続する株式会社の新株予約権を交付することとする旨及びその条件を定めることはできない」という肢は誤りです。もっとも、この定めは消滅会社が一方的に定めたものにすぎず、実際に交付されるかどうかは吸収合併契約で存続会社が同意して定めるかによります(749条1項4号・5号)。「その定めに従い,当該吸収合併存続株式会社の新株予約権が当然に交付される」という趣旨の肢は誤りで、定めに合致しない承継になった新株予約権者は買取請求で保護されます(787条1項1号)。吸収合併消滅会社の新株予約権は効力発生日に消滅し(750条4項)、存続会社が交付できるのはその新株予約権に代わる存続会社の新株予約権又は金銭で(749条1項4号)、存続会社の株式ではありません。株式は株主に対する合併対価です。「存続会社は,消滅会社の新株予約権の新株予約権者に対し,その有する新株予約権に代えて存続会社の株式を交付することができる」という肢は誤りです。消滅会社の新株予約権を存続会社が承継しないこと(金銭を交付して消滅させること)もできるので、「存続会社が承継しないものとすることはできない」という肢も誤りです。株式交換では、株式交換契約に定めることにより、完全子会社の新株予約権者に完全親会社の新株予約権を交付できます(768条1項4号)。吸収分割でも吸収分割契約に定めて承継会社の新株予約権を交付できますが(758条5号・6号)、事業譲渡は取引法上の契約で、譲受会社の新株予約権を交付する制度はありません。「当該新株予約権に代わる乙社の新株予約権を交付することができるのは、吸収分割の方法による場合のみである」という肢は正しいです。

譲渡制限株式と譲渡制限新株予約権の違い

  • 承認の請求: どちらも譲渡人・取得者から会社に請求できる(136条・137条/262条・263条)。承認機関は株主総会(取締役会設置会社では取締役会)
  • 不承認のとき: 株式は会社が買い取るか指定買取人を指定する義務がある(140条)。新株予約権には買取りや指定の規定が無い
  • 買取請求: 譲渡制限を設ける定款変更で株主(116条)と新株予約権者(118条)の双方に認められる。公開会社になる定款変更ではどちらにも無い

会社法118条1項

次の各号に掲げる定款の変更をする場合には、当該各号に定める新株予約権の新株予約権者は、株式会社に対し、自己の有する新株予約権を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
一 その発行する全部の株式の内容として第百七条第一項第一号に掲げる事項についての定めを設ける定款の変更 全部の新株予約権
二 ある種類の株式の内容として第百八条第一項第四号又は第七号に掲げる事項についての定款の定めを設ける定款の変更 当該種類の株式を目的とする新株予約権

会社法262条

譲渡制限新株予約権の新株予約権者は、その有する譲渡制限新株予約権を他人(当該譲渡制限新株予約権を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限新株予約権を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

会社法750条4項

吸収合併消滅株式会社の新株予約権は、効力発生日に、消滅する。

試験ではこう問われる

「新株予約権の譲渡制限・買取請求・組織再編での承継」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型8件と関係する過去問の肢12本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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