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用語集 / 商法 / 新株発行の無効原因

新株発行の無効原因(新株発行無効の訴え・不存在確認)とは

しんかぶはっこうのむこうげんいん

商法 資金調達(募集株式・新株予約権・社債)

新株発行の無効原因とは、株式会社の成立後における株式の発行の無効を、新株発行無効の訴え(会社法828条1項2号)によって主張できる瑕疵のことです。条文に列挙はなく、判例は、発行された株式を前提に積み重なる取引の安全を重く見て、公開会社では重大な瑕疵に限って無効原因を認め、公開会社でない会社では株主総会の特別決議を欠く発行も無効原因になるとしています。

手続に問題のある新株が発行されてしまった後では、その株式はすでに売買され、配当も支払われ、その株式で議決権が行使された株主総会の決議も積み重なっています。そこで会社法は、新株発行の無効は訴えでしか主張できず、出訴期間も短くして、無効にできる瑕疵を絞っています。公開会社では取締役会に発行を任せている以上、内部の手続の欠けは無効原因にならず、株主の差止めの機会を奪った瑕疵だけが無効原因になります。公開会社でない会社では持株比率の維持が株主にとって重いので、特別決議の欠けも無効原因になります。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、原告席に男性株主(札「株主」)が訴状「新株発行無効の訴え」を掲げ、被告席に会社の担当者の男性(札「公開会社」)。黒板に2列の板書。左の列の見出し「無効原因にならない」、その下に「特別決

公開会社では、特別決議を経ない有利発行・著しく不公正な方法・取締役会の決議の欠けは無効原因になりません

判例は、新株発行は会社の組織に関するものではあるが業務執行に準じて取り扱われるとして、代表権のある取締役が新株を発行した以上、会社内部の手続の瑕疵は無効原因にならないという立場を取っています。代表取締役が株主総会の特別決議を経ずに株主以外の者に特に有利な発行価額で新株を発行しても、その瑕疵は無効原因になりません(最判昭和46年7月16日)。新株が著しく不公正な方法により発行された場合でも、発行された新株を取締役自身が引き受けて現に保有していることや会社が小規模で閉鎖的であることは結論に影響せず、無効原因になりません(最判平成6年7月14日)。新株の発行に必要な取締役会の決議を欠いていても、対外的に会社を代表する権限のある取締役が発行した以上、発行は有効です(最判昭和36年3月31日)。種類株式発行会社でない公開会社について、「特に有利な払込金額による募集株式の発行が株主総会の特別決議を経ないでされたことは,無効原因とならない」「募集株式の発行が著しく不公正な方法によってされたことは,無効原因とならない」「募集株式の発行に必要とされる取締役会の決議を経ていないことは,無効原因とならない」という肢はいずれも正しく、「代表取締役が、株主総会の特別決議を経ることなく、株主以外の者に対して特に有利な払込金額で新株を発行した場合には、当該新株発行には無効原因がある」という肢は誤りです。これらの瑕疵は、発行前の差止め(210条)と、取締役の責任追及で救済します。

通知・公告を欠いた発行と差止めの仮処分命令に違反した発行は、公開会社でも無効原因になります

公開会社は払込期日の2週間前までに募集事項を株主に通知又は公告しなければなりません(201条3項・4項)。これは株主に差止請求権(210条)を行使する機会を与えるための規定なので、判例は、通知も公告も欠いた発行は、差止請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合でない限り、無効原因になるとしています(最判平成9年1月28日)。「募集事項の株主に対する通知又は公告のいずれも欠いたことは,無効原因とならない」という肢は誤りです。また、差止請求訴訟を本案とする差止めの仮処分命令があるにもかかわらず、あえてこれに違反して発行されたときも無効原因になります(最判平成5年12月16日)。仮処分に違反しても有効なら、差止請求権を株主の権利として認めた法の趣旨が失われるからです。「その仮処分命令に違反して募集株式の発行がされたことは,無効原因とならない」という肢は誤りです。発行可能株式総数を超える発行や、定款に定めのない種類の株式の発行も無効原因になります。

公開会社での無効原因(判例)

  • 無効原因にならない: 特別決議を経ない有利発行(最判昭和46年7月16日)、著しく不公正な方法による発行(最判平成6年7月14日)、取締役会の決議を欠く発行(最判昭和36年3月31日)
  • 無効原因になる: 募集事項の通知・公告をいずれも欠いた発行。差止めの事由がない場合を除く(最判平成9年1月28日)
  • 無効原因になる: 差止めの仮処分命令に違反した発行(最判平成5年12月16日)
  • 無効原因になる: 発行可能株式総数を超える発行、定款に定めのない種類の株式の発行

公開会社でない会社では、株主総会の特別決議を経ずに株主割当て以外の方法でした発行は無効原因になります

公開会社でない会社では募集事項の決定は株主総会の特別決議事項で(199条2項・309条2項5号)、無効の訴えの出訴期間も1年と長くしてあります(828条1項2号)。判例は、ここから会社法は公開会社でない会社について、会社の支配権に関わる持株比率の維持に係る既存株主の利益の保護を重視しているとして、株主総会の特別決議を経ないまま株主割当て以外の方法で募集株式が発行された場合には、その瑕疵は無効原因になるとしました(最判平成24年4月24日)。この事件では、株主総会の委任を受けて取締役会が定めた新株予約権の行使条件を取締役会が後から撤廃し、その条件に反する行使に基づいて株式が発行されたもので、取締役会による行使条件の事後の変更は細目的な変更を除いて無効であり、特別決議を欠く発行と同じに扱われました。「判例の趣旨によれば、会社法上の公開会社でない株式会社において、株主総会の特別決議を経ないまま、株主に募集株式の割当てを受ける権利を与えることなく募集株式を発行した場合には、当該募集株式の発行には無効原因がある」という肢は正しいです。

小さな町工場の事務室の場面。先生が株主役(札「株主」)で机の向こうの社長の男性(札「公開会社でない会社」)に定款と株主名簿を示している。壁の看板「会社法199条2項 募集事項は株主総会の特別決議」。先生の手元の株主名簿の持株比率の欄に深紅の

無効の訴えは出訴期間内に株主等が会社を被告として提起し、期間の経過後に無効事由を追加することはできません

新株発行の無効は、株式の発行の効力が生じた日から6か月以内(公開会社でない会社では1年以内)に、訴えをもってのみ主張することができます(828条1項2号)。提起できるのはその会社の株主等、すなわち株主・取締役・清算人(監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役を含む)で(828条2項2号)、発行の時に株主であった者に限られず、発行の効力が生じた後に株式を取得した株主も提起できます。「株式の発行の効力が生じた後に株式を取得した株主は,新株発行の無効の訴えを提起することができない」という肢は誤りです。被告は株式の発行をした会社です(834条2号)。判例は、出訴期間の経過後に新たな無効事由を追加して主張することは許されないとしています(最判平成6年7月18日)。出訴期間を限った趣旨は新株発行をめぐる法律関係を早く安定させることにあり、期間後の追加を許せばその趣旨が失われるからです。「会社法所定の出訴期間の経過後に新たな無効事由を追加して主張することは,許されない」という肢は正しいです。請求を認容する確定判決は第三者に対しても効力を持ち(838条)、無効とされた株式は将来に向かって効力を失い(839条)、会社は判決確定時の株主に払込金額に相当する金銭を支払います(840条1項)。自己株式の処分の無効も同じ出訴期間で訴えをもってのみ主張でき(828条1項3号)、これは訴訟手続であって非訟事件ではなく、被告は自己株式の処分をした会社だけです(834条3号)。「自己株式の処分の無効の訴えは,自己株式の処分をした会社及びその処分された株式を現在有する株主を被告として,提起しなければならない」という肢は誤りです。

新株発行不存在確認の訴えには出訴期間の制限がありません

新株発行の実体が全く無いのに登記だけがされている場合のように、発行が不存在といえるときは、株式の発行が存在しないことの確認を訴えをもって請求できます(829条1号)。無効の訴えと違って出訴期間の制限はなく、原告の資格も限定されていませんが、確認の利益は要ります。「新株発行不存在確認の訴えについては,出訴期間の制限はない」という肢は正しいです。被告は株式の発行をした会社で(834条13号)、認容判決は第三者に対しても効力を持ちます(838条)。自己株式の処分と新株予約権の発行についても同じ不存在確認の訴えがあります(829条2号・3号)。

会社法828条1項2号

次の各号に掲げる行為の無効は、当該各号に定める期間に、訴えをもってのみ主張することができる。
二 株式会社の成立後における株式の発行 株式の発行の効力が生じた日から六箇月以内(公開会社でない株式会社にあっては、株式の発行の効力が生じた日から一年以内)

会社法829条

次に掲げる行為については、当該行為が存在しないことの確認を、訴えをもって請求することができる。
一 株式会社の成立後における株式の発行
二 自己株式の処分
三 新株予約権の発行

会社法838条

会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。

論文ではこう使う

論文では、発行済みの新株の効力を争う場面で、まず「新株発行の無効は訴えをもってのみ主張でき(会社法828条1項2号)、無効原因は法定されていないため解釈による」と書き、公開会社か否かで分けます。公開会社なら「新株発行は業務執行に準じ、発行後は多数の法律関係が積み重なるから、取引の安全のため無効原因は重大な瑕疵に限られる。株主総会の特別決議の欠缺(最判昭和46年7月16日)・著しく不公正な方法(最判平成6年7月14日)・取締役会決議の欠缺(最判昭和36年3月31日)は無効原因にならず、株主の差止めの機会を奪う通知・公告の欠缺(最判平成9年1月28日)と仮処分違反(最判平成5年12月16日)は無効原因になる」と整理します。公開会社でない会社なら「募集事項が特別決議事項とされ出訴期間も1年と長いことから、会社法は持株比率の維持に係る既存株主の利益を重視しており、特別決議を経ない株主割当て以外の発行は無効原因になる(最判平成24年4月24日)」と書きます。最後に出訴期間・原告適格・対世効(838条)・将来効(839条)に触れます。

試験ではこう問われる

「新株発行の無効原因」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型8件と関係する過去問の肢13本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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