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用語集 / 商法 / 会社の組織に関する訴えと会社非訟事件

会社の組織に関する訴えと会社非訟事件(対世効・将来効・認諾の可否)とは

かいしゃのそしきにかんするうったえとかいしゃひしょうじけん

商法 解散・清算・会社の訴訟・持分会社

会社の組織に関する訴えとは、会社の設立の無効の訴え、新株発行の無効の訴え、株主総会等の決議の取消し・無効確認・不存在確認の訴え、合併・会社分割・株式交換などの組織再編の無効の訴えのように、会社をめぐる法律関係を多数の関係者について画一的に確定するため、会社法が被告・管轄・判決の効力を特別に定めた訴えの総称です(会社法834条)。会社非訟事件とは、株式買取請求の価格の決定や検査役の選任のように、裁判所が当事者の争いを判決で裁くのではなく、後見的な立場から決定で処理する会社法上の手続のことです(会社法868条以下)。

会社が新株を発行したり合併したりすると、そのうえに株主・債権者・取引先という多くの人の権利が積み重なります。ある株主が合併の無効を争って勝ったのに、別の株主との関係では有効のままでは会社は動けません。そこで会社法は、設立・新株発行・決議・組織再編の効力を争う訴えを会社の組織に関する訴えとしてまとめ、被告を会社に固定し、勝訴の判決は訴訟に加わらなかった人にも及ぶものとしました。その代わり被告は認諾で結論を決められず、無効の判決も過去にさかのぼりません。買取価格の決定などは裁判所が決定で定める非訟事件に置かれています。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座り、判決書「吸収合併を無効とする」を掲げる。原告席に男性株主(札「株主A」)、被告席に男性社長(札「存続会社」)。傍聴席に男女の人物が数人並び、それぞれ札「他の株主」「債権者」「取引先」。

請求を認容する確定判決は第三者にも効力を有しますが、棄却する判決は当事者の間にとどまります

会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有します(838条)。民事訴訟の判決は本来当事者の間でだけ効力を持ちますが(民事訴訟法115条1項)、設立や決議が無効か有効かを株主ごとにばらばらに扱うと会社をめぐる法律関係が混乱するので、認容判決に限って全員に対する画一的な効力(対世効)を与えたものです。「株主総会決議不存在確認の訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する」という肢と、「株主総会決議の取消しの訴えに係る請求を認容する確定判決は,第三者に対してもその効力を有するが,その請求を棄却する確定判決は,第三者に対してはその効力を有しない」という肢はいずれも正しいです。これに対し、請求を棄却する確定判決に第三者効を認める規定は無く、棄却判決の効力は原告と会社の間にしか及びません。原告の訴訟追行が不十分だった結果を、訴訟に関与していない他の株主に押し付けると手続保障を欠くからです。「株主総会決議無効確認の訴えに係る請求を棄却する確定判決は,第三者に対しても,その効力を有する」という肢、「株主総会決議取消しの訴えに係る請求を棄却する確定判決は,第三者に対しても,その効力を有する」という肢、「株式交換の無効の訴えに係る請求を棄却する確定判決は,第三者に対してもその効力を有する」という肢はいずれも誤りです。棄却の後に他の株主が同じ瑕疵を争うことは理論上は妨げられませんが、決議取消しの訴えには決議の日から3か月の提訴期間があるので(831条1項)、蒸し返しは事実上限られます。吸収合併等の規律のうち株主保護を直接の目的とするものを選ぶ問題では、「吸収合併等の無効の訴えに係る請求を認容する判決は,第三者に対してもその効力を有する」という規律は、会社をめぐる多数の法律関係を画一的に確定して法的安定を保つための規律で、株主保護を直接の目的とするものには当たりません。また、ある議案を否決する株主総会の決議の取消しを請求する訴えは不適法であるとした判例(最判平成28年3月4日)の論拠を問う問題では、「会社法は,会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は,第三者に対してもその効力を有する旨を定めており,株主総会の決議によって新たな法律関係が生ずることを前提としている」という記述は、否決の決議からは新たな法律関係が生じないから取消しの対象にならないという判例の論拠にふさわしいものです。

認容判決が第三者に及ぶため、被告の会社は請求を認諾することができません

請求の認諾は、被告が原告の請求に理由があることを認める訴訟行為で、調書に記載されると確定判決と同一の効力を持ちます(民事訴訟法266条・267条)。認諾が許されるのは、当事者が争いの対象を実体法上自由に処分できる場合に限られます。会社の組織に関する訴えでは、認容判決の効力が訴訟に加わっていない株主や債権者にまで及ぶので(838条)、被告の会社が原告と結託して認諾すれば、第三者の利益を当事者の合意だけで左右することになります。そのため、会社の組織に関する訴えでは処分権主義・弁論主義が後退し、被告は請求を認諾することができず、裁判上の自白も裁判所を拘束しないと解されており、吸収合併の無効の訴えについてそのように述べた裁判例があります。「会社の設立の無効の訴えについては,当該訴えに係る請求を認容する確定判決が第三者に対してもその効力を有するため,被告は,当該請求を認諾することができない」という肢は正しいです。同じ理由で、同一の請求を目的とする会社の組織に関する訴えが数個同時に係属するときは、判決の矛盾を避けるため弁論と裁判を併合しなければならず(837条)、原告が敗訴した場合に悪意又は重大な過失があったときは被告に対して連帯して損害賠償責任を負います(846条)。

法廷の場面。先生が裁判官役(札「裁判所」)で法壇に座る。被告席の男性社長(札「被告 会社」)が書面「請求を認諾します」を差し出し、先生がその書面に手のひらを向けて止めている。書面の上に深紅の×印。原告席に男性株主(札「原告 株主」)。傍聴席

無効の判決は将来に向かってのみ効力を失わせますが、決議の取消し・無効確認・不存在確認の判決は決議の時にさかのぼります

設立の無効、新株発行の無効、自己株式の処分の無効、新株予約権の発行の無効、資本金の額の減少の無効、組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の無効、持分会社の設立の取消しの訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、無効とされ、又は取り消された行為は、将来に向かってその効力を失います(839条)。無効の判決を過去にさかのぼらせると、それまでに積み重なった取引や株式の移転をすべてやり直すことになり、法律関係が混乱するからです。「新株予約権の発行の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,その新株予約権は,将来に向かってその効力を失う」という肢は正しいです。設立の無効の判決が確定した会社は、はじめから存在しなかったことになるのではなく、解散した会社と同じように清算をしなければならず(475条2号)、清算の目的の範囲内において清算が結了するまでなお存続するものとみなされます(476条)。「設立を無効とする判決が確定しても,判決の効力には遡及効はなく,当該会社について清算手続が開始されることになる」という肢と、「設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは,会社は,清算の目的の範囲内において,清算が結了するまでは存続するものとみなされる」という肢はいずれも正しいです。これに対し、839条の対象から外れている株主総会等の決議の取消しの訴え(834条17号)と決議の無効確認・不存在確認の訴え(834条16号)では、認容判決が確定すると決議は決議の時にさかのぼって効力を失います。取り消された選任決議で選ばれた取締役がした行為の扱いなどは、別の法理で処理されます。

訴えの種類ごとに提訴期間・原告・被告が法定されていて、会社の本店所在地の地方裁判所に専属します

会社の組織に関する行為の無効は、828条1項が定める期間内に訴えをもってのみ主張することができ、設立の無効は会社の成立の日から2年以内、新株発行・自己株式の処分・新株予約権の発行の無効は効力が生じた日から6か月以内(公開会社でない株式会社では1年以内)、資本金の額の減少と組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転・株式交付の無効は効力発生日から6か月以内です。原告も828条2項が各号で限定しています。これに対し、株主総会等の決議の無効確認の訴えと不存在確認の訴え(830条)は、確認の利益がある限り誰でもいつでも提起でき、決議の日から3か月という提訴期間があるのは決議の取消しの訴え(831条1項)だけです。「株主総会の決議が無効であることの確認の訴えは,その決議の日から3か月以内に提起しなければならない」という肢は誤りです。被告は834条が訴えごとに定めており、設立の無効の訴えは設立する会社、新株発行・自己株式の処分・新株予約権の発行の無効の訴えはその発行・処分をした株式会社、吸収合併の無効の訴えは存続会社、新設分割の無効の訴えは分割会社と設立会社、決議の取消し・無効確認・不存在確認の訴えは当該株式会社です。株式を取得した株主は被告になりません。「自己株式の処分の無効の訴えは,自己株式の処分をした会社及びその処分された株式を現在有する株主を被告として,提起しなければならない」という肢は誤りです。管轄は被告となる会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所に専属し(835条1項)、株主が原告のときは、被告が原告の訴えの提起が悪意によることを疎明すれば、裁判所は相当の担保を立てることを命じることができます(836条)。

会社の組織に関する訴えに共通する規律

  • 原告: 828条2項などで訴えごとに限定(株主等=株主・取締役・清算人、監査役設置会社では監査役、指名委員会等設置会社では執行役を含む。組織再編では承認をしなかった債権者・破産管財人も)
  • 被告: 834条で訴えごとに法定(原則として当該会社。役員の解任の訴えは会社と役員の双方)
  • 管轄: 被告となる会社の本店所在地の地方裁判所の専属管轄(835条1項)
  • 担保提供: 株主が原告のとき、被告の申立てと悪意の疎明により裁判所が命じうる。原告が役員のときは不要(836条)
  • 必要的併合: 同一の請求を目的とする訴えが数個係属するときは弁論・裁判を併合(837条)
  • 認容判決の効力: 第三者に対しても効力を有する(838条)。棄却判決は当事者間のみ
  • 無効・取消しの判決の効力: 将来に向かってのみ効力を失う(839条)。決議の取消し・無効確認・不存在確認は対象外で遡及する
  • 敗訴原告の責任: 悪意又は重大な過失があれば被告に対し連帯して損害賠償(846条)
  • 認諾・自白: 被告は請求を認諾できず、裁判上の自白も裁判所を拘束しない

権利の有無を争う事柄は訴訟手続により、裁判所が後見的に決める事柄は非訟事件の手続によります

会社法が裁判所に委ねる事柄には、訴訟手続によるものと非訟事件の手続によるものがあります。訴訟手続によるのは、当事者の間で権利や行為の効力の有無が争われ、裁判所が法規を当てはめて判決で白黒を付ける事柄です。株式の発行の差止め(210条)は、株主が会社に対して持つ差止請求権の存否を争う訴訟で、実務では差止めの訴えを本案とする仮処分の申立てによります。自己株式の処分の無効(828条1項3号)は会社の組織に関する訴えによってのみ主張できる形成訴訟で、株式会社の取締役の解任(854条1項)も会社と役員を被告とする形成の訴えです。これに対し、非訟事件の手続によるのは、争いの裁断ではなく裁判所が合目的的な裁量で法律関係を形成し、又は適任者を選ぶ事柄で、会社の本店所在地の地方裁判所が決定で処理します(868条1項)。株式交換などに反対する株主が株式買取請求権を行使し、効力発生日から30日以内に価格の協議が調わないときの買取価格の決定(786条2項・798条2項)は、裁判所が審問の期日を開いて申立人と会社の陳述を聴いたうえで公正な価格を定める非訟事件です(870条2項2号)。株主総会の招集手続等に関する検査役の選任(306条)も、総会の運営を調査させるために裁判所が適任者を選ぶ非訟事件です。したがって、訴訟手続ではなく会社法上の非訟事件の手続によるものを選ぶ問題では、株式交換において反対株主による株式買取請求権が行使された場合の買取価格決定と、株主総会の招集手続等に関する検査役の選任が非訟事件の手続によるもので、株式の発行の差止め、自己株式の処分の無効、株式会社の取締役の解任は訴訟手続によるものです。

裁判所の受付の場面。先生が書記官役(札「裁判所 受付」)でカウンターに立ち、左右に2つの窓口の看板。左の看板「訴訟手続(判決)」、右の看板「非訟事件の手続(決定)」。左の窓口の前に男性株主(札「株主」)が書類「株式の発行の差止め」「自己株式

訴訟手続によるものと非訟事件の手続によるもの

  • 訴訟手続: 会社の組織に関する訴え(設立・新株発行・自己株式の処分・新株予約権の発行・組織再編の無効、決議の取消し・無効確認・不存在確認、解散の訴え)、役員の解任の訴え(854条)、株式発行の差止め(210条。仮処分と組み合わせる)、違法行為の差止め(360条)、責任追及等の訴え(847条)
  • 非訟事件の手続: 株式買取請求の価格の決定(117条2項・786条2項・798条2項など)、譲渡制限株式の売買価格の決定(144条2項)、検査役の選任(306条・358条)、一時役員の選任(346条2項)、少数株主による株主総会の招集の許可(297条4項)、会計帳簿等の閲覧の許可、清算人の選任・解任(478条2項・479条2項)、裁判所の認可を要する社債権者集会の決議(732条)

会社法838条

会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する確定判決は、第三者に対してもその効力を有する。

会社法839条

会社の組織に関する訴え(第八百三十四条第一号から第十二号の二まで、第十八号及び第十九号に掲げる訴えに限る。)に係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされ、又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては当該設立を含み、当該行為に際して株式又は新株予約権が交付された場合にあっては当該株式又は新株予約権を含む。)は、将来に向かってその効力を失う。

論文ではこう使う

論文で新株発行や合併の無効を論じるときは、まず「無効は訴えをもってのみ主張できる(828条1項)」と提訴期間・原告適格(828条2項)・被告(834条)を押さえ、次に無効原因の有無を検討し、最後に認容判決の効力として対世効(838条)と将来効(839条)を書きます。決議取消しの訴えでは、839条の対象外なので認容判決が決議の時にさかのぼることを示し、そのうえで取り消された決議に基づく行為の効力を別に論じます。株主が差止めを求める場面では、差止請求権(210条・360条)は訴訟上の権利であって、実務上は仮処分で実現することに触れます。

試験ではこう問われる

「会社の組織に関する訴えと会社非訟事件」が短答式でどう出題されてきたか、ひっかけの型7件と関係する過去問の肢19本は、無料のアカウントでログインすると読めます。

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