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持分会社の計算(計算書類・出資の払戻し・合同会社の特則)とは

もちぶんがいしゃのけいさん

商法 解散・清算・会社の訴訟・持分会社

持分会社の計算とは、合名会社・合資会社・合同会社の会計帳簿・計算書類の作成と保存、利益の配当、出資の払戻し、持分の払戻しに関する規律のことです(会社法614条〜636条)。無限責任社員がいる合名会社・合資会社では社員が出資の払戻しを請求でき債権者による計算書類の閲覧も無いのに対し、全員が有限責任の合同会社には、債権者の閲覧請求権、利益の配当と出資・持分の払戻しの財源規制、資本金の額の減少の債権者異議手続という特則が置かれています。

合名会社の債権者は、会社の金庫が空でも社員の財産から取り立てられるので、会社に財産がどれだけ残っているかをさほど心配しなくて済みます。だから合名会社・合資会社では、社員が出資したお金を途中で返してもらうことも自由で、債権者が計算書類を見る権利もありません。一方、合同会社の債権者が頼れるのは会社の財産だけです。そこで合同会社には株式会社と同じ発想の歯止めが置かれ、債権者は計算書類を見ることができ、配当や払戻しには財源の上限があり、資本金を減らすときは債権者異議手続が要ります。

教室の場面。先生が教壇に立ち、黒板を左右に割った板書。左「合名会社・合資会社」の下に「出資の払戻し=請求できる(624条)」「債権者の計算書類の閲覧=なし」「資本金減少の債権者異議=なし」。右「合同会社」の下に「出資の払戻し=定款変更で出資

合名会社を含むすべての持分会社が会計帳簿と計算書類を作成・保存しますが、貸借対照表の公告義務はありません

持分会社の会計は一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従い(614条)、持分会社は適時に正確な会計帳簿を作成し、閉鎖の時から10年間、会計帳簿と事業に関する重要な資料を保存しなければなりません(615条)。成立の日における貸借対照表と、各事業年度に係る計算書類も作成し、計算書類は作成した時から10年間保存します(617条1項・2項・4項)。合名会社を除く規定は無く、合名会社も同じ義務を負います。「合名会社は,会計帳簿及び各事業年度に係る計算書類を作成し,会社法所定の期間保存しなければならない」という肢は正しく、「合名会社は,計算書類を作成する必要はない」という肢は誤りです。他方、株式会社には定時株主総会の終結後に貸借対照表を公告する義務がありますが(440条1項)、持分会社にはこれに当たる規定が無く、合同会社でも貸借対照表やその要旨を公告する必要はありません。「公告方法が官報に掲載する方法である合同会社は,貸借対照表の作成後遅滞なく,当該貸借対照表又はその要旨を公告しなければならない」という肢は誤りです。

計算書類の閲覧を請求できるのは社員で、債権者に閲覧請求権があるのは合同会社だけです

持分会社の社員は、営業時間内はいつでも計算書類の閲覧・謄写を請求することができ(618条1項)、定款で別段の定めができますが、事業年度の終了時の請求は定款でも制限できません(同条2項)。債権者については、合同会社の債権者だけが、作成した日から5年以内の計算書類の閲覧・謄写を請求できます(625条)。合同会社の債権者の引当ては会社財産だけなので、その状況を知る手段を与えたものです。合名会社・合資会社の債権者には閲覧請求権がありません。無限責任社員の個人財産も引当てにできるので、会社財産の増減を監視する必要が小さいからです。「合名会社の債権者は,当該合名会社の営業時間内は,いつでも,その計算書類の閲覧の請求をすることができる」という肢は誤りです。

合同会社の事務所の受付の場面。先生(札「合同会社 業務執行社員」)がカウンターに立ち、男性の取引先(札「債権者」)がファイル「計算書類(5年以内)」を閲覧している。隣に別の男性(札「合名会社の債権者」)が同じ請求をして、先生が首を横に振って

合名会社・合資会社の社員は出資の払戻しを請求でき、請求の方法は定款で定めることができます

社員は、持分会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻し(出資の払戻し)を請求することができ、金銭以外の財産を出資した場合はその価額に相当する金銭の払戻しを請求することもできます(624条1項)。社員の地位を保ったまま出資の一部を返してもらう仕組みで、退社に伴う持分の払戻し(611条)とは区別されます。無限責任社員が債権者に直接責任を負う合名会社・合資会社では、会社財産の流出を厳しく制限する必要が乏しいからです。持分会社は、出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができ(624条2項)、その内容に特段の制限はありません。「持分会社は,出資の払戻しを請求するには他の社員の過半数の同意を要する旨の定款の定めを設けることはできない」という肢は誤りです。社員の持分の差押えは出資の払戻しを請求する権利にも及びます(同条3項)。利益の配当については、社員は会社に対して利益の配当を請求することができ(621条1項)、合名会社・合資会社には損失をてん補した後でなければ配当を請求できないという制限はありません。匿名組合員が出資の損失をてん補した後でなければ利益の配当を請求できない(商法538条)のとは違うので、「匿名組合員及び合資会社の有限責任社員は,出資が損失によって減少したときは,その損失が塡補された後でなければ,利益の配当を請求することができない」という肢は合資会社の有限責任社員について誤りです。

合同会社の社員は定款を変更して出資の価額を減少する場合でなければ払戻しを請求できず、資本金の額を減少するには債権者異議手続が要ります

合同会社では、債権者の引当てが会社財産だけなので、株式会社と同じ発想の財源規制が置かれています。合同会社の社員は、624条1項の規定にかかわらず、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、出資の払戻しを請求することができません(632条1項)。定款に記載された出資の価額と実際に履行された出資の額が食い違わないようにするためです。「社員は,定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き,会社に対し,出資の払戻しを請求することができない」という合同会社についての肢は正しいです。払戻しの額も、請求の日における剰余金額又は減少した出資の価額のいずれか少ない額を超えることができません(同条2項)。利益の配当も、配当額がその日の利益額を超えるときはすることができず、会社は配当請求を拒むことができます(628条)。退社に伴う持分の払戻しでも、持分払戻額が剰余金額を超えるときは債権者が異議を述べることができます(635条1項)。合同会社は、損失のてん補のためのほか出資の払戻し・持分の払戻しのためにも資本金の額を減少することができますが(620条・626条)、合同会社が資本金の額を減少する場合には、債権者は異議を述べることができ、会社は官報に公告し知れている債権者に各別に催告しなければなりません(627条)。「合同会社が資本金の額を減少する場合には,当該合同会社は,債権者異議手続をとらなければならない」という肢は正しいです。合名会社・合資会社の資本金の額の減少には債権者異議手続はありません。

持分会社の計算の規律(合名・合資と合同の違い)

  • 会計帳簿・計算書類の作成と10年保存(615条・617条): すべての持分会社。貸借対照表の公告義務は無い
  • 計算書類の閲覧: 社員はいつでも(618条)。債権者は合同会社のみ、5年以内のもの(625条)
  • 利益の配当: 社員は請求できる(621条)。合同会社は利益額を超える配当不可(628条)
  • 出資の払戻し: 合名・合資の社員は請求できる。方法は定款で定められる(624条)。合同会社は定款変更で出資の価額を減少する場合だけ、剰余金額の範囲内(632条)
  • 持分の払戻し(退社時): 全持分会社(611条)。合同会社は剰余金額を超えると債権者異議手続(635条)
  • 資本金の額の減少: 損失てん補のため(620条)。合同会社は払戻しのためにも可(626条)、債権者異議手続が必要(627条)。合名・合資には異議手続なし

会社法632条1項

第六百二十四条第一項の規定にかかわらず、合同会社の社員は、定款を変更してその出資の価額を減少する場合を除き、同項前段の規定による請求をすることができない。

会社法627条1項

合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。

試験ではこう問われる

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