持分会社の設立と出資とは
もちぶんがいしゃのせつりつとしゅっし
持分会社の設立とは、社員になろうとする者が定款を作成して全員が署名又は記名押印し、本店の所在地で設立の登記をすることによって合名会社・合資会社・合同会社を成立させる手続のことで、定款に公証人の認証は要りません(会社法575条・579条)。出資とは、社員が会社に財産などを拠出することで、無限責任社員は労務や信用も出資できますが、有限責任社員の出資は金銭その他の財産に限られます(会社法576条1項6号)。
仲間3人で合名会社を作るなら、株式会社のように公証人の役場に定款を持ち込んだり、現物出資を検査役に調べてもらったりする手間はありません。全員の名前と責任の種類を書いた定款に全員が署名し、登記をすれば成立します。出資もすぐに全部払い込む必要は無く、腕前や信用そのものを出資にすることもできます。会社の借金を社員が自分の財産で背負うので、会社に財産が揃っていなくても債権者は困らないからです。ただし全員が有限責任の合同会社だけは、株式会社に近い扱いで、出資は金銭などの財産に限られ、登記までに全額を履行しなければなりません。
定款は社員になろうとする者の全員が作成し、公証人の認証を受けずに設立の登記で成立します
持分会社を設立するには、その社員になろうとする者が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません(575条1項)。株式会社の定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じませんが(30条1項)、持分会社の定款にはそのような規定が無く、認証は要りません。「合名会社の設立に際して作成した定款は,公証人の認証を受けることを要しない」という肢は正しいです。定款には、目的・商号・本店の所在地のほか、社員の氏名又は名称及び住所、社員が無限責任社員又は有限責任社員のいずれであるかの別、社員の出資の目的とその価額又は評価の標準を記載しなければなりません(576条1項)。「持分会社の定款には,社員の氏名又は名称及び住所を記載又は記録しなければならない」という肢は正しいです。社員の個性が会社の基礎なので、誰が社員かを定款で確定させる建て付けです。持分会社は本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(579条)。株式会社では法人は取締役になれませんが(331条1項1号)、持分会社の社員に法人がなれないとする規定は無く、定款の記載事項が「氏名又は名称」と法人を予定し、法人が業務を執行する社員である場合に職務を行うべき者を選任して他の社員に通知する規定も置かれています(598条1項)。「法人は,持分会社の社員となることができない」という肢は誤りです。
労務や信用を出資できるのは無限責任社員だけで、有限責任社員と合同会社の社員の出資は金銭等に限られます
社員の出資の目的は定款に記載しますが、有限責任社員については金銭等に限られます(576条1項6号括弧書)。金銭等とは金銭その他の財産のことで(151条1項括弧書)、労務の提供や信用の供与は含まれません。有限責任社員は出資の価額を限度として責任を負うので、その出資は金額で評価できる財産でなければならないからです。無限責任社員にはこの限定が無く、金銭以外の財産はもちろん、労務や信用を出資することができます。「合名会社の社員は,信用又は労務を出資することができる」という肢は正しく、「有限責任社員は,信用を出資の目的とすることができる」という肢は誤りです。合同会社は社員の全部が有限責任社員なので、「社員になろうとする者は,労務や信用を出資の目的とすることができる」という合同会社についての肢は誤りで、「合同会社の社員は、信用をその出資の目的とすることができない」という肢は正しいです。匿名組合員も金銭その他の財産のみを出資の目的とすることができ(商法536条2項)、「匿名組合員及び合資会社の有限責任社員は,金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる」という肢は正しいです。出資した財産は会社に帰属し、社員は持分を持つにとどまります。匿名組合員の出資が営業者の財産に属するのと同じく(商法536条1項)、「匿名組合員及び合資会社の有限責任社員が出資した財産は,営業者又は合資会社に属する」という肢は正しいです。
持分会社の現物出資に検査役の調査は無く、合名会社・合資会社は成立までに出資を全部履行する必要がありません
株式会社の設立では、金銭以外の財産の出資は変態設立事項として定款に記載し、原則として裁判所が選任する検査役の調査を受けなければなりません(28条1号・33条1項)。持分会社の設立にはこれに当たる規定が無く、出資の目的と価額は社員全員の合意で定款に書くので、合同会社でも検査役の選任の申立ては要りません。「合同会社を設立しようとする場合において,定款で定めた社員の出資の目的が金銭以外の財産であるときは,社員になろうとする者は,裁判所に対し,検査役の選任の申立てをしなければならない」という肢は誤りです。出資の履行の時期についても、合名会社・合資会社には成立までに全部を履行することを求める規定が無く、未履行のまま成立の登記をすることができ、未履行分は成立後の会社に対する義務として残ります(582条)。無限責任社員が債権者に直接責任を負うので、会社財産の充実を設立の要件にしなくても債権者は守られるからです。「合名会社を設立する場合には,当該合名会社の社員になろうとする者は,定款の作成後,合名会社の設立の登記をする時までに,その出資の全部を履行しなければならない」という肢は誤りです。合名会社・合資会社の社員は、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻しを会社に請求することもできます(624条1項)。「合資会社において,会社の成立の時までに社員が出資の全額を履行する必要はないし,社員による出資の払戻しの請求も可能である」という肢は正しいです。
合同会社だけは設立の登記までに出資の全額を履行し、後から加入する社員も履行を完了した時に社員になります
設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、社員になろうとする者は、定款の作成後、設立の登記をする時までに、出資に係る金銭の全額を払い込み、又は金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません(578条)。社員全員が有限責任で会社財産だけが債権者の引当てになるので、株式会社と同じ全額払込みの考え方を採ったものです。登記・登録などの対抗要件を備える行為は、社員になろうとする者全員の同意があれば成立後にすることができます(同条ただし書)。成立後の加入でも同じ考え方が続き、持分会社の社員の加入は定款の変更をした時に効力を生じますが(604条2項)、合同会社に新たに加入する者が定款変更の時に出資の払込み・給付を履行していないときは、その履行を完了した時に社員になります(同条3項)。この特則は合同会社だけのもので、合資会社の有限責任社員には適用が無く、出資が未履行でも定款変更の時に社員になります。「新たに合資会社の有限責任社員になろうとする者は,当該有限責任社員の加入に係る定款の変更をした時にその出資に係る払込み又は給付の全部又は一部を履行していないときは,当該払込み又は給付を完了した時に,当該合資会社の有限責任社員となる」という肢は誤りです。
持分会社の設立と出資の比較
- 定款: 社員になろうとする者全員が作成・署名(575条)。公証人の認証は不要。絶対的記載事項は目的・商号・本店・社員の氏名又は名称及び住所・責任の別・出資の目的と価額(576条1項)
- 成立: 本店所在地の設立の登記(579条)。法人も社員になれる(598条1項参照)
- 出資の目的: 無限責任社員は財産・労務・信用のいずれも可。有限責任社員(合資の有限責任社員・合同会社の社員)は金銭等に限る(576条1項6号)
- 現物出資: 検査役の調査なし(株式会社の28条・33条に当たる規定なし)
- 履行の時期: 合名・合資は成立までに全部履行する必要なし。合同会社は設立登記までに全額(578条)
- 加入時: 定款変更の時に社員(604条2項)。合同会社のみ、未履行なら履行完了時(604条3項)
- 出資の払戻し: 合名・合資の社員は請求できる(624条1項)。合同会社は定款変更で出資の価額を減少する場合に限る(632条)
会社法576条1項
持分会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。(略)六 社員の出資の目的(有限責任社員にあっては、金銭等に限る。)及びその価額又は評価の標準
会社法578条本文
設立しようとする持分会社が合同会社である場合には、当該合同会社の社員になろうとする者は、定款の作成後、合同会社の設立の登記をする時までに、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。