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用語集 / 商法 / 匿名組合

匿名組合とは

とくめいくみあい

商法 商行為

匿名組合とは、当事者の一方(匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約する契約のことです(商法535条)。出資は営業者の財産に属し、匿名組合員は営業者の業務を執行せず、営業者の行為について第三者に対して権利義務を持ちません。

ラーメン店を開きたい人に友人がお金を出し、店の儲けの一部を受け取る代わりに、店の看板にも契約にも友人の名前は出ない、という仕組みが匿名組合です。出したお金は店主のものになり、店主が自分の名で営業します。友人は店の経営に口を出せず、店の借金の責任も負いませんが、自分の名前を店の商号に使わせたときだけは、表に出た以上、店主と連帯して責任を負います。

ラーメン店の店先の場面。先生が営業者役(札「営業者 自分の名で営業」)で店の暖簾の前に立ち、店の看板は「○○ラーメン」で出資者の名前は無い。店の奥の壁の向こうに小さく男性(札「匿名組合員 出資者・表に出ない」)が出資金の袋を渡し、利益の袋を

匿名組合契約は有償・双務の諾成契約で、匿名組合員の出資は営業者の財産に属し、出資の目的は金銭その他の財産に限られます

商法535条は、匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって効力を生ずると定めます。匿名組合員は出資義務を、営業者は利益分配義務を負い、両者が対価関係に立つので有償・双務の契約で、約束だけで成立する諾成契約です。「匿名組合契約は,有償,双務の諾成契約である」という肢は正しいです。匿名組合員の出資は営業者の財産に属し(536条1項)、民法の組合のような共有にはなりません。「匿名組合員が出資した財産は、匿名組合員の共有に属する」という肢は誤りで、「匿名組合員の出資は,すべて営業者の財産に属し,契約当事者の共有財産となるものではない」という肢は正しいです。匿名組合員は金銭その他の財産のみを出資の目的とすることができ(536条2項)、労務や信用を出資することはできません。「匿名組合員は,労務をその出資の目的とすることができる」という肢は誤りです。合資会社の有限責任社員も出資の目的は金銭等に限られ(会社法576条1項6号)、出資した財産が会社に属する点も同じです。「匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる」という肢、「匿名組合員及び合資会社の有限責任社員は,金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる」という肢、「匿名組合員及び合資会社の有限責任社員が出資した財産は,営業者又は合資会社に属する」という肢はいずれも正しいです。

匿名組合員は営業者の業務を執行できず、営業者を代表できず、営業者の行為について第三者に対して権利義務を持ちません

536条3項は、匿名組合員は営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができないと定め、4項は、匿名組合員は営業者の行為について第三者に対して権利及び義務を有しないと定めます。営業は営業者の名と計算で行われ、匿名組合員は外部に現れない出資者にとどまるからです。「匿名組合員は、営業者の業務を執行することができない」という肢は正しく、「匿名組合員は、営業者の行為によって生じた債務について、営業者に代わって弁済する責任を負う」という肢は誤りです。この点は合資会社の有限責任社員と異なり、有限責任社員は定款に別段の定めが無ければ業務を執行できます(会社法590条1項)。「匿名組合員及び合資会社の有限責任社員は,営業者又は合資会社の業務を執行することができる」という肢は匿名組合員について誤りです。匿名組合員の監視権として、営業年度の終了時に貸借対照表の閲覧・謄写と業務・財産の状況の検査ができ(539条1項)、重要な事由があるときはいつでも裁判所の許可を得て検査できます(539条2項)。合資会社の有限責任社員の調査には裁判所の許可は要らないので(会社法592条1項)、「重要な事由があるときは,いつでも,裁判所の許可を得て,営業者又は合資会社の業務及び財産の状況を検査することができる」という肢は有限責任社員について誤りです。

同じラーメン店の店先で看板が「山田ラーメン」に変わった場面。先生が匿名組合員役(札「匿名組合員 山田 商号に氏名の使用を許諾」)で看板を見上げ、向かいに男性の取引先(札「債権者 匿名組合員の存在を知らなくてもよい」)が請求書を差し出す。壁の

自己の氏名等を営業者の商号中に用いることを許諾した匿名組合員は、その使用以後の債務を営業者と連帯して弁済する責任を負います

537条は、匿名組合員が自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務について営業者と連帯して弁済する責任を負うと定めます。匿名であるはずの出資者が商号に名を出せば、取引の相手方はその人が営業主だと信頼するので、名板貸しと同じ考え方で責任を負わせます。要件は許諾と使用以後に生じた債務であることで、債権者が匿名組合員の存在を知っていたことは要件ではありません。「当該匿名組合員が当該匿名組合契約の当事者であることをその債務に係る債権者が知っていたときに限り,営業者と連帯して弁済する責任を負う」という肢は誤りです。氏名の使用を許諾しても営業者を代表できるようにはならないので、「匿名組合員は,自己の氏名を営業者の商号中に用いることを許諾した場合には,営業者を代表することができる」という肢は誤りです。

利益を分配しない特約はできず、損失を負担しない特約はでき、出資が損失で減少したときは塡補後でなければ配当を請求できません

利益の分配は匿名組合契約の本質的な要素なので(535条)、匿名組合員に利益を分配しない特約は許されません。他方、損失の負担は契約の要素ではないので、匿名組合員が損失を負担しない特約は有効です。「匿名組合員に対して利益の分配をしない特約をすることは許されないが,匿名組合員が損失の負担をしない特約は可能である」という肢は正しいです。出資が損失によって減少したときは、その損失を塡補した後でなければ匿名組合員は利益の配当を請求できません(538条)。損失を埋めないまま配当すれば出資の払戻しと同じになるからです。合資会社にはこれに対応する規定が無く、社員は利益の配当を請求できる(会社法621条1項)ので、「出資が損失によって減少したときは,その損失が塡補された後でなければ,利益の配当を請求することができない」という肢は有限責任社員について誤りです。

匿名組合契約は営業者の死亡、営業者又は匿名組合員の破産手続開始の決定などで終了しますが、匿名組合員の死亡では終了しません

541条は、事業の成功又はその成功の不能、営業者の死亡又は営業者が後見開始の審判を受けたこと、営業者又は匿名組合員が破産手続開始の決定を受けたことを終了事由として挙げます。営業者はみずから営業を行う主体なのでその死亡は契約の基礎を失わせますが、匿名組合員は出資をして利益の分配を受ける地位にすぎないので、その死亡は終了事由ではなく、地位は相続されます。「匿名組合契約は、匿名組合員の死亡により当然に終了する」という肢は誤りで、「匿名組合員又は営業者が死亡し,又は破産手続開始の決定を受けたことにより,終了する」という肢も、匿名組合員の死亡を含めている点で誤りです。存続期間を定めなかったときなどは営業年度の終了時に6か月前の予告をして解除でき、やむを得ない事由があればいつでも解除できます(540条)。契約が終了したときは、営業者は出資の価額を返還しますが、損失で減少していればその残額で足ります(542条)。

匿名組合員と合資会社の有限責任社員の比較

  • 出資の目的: 両者とも金銭その他の財産のみ(536条2項、会社法576条1項6号)
  • 出資した財産の帰属: 営業者の財産/合資会社の財産。共有ではない
  • 業務執行: 匿名組合員は不可(536条3項)/有限責任社員は定款に別段の定めが無ければ可(会社法590条1項)
  • 検査・調査: 匿名組合員は重要な事由があれば裁判所の許可を得ていつでも(539条2項)/有限責任社員は許可不要(会社法592条1項)
  • 損失塡補前の配当: 匿名組合員は請求不可(538条)/合資会社に対応規定なし
  • 第三者に対する責任: 匿名組合員は無し(536条4項)。氏名使用の許諾があれば連帯責任(537条)
  • 終了: 営業者の死亡・後見開始、営業者又は匿名組合員の破産で終了。匿名組合員の死亡では終了しない(541条)

商法536条

匿名組合員の出資は、営業者の財産に属する。2 匿名組合員は、金銭その他の財産のみをその出資の目的とすることができる。3 匿名組合員は、営業者の業務を執行し、又は営業者を代表することができない。4 匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利及び義務を有しない。

商法537条

匿名組合員は、自己の氏若しくは氏名を営業者の商号中に用いること又は自己の商号を営業者の商号として使用することを許諾したときは、その使用以後に生じた債務については、営業者と連帯してこれを弁済する責任を負う。

試験ではこう問われる

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