確定期売買の解除とは
かくていきばいばいのかいじょ
確定期売買の解除とは、商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合に、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方が直ちに履行を請求した場合を除き、解除の意思表示が無くても契約を解除したものとみなされる規律のことです(商法525条)。
お歳暮用の商品を12月中に納めてもらう約束で仕入れたのに、年が明けてから届いても意味がありません。民法では、こういう契約でも買主が解除の意思表示をしなければ契約は残りますが、商人同士の売買では、期日を過ぎた時点で、買主が「それでもすぐ納めてほしい」と請求しない限り契約は解除されたものとみなされます。相場が動く商売では、売主がいつまでも「まだ契約が生きているか」を気にしなくて済むようにするためです。
商人間の確定期売買で履行の時期を過ぎたときは、相手方が直ちに履行を請求した場合を除き、解除の意思表示が無くても契約は解除されたものとみなされます
商法525条は、商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなすと定めます。これが確定期売買(定期売買)の解除です。民法では、定期行為の履行遅滞は催告なしに解除できるにとどまり(民法542条1項4号)、解除の意思表示(民法540条1項)は要ります。商法は履行の時期の経過という事実だけで解除の効果を生じさせ、契約を維持したい相手方の側に直ちに履行を請求させる形にして、法律関係を早く確定させます。「当事者の一方が履行をしないでその日時を経過したことを理由に相手方がその契約の効力を失わせるためには,解除の意思表示をしなければならない」という肢は誤りで、「当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは,相手方が直ちにその履行の請求をした場合を除き,契約が解除されたこととなる」という肢と、「商人間の売買において,その性質上,特定の日時までに履行しなければ契約をした目的を達することができない場合において,当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは,相手方は,直ちにその履行の請求をした場合を除き,契約を解除したものとみなされる」という肢はいずれも正しいです。売買の性質から時期が決まる場合(季節商品)と、当事者の意思表示で時期を決めた場合の両方に適用され、「売買の性質上、特定の日時に目的物を引き渡さなければ契約をした目的を達することができない場合において、乙社がその日時に当該目的物を甲社に引き渡さなかったときは、甲社が直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなされる」という肢は正しいです。
判例は、売主が同時履行の抗弁権を持っていても、時期の経過という客観的事実で解除されたものとみなされるとします
525条の解除の擬制は、履行しなかった当事者に帰責事由があることや履行遅滞に陥っていることを要件にしていません。判例は、お歳暮用商品の売買の事案で、確定期売買においては当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは契約は解除されたものとみなされ、その不履行が債務者の責めに帰すべき事由に基づくか否か、すなわち履行遅滞の有無にかかわらず、所定時期の経過という客観的事実によって解除されたとみなされるのであるから、同時履行の抗弁権が問題になる余地はないとしました(最判昭和44年8月29日)。売主が代金の支払と引換えでなければ渡さないと主張できる立場にあっても、期間内に引き渡さなければ買主は解除したものとみなされます。「たとえ売主が同時履行の抗弁権を行使して商品引渡債務を履行しなかったときであっても,買主は,当該売買契約の解除をしたものとみなされる」という肢は正しいです。売主を長く不安定な地位に置かないための規定なので、売主側の事情で結論を変えないという整理です。
契約を残したい相手方は時期の経過後直ちに履行を請求しなければならず、確定期売買に当たらない売買では民法の催告解除によります
525条は解除をみなす規定なので、履行が遅れても商品が欲しい相手方は、時期の経過後直ちに履行の請求をして契約を存続させる必要があります。民法の定期行為のように、解除するかどうかを相手方が後からゆっくり選べる仕組みではありません。また、特定の日時や期間内に履行しなければ目的を達せられないという事情が無い商人間の売買は確定期売買ではないので、履行が遅れても当然には解除されず、相当の期間を定めて催告したうえで解除する民法541条の原則に戻ります。履行の時期が定まっていることと、その時期に履行しなければ契約の目的を達せられないこととは別で、後者まで認められてはじめて525条が働きます。
確定期売買の解除(商法525条)
- 適用場面: 商人間の売買で、売買の性質(季節商品など)又は当事者の意思表示により、特定の日時・一定の期間内に履行しなければ契約の目的を達せられない場合
- 効果: 一方が履行しないで時期を経過 → 相手方が直ちに履行を請求した場合を除き、解除したものとみなす(解除の意思表示は不要。民法542条1項4号・540条1項の例外)
- 帰責事由・履行遅滞の有無を問わない。同時履行の抗弁権があっても解除とみなされる(最判昭44.8.29)
- 契約を残したい相手方は直ちに履行を請求する
商法525条
商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないでその時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみなす。
論文ではこう使う
商人間の売買で履行期を過ぎた後の契約の帰すうを論じるときは、まず売買の性質又は当事者の意思表示から確定期売買に当たることを認定し、商法525条により、相手方が直ちに履行を請求していない限り解除の意思表示が無くても契約は解除されたものとみなされると結論づけます。売主が同時履行の抗弁や帰責事由の不存在を主張する事案では、判例(最判昭44.8.29)を引いて、所定時期の経過という客観的事実で解除とみなされ、同時履行の抗弁権は問題にならないと論じます。確定期売買に当たらない商人間の売買なら、民法541条の催告解除に戻ります。
この用語が出た過去問の肢を、正誤を選んで解説で確かめられます。